世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【マネーの米回帰で金利低下も…】QE縮小:米経済は金利上昇に耐えられるか?③

2013-12-29 00:02:17 | アメリカ

(前回からの続き)

 ということで、FRBQE(量的緩和策)が縮小に向かい、金利上昇のリスクが高まるなかで、ここのところ急速に借金を膨らませたアメリカの家計は今後、厳しい状況に直面せざるを得ない、という見方を綴ってみました。

 これに関し、前述の住宅ローンに加えて、気になるところをもう一つあげておきたいと思います。残高の多い家庭向けローンのランキングで、自動車ローンを抜き、いまや住宅ローンに次ぐ第2位にまで上昇した学資ローンのことです。こうなった背景等は先日のこちらの記事に書いたので詳細は省きますが、学資ローン残高の拡大は以下のような理由から今後のアメリカの実体経済に大きなマイナスのインパクトを与えると思われます。

 まずは、これからのアメリカを担う若年層の多くが長期間にわたる学資ローンの返済に追われること。学校を出て社会人としてのスタートラインに立った時点で多額の借金を背負った彼ら彼女らは長い期間(へたをすれば一生!?)高い買い物なんてできないはずです。これは結局、中長期的にみた住宅や自動車の需要を落ち込ませてアメリカ経済の成長を阻害することになるでしょう。

 そしてもっと深刻だと考えられるのは、これほどまでにコスト高になってしまったアメリカの教育システムが次世代の人材育成におよぼす負の影響です。アメリカでは、もはや大金持ちか巨額の学資ローンを借りることができる世帯しか高等教育を受けられなくなりつつあります。一方で教育にお金をかける余裕のない中・低所得者層には十分な教育環境が提供されているとはいい難い・・・。こうした「教育格差」は持てる者と持たざる者との差をいっそう拡大させるとともに市民の不平不満感・不平等感を高め、アメリカ社会をさらに歪ませるだろう、と予想しています。

 話を「金利上昇」に戻します。

 FRBがQE縮小を開始したからといって、一本調子に金利が上がっていくわけではありません。価格が下がれば、高い利回りにつられて債券に流入するマネーが登場してくるからです。これによってFRBが購入を減らしただけの米国債やMBSが投資家に買われれば、これらの価格急落とか金利の急騰は回避されることになります。

 このあたりで期待できそうなのは、やはり新興国に投資されたマネーでしょう。QE縮小でアメリカの金利が上がりそうだという見方から、早くもマネーのドル資産へのシフトが始まっているもようです。実際、先日のFOMC直後から、新興国の通貨はドルに対して下落しています。そのなかでも直近ではトルコ・リラ、インドネシア・ルピア、インド・ルピーといった、経常赤字の大きな国々の通貨が売り込まれている感じです。

 まあこのへんは、各国が安易に低利の外資流入に頼り、産業振興などの各種改革を怠ったツケが回ってきたといったところなのでしょうが、ともかく、これら新興国はマネーの流出に今後も苦しみそう。なかにはリスケやデフォルトに追い込まれるところも出てくるかもしれません。そうなれば金融マーケットはいっせいに「リスク・オフ」モードとなって・・・。

 で、このリスク・オフですが、QE縮小に舵を切ったアメリカにとってどう作用するか、じつに微妙な気がします。金利の低め誘導に関していえば、当然これは歓迎すべき現象。新興国の通貨・債券・株式といったリスキーな資産から安全度の高い米国債にマネーが移れば米金利はおのずと下がるからです。

 一方、アメリカの「バブル」経済にはマイナスです。足元で最大の恩恵を米経済にもたらしている株価には冷や水を浴びせるし、これによって肝心の住宅価格にも下押し圧力がかかると考えられるからです。資産効果に依存した景気浮揚を図りたいFRBとしては、たとえ金利が下がったとしても、そんな資産デフレは決して起こしたくないはず・・・。

 結局、「やっぱり引き続きマネーをばら撒いて資産価格を高めよう!」ということになって、FRBはQEをやめることができなくなる・・・。金利高騰とかハイパー・インフレといった巨大リスクからは目をそらして・・・。禁断の「麻薬」=QEマネーにどっぷりはまったアメリカは、もはやこの麻薬の力で走り続けるしかなくなったように思えてなりません。

(続く)


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【米家計は借金漬け!】QE縮小:米経済は金利上昇に耐えられるか?②

2013-12-27 21:55:27 | アメリカ

(前回からの続き)

 金利の上昇におびえるのはアメリカの市民も同じです。以下に記すように、QE(量的緩和策)が演出した低金利環境のもとで、米家計借金が増加の一途をたどっているからです。

 ニューヨーク連銀の発表によると、アメリカの今年第3四半期(7~9月期)の家計債務は前期比で1.1%プラスの1270億ドル増と、2008年1~3月期以降では最大の伸びとなりました。その増加の内訳は住宅ローン560億ドル、学資ローン330億ドル、自動車ローン310億ドル、そしてクレジットカードローン40億ドルなどとなっており、一般家庭に関連するほとんどすべての債務が増え続けています。

 とくに最近は、一時は落ち込んでいた住宅ローンが金額、増加率ともに急速に高まっているようすが窺えます。第3四半期の米GDP成長率は年率換算で2.8%増と、前期の2.5%増からさらに上がりましたが、なかでも住宅投資の伸び率は同14.6%と突出しています。その背後にはこうした住宅ローンの拡大があるということなのでしょう。

 そんなこんなで増加し続けているアメリカの家計債務のトータルは、第3四半期時点で11.28兆ドル(1ドル104円換算で約1170兆円!)にまで膨らんでいます。このペースでいくと、(リーマン・ショック直前の)2008年7~9月期に記録された同最高額12.68兆ドルを超えて拡大しそうだ、といった予測もできそうな勢いですが・・・。

 ということで、上記をふまえた現状のアメリカ経済については次のようなことがいえるかと思います。GDPの7割を占める個人消費(家計)が支えるアメリカの実体経済は現在、住宅投資と自動車販売に牽引されているということ。そして住宅と自動車の購入等に必要な資金は多くの場合、借金であること。そしてその借金とはQEによってばら撒かれたマネーが元手の低金利ローンということです。アメリカの家計がこれほどの借金ができるのは金利が低いおかげ、といえそうです。

 2008年秋のリーマン・ショック直後からこれまでの5年あまりの間、FRBはQEを断続的に実行し、マーケットにあふれる債券を買い入れて金利の低め誘導をおこなってきました。そのため、この間に積み上がった一般家庭向けローンの大半は利払い負担が比較的小さなものとなっているはずです。それだけいまのアメリカの家計は金利上昇に対する耐性がなさそうだ、ということ・・・。

 そんな借金に好都合な環境がQE縮小によって変化しつつあります。ここでやはり気になるのが住宅ローン金利の動向。今回のFOMCでFRBはMBS(住宅ローン担保証券)の購入額の50億ドル減額を決定しました。米国債と比べるとMBSは安全性が低いうえ、流動性も乏しいこともあって、いまの債券市場では実質的にはFRBのみによって買い支えられています。その最大の買い手がMBS購入量を減らすとなると、他の金利にもまして住宅ローン金利が大きく上がるリスクが想定されます。

 はたしてアメリカの家計、とりわけ住宅ローンを抱える家計は、ポストQE期の金利上昇にどこまで堪えられるのか。そして今後、ローンの延滞や焦げ付きの増加が見込まれるなかで、アメリカの金融システムは無傷でいられるのか・・・。アメリカで不動産バブルが崩壊したのはつい5~6年ほど前。「そんな『大昔』のことなんてすっかり忘れたよ!」と言わんばかりの勢いで借金を重ねるアメリカの家計は、QE縮小と金利上昇が本格化する来年以降、重大な局面を迎えそうだ、と考えています。

(続く)


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【「禁断症状」とのバトル開始】QE縮小:米経済は金利上昇に耐えられるか?①

2013-12-25 00:00:53 | アメリカ

 「金利上昇とのバトルが始まった」―――さて、FRBは勝てるのでしょうか・・・。

 今月18日の公開市場委員会(FOMC)で、アメリカの連邦準備制度理事会(米中央銀行:FRB)は、現在実施中の量的緩和策(Quantitative Easing :QE)の縮小を決定しました。ご存知のとおり、その内容は、FRBによる月間資産購入額を来年の1月から750億ドルに減額するというものです。昨年の秋から続けているQE第3弾において、FRBは毎月、米国債450億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドルの合計850億ドル(約8.8兆円!)もの債券を市場から買い入れていますが、これを来月から750億ドル、つまり月間100億ドルほど減らすことになります。

 FOMC前の金融マーケットの事前予想では、QE縮小開始は早くても来年1月以降という観測が多かったように思えます。個人的には、以下に記すような事情から、同3月以降でないと、FRBはQE縮小に着手できないだろう、と予想していました。ということで、今回のFRBの金融政策変更を知って「えっ!? 早いね」と思われた方も少なくないのでは、と推測しています。

 このあたりは、バーナンキ現FRB議長の強い思いが反映されたのだろう、と考えています。つまり、QEという、中銀としては異例の政策の実行を決断したのが自分であるから、その縮小開始の決定も自分自身で下しておきたい、ということです。来年の1月末で任期を終える予定の氏にとって、今回のFOMCがそのラストに近いタイミングだったわけで・・・。

 さて、QEは現状のアメリカ経済のいわば「命綱」。「資産バブルよ、もう一度!」―――不動産バブル崩壊後の景気浮揚に向け、何かと手間も時間もかかる実体経済の改善を促すより、ずっと即効性があるバブル再生の「資産効果」でアメリカ経済の回復を図る―――これに必要不可欠なのが低金利のマネーであり、それを供給してきたのがQEです。

 当然、このQEには過剰流動性(お金の刷り過ぎ)がもたらす赤色巨星クラスのバブル(大げさ! でも、すでにその兆しあり!)と超新星爆発という、通貨の番人・中銀としては絶対に避けなければならないリスクがあるから、いつかは止めないといけないけれど、一方でQEを停止すれば金利の急騰と債券価格の急落でこれまた経済危機がもたらされる懸念がある・・・。なぜならアメリカは言わずと知れた双子の赤字(巨額の経常赤字および財政赤字)を抱える世界最大の純債務国だからです。

 「麻薬」のように危ないが、とりあえずのところ、低金利とドルの価値を保ってくれる、そんな「命綱」のQEがいよいよ縮小されることになりました。そこで米経済を襲う可能性があるのが強烈な「禁断症状」―――金利の上昇です。このあたりで懸念されることはいまのアメリカには山ほどあるのですが・・・。

 直近でもっとも心配されるのが、2014年の年明け早々から再燃必至のアメリカの連邦債務上限問題でしょう。現在のスケジュールによると、10月に決定された暫定予算が1月15日に切れ、2月上旬には債務上限期限が到来し、再び上限額を設定する必要が出てくるもようです。おそらく来年の早春、今年の秋のようなゴタゴタが米議会で繰り広げられるものの、結局は債務上限額が引き上げられることになるのでしょう(デフォルトなんてできるわけがないでしょうから!?)。ということは、アメリカはこれまでにも増して国債を発行することになります。

 一方、そのタイミングですでにFRBはQE縮小、つまり米国債の購入量を減らしています。米政府は米国債をさらに吐き出そうとしているのに、いまや米国債の最大の「買い手」となっているFRBがその購入を減らせば、当然国債価格は下落し、金利を跳ね上げるリスクが高まる―――繰り返しになりますが、FRBはそんなリスクを最小限に抑えるため、債務上限問題の成り行きを見極めてから(つまり3月以降に)QE縮小を始める気だろう、と推測していたのですが・・・。

 はたして今回のFRBの決断が、年明けから始まる米議会の財政協議の行方にどのような影響を与えるのか、注目されるところです。

(続く)


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【「アベノミクスは100%正しい」で、】日本の経済学、存亡の危機?④

2013-12-23 00:00:54 | 日本

(前回からの続き)

 そもそも、最近の日本の経済学では基本的なことが理解されていないのではないか、とさえ思えることがあります。

 たとえばこんな感じです(あえて数値は出しませんが)・・・わが国のGDPに対する「輸出」のウェートは世界的に見ればアメリカなどに次いで「低い」という事実をエコノミストの皆さんはご存じなのだろうか。そのGDPの根幹を占め、景気回復のカギを握るのが「個人消費であることは? そして消費増税には個人消費を冷やす働きがあることは認識されているのだろうか? これを別な言い方で表現すれば、消費税率の引き上げが必要なほど、この国の景気が過熱気味だと判断されているのだろうか? さらに、為替を円安にすると輸入インフレが起こる、つまり電気代やガソリン・灯油代などが上がるということは知っているのだろうか?・・・などなど。

 以上は、この国の経済学者やメディアがこぞって称賛する現政権の政策のベースとなる経済学「アベノミクス」で感じさせられることのほんの一部です。ひょっとしてアベノミクス(円安誘導リフレ政策)を推進する方々は、日本の「輸出」の対GDP割合が新興国並みの高さ(数十%超)で、海外販売用の自動車とか電気製品の「完成品」の製造工場がほとんど日本国内にあると思っていらっしゃるのでしょうか(どれも間違いですよ!)。もしそんな「誤解」が日本経済の真実なら、アベノミクスは大正解となりますが・・・。

 さらに、アベノミクスを評価するエコノミストは、日銀のリフレ政策が意図的に引き起こした円安でエネルギー価格や食糧などの日用品の値段をアップさせると、経済が好転すると本気で考えているのでしょうか(これも違うような気が・・・)。そんなことをしたら、総収入に占める生活費の割合の高い庶民(わが国のGDP「個人消費」を支えるこの国の多数派)の生活はもっと苦しくなるのに・・・。もしかしたら「生活費がかさんだ分、株式投資で取り戻せばいい」ってこと? 日本国民の何%が株を持っているのか、そしてそのうちどれくらいの人々が財テクだけで食べていけるのか、皆さんはご存知なのでしょうか・・・。

 そんな「アベノミクスは100%正しい」なんてことをおっしゃる「経済学」の重鎮がいます。たしかに100%そのとおりだと思います・・・「アベノミクスは貧富の差を拡大する」という意味で。でもそれは「経済学」といえるのか疑問です。なぜなら本来、経済とは「経世済民」―――世の中を正しく治め、民衆を救済すること―――であり、経済学とは「経世済民」のための施策を考えること・・・だと信じているからです。

 というわけで、本稿の表題「日本の経済学・存亡の危機」とは、上記のようなアベノミクス礼賛のもと、米欧中に続いて日本の経済学までもが富者のための私利極大化の方法論と化し、「経済」の何たるかを忘れつつあるのではないだろうか、という個人的な危機感に基づいて付けたもの。もし真に「経済学」の存続を図ろうというのなら、繰り返しになりますが、この国に脈々と受け継がれてきた本来の意味での「経済」観念をベースとした日本経済論を再興すること―――「ジャパン・ルネサンス」が必要不可欠だと思っています。

 ・・・さもないと、アベノミクスが続くにつれ、日本の「経済学」とか大学の「経済学部」は近い将来、本場・欧米流の「金儲け論」に駆逐され、本当に消滅してしまいそう。もっとも、看板が「理財学部」とか「蓄財学部」に変わって、いまよりずっと賑わっているかもしれませんが・・・。

(「日本の経済学、存亡の危機?」おわり)

天皇陛下、お誕生日おめでとうございます。陛下のますますのご健勝をお祈り申し上げます。


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【日本経済をネガティヴに捉えすぎ】日本の経済学、存亡の危機?③

2013-12-21 15:30:21 | 日本

(前回からの続き)

 個人的な空想ですが、近い将来、不可避的に発生する中国の政変では、「日本留学組」vs.「米国留学組」といった対立の図式がみられるかもしれないな、などと思っています。

 この場合、「日本留学組」とは、日本の大学(とくに経済系学部・学科)に留学し、日本に経済的繁栄をもたらした数々のメカニズムを学んだグループで、わが国を手本に公平・公正で貧富の差の少ない社会作りをめざす人々。一方「米国留学組」は、現在の共産党体制を守ろうというグループ。つまり党や軍の幹部や国営企業の経営者などの特権階級とその子息・子女といった人々です。高額の学費収入を元手に自らも巨大なヘッジファンドへと変貌したとおり、世のため人のため、というよりは、自己利益極大化のための財テク手法の研究に余念のない(?)アメリカの大学の経済・経営系学科は、特権中国人の拠り所にふさわしいように感じられます。

 以前も書いたように、中国は「王朝国家」のカルマに囚われていると思っています。貧しい大衆が蜂起、富や権力を独占する旧体制を打倒して新しい王朝を建設し、その王朝がまた腐敗して・・・を延々と繰り返しているということです。もしいま、このカルマの車輪を止めることができる人々が中国にいるとすれば、それは「日本留学組」なのではないか・・・。彼ら彼女らが新生中国の主役となったとき、真の「人民共和国」の建設と日中友好が始まるだろう―――そんな予感がします。

 ということで、タイトルからずいぶん離れたことを長々と綴ってしまいました。さて、現状のわが国の経済学の実態はどうかといえば・・・残念ながら、前回書いたようなユニークな面を持つ「日本経済」という最高の教材を十分に生かし切っていないように思えてなりません。これでは宝の持ち腐れだし、日本人の学生だけではなく、この国の経済学に期待して外国からやってくる留学生にとっても物足りないのではないでしょうか。

 それどころか、いまの日本経済学の主流派には、わが国の経済をネガティヴに捉えすぎる風潮すら感じます。たしかに不動産バブル生成・崩壊のような経済的失敗があるので無理もないところもありますが、その後始末の仕方すら(ベストではないにしても)、これから「日本化(≒資産デフレ)」(好きな言葉ではありませんが・・・)を迎える欧米諸国にとって、大いに参考となるモデルだと思っています。実際わが国は今年、バブルの清算を終えたわけですし(金融システムに投入された公的資金の回収を終えたということ)・・・。

(続く)


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【中国の若者を「親日家」に・・・】日本の経済学、存亡の危機?②

2013-12-19 00:01:57 | 日本

(前回からの続き)

 日本経済―――社会科学においてこれほど興味深い考察対象はそうはないのではないでしょうか。面積でいえば世界で62番目にすぎない極東のちっぽけな島国で、原材料のほとんどを外国からの輸入に頼らざるを得ない日本が、それぞれ世界で3、4位の面積を持ち、石油や石炭などの多くの天然資源に恵まれたアメリカ、中国に次ぐGDPを生み出すようになったのはなぜか。太平洋戦争の終戦直後の何もない状態から今日までのあいだ、さまざまな困難があったにもかかわらず、「奇跡」とたたえられるほどの復興と高度成長を遂げ、世界最大の純資産国となったのはどうしてか。一方、それほどの経済大国になったのに、アメリカや中国などと違って、社会に極端な貧富の差がみられない理由は?・・・などなど。世界広しといえど、この国の経済ほどユニークで、研究テーマに事欠かない経済はほかにない―――そう断言してもおかしくはないでしょう。

 で、そんな日本経済にいま、強い関心を寄せているのが、外国の学生、とくに新興国の学生なのではないか、と思っています。わが国が今日まで辿ってきた上記のプロセスは、母国の発展・繁栄に尽くしたいという志に燃える若き彼ら彼女らにとって、見習うべき良きお手本となりうると考えているからです。そのなかでも、地理的な近さや両国関係の現状などから、中国の学生が日本の経済を学ぶ意義はとても大きいと思っています。それは、歴史が教えるとおり・・・。

 ・・・近代中国を築いた人物のなかには、わが国に留学したり長期にわたって滞在した経験のある人が少なくありません。中華民国建国の父である孫文や、毛沢東とともに現在の共産党中国を打ち立て、いまも民衆に慕われ続ける周恩来にも、若いころに日本で学び、活動した経歴があります(周氏が日本滞在中に詠んだ「雨中嵐山」の詩を刻んだ石碑[京都嵐山]は日中友好のシンボルとなっているそうです)。国は違いますが、親日家で知られる台湾の李登輝元副総統も京都帝大に留学しています。なお、日本留学の経験こそありませんが、前駐日中国大使で現在の中国外交部長である王毅氏は「日本語のプロ」と称されているそうです(彼が今後も権力内で生き残っていくことを願っています)。

 このように、中国の近・現代史の「大物」が留学や滞在等を通じてわが国と関わってきたことは非常に意味のあることだと考えています。こうした歴史は「日本」を体感した中国人こそが今後も国家建設をリードしていくという期待を抱かせるからです。そしてこれからの時代、その主役となるのが日本の大学、とくに経済系学部・学科で上記の「日本経済の強さ」とか「日本社会の良さ」を学んだ人々となるだろう―――などと予想しています(いささか期待過剰ですが・・・)。

 ということで、日本の経済学が進むべき道のひとつは、いわば「ジャパン・ルネサンス」―――上記の繁栄のもととなったわが国の経済・社会モデルを再構築すること。そのうえで、新興国、とくに中国をはじめとするアジア諸国の有為な若者を留学生として招き、成功例としての日本経済の研究を通じて、彼ら彼女らの多くを「親日派」あるいは「知日派」にしていくことだと考えています。

(続く)


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【「手に職」のつかない経済学部】日本の経済学、存亡の危機?①

2013-12-17 00:01:39 | 日本

 前稿「世界大学ランキング雑感」で、日本の大学、とくに理系の学部・学科は、日本人の学生や研究者にとって、さまざまな面からみて十分に魅力的だ、という個人的な見解を記してみました。

 これに対し、(これまた個人的な見解ですが・・・)同じ日本の大学でも近ごろ「凋落したな~」と感じさせられる学科があります。それが「経済学。他の人文科学系の学科―――法学、商学、そして文学などと比べても、経済学は何を研究するのか、経済学を修めると何が身につくのか、そして何のために経済を研究するのか・・・といった、学問としての意義とか目的が見えなくなりつつあるような印象を受けます。本稿ではそのあたりについて思うところを綴ってみたいと思います。

 本来、経済学には「手に職がつかない」という弱点があるように感じます。わが国における最近の厳しい雇用情勢のなか、多くの大学生には、就活に少しでも有利になるように、資格などの実務的なスキルを身につけたい、というニーズがあるといわれます。法学や商学などの分野においては、法律家や会計士などのプロの道を含め、具体的なスキル取得のコースがイメージできますが、経済学においてはそれができません。これは日本の大学に限ったことではなく、海外の大学の経済・経営学部に留学しても同じこと。苦労してMBA(経営学修士)を取っても、それは公的な資格でも、官庁や一流企業への就職を保証するものではないわけで・・・。

 そんなこともあり、実学的な側面を持つ他学部に押され気味(?)なわが国の大学の経済系学部・学科は、学生にとって魅力ある学問であることをアピールするため、その価値や意義を見出そうと試行錯誤しているように見受けられます。そこで、このところよく使われる形容詞が「グローバル」。つまり「当大学の経済学部は将来のグローバル・リーダーの育成カリキュラムを提供します」みたいな感じ。で、何をするかというと、端的にいえば英語教育の充実―――具体的には、英語による授業を増やしてみたり、米英人の講師を増やしてみたり、等々・・・。

 個人的には、まあそれも悪くは無いけれど、それだけではちょっと物足りないのでは、などと思っています。英語とか米英経済学を中心としたカリキュラムを組むのであれば、それらの「本家」であるアメリカとかイギリスの大学の経済系学科のほうに軍配が上がることは明らかです。だからここはぜひオリジナリティーを発揮して、日本の経済学ならでは、の環境づくりにも取り組んでほしいな、と日本の各大学には期待しているのですが・・・。

(続く)


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【やっぱり日本の大学が一番!?】世界大学ランキング雑感⑦

2013-12-15 00:00:18 | 世界共通

(前回からの続き)

 これまで述べてきたとおり、イギリスの教育専門誌Times Higher Education世界大学ランキング」でトップ10に入っているのはアメリカイギリスの大学です(米7校、英3校)。これら10大学以外でも同ランキング上位には両国、とりわけアメリカの大学が多数入っています。

 いうまでもなく大学は最高学府。ということは、世界屈指の大学が揃うアメリカとイギリスは、世界最高レベルの知恵と英知が織り成す「素晴らしい国」であってしかるべき―――政治・経済の仕組み、社会福祉の制度、そしてモノ作りの技術や環境面などなど、あらゆる分野で世界の「模範」であり「憧れ」となる国であってしかるべきだ、と個人的には思うわけですが・・・。

 ご存知のように、現実の米英両国は、そんな(わたしが描く意味での)理想的な国家像とは大きくかけ離れています。そのへんは日々のさまざまなニュースに接していれば誰にでも感じられることと思います。

 なかでもこのあたりを象徴しているな、と感じさせられるのは米英両国の「経常赤字」の巨大さ。2012年の両国の経常赤字はアメリカが約4404億ドル(44兆円超)、イギリスが約939億ドル(約9.4兆円)と、それぞれ世界第一位、第二位です。経常収支とは、自国と外国との貿易・サービスなどの経済取引をトータルした収支のこと。これが赤字、それも世界で1番、2番目の赤字ということは、米英両国が、自分たちの身の丈以上の贅沢(=借金生活)をしているということに加え、それだけ両国が外国に買ってもらえるモノやサービスを創造できていないことの表れだと思っています。

 そんな様子を見ていると、アメリカやイギリスの大学は、少なくともそのランキングの高さほどは、自国の実体経済とか産業振興にプラスの貢献をしていないのではなかろうか、と感じています。まさか「国家の経常赤字? そんなことはどうでもいい。大学の名声が高まって、お金持ちの子息が集まって、その学費収入で株式投資ができて、大学関係者が潤えば・・・」というわけではないのでしょうが・・・。

 以上、「世界大学ランキング」についてあれこれ綴ってきましたが、つくづく感じるのは、総合的に判断して、わたしたち日本人には日本の大学が一番、ということ(相当に「身びいき」が入っていることをお許し下さい・・・)。もちろん、「大学全入時代」を迎え、わが国の大学には改善すべきさまざまな問題や課題があるのは事実でしょう。それでも、学習や研究にかかる諸環境、教員のクオリティー、そしてコスト面などから見て、日本の多くの大学は一定のレベルに達しているものと思っています。

 とくに同ランキングで世界200位内に入った東大、京大、東工大、阪大、東北大などの主要国立大(そのなかでも理系の学部・学科)は、世界的な評価が高いうえ、1年間の授業料が50万円あまり(アメリカの一流大の1/8ほど)と、費用対効果の面からも魅力的です。わが国の志ある若者がこれら日本の大学に進み、(学費の支払い等に煩わされることなく)研鑽を積んで、それぞれの進路で活躍することで、この国や世界の発展に寄与することを期待したいですね。そんな彼ら彼女らのなかから、きっとこれからもノーベル賞クラスの業績を打ち立てる才能が続くだろう―――そう信じています。

(「世界大学ランキング雑感」おわり)


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【米大学、「学問の府」から「蓄財の府」と化す】世界大学ランキング雑感⑥

2013-12-13 00:03:23 | 世界共通

(前回からの続き)

 本稿冒頭でご紹介したイギリスの教育専門誌Times Higher Education(THE)が発表した「世界大学ランキング」には、参考データとして各大学の年間授業料も付されています。それをみて、おそらく世界中の学生の誰もが驚くのが、アメリカの大学の授業料のバカ高さ。2000年代に入って物価上昇率を上回る勢いで値上がりし、現時点では1年間で何と4万ドル以上、日本円で4百万円から5百万円近くもします。大学4年間のトータルにすると学費だけで約2000万円! これに生活費などが加わるわけだから、4年間の米留学費用は合計でいったいいくらになるのやら。日本で家を買ったほうがずっと良かったりして・・・。

 ちなみに同ランキング上位に入っているイギリスの大学の留学生の年間授業料は3万ドル前後と、アメリカの大学ほどではないにしても、こちらも相当な金額です。ということで、「世界大学ランキング」トップ10って、もしかしたら授業料の高い大学の順に並んでいるかも、などと勘ぐってしまいそう。

 それほど学費が高ければ、近年、アメリカの大学への日本人の留学生が減っているのは当然でしょう。なので、ケネディ駐日米大使には、日米の学生交流の活性化に本気で取り組むというのなら、米大学の学費をもっと安くするよう、本国政府とか大学関係者にぜひ働きかけてほしいものだ、などと思っています。

 それにしても、一部のセレブ家庭の子息子女や前回書いたボンボン中国人留学生とは別に、アメリカにこんな高い授業料を払える学生っているの?と思って調べてみたら、やはり彼ら彼女らの多くは学資ローンを組んでいることがわかりました。まあそうでしょう。いくらアメリカでも、年間4万ドルを超える学費をキャッシュで支払える家庭は多くはないでしょうから・・・。

 で、その学資ローンの残高ですが、アメリカ全体で1兆ドル(100兆円以上)にまで膨れ上がっています。さまざまなローン(要するに借金)花盛りのいまのアメリカでも住宅ローン残高に次ぐほどの額を誇って(?)います。

 さらにいうと、この学資ローンは他のローンと異なり、借り手が破産しても債務減免されることがありません。ということは、大学を出たアメリカの若者の多くは、その後の長い年月、へたをすれば一生(!?)、ローンの支払いに苦しめられることになります。それでも彼ら彼女らは大学に行きたいし、学生の親は子どもを大学に行かせたいのでしょうね。わが国と違って、アメリカでは学歴による収入差、そして失業率の差がものすごく大きいそうですから・・・。

 一方、それだけ学生からたくさんお金を取っているせいか(?)、近年、アメリカの大学は異様なほどリッチになっています。とくにスゴイのはハーバード大。世界一の資産保有大学と言われるこの学校の資産規模は数百億ドル(数兆円!)にも上ります。そのポートフォリオは米国内外の大手企業の株式や投信等といった金融資産によって構成されていて、もはや大学というよりはどこかの投資銀行とかヘッジファンドのよう。実際、同大学は投資ファンドでキャリアを積んだ人を資産運用責任者にしているそうな・・・。

 そんな実体をみると、ハーバード大をはじめとする最近のアメリカの大学は「学問の府」から「蓄財の府」に変貌したといえそうです。最高の教育機関たる大学が財テク投資に邁進! そしてその足元では、多くの若者が高い学費と苛烈な学資ローンの重荷にあえぐ・・・。そんなアメリカの大学がズラリと上位にならぶ「世界大学ランキング」って、いったい・・・?

(続く)


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【英語はツールに過ぎない】世界大学ランキング雑感⑤

2013-12-11 00:00:37 | 世界共通

(前回からの続き)

 前回、中国韓国の学生は、自国の高等教育環境が貧弱なために海外留学志向が強く、これが結果としてアメリカの大学における両国の留学生数の増加につながっている、といった見方を綴ってみました(まあお金持ちの子息子女限定?ですが・・・)。

 それに加え、彼ら彼女らには、アメリカ留学によって高い英語力を身につけることで、サムスン電子などの大企業への就職活動を有利に進めたいという思惑もあるようです。まあそうなのでしょうね。中韓両国で特別なコネのない若者がマトモな就職先を探すとすれば、こうした輸出企業くらいしかないでしょうから・・・。このあたり、輸出を担う一握りの独占的国営企業とか財閥企業ばかりが優遇され、一方で内需、つまり国内セクターに属する企業とか国民の購買力は脆弱なまま、という、両国のゆがんだ経済構造が垣間見える感じがします。

 さらに続けると、中国人学生のアメリカ渡航は、多くの場合、勉学や研究のためではなく、じつは「国外脱出」が真の目的なのではないだろうか、などと勘ぐっています。政権幹部や大企業経営者などの中国の特権階級のあいだでは、近い将来に想定される体制崩壊に備え、一族郎党や私財を海外に移住・移転させることが流行となっていると聞きます。ということで、欧米の大学に留学したエリートの子息子女らは、自らが橋頭堡となって、お父さんやお母さんのアメリカへの「高飛び」を手引きしようとしているのかも!?

 アメリカにおける中国人留学生の短期間での激増ぶりを見ていると、この「共産党王朝」は意外に早いうちに終焉を迎えそうだ、などと思ったりしています。

 すっかり今回のテーマから脱線してしまいました。話を「英語」に戻します。

 「英語を勉強したい!」で個人的に思い出されるのは、映画監督・北野武氏の有名なエピソード―――氏の母の「英語なんてアメリカじゃ○○○だって喋っているんだ!」で、北野氏も兄の大(まさる)氏も理工系大学に進学した―――という話。これはある意味で言語の本質、つまり「言葉はツールに過ぎない」ということをズバッとついた言い方です。

 このへんは人によって考え方の異なるところですが、わたしは「北野氏の母のいうとおりかもしれないな」と感じています。つまり、理工系知識は皆無でも、ハーバード大に留学してネイティヴ並みに英語が使える人と、まったく英語は話せないけれど、わが国の大学で次世代電池の基礎研究を続けてきた人のどちらがこれからの日本や世界にとって有用か、となれば、それは後者なのではないか、ということ。なぜなら、英語を話せる人は(アメリカでは○○○を含めて2億人以上もいるくらい)「ありふれて」いますが、電池の高度な知識を有する人材は世界広しといえどもそうはいないはずだからです。したがって「わが子よ、大学に行くのならツールとしての英語よりも理系の技術を身につけよ!」という親の感覚はそれなりに的を射ていると思うわけです。

 だからといって、英語学習のための海外留学を全て否定しているわけではありません。たしかに、英語力を付けるには英語が話されている国に行くのがいちばん効果的なのは間違いのないところ。さらに、プロフェッショナルな語学力が求められる外交官とか通訳、翻訳家などを目指す人や、アメリカの歴史や英文学などを学びたい人にとっては、アメリカの大学への留学はとても有意義で魅力的だと思っています。

 ところが、そんな留学願望を抱く人に文字通り高い壁がたちはだかります。それがアメリカの大学のバカ高い授業料です。

(続く)


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