世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【強い通貨・経済振興に希望で北アイルランド、英国からの独立等をためらう理由なし?】英国:急速に進む分国化③

2020-09-29 00:02:45 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前回、Brexit」(英国のEU離脱、今年1月)に関する英国EUの現行の離脱協定(北アイルランド議定書:英領北アイルランドとアイルランドとの間には厳密な通関検査は置かない[英国領内に置く])のもとでは、北アイルランドは、英国・ポンド圏に留まるよりも、いっそ英国から独立するか、アイルランドと統一国家を形成して、EU・ユーロ圏に入ったほうが経済的に有利、と書きました。それは、北アイルランドとしては、現状のポンドよりも強い通貨ユーロを使えるようになったほうがインフレのダメージを抑制できる、といったことのためです。

 英国の対EU貿易データ(2019年)をみると、輸出額が1699億ポンド(全体の46.3%)なのに対し、輸入額は2668億ポンド(同49.2%)となっており、同国が全貿易のほぼ半分をEUに依存しているほか、英国側が大幅な入超になっていることが分かります(出典:JETRO)。ということは、国際収支の改善を図る観点からは、英国としては対EU貿易において自国通貨ポンドがユーロに対して強いほうが望ましい・・・ですが、Brexitになってしまったことで、ポンドは逆にユーロ(ばかりかドルやなどの先進国通貨)に対して切り下がっていくことになりそうです。つまり・・・Brexitで、英国にはEU単一市場へのゲートウェイ(輸出拠点)としての魅力がなくなったと判断した日米欧企業が同国から続々と退出することで、英国の輸出セクターが衰退し、差し引きの経常収支はいっそうの悪化が見込まれることなどから、ポンドは売り!ということです。その結果、英国すなわちポンド圏では、輸入品の大半がじわじわと値上がりしていくため、国民の多くが経済的な苦境に陥っていくでしょう。かといって、メイド・イン・UKで輸入代替を進める、なんて、かの国の力量ではまず無理なわけで・・・

 実際、ポンドのレートですが、年初(今年1月1日)は1ポンド1.18ユーロ、1.32ドル、144円だったのが、現在(日本時間9/28)はそれぞれ1.10ユーロ、1.28ドル、134円と、ユーロをはじめとする対先進国通貨に対して軒並み下がっています。そのあたり、英国のコロナ禍の悪影響が相対的に大きいとみられていることもあるでしょうが、やはりBrexitが英国経済にマイナスに作用すると市場が判断していることの反映でしょう。まあ、英政府がEUの要求を受け入れて上記法案の議会提出を断念したら、リスク・オンということで、ポンドは少しは値を戻す(?)かもしれませんが、それは投機的要因に過ぎず、上記トレンドが変わるはずもないので、ポンドのいっそうの価値低下は防ぎ難いでしょう・・・(?)

 そうした中、北アイルランドには上記の苦しみから逃れる手があるわけです。それが冒頭の選択になります。独立?アイルランドとの統合?そのどちらにしても北アイルランドは、EU・ユーロ圏に入りさえすれば、少なくとも輸入額で半分を占めるEU産品についてはポンド安ユーロ高がもたらすインフレを免れることが可能なほか、英語が通じるEU加盟国である点を上手にPRするなどして、現在は英国本土にいる日米等の企業の同地域への移転・誘致を促す(ことで同地域の雇用促進や貿易振興等を図る)こともできるなど、未来に希望が持てそうです(?)。であれば、北アイルランドに、英国からの独立等をためらう特段の理由があるようには思えませんが・・・

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【英政府の危機感:北アイルランドに英国残留メリットを与えられないこと】英国:急速に進む分国化②

2020-09-27 00:02:19 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述のように、Brexit」(今年1月の英国のEU離脱)に関する離脱協定について、これすでに英国・EU間で調印されて国際条約になっているにもかかわらず、英国政府がその約定に反する国内法案(英領北アイルランドと英国本土との間には新たな通関等は置かない、等)を議会に提出しようとしているわけですが、先行きは微妙に不透明ではあるものの、結局、英国は上記協定を受け入れる以外にないでしょう。それが現在の国際ルールであるのはもちろんですが、アイルランド島内の英領北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドとの間に(カトリック系住民とプロテスタント系住民との対立を再惹起させかねない)国境線を意識させる検問所等を設けずに済ますには、それしか考えられないためです。

 ちなみに・・・じゃあアイルランド島内、そして英国領内のいずれにも通関等の設置が不要になるよう、英国はEUと関税ゼロ協定を結べばOKじゃん、となりそうです・・・が、これ英国は大歓迎でもEUは絶対に認めないでしょう。なぜならそれ、英国の「いいとこ取り」、つまりEUの理念である域内のモノとヒトの往来の自由のうち、モノだけを認めてヒト・・・すなわち移民・難民のEU基準での受け入れは拒否する、といったことを意味するからです。そもそも英国がBrexitを決断した最大の理由は、そのへんにあったはず。よって当然、EUとしては、英国がBrexitで、上記の自由な行き来がもたらす責務(≒移民等の受け入れ)と果実(≒フリートレード)のうちの責務のほうを負わない、というのなら、果実だけをおいそれとあげるわけにはいかないよ!となりますからね。

 そのあたり、いま欧州に押し寄せている難民の多くが中東・アラブ地域、つまり、かつて英国等が(サイクス・ピコ協定[オスマントルコ領の分割に関する秘密協定]やバルフォア宣言[パレスチナ地区におけるユダヤ人国家建設支援]等で)自国の権益等の都合で民族分布などはお構いなしに国境を定めたエリアからやってきているわけです。彼ら彼女らが紛争等から命を守るために生まれ故郷を捨てざるを得なくなった元凶は、この国境線・・・ということで、これを引いた当事国である英国は、道義上、欧州のどの国よりも多くの難民に門戸を開放するべき立場にあるはず。それなのに、英国はBrexitでかえって門戸を狭め、その結果、いっそう多くの他国民を受け入れざるを得ないのがEU加盟国、なかでも上記協定等の枠外にあったドイツだったりするわけです。よって、EUが英国に現在の離脱協定の勝手な変更を許さないのは至極ごもっとも、といえるでしょう・・・

 以上からすると、北アイルランドは同協定のとおりの扱いになる(以外にない)はずです(?)。であれば今後、北アイルランドのアイルランド(EU)化・脱英国化が急速に進んでいくでしょう。それは、前述のように、北アイルランドにとって、同じアイルランド島内のアイルランドとのモノやヒトの往来がフリーに近いのに対し、アイリッシュ海の向こう側の英国本土との間に通関施設等ができるため・・・ですが、もっと重大なのは、この場合、北アイルランドとしては自エリアで流通させる通貨を現行の英ポンドからユーロに切り替えたほうが有利になること。後述する理由から、この先ユーロがポンドに対して強くなっていく可能性は高く、したがって北アイルランドにとっては、上記の煩わしさに加えて弱い通貨であるポンドを引き続き持たされるのなら、英国・ポンド圏に留まるよりも、独立、あるいはアイルランドと統一国家を形成してEU・ユーロ圏に合流するほうがベターな選択になる、ということです・・・

 まの英国政府の本当の危機感は、そこ―――現協定のもとでは、北アイルランドに対して、英国圏に留まることのメリット(≒強い通貨)を与えられないために、同エリアの自発的な独立等およびEU(ユーロ)圏入りを阻止できないこと―――でしょう・・・

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【英政府、Brexit協定抵触の法案を議会に提出か】英国:急速に進む分国化①

2020-09-25 00:01:33 | ヨーロッパ
 予想どおり、英国(連合王国)はきっと間もなく、「サッカー代表」の単位に分裂していくでしょう(?)。そしてその通貨ポンドは・・・

 ご存じのように、英国は今年1月末、EU離脱Brexitしました。そして現在、両者間で新しい通商ルールをめぐる交渉が行われているのですが、このほど英政府が議会に提出した国内市場法案が上記離脱協定の一部を変更しようという内容のため、EUが、いったん調印した協定を勝手に変えようというのは国際法違反だ(って、そりゃそうだ)、として同法案の今月末までの取り下げを英国側に要求する事態になっています。これに対して英政府は、議会主権のもとでは国際条約の取り決めに反する法案でも可決できる(って、それでは英国は中露やイラン等を批判できない、なんて反発あり)、と述べているそうですが・・・

 で、上記問題になっているのが、同法案で離脱協定内の「北アイルランド議定書」について変更を示唆している点。同議定書は、同じアイルランド島内の、英国領北アイルランドとEU加盟国のアイルランドとの間の陸続きの国境には、(左記二者の歴史的な対立を再惹起しかねない)厳密な通関施設等は設けない、としていますが、それを認めると同手続きは北アイルランドとグレートブリテン島との間で行うことになり、同じ英国領内なのに通商上は2か国が独立して存在するみたいな事態になります・・・

 そこで、ボリス・ジョンソン現首相らは、その危機感と英国の一体性維持を訴えて政権に就いた経緯があることから、現協定を受け入れてしまうと、支持者から、公約に反した!との厳しい批判にさらされるのは避けがたい・・・ということで、北アイルランドと英国本土との間には新たな検査は設置しません、みたいなことを入れた法案の起草に至った、という次第なのでしょう。現時点(日本時間24日夕刻)で英国政府が国際法やぶりを承知でこれを議会に提出するのかどうかは不透明ですが,EUが設定したデッドラインが迫っており、英国民ならずともハラハラドキドキといったところです(?)。

 このあたり、テレーザ・メイ前首相らが苦労していた(けれど、せっかくの提案を議会では軒並み否決されてお気の毒だった)頃と、実質的に同じ懸案についての議論ですが、諸般の情勢から、結局、英国は現在の離脱協定を受け入れる以外にない(実際の通関手続き等は英国領内で行うしかない)と考えるものです。そしてそれは・・・中長期的には、北アイルランドとアイルランド=EUとのいっそうの一体化・親密化、他方で北アイルランドの英国本土との分断化・疎遠化を促すことになるはずです。それはそうでしょう、北アイルランドにとっては、同じ陸続きで人やモノの行き来がしやすく、煩わしい通関手続き等がないアイルランドのほうが、さらになじみ深くなる一方で、英国との間には海の他に国境を意識させる検問所みたいなのが新たにできて、面倒くさいったらない、となる(?)わけですからね・・・

 とまあ、そんなことから、これを機に北アイルランドは、英国から「離脱」して、アイルランドと一緒になってEUに「合流」したほうがよろしい・・・のではないか、というのが個人的な考えです。その本質的な意味は・・・北アイルランドにとっては、この際、ポンドを見限ってユーロに乗り換えたほうがマシでは、ということ。

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【各政権の評価は経済で決まる】史上最大「マイナス成長達成」で「世界史」になってしまった「安倍晋三」氏⑨

2020-09-23 00:01:12 | 日本
前回からの続き)

 ご存じのとおり16日、菅義偉氏(前官房長官)を新首相とする菅内閣が発足しました。菅氏が早い段階から次期首相に実質的に内定していたのは、同氏がいち早く「アベノミクス」(≒日銀「異次元緩和」)の継続を掲げたためといえるでしょう。アベノミクスは先記した目的を持つ政策のため、まあ、そういうことなのだろうな、と解釈しています。

 ということで、本稿ではそのアベノミクスをけん引した安倍晋三前首相の憲政史上一の同在任期間の長さ・・・ではなく、安倍政権が達成した(?)「マイナス経済成長幅」の憲政一のデカさについて綴ってきましたが、あらためて思うのは、その時々の政権の評価は、経済で決まる、ということです。付言すると、それに比べれば、その政権では誰がナントカ大臣だったのか、とか、その政権にどんなスキャンダルがあったのか(なかったのか)、なんてことは、どれも些末なことに過ぎません。そのあたりは、いまから30年以上も前の中曽根政権で、いまのわたしたちに影響を与えているのが、当時は大騒ぎになった(らしいけれどいまは誰も覚えていない?)中曽根首相の「不沈空母」発言・・・などではなく経済面(≒バブル醸成)だけ(?)であることからも分かるというものです。

 メディアや国民の多くが注目する、その時々の政権の外交スタンスですら、経済には及びません。なぜなら外交もまた経済力の勝負―――いまの国際社会(≒カネがモノをいう世界)では、経済力すなわちマネー力の強弱が、相手国との交渉等において自分が優位に立てるか否か、の駆け引きの決定要因―――だからです。この視点に立ったとき、アベノミクスはマネー力、つまり「」を意図的に弱くする―――「ドル」を意図的に強くする―――政策なわけで、やはりそれには前述の狙いが窺えるでしょう?

 そのあたりに関連してキーとなるのは、何といっても日銀(中央銀行)の金融政策。ここまで論じたように、戦後経済に重大な影響を及ぼした出来事―――バブル発生と崩壊そしてアベノミクス―――にはすべて同政策が密接に関連しています。よって、菅内閣になっても、そして万一の(?)政権交代があっても、金融政策に変更がなければ、アベノミクスは続く、といったことになるわけで・・・

 ・・・とはいえ、こちらの記事で予言(?)したように、これまでの世界を代表(?)した安倍政権がおおむね「7年」で終了したいま、時代はすでに新しい局面に入っています。ある意味で、年初には予想すらできなかった「コロナ禍」の世界的な広がりもその兆しのひとつでしょう。そして・・・そのコロナ禍で世界最多数の死者を出している、アベノミクスつまり日銀がサポートする、かの国は、その真の狙いのとおり(?)、インフレのコントロールを失いつつ((実質金利のマイナス圏没入の度合いが深まるばかりになりつつ)あります。もはや、アベノミクスの手を離れてしまった、といった感じです・・・

 ・・・であれば、日銀、新政権、そして、新時代を迎えたわたしたちが進むべき方向は・・・おのずと見えているように思えますが・・・

(「史上最大『マイナス成長達成』で『世界史』になってしまった『安倍晋三』氏」おわり)

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【安倍政権「長さ」のツケは国営銀行ベイルアウトや年金カット】史上最大「マイナス成長達成」で「世界史」になってしまった「安倍晋三」氏⑧

2020-09-21 00:01:08 | 日本
前回からの続き)

 ということで、表題について思うところを綴っていたら、16日、安倍晋三氏か首相を辞任し、2012年12月から7年9か月の長きにわたって続いた安倍政権の幕が下りていました。これで同氏の「トップ1」(いや「ボトム1」?)のギネス記録?が確定したようですね・・・

 本稿は、首相在任期間の「憲政史上一」の長さ・・・ではなく、その政策「アベノミクス」(≒日銀「異次元緩和」)で「憲政史上一」の「マイナス成長」に日本経済を導い(てしまっ)た点が安倍氏とその政権のスゴいところであり、その歴史的な意義(?)といえる、という視点で書いていますが、退任時の安倍氏の、経済再生に全力を尽くしたとの発言に仰天するとともに、あらためてその思いを強くするものです。もっとも、その再生の対象の経済が「日本の」ではなく、「アメリカの」なら合点がいくわけです。中曽根政権時のバブル膨張で高度成長(?)を果たした自分たちの成功(そして大失敗の)体験アメリカにも、ってことでしょうから・・・(?)

 さて、前述したことなどから、本邦経済には輸入インフレに対する耐性があり、したがってアベノミクスの「痛み」(円安誘導に伴う輸入原材料の円建て価格の上昇)をそれほど感じることがなく、よって一般の国民・・・どころか経済学者までもが(?)、前政権下の本邦GDPの歴史的な転落ぶりに気がついていないものと思われます。が、このあたりのダメージをイヤでも思い知らされる時が迫っているといえます。それは、アベノミクス期間中にしこたま買われた外債やら株といったリスク資産の円評価額の暴落です・・・

 そのへんの経緯等も、こちらを含めてたくさん書いているので詳細は省きますが、ようするに・・・アベノミクスの市場環境(極端な円安ドル高)に従って民間(企業&家計)が対外等投資を手控えて円のキャッシュを積み上げたのに対し、安倍氏が率いたアベノミクス政府は、同政府の言うことを聞く政府系金融機関(ゆうちょ銀行農林中金など)や公的年金基金に上記リスク資産投資に突っ込ませているのですが、それら投資が結果として超高値掴みとなり、巨額の含み損を発生させて・・・国民がその尻拭い(上記金融機関に投入される公的資金の拠出や年金支給額カットなど)を強いられる、というものです・・・

 残念ながら(?)、そのときになってやっとわたしたちは、安倍政権そしてアベノミクスの「長さ」のツケの巨額さを知ることになるでしょう。よって、本来ならば、いまからでもそのダメージが少しでも緩和される対策が望まれます。たとえば・・・政府系金融機関ならば、民間と違って投資判断が甘くなりがちとの観点から、ペイオフ(預金保険)の上限を現行の1千万円から5百万円(!?・・・って、現在の1ドル105円から同50円になることを想定)に減額する(預金者にも責任を負ってもらうことで、国民全体に損害が波及する事態を回避する・・・というのは表向きの理由で、そうすることで同金融機関に、高値掴みしたドル等資産の売却等を促すことが狙い)、みたいなことをしていただきたいものですが・・・

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【エネルギー効率の向上に救われているアベノミクス下の日本】史上最大「マイナス成長達成」で「世界史」になってしまった「安倍晋三」氏⑦

2020-09-19 00:02:44 | 日本
前回からの続き)

 先述したことから、安倍政権の主要政策「アベノミクス」(≒日銀「異次元緩和」)は、日本よりもはるかにアメリカのためを思った政策であったといえるでしょう。よって、安倍晋三前首相のその任期の憲政史上一の長さは、そのままアメリカ・・・のバブル膨張支援の時間の長さであり、わたしたちの経済規模をこれまた憲政史上一の「マイナス成長幅」で抑圧し続けた時間の長さであったわけで・・・

 「う~ん、アベノミクス前に比べて日本のGDPは国際基準で3割近くも減ってしまったというけれど、国民はそれほどの痛みを感じてはいないのでは」そうですね。そのあたりの理由のひとつとして、こちらの記事に書いたように、多くのモノやサービスを自前で調達することができるわが国では、アベノミクス円安がもたらす輸入インフレが製造原価のうちの原料費、光熱費、輸送費等に限定されるため、それらの販売価格の上昇幅は前後の通貨下落率ほど大きくはならない、といったことが指摘できるかと思います。ここで、もし日本が自動車をアメリカからの輸入に全面的に依存していたら、アベノミクス前(1ドル80円)の1台の円換算輸入価格が100万円(1.25万ドル)だったとすると、同後(同110円)は3割以上も高い137.5万円に跳ね上がるわけで、国民生活には多大な損害が及んでいたけれど、上記のことから、実際にそうなることはない、といった感じです。

 もうひとつ、この国でこの瞬間も進展し続けている省エネ・省資源―――エネルギー効率の向上―――が通貨安のダメージを緩和してくれている点が重要だと思います。それを象徴する一例がガソリンです。2019年の日本のガソリンの販売量は4965万キロリットルと7年連続で減少し、2005年のピークに比べると19%あまり減っています。その要因は、ガソリン車の燃費向上で1台当たりの利用量が減っているほか、ハイブリッド車や電気自動車などのエコカーが普及したため、などであり、こうした構造要因だけで今後も年率2%前後の需要減が見込まれるとのこと(以上、日経記事・経産省石油統計)。

 上記のほか、省エネ家電の普及、火力発電所の熱効率の向上などなど、わが国のじつにさまざまな分野でエネルギー効率を高める取り組みが進められています。それらは、より少ないエネルギーで、より多くの電力、走行距離、仕事量などを得ようとするもの。こうしたことの効果で、必要とされるエネルギー量が減り、たとえその円換算単価がアベノミクスで上昇しても、トータルのエネルギーコストは単価ほど上昇せずに済んだ、といったあたりが、アベノミクス下で輸入インフレがそれほど顕著にならないところの理由の一端だと考えています。

 以前から書いているように、わが国の国家的弱点(他国に依存しなければならない点)はこの「エネルギーです。それは、本ブログが指摘するまでもなく、日本人ならば誰もが知っていること。だからこそ、国民各層は日夜、各自の身の回りで、こうして省エネ・省資源に励むわけです。その甲斐あってわたしたちは、(アメリカにとっては「100%正しい」といえても?)日本にとっては「間違っている」と十分に断言できるアベノミクス(の通貨安インフレ)の脅威からかなりの程度、守られている、といえるでしょう・・・

 ・・・っても、そのために通貨安の痛みを感じにくくなってしまうため、アベノミクスのスゴさ気がつけない、というところが残念な点ではありますが・・・(?)

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【アベノミクスは米経済のほうを意識した政策】史上最大「マイナス成長達成」で「世界史」になってしまった「安倍晋三」氏⑥

2020-09-17 00:10:09 | 日本
前回からの続き)

 前回、アベノミクス」(≒日銀「異次元緩和」)の本当の目的は、それによって資産バブルを永続させ、その崩壊に耐えられない―――巨大債務超過に陥る金融システムの救済に充てるべき公的資金を工面できない―――アメリカを支えることだ、と書きました。そのあたり日本は一足早くバブル崩壊、そしてその清算としての銀行への資本注入を経験したため、そのダメージの大きさと回復までの道のりの長さを知り抜いているわけです。そこからアメリカを眺めれば・・・上記の日本式のバブル後始末が同国には不可能なことも十分に分かるわけで、よってこの際、日銀の金融政策で本邦金利を大きく下げて、かの国のバブルをとことん煽ってやろう、となった次第・・・(?)

 ・・・ですが、これまた何度も指摘したように、それこそ無理筋というものです。永遠に膨張してやまないバブルなんてあり得ないのは歴史が証明しているところであり、よってアメリカのバブルも潰える時が必ず来るわけです。なので、バブルのコワさが身に染みている日本は、アメリカを大切な友邦だと思うのなら、同国に、バブルを起こすべきではない―――中曽根政権時代の日銀がやったように過度に緩和的な金融政策スタンスを継続させるべきではない―――などと忠告するべきだった(?)のですが・・・

 ・・・にもかかわらずアベノミクスが、まるで麻薬(バブルの原資である超低金利マネー)にハマった友人に新たな麻薬を差し出すように米バブルをサポートするのは、それをいっそう膨張させることで、その破裂の衝撃も最大限デカくして、アメリカを・・・という本当に本当の秘めた狙いがある、というのが以前からの本ブログの推測です。その際のダメージは、アメリカにとっては再起不能クラスで、具体的には、これまたすでに書いたとおり、インフレ激化(マイナス金利幅の増大)、治安の悪化、各種分断の進行、市民の武装率の上昇、そして・・・内乱・内戦へ、となってしまうほど(?)。きっとアベノミクスはそこまで読んでいるはずですし、実際にアメリカは、その読みのとおりになりつつあるような気が・・・?

 ・・・とまあ、真の狙いが上記のあたりにあるのかどうかはともかく、アベノミクスが、日本以上に、このようにアメリカをヒジョ~に強く意識した政策であるのは間違いないでしょう。したがって、(アメリカのバブルに多大な影響が及んでしまうから)安倍政権やアベノミクスすなわち日銀の異次元緩和に批判の声が上がってはならないことになります。それはせいぜい「モリカケ」「桜を見る会」程度にとどまるべきだし、実際にそのレベルでした(?)。それらが、いわば隠れ蓑にもなり(?)、アベノミクスのコアである同緩和のほうは批判等から守られ、安倍政権とほぼ同期間、延々と続けられているわけです・・・って上述、本邦経済規模(ドル基準GDP)の大減少という代償を払って、ですが・・・

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【バブルのコワさを知るが故のアベノミクスで米支援】史上最大「マイナス成長達成」で「世界史」になってしまった「安倍晋三」氏⑤

2020-09-15 00:01:51 | 日本
前回からの続き)

 本ブログでは何度も書いているように、そして本稿1回目でも指摘したとおり、「アベノミクス」(≒日銀「異次元緩和」)が失敗だった、いや、はじめから間違っていたのは明白です。でないのなら―――為替の円安ドル高を実質的に誘導し、外国人買いに主導させて株高を演出したことが成功したというのなら―――安倍晋三首相とその政権が、本邦GDPを憲政史上・・・もそうですが、むしろ世界現代史上(?)、最大の幅で「マイナス成長」させることはなかったわけですからね・・・

 では、上記のように日本経済の規模を大きく減少させることが(おそらく?)分かっていながら、なぜ安倍氏らは、あえて(?)アベノミクスを推進したのか、ですが・・・その本当のねらいは、やはりこれしかないでしょう―――アメリカ支援。これも書きまくっているので詳細は省きますが、端的にいえば、日銀の金融緩和によって日本の金利をアメリカよりも引き下げ、超低金利マネーを市場にあふれさせ、これを元手にした株や不動産などの資産投資を活発化させて・・・アメリカバブル膨張をサポートする、というもの・・・

 ・・・であれば、経済学者がアベノミクスを100%正しいと断じ、上記GDPの歴史的な転落ぶりを誰一人として指摘しないのも合点がいくというものです(?)。これに疑いの声が上がり、それがきっかけになってアベノミクス批判が高まったら、日銀は金融政策を引き締め方向に軌道修正せざるを得なくなるわけで、それは、われらがアメリカ様を支えられなくなることを意味しますからね。このあたり、円建てGDPなら2012年(アベノミクスの事実上の前年)の495兆円から2019年には550兆円と7年で10%あまりの「プラス成長」となったから、(実は損「マイナス成長」をしているけれど)黙ってさえいれば、まずバレない(?)わけで・・・

 ・・・って「あれ、バブルこそNGって言っていなかったっけ」って、そのとおりです。本来なら、他国のバブルを煽ることは支援にはならず、逆に当該国をバブル崩壊→デフレ深刻化→金融不安→・・・の破局に導くことになりかねません。それは先述のように、わが国は身をもって体験済みです。にもかかわらずアベノミクスがアメリカのバブルを煽るのは・・・日本にはできたバブルの後始末がアメリカにはできないと読んでいるため。そのあたりのレベル感も自身が経験したからよく分かっています。つまりこれ・・・金融システムへの公的資金注入ができるかどうか、にかかってくるわけですが・・・

 上記でもちょっとふれたように、わが国では1999年、経営危機に陥っていた当時の大手15行に対し、公的資金がはじめて注入されました(約7.5兆円)。結果としてこれがバブル後始末の本格的な第一歩になったわけです。たしかに、その際の、バブルの張本人である銀行を血税で救う気か、とか、銀行経営者の責任追及が甘い、といった批判はごもっともだったのでしょう。けれど、だからといってこれしていなかったら、銀行は連鎖的に破綻し、市民の預金の多くは失われ・・・といった金融・経済恐慌の奈落に日本は沈んでいたでしょう。その意味で、厳しい世論にさらされながらもこれを決断・実行した当時の小渕内閣には高い評価が与えられると考えるものです。

 一方のアメリカは・・・できません。これも何度も指摘しているように、必要となる金額があまりにデカくなるため、もとより財政が火の車(≒日本や中国といった外国からの借金に依存)の同国(連邦政府)の手に負えない、というわけです。ゆえに、そうなる事態―――金融システムに資本注入が求められる事態―――は絶対に回避せねばならず、そのためには・・・アメリカはバブルを永続させる以外にありません。そのあたり―――金融システム救済資金を工面できるかどうか―――が、日米両国の決定的な差です。

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【最大の経済危機の元凶はバブルを発生させたことだが…】史上最大「マイナス成長達成」で「世界史」になってしまった「安倍晋三」氏④

2020-09-13 00:01:31 | 日本
前回からの続き)

 前回、日本経済が現在の安倍政権期間中に匹敵するほどのマイナス成長に沈んだのは、ポストバブルのデフレそして金融危機に至った時期(1990年代後半)であり、よって真に恐ろしいのは不動産バブルを起こしてしまったことであり、その契機が1985年の「プラザ合意」にあるといった見方を示しました。

 で、プラザ合意の背景等については長くなるので論じませんが、その直後から為替市場では円高ドル安が急速に進み、この結果、本邦輸出企業の多くが生産拠点をわが国からアメリカ等の海外に移す動きに出たことで、いわゆる「産業空洞化」の懸念が高まりました。これに対し、当時の中曽根内閣(1982/11~1987/11)は、国内需要を喚起する必要に迫られ、三公社の民営化等も含めた内需拡大を進めました。日銀はこれに呼応し、投融資がしやすい環境にするために低金利を維持しました。これらが不動産投資を活発化させ、やがてバブルが生じて・・・といった流れになっていったわけです。

 となると上記の、戦後最大の経済大転落のそもそもの原因は、この不動産バブルを発生させた中曽根政権・・・と当時の日銀の政策判断にあった、といえそうです。そのあたり、いま振り返ると、とくに日銀は、バブルにならないようにもっと早く金融引き締めに動くべきだった、と誰もが思うでしょう。しかし、当時の国内外の諸情勢、たとえば主要輸出品である自動車の製造工場はほとんどが国内にあった(トヨタが米ケンタッキー州に工場を構えたのは1986年だった)わけで、これが次々と海外に出ていくのを目の当たりにすれば、政府・日銀も、雇用を守る・仕事の場を増やすといった観点からも、内需拡大をサポートするために金利を低めに据え置かざるを得なかった(金利を上げることで国内投資が落ち込むことのほうがコワかった)、との言い訳ができるようにも思えます(?)。


 といったことで中曽根政権には、後に日本を上記危機に陥れるバブルを発生させてしまった、という点でネガティブな評価が与えられると考えます・・・が、他方で、やむなし、という気もするところです(って、ちょっと甘いかもしれませんが)。なお上記グラフでも分かるように、中曽根政権下のGDPは大きく「成長」しています(1982年の1.09兆ドルから1987年の2.42兆ドルへと、5年間で約2.2倍!)。しかし、上記のことから、この高度成長を額面通りに受け取ることはできないでしょう。これ、同政権の後半、そして以降1990年代半ばまでは、バブルの後押しによる実力以上の(不動産価格の値上がり等を当てにした借金による)投資&消費で、かさ上げされていたとも考えられますからね(?)。

 さて、このバブル発生と同崩壊の苦い経験ですが、じつはいまの安倍政権・・・の看板政策「アベノミクス」(≒日銀「異次元緩和」)の根底に息づいている(?)と考えています。それは現在進行中のバブル・・・っても日本ではなくアメリカ借金バブルになるわけですが・・・

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【バブル崩壊は戦後最大の経済危機だった】史上最大「マイナス成長達成」で「世界史」になってしまった「安倍晋三」氏③

2020-09-11 00:01:56 | 日本
前回からの続き)



 前回、上記グラフを示して、このたび退任を決断された安倍晋三首相が率いる安倍政権(2012年12月~、第2次)が、その政策「アベノミクス」(≒日銀「異次元緩和」)で、1955年以降2019年までの60数年間にもおよぶこの国の現代史のなかで歴代トップ(ボトム?)ともいえる経済の「マイナス成長」をもたらしたことを、世界(=基軸通貨ドル」)の目線で確認しました。これ、国民生活にダイレクトに影響が及ぶところであり、ゆえにわたしたちにとって、そのあたりこそ安倍首相とその政権を採点する際の最大のポイントだと思います、けっして首相の座にとどまった期間の長さなどではなく・・・

 「ふーん、でも、上のグラフからすると、1990年代半ばから数年間の日本経済の落ち込みぶりもスゴいよね。なので安倍政権がボトムとは必ずしも言えないのでは」たしかにそうですね。本邦GDPは1995年にそれまでのピークである5.45兆ドルをつけた後に急減し、1998年には4.03兆ドルと、3年間の通算では26%ものマイナス成長となりました。この間の首相は村山富市氏→橋本龍太郎氏→小渕恵三氏と短期間で変わっていきましたが、このマイナスぶりは現在のアベノミクスに近いものがあります。ではこのとき、日本経済にはいったい何が起きていたのでしょう・・・

 ・・・って、ご存じ、不動産バブルの崩壊・・・→資産デフレ深化→金融危機→・・・という事態が進行していたのでした。この間、銀行は「貸し渋り・貸し剥がし」に走り、企業は債務の圧縮等に動き、家計は消費を控え、などとなって、わが国の経済活動は低迷し、その結果が上記GDPの落ち込みになった、というわけです。このあたり、上記グラフのスタート地点にあたる1955年からこの大転落が始まる直前の1995年まで、本邦GDPはじつに40年以上の長きにわたって(1981→1982年、1988→1989年のわずかなマイナスを除けば)ほぼ一貫して対前年でプラス成長を続けたわけですから、このポストバブル時の急収縮こそ、本邦経済が直面した戦後最大の危機だったといっても言い過ぎではないでしょう。

 なお、上記局面では円換算のGDPも減少しましたが、その減少率は2.7%(1997→1998年、534.1兆円→519.7兆円)と、上記ドルGDPの減少率ほどではありません。ということはこの間、為替市場では円安ドル高が進行していたわけで、実際、ドル円の年平均は1995年が1ドル94.1円だったのが1998年には130.9円と3割近くも円安ドル高になりました。その理由は・・・この間、いわゆる「ジャパン・プレミアム」(1997~1999年あたりにかけて、本邦金融機関が外国から資金調達を受ける際に適用された上乗せ金利)が発生したことからも推測できるように、日本の金融システムに対する信用が大きく揺らいでいた影響が大きかったと考えられます。

 以上からすると、この時期のGDPの大幅な減少はアフターバブルにともなうものであり、この間の政策運営を担当した各政権(・・・→村山→橋本→小渕→森→・・・)には、バブルを起こしたわけではない以上、その責任は問えない・・・どころか、後述するバブルの根本的な後始末を断行したという点で、個人的には高く評価できると思っています。

 といったことで、わが国を上記の危機に陥れたバブルですが・・・いったいどのような状況のもとで生じたのか、ですが・・・このあたりは、上記グラフで急激な経済成長を遂げた1985→1986年あたりに見出せると考えています。この円GDPの対前年成長率は4.7%だったのですが、ドル換算の同成長率は何と48.2%!と、上記60数年間のなかで最高となっています。これから分かるとおり、このときは1995年の1ドル238.5円から1986年には同168.5円へと、円高ドル安が急速に進んでいたのでした。

 で、その契機となったのが・・・1985年9月の「プラザ合意」になります。

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