世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【バブル崩壊とC/Fが高めた企業のキャッシュ信奉】日本企業の「キャッシュリッチ」ぶりに思うこと②

2016-11-29 00:02:59 | 日本

前回からの続き)

 日本企業の手持ちキャッシュ(現金預金)が過去最高額に達している―――これには1980年代後半から90年代にかけてのバブルの発生と崩壊が大きく影響しています。前回書いたとおり、90年代初頭のバブル崩壊により企業の多くが一転、過剰債務の処理に追われるようになり、なかには破綻してしまうところも出てきました。それらの多くは俗に「黒字倒産」と呼ばれたように、損益計算書では利益が出ていたにもかかわらず、資金ショートに追い込まれて次々に倒れてしまったわけです。周囲のそんな惨状を目の当たりにした企業の経営者には、借金の支払いに充当するキャッシュがいかに大切か、という思いが強くなっていきました。

 ポストバブル期のそんな状況のもと、キャッシュフロー計算書」(C/F)の作成が1999年度から上場企業に義務付けられたことも、企業のキャッシュ信奉を高める契機になったと考えられます。C/Fは投資家に対して企業の支払い能力等に関する情報を開示させるもの(従来の貸借対照表および損益計算書とこのC/Fの3つは「財務三表」と呼ばれている)。これをひとつのきっかけにわが国の企業は、自身資産に対する投資家の疑心暗鬼を払しょくするべく、さらに(マーケットの攻撃から身を守るためにも)支払い能力を向上させるために、手持ち現金預金をいっそう厚くするようになったと推測されます。

 ・・・バブル期以降の上記のような経緯が前述、本邦企業の現在の「キャッシュリッチ」ぶりにつながったと考えています。こう振り返ってみると、企業が抱えるこの潤沢な現金預金の背後には、それなりに合理的な経営判断があったということもできるかと思います。

 それにしても・・・近年、とくに(第二次)安倍政権発足(2012年)以降の企業内キャッシュ増加の勢いは急だといえます。前回ご紹介の上記グラフでも読み取れるように、2011年度から2015年度までの4年間で44兆円あまり、率で21%以上も増えています(2015年度は前年比で15.4兆円、率で約6.5%も増加)。わが国ではバブルの後始末も終わり、上場企業大半の自己資本は強固になっているから、各社はそこまで現ナマにこだわらなくてもよさそう。それに前述のとおり、キャッシュほどは企業の売上高や経常利益が増えているわけではないのに・・・

 ではどうしてここ4~5年、企業の持つ現金・預金の額が急増しているのか?―――これは本ブログでしばしばご紹介している通貨の強さの序列を示す不等式「(金>)円>ドル>ユーロ>新興国通貨」で説明がつけられるところと思います。

続く

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【本邦企業、内部留保も現金預金も過去最高】日本企業の「キャッシュリッチ」ぶりに思うこと①

2016-11-27 00:04:40 | 日本

 合理的な意思決定の結果だとは思いますが、わが国の「真の」成長に向けて行うべきこともあるような・・・

 日本企業の「内部留保」が過去最高額に達しています9月に公表された財務省の今年度第1四半期法人企業統計によると、非金融法人の利益剰余金(内部留保に当たるもの)が2015年度は約378兆円と前年度(約354兆円)からたった1年間で6.6%あまりも増えて過去最高となりました。全産業(金融・保険業を除く)の売上高と経常利益はいずれも3四半期連続で前年割れとなっていることから、この利益剰余金の増加ぶりが際立ったかたちとなっています。

 で、ここでいう利益剰余金≒内部留保とは、企業が得た利益から配当等を支払った後に企業内に留保された、いわば余った利益のこと。貸借対照表では「資本」の一部で、これが増えるということは自己資本がそれだけ強化されることを意味するから、当該企業は経営基盤とか株主価値がいっそう向上したという評価が与えられるところです。

 その企業の内部留保、不動産とか株といったさまざまな資産で運用されることになるわけですが、ここで注目したいのは近年、これらの多くが「キャッシュ」すなわち「現金・預金」になっていると推察されることです。

 上のグラフは、わが国の非金融法人企業の「現金・預金」額の推移を見たものです(出典:日銀資金循環)。これによると2015年度の現金・預金額は252兆円あまりと、前年度(約237兆円)から約6.5%増加して、これまた史上最高額に達しました。上記の内部留保と同様の状況より現在、日本企業の多くが内部留保をキャッシュのかたちで抱えているようすが窺えます。

 ・・・ところで、上記グラフの推移から、企業のキャッシュ増減の傾向は本統計値採録開始の1979年から89年まで、89年から2007年くらいまで、2007年から現在まで、の3つの期間に分類できそうです。この違いをもたらした最大の要因は、やはり「バブル」でしょう。

 1989年までの一本調子の増加は、同年にピークを打ったバブルの膨張にともなうものといえそうです。で、同年から2007年までの約20年間はこのキャッシュ額は約180兆円をはさんだ増減を繰り返しています。この間、多くの企業がポスト・バブル期における過剰債務の整理に苦しみ、キャッシュを増やすことができなかった様子が窺えます。これこそまさに「失われた20年間lost 2 decades)」だったのでしょう。で、2008年から現在まで企業の現金預金は毎年、増え続けています。つまり2007年前後に本邦企業はバブルで傷んだバランスシートの調整をほぼ終え、その後は徐々に健全経営に入っていった、と考えられます。こちらの記事に書いたように、2013年には銀行に投入されていた公的資金が全額回収されましたので、同年以降はなおいっそう、金融機関を合わせた本邦企業の財務は強固になっていると考えられます。

続く

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【米ソブリン格付けはどうなる?トランプ政権発足で】トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か⑦

2016-11-25 00:01:13 | アメリカ

前回からの続き)

 来年以降、ドナルド・トランプ新政権が大型減税と巨額の財政出動を行うことで、アメリカでは長期金利の上昇に歯止めが利かなくなり、これが結局、FRBによる早期のQE発動(米国債の中銀直接引き受け)をもたらすことになるだろう―――前述のとおり、これが米経済に関する私的メインシナリオです。

 で、何らの財政リストラもしないでトランプ氏が本当に数千億ドルのインフラ投資を始めたら、次期QEの規模はこれまでのQEをはるかに凌駕するものになるはず。それ以外に連邦政府をファイナンスする手だても、金融システムを破壊する資産デフレ発生を防止する策もないためです。ということは、これまたシツコク書いているように、これがドルの減価≒大量増刷すなわちインフレをもたらし、ガソリン代や住宅価格等の激しい値上がりを招いて、米国民大半の経済状態を悪化させるでしょう(?)。これによって彼ら彼女らは「トランプ氏に裏切られた!」との思いを強くしていくばかり・・・

 おそらく、こうしてアメリカは、国家としての一体感をどんどん失い、分裂に向かっていくのでしょう(?)。そんな国が「世界の警察官」の役割をいつまでも果たせるわけはないし、その通貨ドルの「基軸通貨」(≒石油引換券)としての価値の維持もこの先は困難になるのではないか・・・。強大な軍事力、そして(それ以上に重要な)ドルの信認が失われていく―――まさに「パクス・アメリカーナ」(アメリカの力による平和)の終焉がトランプ大統領のもとで始まりつつある―――そんな気がしてなりません。わが国は、この先のアメリカで何があってもうろたえないように、こういった悲観的なシナリオも描いたうえで、国家戦略を再構築する必要がありますよ・・・(?)

 ところで・・・トランプ大統領の誕生で個人的に興味をそそられるのは、大手格付け会社がアメリカのソブリン格付けをどうするのか?ということ。現時点でS&Pは「AA+」、ムーディーズは「Aaa」、フィッチは「AAA」と、どこもほぼ最上位にレーティングしているけれど、トランプ政権が本当に上記政策を実行したら米連邦政府の財政状態は悪化の一途をたどる(?)のだから、当然引き下げるのでしょうね・・・というか、そうしないと理屈に合わないでしょう。もっともソブリン格付けなんて「意味がない」と考えているから、どんな格付けになっても驚かないけれど・・・

(「トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か」おわり)

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【米インフラ再生:NY市鉄道にATSくらい導入を】トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か⑥

2016-11-23 00:03:10 | アメリカ

前回からの続き)

 「I pledge to every citizen of our land that I will be president for all Americans」(わたしはすべてのアメリカ国民のための大統領になることを誓う)―――先日の米大統領選で勝利した直後の会見で、共和党のドナルド・トランプ氏はこう述べました。その言葉のとおり、同氏は誰に対しても「いい顔」をしようとしているように感じられます―――中低所得者層の所得税をゼロにします、巨額のインフラ投資でインフラ再生と雇用創出を図ります、軍備拡大を推進します(軍産複合体を潤す財政支出を増やします)、ドッド・フランク法を撤廃してウォール街の規制緩和を進めます、などなど、と・・・。まあ、まだ正式な大統領就任どころか選挙人投票すら終わっていない現段階では、同氏としてはあちこちにリップサービスするしかないのでしょうが・・・

 それでも、このような、何でもありの「大盤振る舞い」では、トランプ新政権のアメリカがたちまち行き詰まるのは明らか。先述のように、財政収支のいっそうの悪化にともなって金利、とくに長期金利の上昇に歯止めがかからなくなってしまうからです。本ブログで何度も指摘しているとおり、この金利上昇こそはアメリカ最悪の「敵」です。これがバブルを崩壊させて一転、米経済を資産デフレへと導き、肝心の米金融システムを底なしの債務超過に陥れるためです・・・

 アメリカは、2008年秋のリーマン・ショック直後から現在に至るまでの、あまりに長い期間、超低利借金バブルに浸り過ぎてしまいました。ということは米国民も、そしてウォール街も、金利上昇への耐性を失っているということになります。その限界ラインは先日、長期金利で3%くらい、と書きましたが、これは3年近く前(2014年初頃)での話。あれから現在まで、さらに低金利の年月が重なり、そのラインはもっと下、すなわち長期金利が2%台後半あたりになっていてもおかしくはない。で、この危機に対処するには・・・

 ・・・トランプ新政権の財源根拠なき巨額財政出動はFRBによる4度目(!)のQE発動を速めることになるでしょう。先日トランプ氏が批判した構図が、自身の政策で再現されるなんて、皮肉以外の何ものでもありません。で、これはとめどもないドルの減価とインフレを招き、トランプ氏を支持した(?)「99%」(保有資産トップ1%以外)の国民層をいっそう苦しめることになるはずです。そのとき彼ら彼女らは一斉に「トランプ氏に裏切られた!」なんて声を上げるのではないでしょうか・・・

 だからといって、トランプ氏が公共投資を優先するために選挙運動中の公約である軍縮を推進したらどうなるか。たしかに毎年6千億ドル近くもの国防費のうち1~2千億ドルを削減して、これをインフラ整備に回せたら、その前後で歳出増は無いし、それなりにインフラ再生は進むでしょう。大事故ばかり起こしている米都市近郊鉄道にATS(自動列車停止装置)くらいは導入できるかもしれません(日本ではとっくに当たり前のATSが最先端金融都市NY周辺の鉄道には完備されていなかったりする・・・)。ですが、そんなことを強行したら―――軍事メーカーへの兵器武器発注額とか海外に展開する軍隊雇用などを大きく減らしたら―――正直ヤバいのではないか、トランプ氏の身が・・・

 ・・・どちらにしてもアメリカのダッチロールは激しくなるばかりですが、まあ前者の可能性のほうが高いのかな・・・(?)

続く

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【トランプ氏一転、軍産・金融にも「すり寄り」か】トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か⑤

2016-11-21 00:02:27 | アメリカ

前回からの続き)

 本稿の冒頭で、米大統領選ではヒラリー・クリントン氏が勝つだろう、という個人的予想は外れたが、結局はやはり当たり!となる可能性が残っている、と書きました。これはどういうことかというと―――べつにクリントン氏が来月の選挙人投票でドナルド・トランプ氏に逆転勝利する、いうのではなく―――クリントン氏に象徴される米2大利権集団「軍産複合体」「ウォール街(金融業界)」がアメリカを牛耳る構造は、大統領が誰になっても変わらない、という意味。「どうせ無理さ、新大統領は結局、両者の言いなりになるんだから・・・」という、いわば諦めの境地(?)ですね・・・

 こちらの記事で選挙運動中のトランプ氏がこの両者を敵に回した、という見方を綴りました。実際にそのとおり「だった」と思っています。同氏は、日本核武装を容認するくらいにアメリカの軍備を大幅にリストラする、つまり「軍産複合体」に流れるおカネを削減する(?)と主張するとともに、米経済はバブルで、オバマ民主党政権を助けようとして低金利政策を続け過ぎた、とFRBを非難することで、資産バブル最大の受益者である「ウォール街」に敵対していました。したがって両者がトランプ氏を危険視し、ネガティブキャンペーンを張って同氏を貶め、対抗馬であるクリントン氏のほうを大統領に当選させることで自分たちの権益保全を図ろう、と画策するのはもっともです(?)。

 ところが、その意に反してトランプ氏が勝ってしまった・・・。上記の文脈に沿えば、軍産・金融の勢力は弱まることになります、が・・・これまでに書いたように、何やら先が読めない状況になってきました。本稿2回目でご紹介のとおり、トランプ氏は軍拡を進める(≒軍産の利益増大を図る)と前言を翻すようなことを言い始めましたし、金融についても、同業界を縛る(?)ドッド・フランク法を撤廃すると訴えたほか、財政出動強化を通じて必然的にFRB頼み(≒QEすなわち財政ファイナンス)の低金利インフレ策つまり、これまでのとおり資産バブル膨張策を取らざるを得ない方向―――業界が望む方向に進もうとしているようにみえます。

 あららトランプさん、当初の主張とは逆で、軍産・金融にすり寄ってない?―――というか、これこそわたしが「クリントン氏が勝つだろう」と予想したとおりの展開、つまり米大統領が想定外のトランプ氏になっても軍産・金融の両業界の利益はしっかり守られる、ということです。やはり・・・というべきか・・・

 そのあたりを含め、いまのトランプ氏は誰にでも「いい顔」をしようとし過ぎているのではないか。その理由ですが、外国の安全保障ではなく国内の雇用・インフラ投資優先を!と訴える以前からの支持者(白人中低所得者層)だけではなく、彼ら彼女らと利害がしばしば相反する関係にある米軍属とか金融リッチ層からも支援(多額の献金?)が欲しい、といったあたりでしょうか・・・

 でも、アメリカはすでに人種、地域、所得資産階層などのさまざまな単位で分裂し、人々の一致団結はとっくに不可能な状態です(?)。よって同氏が国民100%に対して八方美人でいられるはずはありません。このままだと近いうちに政策的な矛盾が噴き出すのは必至・・・って、その最大最悪のものが前記「金利上昇なのだけれど・・・

続く

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【米金利急騰が暗示するトランプ政策の行く末】トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か④

2016-11-19 00:00:56 | アメリカ

前回からの続き)

 先日のこちらの記事等で、次期の米大統領に内定したドナルド・トランプ氏が、アメリカ経済はバブル状態にある、という、いまのアメリカにとっては決して許されない暴言(?)を口にしてしまった、といった見方を綴りました。「バブル」と言うことは、米経済を実態以上に押し上げ、金融恐慌を防いできた唯一の頼りである各種資産の価額上昇がピークを打った、つまり今後は下がる、あるいは(これ以上の価格上昇は危険だから)下げる!と宣言するに等しいわけです。

 このトランプ氏の見解、至極真っ当だと思います。しかし、だからといってヘタにバブルを収束させようとしたら資産価格はたちまち暴落し、米経済は未曽有の危機に陥ってしまう。よってアメリカ・・・のバブル経済構築の立役者(?)FRBとしては、この先もバブル拡大路線を続けたいし、その手段となるQEいつでも発動できるようにしておきたいところ。バブルはそのQEマネーすなわち超低金利の借金で膨らみ続けるわけですからね。そんなことからFRBは、何かあったら大手を振ってQEができるよう、新大統領にはけっして「バブル」と言ってほしくないし、バブルをつぶすようなこと、つまり・・・金利上昇を招くような愚策(?)は絶対にしないでほしい、と切に願っているはずですが・・・(?)

 で、その金利、トランプ氏の当選後、上昇ペースが速まっています。米長期金利10年物国債金利)は、大統領選直前の1.8%前後から足元は2.3%前後と、わずか10日ほどで0.5%前後も跳ね上がりました。いま市場でさかんに交わされているFRBの次のFOMCにおける利上げ有無の議論が意味をなさないくらいの急騰ぶり。先述のように、トランプ氏はインフラ投資拡大等で歳出を膨張させようというのに、大規模な所得・法人税減税等で歳入を大きく減らそうとしているわけだから、米財政収支のさらなる悪化は不可避・・・ということで先安観が強まる米国債は売り!となった結果でしょう。

 もっとも、いっぽうではドルの利回りが上がるとの見通しから、為替市場ではドル高になっています。日本を含む各国、とりわけ新興国からかなりのマネーがアメリカに向かっているさまが窺えます。これらの多くは米国債や米株など、アメリカの資産買いに回っていくでしょう。それでもこれらのおカネはトランプ氏の上記財政「大盤振る舞い」に比較すれば微々たるもの。つまりこれらだけでは同氏の政策が必要とする資金を賄えないことは明白なわけです。ただでさえアメリカは世界ワーストの経常赤字国―――外国から世界一借金しないと国が保てないというのに、これでは・・・

 したがって、このままトランプ氏の政策が実行に移されれば、アメリカはいま以上に資金繰りに苦しみ、同国の金利はどんどん上がっていくでしょう(米国債の価格は下がるでしょう)。上記のとおり、そして本ブログでシツコク書いているように、こうなってしまったら借金バブル依存のアメリカ経済は厳しい局面を迎えるわけです。具体的なラインとしては、ここ数年の経験則から、長期金利3%くらいに達すると相当に危険なのではないか。そのとき、返済負担が一気に高まる住宅学資自動車、カードといった各種ローンの延滞や焦げ付きが急増し、多くの米家計が破産に追いやられるとともに、これら債権が大量に不良化し、金融機関の資産が毀損して「貸し渋り」「貸し剥がし」が起こって景気が落ち込み、企業利益が激減して株価が暴落し・・・みたいな破滅への連鎖が想定されることに・・・

 ・・・アメリカがこの破局を免れるには、やはりバブル&超低金利を永遠に続ける以外にない―――合理的なビジネスマンであるトランプ氏なら、間もなくこの当たり前すぎる真実(?)に気が付くことでしょう(?)。

続く

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【グラス・スティーガル法撤廃がバブルと危機の連鎖を生んだ】トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か③

2016-11-17 00:01:49 | アメリカ

前回からの続き)

 ドナルド・トランプ新大統領は、米経済の柱である「金融」にどのようなスタンスで臨むのか・・・

 先日のこちらの記事で、トランプ氏の属する米共和党が、銀行業務と証券業務の分離(銀証分離)を規定した「グラス・スティーガル法」(1933年制定)の復活を支持していることをお伝えしました。同法のもとでは、銀行は預金者のおカネを株式などのリスク投資に回せなくなり、自ずと本来の手堅い融資業務を指向するようになるため、巨大金融リスク発生を抑制できるほか、当局は預金保険の運営コストを低くすることができます。もっとも、ハイリスク・ハイリターン投資が封じられることで銀行は過剰な利益を稼ぐチャンスを得られず、その株主らにとっては物足りないかもしれませんが・・・

 同法は1999年、皮肉なことに当時の米議会において共和党の賛成多数によって廃止されました。これにより大手金融機関に対してリスク投資への道が開かれたことが、その後のITバブルそしてサブプライムローン・バブル、さらには2008年のリーマン・ショックという、今世紀に入ってからのバブルの異様な巨大化と金融危機の連鎖につながったと個人的には考えています。もちろん銀行界の寡占と「too big to fail」化も進んでしまった・・・

 ・・・正直に言えば、そして本ブログで繰り返し述べているように、もはやアメリカおよび米国民は次なる経済的破局を免れることはできないだろうと悲観しています。そのとき米経済・金融システムそして国民生活は大混乱に陥り、通貨ドルの信認も動揺するでしょう。それでも、遠い未来を見据えれば、グラス・スティーガル法の再施行はアメリカの国益に資するものと思います。金融機関が銀行、証券、保険などの業態ごとに適切なルールに基づいて経営されることで、手に負えないほどのリスクや納税者負担の際限のない膨張を抑えることができると考えられるためです。

 先日の大統領選挙と合わせて行われた議会選挙の結果、米上下両院ともに共和党が過半数を占めるに至りました(それだけこの8年間の民主党政治と経済情勢に米国民が嫌気していることの表れでしょう)。これにより同法復活への動きが加速化するものと予想されます(?)。ところが・・・いっぽうで共和党そしてトランプ氏は、2010年に規定された金融規制法である「ドッド・フランク法」については撤廃等を主張しています。企業や家計への資金供給の支障となっている、などの理由からだそうです・・・

 たしかに同法にはそうした面もあるのでしょう。しかしその本質的な意図は、リーマン・ショック直後に成立したことからも推察されるとおり、新たな危機を予防しようというもの(にしては、不十分との指摘も多いし、わたしもそう感じるが・・・)。なので、同氏および米共和党が健全な経済運営と金融リスク低減を本気でめざすのなら、グラス・スティーガル法の復活とこのドッド・フランク法の維持が、より適切だと思うのですが・・・

 トランプ氏のこのあたりの考え方も個人的にはよく分からないところです。まあ間もなく見えてくるのでしょうが・・・

続く

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【法人減税・インフラ投資拡大のうえ、国防費も増額?】トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か②

2016-11-15 00:01:53 | アメリカ

前回からの続き)

 前回、アメリカドナルド・トランプ大統領率いる新政権は、「アメリカ第一」実践すなわち自国経済再生を最優先させるために、巨大な規模の軍事予算のかなりの部分(?)を米国内のインフラ整備等に振り向けるのではないか、といった個人的予想を綴りました。実際にそうなればこれはトランプ流「リバランス政策」(連邦政府予算の再均衡)といった感じですね。ちなみに・・・元祖(?)リバランス政策とは、アメリカの世界戦略の重点を成長著しいアジア・太平洋地域にシフトしようというもので、2011年以降、現オバマ現政権が展開しているわけですが・・・

 ところが・・・トランプ氏はいっぽうで米軍兵力はさらに強化すべき、と主張しているみたい!? 報道によれば同氏は、陸軍兵数や航空機・軍艦・潜水艦の数をいま以上に増やすほか、海兵隊も現在の32から36へ増強すると述べています。となれば当然、国防費支出にはそれだけ増加圧力がかかってしまうことに・・・。

 うーん、よく分かりませんね・・・。これでは軍事費は減るどころか、かえって膨らんでしまい、上記の国内ニーズに回すおカネが捻出できなくなってしまいます。ではいったい何をカットする気なのだろう?となると・・・トランプ氏のこれまでの発言から考えるならば、まずは同盟各国に展開している米軍の駐留経費ということになりそうです。ようするに同氏は、この費用を駐留先の国に全額負担させることで浮かそう、という腹積もりなのでしょう。

 ちなみに、日本の今年度の在日米軍関係経費は約7600億円もの巨大さ。しかもこあれらのなかには「思いやり予算」―――米基地内の光熱費や日本人の労賃など、本来はアメリカが支払うべき費用―――にともなう支出(約1900億円)も含まれています。これらの総コストに対する割合は約75%にもなるそうです(ドイツの約30%、イタリア・韓国の約40%をはるかに上回っている)。ということは、これを日本が全額負担するとなると、残りの25%つまりあと3千億円近く、国民負担が増える計算になりますが・・・

 ・・・このあたりについて日本政府はトランプ氏の要求(?)を拒否するもようです。実際、稲田防衛相は11日の記者会見で同経費に関して「現状で負担すべきものはしっかり負担している」と述べ、安倍首相も14日「日米間で適切な分担が図られるべきだ」(参院TPP特別委員会)と答えています。まあ当然と言えば当然の回答ですが、あらためてお二人のこの発言を支持したいと思います。

 ・・・といった感じで今後、日本ばかりかドイツ韓国といったアメリカの同盟国に対し、トランプ新政権が駐留米軍の経費負担増を求めてくる可能性は高いでしょう。ですが・・・たとえこれらを全部、同盟国側に支払わせることができたとしても、それでひねり出せる金額なんぞ、上記財政の「大盤振る舞い」に比べれば微々たるもの。これっぽっちではまったく足りない、ということです。したがってトランプ氏が本気で法人減税とかインフラ再生を派手にやるつもりなら、国防費の大リストラ断行は避けられないはずですが・・・

 ・・・早くも大きな矛盾が露呈した印象はぬぐえませんが、トランプ氏がこのへんをどうしようというのか、注目したいものです。

続く

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【トランプ大盤振る舞いで国防費大削減は不可避?】トランプ新政権誕生でパクス・アメリカーナ終焉か①

2016-11-13 00:00:45 | アメリカ

 わたしの個人的予想は見事にはずれました・・・が結局は、やはり当たり!みたいなことになる可能性もちょっぴりだけ残っているような・・・?

 ドナルド・トランプ氏、次期アメリカ大統領に決定!―――ヒラリー・クリントン氏がなるだろう、という大方の予想とは逆の、世界中の人々が驚く結果になりました。同氏にはご存知のような面こそあれ・・・それ以外をあえて前向きにとらえ、トランプ新大統領の内定を歓迎したいと思います。前稿でもふれましたが、これが新しい国際秩序すなわちポスト・パクス・アメリカーナPost Pax Americana:「米覇権が形成する『平和』」後の時代)の幕開けになると考えるためです。本稿ではそのあたりを綴ってみたいと思います。

 Make America Great Again」(アメリカをふたたび偉大な国にする)―――これを選挙スローガンに据えたトランプ氏がやろうとしていることは、限りあるリソースを自分たちの国アメリカに集中させよう!というものでしょう。つまり、国民の最大関心事である米経済再生を最優先させるということ。そこで同氏はじつに大胆な経済政策―――多国籍企業の誘致に向けた法人税率の15%への引き下げ、年収5万ドル以下の夫婦世帯および同2.5万ドル以下の単身世帯の所得税免除、総額5千億ドル(クリントン氏案の2倍!)におよぶインフラ投資の実行などを公約にしたわけです。

 まあこれらは「大盤振る舞い」―――大幅な減税や公共事業の拡充ということで有権者受けはするでしょう。しかし、常識的に考えれば「じゃあ財源はどうするの?」というものばかり。そのへんをインタビューで突かれたトランプ氏は「低金利で驚くほどのディールをまとめる」とか「政府のインフラ債で調達する」などと返答しましたが、何とも心もとない感じはぬぐえません。ぶっちゃけ、同氏に合理的な策はないのでしょう・・・

 ・・・正直に言って、上記を実現させるためには、ボンド発行による借金だけでは絶対に不可能です。ようするに米連邦政府の歳入の強化や歳出の抜本的なリストラが必要不可欠になるということ。で、真っ先に想定されるのが、「国防費」の大規模な削減になりそうです(?)。先日の記事でもご紹介しましたが、アメリカの軍事予算は約5960億ドル(2015年)と日本(約470億ドル)の12倍以上もの莫大なスケールですからね・・・

 「アメリカ第一」を標榜する以上、トランプ氏がこの巨大軍需マネーの多くを道路や港湾の建設といった国内の用途に「リバランス」(?)しようと考えるのは十分に理解できるところです。で、この場合、インフラ再生等に振り向けるべきおカネは―――「テロ対策」など米国民の命や財産を守るための支出は削りにくいから―――どうしても対外関係費用、つまり日本をはじめとする同盟各国の安全保障代などになりそうですが・・・

続く

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【頼りになるのは米中ではなく、日本】新世界秩序を見越して動くASEAN諸国④

2016-11-11 00:02:58 | アジア

前回からの続き)

 わたしの当初予想とは違って米大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が勝利しました。まさに本稿のタイトルのとおり「新世界秩序」の幕開けです。ということは、こちらの記事などでも綴ったように、米新政権は海外に展開している米軍の大幅な削減に着手するでしょう(?)。で、南シナ海・・・とか尖閣諸島のある東シナ海ですが・・・本稿の2回目に書いたとおりです。この両エリアともに、アメリカの安全保障にとっては大して重要ではないので、トランプ政権は真っ先に同地域の軍隊をリストラ対象にするだろう・・・

 ・・・ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国は当然、こう予想するはずです(?)。となれば彼らは・・・アメリカを当てにするのは止めて、南シナ海島嶼の領有権問題を棚上げにしてでも、地域最大の大国である中国との関係改善を模索せざるを得なくなる。したがって中国には影響力拡大のチャンス到来ですね、アメリカの干渉が弱まるのは間違いなさそうですから・・・

 ・・・というわけで今後、中国の存在感がアジア各地でどんどん高まっていく・・・とは限らない、と前回記しました。まあ前述の理由もありますが、それ以上に指摘すべきは、中国もアメリカ同様、この先は国内の問題への対応でてんてこ舞いとなり、国外にかまっていられる余裕を失いそうだ、ということ。

 経済・金融面では山ほどあるけれど、たとえば・・・中国にはこちらの記事等で書いたような実態があるわけです。先日の報道によれば中国の10月の外貨準備高は31210億ドルと、前月よりも457億ドル減って20113月以来の水準にまで落ち込んだとのこと。いまも資本流出、すなわち特権階級層がマネーを外国に逃がしているようすが窺えます。(おそらくは軍部トップを含む)指導者たちが、このような母国に対する裏切り行為をせっせとしているような国が、強くなれるはずなどありません(?)。

 そして政治・社会的には・・・党中央指導層と軍部、都市市民と農民工、などといったように同国内ではさまざまな階層間で深刻な対立がみられ、それがいつ派手な暴動等に転化してもおかしくはない状況にあります。そんなマズい事態になったらエリートたちにとっては南シナ海なんてどうでもよいこと(?)。とにかく早く外国へズラかろう!になるのではないか・・・で、彼ら彼女らがいなくなったあとの中国は、「歴史は繰り返す」の言葉のとおり軍閥割拠の戦国時代へ・・・?

 ・・・とまあトランプ新政権のアメリカ、ばかりでなく上述の中国の今後はじつに読みにくい感じがします。なので南シナ海周辺国にとっては難しい外交局面が続きそうですが、両国がどうなろうとも頼りになるのは、わが国となるでしょう。日本とASEAN諸国の現在の良好な関係は「新しい世界」においてはさらに強固になるように思えます。もっともそのとき日本は各国に対し、日米の側に近寄ってね、みたいな「古い世界」の図式(?)でアプローチすることはできなくなっているでしょうけどね・・・

(「新世界秩序を見越して動くASEAN諸国」おわり)

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