・・・って、個人的な答えを先に書くと、円は金を除けば最強の通貨であるべきであり、さすがに金にはかなわないとしても、以下に論じる理由などから、金価格の半分くらいの上昇率で価値が高まっていく通貨であるべきだ、と考えています。
金(ゴールド)の値段が上がり続けています。金先物の先週末時点(9日終値、CME)の価格は1トロイオンス当たり1508ドルと1500ドル台をキープし、7日に終値で6年4か月ぶりに1500ドル台に達した流れが続いていることを窺わせる結果になっています。
先日のこちらの記事で、いまの金価格は米FRBの金融政策を反映して次のような上昇軌道を描くだろうと綴りました。つまり、FF金利(政策金利)の誘導レンジが0.25%(25bp:ベーシスポイント)下がるごとに1オンス当たり100ドルずつ上がる、というものです。で実際、7月のFOMC(FRBの金融政策決定会合)で同金利の25bp引き下げが決まったわけですが、金価格はそのとおり、従前の同1300ドル周辺から1400ドル台にまで上昇していました。ところが・・・上記の個人予想はやはり「保守的」だったみたいで、このように金の騰勢はもはや抑え難い感じです(?)。で、その理由について本邦メディアは、米中防衛戦争の激化にともなう世界経済の不透明感の高まり、あたりに求めている印象ですが、それはまったく違うでしょう。そうではなく、これは同記事に詳述したとおり、世界がドル(ばかりかユーロ、ポンド、人民元・・・)の信認(≒価値保存機能)に対して疑念を募らせていることの反映というべき。それがFRBの利下げ、すなわち「金融緩和再開=ドルのインフレ通貨化阻止の断念」によって決定的&不可逆的になったから金価格の上げ足が速まっている、ということ・・・
このあたりを実感させられるのが、各国が公的な金準備を増強していること。日経によると、昨年、世界の中銀および公的機関が購入した金は656トンに達し、1971年以降で最大を記録したとのことです。そして今年も1~6月だけで374トンがこれらによって買われ、このままのペースだと年間700トンを余裕で超えそうです。で、その金買いの先頭を行くのがロシアだそうで、同国はすでに2200トンあまりを蓄え、金保有ランキングで5位になっています。いうまでもなく中国も、こちらの記事等で書いたように、少し前からスゴい勢いでひそかに(?)金塊を積み上げていると推測されます。さらに注目されるのは、中露みたいに戦略的にアメリカに対抗しているわけではないポーランド(4~6月に100トンを購入)とかインドとかサウジアラビアといった国々までも金の保有量を増やしていること・・・
上記をふまえれば、目の前の金価格の上昇、そしてその大きな推進力となっている各国中銀の金購入が、構造的に何に起因しているのか?は自明というものです。それはすなわち・・・ドルの失権。