世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
ご訪問ありがとうございます。

【カザフから分かることは欧州や米国から分かることと同じ】産油国カザフの暴動から分かること④

2022-01-17 21:36:01 | その他の地域
前回からの続き)

 直近のニュースによると、年初に起こったカザフスタンの動乱は、ロシア等による軍隊の派遣もあってか、鎮静化に向かっているもようです。しかし、前述のように、その発端となった同国民向け燃料価格の引き上げ・・・の根本的な原因である世界的な燃料インフレをカザフ政府には制御できるわけがないし、同国政府の高官らは、そんなことより、欧米オイルメジャーや英国等(のような自分たちの資産移転国)と結託しながらの?自分たちの蓄財のほうに一生懸命な感じ。よって、表向きは落ち着いても、かの国ではいつ同様の騒ぎが再発してもおかしくはない状況でしょう・・・って、インフレが国際的に収まらない限りは・・・

 で、そのインフレですが、本ブログで何度も指摘のとおり、カザフ・・・はもちろん欧州中国そして基軸通貨国であるアメリカにだって抑えようがありません。そこは、アメリカの実質金利が引き続き大幅なマイナス圏にある(直近の長期金利は1.7%ほどであるのに対し、12月のCPIは年率約7%の上昇・・・)ことからも明らかでしょう(ってことは、借金をしてでも原油先物に投資することに合理性が十分にある、ということ)。まあ理屈からすれば、アメリカ(FRB)は長期金利をCPIと同率の7%くらい(!?)に持っていけば、となりますが、現実は絶対に不可能(米国債売却→金利急騰→借金バブル崩壊→企業・家計の多くが破綻→金融システム崩壊危機→通貨の無限増発→ハイパーインフレ→治安崩壊・内乱へ?)であるため、ほぼすべての国々が現状路線でいく以外にない、すなわちインフレを受け入れざるを得ない、という次第・・・

 以上、カザフの情勢から分かることは、欧州からも、そしてアメリカからも分かることとまったく同じです。つまり、インフレ(とりわけエネルギーインフレ)こそが最悪の災厄だということ、そして世界はもはやその災厄と共存していくしかない(≒金融引き締めができないので同緩和をするしかない)ということです・・・って、たった一か国の例外(緩和・引き締めの双方が可能)を除いて、ね・・・

(「産油国カザフの暴動から分かること」おわり)

金融・投資(全般) ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【カザフ支配層、オイルメジャーと英国と結託か?】産油国カザフの暴動から分かること③

2022-01-15 00:02:00 | その他の地域
前回からの続き)

 先述のとおり、カザフスタン(を含む産油国の大半)は、本来なら経済発展の(ほとんど)唯一の源泉である原油に関するすべて(探査、採掘、輸送、販売など)を欧米オイルメジャーに依存せざるを得ないため、せっかくの自国の「宝」を生かせる政策を自分たちの意思で十分実行することができません。他方のオイルメジャーとしては、当然ながら欧米株主の利益極大化を目的にカザフの原油を扱うわけだから、これを邪魔する税金とか各種規制、ようするに同国政府の政策的な介入は少ないに越したことはありません。となると、カザフ政府とメジャー各社の両者は結託しがちでしょう。つまり、前者は後者に便宜供与(税金を安くする等)を行い、後者は前者に見返りを提供、みたいな・・・

 そのあたりの一端が窺えるのが、カザフのトップ層に長らく君臨し続けるナバルザエフ元大統領およびその取り巻きの巨額の私財の存在です。たとえば、英ガーディアン紙によると、彼ら彼女らは1998年から2002年までの間だけで英国にある34か所の不動産を買いあさったそうですが、その総額は5.3億ポンドにもなるそうです。カザフの経済規模等に照らしても明らかに過大なこの財産、マトモなものであろうはずはなく、やはり上記の癒着構造に由来するとみるのが自然でしょう。もしこの購入に充てられたマネーがカザフ側にちゃんとキープされていたら、いまごろはその一部が前記した価格調整金等として使われ、国民はそれだけ国際価格よりも安い価格で燃料を手に入れることができていたかもしれないのに・・・

 上記に密接に関連するのが、この手のマネーの受け入れ先となっている英国のアングラ面です。こちらの記事に書いたように、紳士淑女の国を自称する?英国はじつは資金洗浄(マネーロンダリング)の(おそらくは)世界最大(悪?)の拠点となっています。だからこそカザフ(を含む各国)の独裁者らは特権を通じて蓄えたであろう資産を安心して英国に移転させることができるわけです。英国は王立?マネロンセンターといえるから、不正資金であれ何であれ、当局はその摘発とか没収等には動かない・・・どころか(下述のことから)手厚く保護するだろう、と予想できますからね・・・

 そして英国は、そうしたアングラマネーの確保で国家、もう少し具体的には通貨ポンドの信認を維持しているといえます。このへんも上記過去記事に書きましたが、上記カザフのケースからも分かるように、マネロンにからむおカネ(独裁者の不正蓄財や武器・麻薬・人身の売買等に由来するマネー)は引き続き巨大と推測されるところ、世界ワースト2位の経常赤字国で、もはや堅気の手段では資金を集められない英国としては、ロンドンの不動産の価値(≒ポンドの価値)を高めるため、むしろ率先して?この種のマネーを大量にかき集めたいところでしょう・・・

 こうして結びついたカザフの支配層、オイルメジャー、そして英国(などのアングラマネー受入国)は石油がもたらす利益で潤うことになります。そのいっぽう、いずれの国の一般市民は・・・エネルギー価格や家賃等のインフレに苦しむことに・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【カザフ、自国油田をメジャーから接収して国営化したいが…】産油国カザフの暴動から分かること②

2022-01-13 00:01:06 | その他の地域
前回からの続き)

 先述のように、カザフスタンにおいてこのほど発生した大暴動のきっかけはインフレ、具体的には自動車燃料用の液化石油ガス(LPG)の国内価格の急騰です。したがって、カザフがこれを真剣に鎮圧する気ならば同価格の引き下げが必要ですが、前記した事情があるために同国政府にはそれができません。他方、LPG価格が下がれば、一般国民にはありがたいですが、それは同国の輸出額の6割近く(56.8%、2019年、OECWORLDHP)を占める原油の国際価格の下落をも意味します。となると、かの国の貿易収支は悪化し、通貨は安くなって、今度は食料等の輸入インフレが激しくなりそう。ということで、現状のままだと、どのみち―――原油価格が上がっても下がっても―――カザフの人々がインフレの苦しみから逃れるのは難しそうに思えます。

 では、そんなカザフがインフレを抑えながら経済発展を目指すにはどうするべきか、ですが・・・このあたり、上記から同国は石油(と天然ガス)に頼る以外にないので、本来は次のようにするほかなさそうです。つまり、自国油田から産出される原油について、外国向けの販売価格は国際価格とするいっぽう、国内向け価格は政策的に引き下げる、ということ。具体的には、原油輸出の稼ぎの一部を補助金等としてプールしておき、いまのような価格高騰時は、国際価格からその補助金の分だけ安い額で国民に売る、といった仕組みです。こうすれば、外貨獲得とインフレリスク低減の双方をバランスさせた国家運営が可能となり、それなりの成長が期待できそうです。もっとも、そのためには、原油を上記のように自分たちで自由に扱えるよう、カザフ国内の油田の権益を政府あるいはその傘下の企業が確保することが必要となってきます・・・

 しかし・・・そうしたこと、実際にはまずできないでしょう。前述のようにカザフの油田の権益は欧米オイルメジャー(米シェブロンや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル等)の手中にあるわけですが、同国政府が上記を行うには同権益をこれらから買い取らなければなりません・・・が、そのための資金なんてあるわけありません。となればカザフ政府には、強権を発動して外国資本が持つ油田を接収・国営化してしまう、という手も考えられます。けれど・・・かの国がそうやって単独で立ち向かったところで、巨額のマネーや採掘等に関する高い技術力そして多くの販路等を有するオイルメジャー(と背後の欧米諸国)に、簡単に勝てるものではないことは、他の産油国、たとえばベネズエラ(1970年代の油田国営化以降、メジャー各社とは対立中?)の厳しい現状をみれば想像ができるわけです・・・

 となれば、カザフは、結局は現状路線―――オイルメジャーの原油生産・販売等に依存した経済運営―――で行く以外の道はなさそうで、それは、上記暴動の元凶となったインフレを緩和できないことを意味します・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【カザフ、国内向け液化石油ガスの価格上限撤廃をきっかけに暴動勃発!】産油国カザフの暴動から分かること①

2022-01-11 00:04:10 | その他の地域
 消費国はもちろん産油国も苦しめるのだから、ホント何とかしてもらいたいですね・・・

 ご存じのように、ユーラシア大陸の中央部に位置するカザフスタンでは、年初から大規模な反政府デモが発生し、一部は暴徒化するなど、混乱が広がっています。これに対し、隣国のロシアが軍部隊を派遣するなどをした結果、同国政府によれば、情勢はすでに安定したとのことですが、後述する、多くのカザフ国民をデモ等に駆り立てた真因の解消が見通せない(?)ことから、当局がデモを力づくで抑え込んだところで、人々の反政府感情はくすぶり続け、これが再び暴動等の発火点となることは容易に予想ができるところですが・・・

 で、このたびの騒ぎですが、長らく権力の座にあったヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領および側近らの独裁に対する怒り・・・も多少はあるでしょうが、もっと根本的には、インフレに対する怒りから生じたというべきでしょう。具体的には、自動車燃料用の液化石油ガス(LPG)の価格上限の撤廃をきっかけに、突如、同価格が約2倍に跳ね上がったこと。これで生活が瞬時に苦しくなった人々が、上記撤廃を決めた政府に猛反発した、という次第です。このあたり、CNN等によれば、カザフ政府は国民が購入しやすいようにLPGに価格上限を設けていましたが、同価格では安すぎて同国市場には十分に流通せずに不足してしまうため、同上限を廃止し、内外価格差をなくすことで、国内供給量を増やそうとした、とのことです。その結果、かの国の人々も、現在、世界中が悩まされているエネルギーインフレのあおりを食うことになりました・・・

 ここで、少し不思議に思えるのは、カザフは産油国であるにもかかわらず、どうして国民もまた国際取引と同レベルの高い価格で自国産の石油を買わなければならないのか、ということです。つまり、カザフは、国内には引き続き安い価格で供給し、外国には国際価格で輸出、というようにすれば、って考えたくなるわけです。が、そう単純にはいかないのが、かの国(そして多くの産油国)の残念なところ?です。たしかにカザフは他国に売るくらい石油を産出しています(日量約160万バレルとの由)。しかし、それを手掛けているのは、カザフ国内の油田の権益を持つ米欧系のオイルメジャー(米シェブロンや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル等)であって同国資本ではありません。となれば、各社は株主利益のために動く、すなわちカザフ産原油を少しでも高い価格で買ってくれるところ(中国や欧州等)に売るわけで、他方で価格上限のあるカザフ国内に供給しよう――安く売ろう―――なんて気になるわけはないでしょう。そして、いまは原油価格が高騰中なのだから、なおさら、となるわけです・・・

 そんな感じでカザフは、原油価格上昇で産油国としての恩恵(輸出収益増など)が大きくなりそうなのに、肝心の国民生活はそれをエネルギーインフレのダメージとして食らう、という、何ともトホホな状態になっています。そして、かの国が苦しいのは、このあたりから脱却するすべがないことでしょう・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【インフレ(価値下落)通貨にしない!ことが大事】興味深い?ベネズエラの石油リンク型仮想通貨⑥

2018-03-09 00:03:15 | その他の地域

前回からの続き)

 以上ここまで、今般ベネズエラが発行した、自身の原油埋蔵量に紐づけた仮想通貨「ペトロ」(Petro)について思うところを綴ってきました。これがうまくいくかどうかは同国が「1ペトロ=同国産原油1バーレル」等を順守すること、すなわち新通貨をインフレ通貨にはしないことにかかっていると考えています。

 この点、19718月のニクソン・ショック金兌換停止に象徴されるように、現状の「石油交換券」であるドルは失敗してしまったといえます。アメリカは世界に対して約束していた交換レート「金1トロイオンス=35ドル」を一方的に反故にしました。それ以降ドルは何らの価値の裏付けのない通貨であり続けています・・・って現在まで(じつは〇〇の支えのおかげで?)50年近くも生き永らえていますが、賞味期限がいよいよ迫っているからこそ中国金塊をしこたまかき集め、市場ではビットコインのような仮想通貨がもてはやされるようになっているわけで・・・

 これらが示唆することは・・・結局「インフレはNG」ということだと思います。インフレとは厳密にいえば「名目金利-インフレ率<0」つまり実質の利回りがマイナスとなる経済状態のこと。このときの通貨はもはや価値を失うわけです、それがドルだろうがペトロであろうが・・・

 これを別な言い方で表現すると、「通貨価値を保てば―――名目金利-インフレ率>0』であればOK」となります。ペトロを立ち上げたベネズエラと、成功させまいとする(?)アメリカとのさや当てを尻目に、いまのわたしたち日本人が強~く認識するべきことは、コレです(?)。

(「興味深い?ベネズエラの石油リンク型仮想通貨」おわり)
金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【トランプノミクスのドル安で石油リンク仮想通貨の魅力は増す?】興味深い?ベネズエラの石油リンク型仮想通貨⑤

2018-03-07 00:01:18 | その他の地域

前回からの続き)

 これまで綴ったような状況から、ベネズエラがこのたびスタートさせた石油リンク型仮想通貨「ペトロ」(Petro)の前途は何とも視界不良といった感じがします。もし同国政府が本気でこの不透明感を払しょくさせるつもりなら、1ペトロ(今回は60ドル)で同国産原油1バーレルの交換を順守しなければならないと思います。まあ前述のとおりこれ、相当にハードルが高い目標のはず。債務支払いに充当するドルをかき集めたいばかりに同国はインフレに頼りたくなってしまう、つまりペトロ過剰発行の誘惑に耐えられそうになさそうだからです・・・

 それでも万に一つの確率で(?)、ベネズエラがペトロの価値「1ペトロ=1バーレル」を忍耐強く守り続け、かつ他の産油国もこの枠組みに加わったりしたら・・・これ、ドルに勝る「石油交換券」となり、同国は所期の狙いのとおり(?)原油市場におけるドルの存在感を低下させることができるかもしれません。繰り返しますが、アメリカ人以外にとっての米ドルアメリカ以外の国々の原油との交換券です。その「アメリカ以外の国々」が上記のような安定的なレートで自身の原油交換型仮想通貨を流通させることに成功すれば、実質的な石油交換券が欲しい中国や日本のような国々は、これとは入れ違いに石油引換機能を喪失していくドルのかわりにこれらを外貨準備として保有するようになるでしょう(?)。

 これに関連して指摘すると、ベネズエラのような産油国にとって、こちらの記事等で記したように、米「トランプノミクス」(歳入減少[大減税]・歳出拡大[財政出動]による財政収支悪化でドル安必至の?政策)の発動でドルがますますインフレな通貨になっていくのも、一定の交換率を保った石油リンク通貨を発行、流通させるうえでは好都合です。当該通貨産油国はドル減価リスクのヘッジができるし、石油を買う国々は、ドルよりも価格保存力の優れた、すなわち1単位当たり1バーレルの原油交換が保証された同通貨のほうを持ちたいでしょうからね。

 おそらく今後、上記事情からドルは安くなるいっぽうで、逆にドル建て原油価格は高くなっていくでしょう(?)。こうなると、より多くのドルが手に入るベネズエラのような産油国はトクをするように思えます・・・が、じつは必ずしもそうとはいえません。これによって、たとえ原油ドル建て輸出額が2倍になっても、食料品や医薬品とか自動車などのドル建て輸入額が3倍になって、差し引きではドル安の前よりも実質ではソンをするおそれが生じるためです。ドル安で日本、中国や欧州からの輸入品のドル換算価格は上昇してしまうので、実際にそうなる可能性のほうが高いような気がします。産油国の多くは原油以外の産品のほとんどを外国からの輸入品に依存しているので、こうなると苦しいところです・・・

 ―――と考えていくと、これから先、産油国はドルを使うよりも1単位=原油1バーレルみたいな交換レートを固定した独自の仮想通貨を流通させたほうが有利、ということになりそうです(?)。「当該通貨>ドル」(実質価値の高い順)が成り立つからです・・・って、あくまでもこのレートを守り抜く限りは、という条件付きになりますが・・・

(続く)
金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【石油リンク仮想通貨もドルと同じくインフレ通貨に堕ちる?】興味深い?ベネズエラの石油リンク型仮想通貨④

2018-03-05 00:03:47 | その他の地域

前回からの続き)

 これまで論じたようなことから、もし産油国が自前の石油にリンクした仮想通貨のマーケットへの導入および流通に成功したら、米ドルの「石油交換券」としての役割は低下し、アメリカ危機的な状況に追い込まれると思われます・・・がこれ、あくまでも想像上の話です。実際にうまくいくのかどうかについては何とも微妙といった感じでしょう。

 このあたり、ベネズエラの「ペトロ」(Petro)を例に上げて考えてみます。本稿一回目で書いたように、同国がこのタイミングでその発行に踏み切ったのは、まあ長期的には先述の狙いがあるのでしょうが、短期的には・・・ぶっちゃけ「ドル」を集めたいからにほかなりません(?)。なぜならベネズエラは巨額ドル借金(約1300億ドル?)の支払いにこの瞬間も追われまくっているからです。さらにペトロ1億単位の発行で同国が得られる予定のドルは総額50億ドル程度に過ぎません(って、楽観的過ぎる印象・・・)。ということは、同国はドル欲しさにペトロをもう1億単位、さらに2億単位などと、次々に振り出していく可能性が高そう・・・

 ・・・と考えてみると、ペトロもまたドルと同じく(?)、単位当たりの価値低下が止まらないおカネすなわちインフレ通貨に堕ちてしまいそうです(?)。つまり、当初の1ペトロ=ベネズエラ産原油1バーレル(=60ドル:おおむね現在の原油1バーレル価格)を守れずに同0.9バーレル、0.8バーレル・・・となっていくという意味です。こうなってしまってはペトロの信認は定まらず、ドルを脅かす仮想通貨にはとてもなれそうにない、ということに・・・

 そもそも今般の1ペトロ60ドルという価格設定自体が高過ぎでしょう(?)。その不確実性を差し引けば6割ディスカウント価格(24ドル?)くらいがせいぜいなのではないでしょうか。となると上記50億ドルの調達は困難で、やはり同国はこの後、ペトロの大量発行に乗り出すしかなさそうです、1ペトロで原油1バーレルの交換が履行できないくらいに・・・(?)

 さらにいえば今後、原油価格は安くなる、少なくとも高くなることはそうはないと予想されるところも石油リンク型仮想通貨の将来を不透明なものにします。世界各地の既存油田に加え、北米大陸を中心にシェール資源の開発が進むいっぽう、再生可能エネルギーとか電気自動車等の普及といった脱石油につながる動きもいっそう加速しています。こうした需給両面での大変化をふまえると、石油の価値はこの先、少しずつ下がっていくと考えるのが自然でしょう(?)。となると当然、当該通貨の価値もこれに比例して低下し、その発行国の購買力もまた落ちていくわけで・・・

 とどめは・・・ドル=石油交換券の地位絶対死守を目論むアメリカの石油リンク型通貨つぶしに向けたアクションです。現在アメリカはベネズエラに対して厳しい経済制裁を科していますが、その本当の目的はこれによってマドゥロ現政権が進めるアメリカやドルの脅威となる取り組みを破綻させようといったあたりでしょう(?)。もちろんそんな本音は口には出せませんので、表向きの理由としては同政権の非民主性を糾弾するため、などということにして・・・

(続く)
金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【石油リンク通貨、産油国:メリット大、米:脅威大】興味深い?ベネズエラの石油リンク型仮想通貨③

2018-03-03 00:02:19 | その他の地域

前回からの続き)

 これまで述べてきたように、アメリカの通貨ドルは、現代社会の最重要物資である石油の交換券であるがゆえに、国際商取引の決済通貨としての、また各国の準備通貨としての価値をこれまで保ってきました。ドルがあれば石油が買える(ドルが無ければ石油が買えない)―――こんな「掟」(?)があるからこそアメリカは、ドルを刷りさえすれば世界中のモノやサービスを手に入れることができるわけです。なぜなら相手が喜んでこの石油交換券を交易の対価として受け取ってくれるから。かくして同国は対外ドル建て債務をどんどん膨らませることになりました・・・

 ただしこの「石油交換券」、厳密にいうと「アメリカ以外の国の石油」の交換券となります。逆に、アメリカ産原油の交換券にはなり得ません。同国は世界屈指の産油国であると同時に世界最大の石油消費国でもあるため、海外に原油を輸出できる余力に欠けるためです。よってドルが石油交換券(≒基軸通貨)の特権を享受するには、アメリカから遠く離れた産油国が原油売買の決済通貨としてドルだけを使うという絶対的な前提が必要になります・・・

このほどベネズエラ政府が発行した自国産石油リンク型仮想通貨「ペトロ」(Petro)は上記の「掟」を破壊しかねないインパクトがあります。このスキーム、ベネズエラがその原油販売についてドルではなくペトロによる支払いを相手に求めるもので、産油国が同市場における主導権を取り戻す枠組みになり得ます。かりにペトロによる原油取引が成立、拡大し、これに刺激される形で他の産油国までペトロとか自前の同種通貨を次々に使い出したら、ドルはもはや石油引換券としての魅力を失ってしまいます。繰り返しますが、ドルを持っていてもアメリカ産の原油を買うことはできないからです・・・

産油国にとって、自身の石油に裏付けた通貨を立ち上げるメリットとして、ドルの減価リスクをヘッジすることができるという点も指摘できると思います。上述のように世界中がドルを受け取ってくれることをいいことに(?)アメリカはドルを吐き出し続けてきました。いくら借金をしてもドルを続々発行してインフレを起こせばその実質返済負担を引き下げることが可能になります。いっぽうでドルの貰い手である産油国はドルの価値低下に悩まされることになります。だからこそ彼らはOPEC(石油輸出国機構)を作ったりして石油マーケットにおける価格決定権を得ようとしてきた面があるわけです(?)。ここで産油国サイドが、たとえばペトロみたいに1単位=1バーレルの自前の仮想通貨を流通させることに成功すれば、インフレなドルの排除が可能になり、安定的な原油市場管理や国家運営を図ることができるようになるかもしれない・・・(?)

 以上などから、ベネズエラのような産油国にとって独自の石油交換通貨を立ち上げることのメリットは大きいものと考えられます。いっぽうのアメリカにとってこれは国家を揺るがすほどの脅威となるでしょう。それによってドルの本質的な価値=石油交換機能が失われるということは、だからこそこれまでドルを買い支えてきた国々、産油国はもちろん経済規模が大きな石油輸入国である中国そして日本のドル離れを誘発しかねません。この両国がこうしてドル保有のインセンティブを失えば当然ドルは暴落、そしてアメリカは超インフレと高金利で重大な危機に瀕するでしょう・・・(?)

(続く)
金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【米ドルはアメリカではないヨソの国の石油との交換券…】興味深い?ベネズエラの石油リンク型仮想通貨②

2018-03-01 00:03:44 | その他の地域

前回からの続き)

 南米の産油国ベネズエラの政府が今般、自国の原油埋蔵量に裏付けて発行する仮想通貨「ペトロ」(Petro)は、それが同国産石油の交換通貨になり得るという点で、米ドルに取って代わる可能性を持っている―――これは非常に興味深いことと考えています。

 本ブログでは以前からドルのことを「石油交換券」(石油引換券)と呼んできました。世間一般ではドルは「基軸通貨」と表現されることが多いですが、これだと何とも抽象的なので、このように表現することで、ドルの本質をもっと分かりやすく伝えようとするものです。そう、ドルとはアメリカの通貨・・・である以上に石油交換券というべきおカネです。

 現代社会に欠くべからざる物資の筆頭は何か、といえば・・・やはり「石油でしょう。これはいまの北朝鮮を見れば明らかです。厳しい経済制裁下にある同国がかろうじて(?)生き永らえていられるのは、中国から重油すなわち石油をわずかながらも供給してもらっている(?)からにほかなりません。もしこの油脈が完全に断たれたら、おそらく同国の命脈も・・・となるわけです。それほど石油は大事だということです。

 その石油を買うことができる唯一の通貨が「ドル」です(でした?)。たとえば、サウジアラビアが日本に石油を売る際の決済に使われる通貨は、当事国通貨(円 or レアル)ではなく、第三国アメリカの通貨であるドル。まあ最近はユーロなどのドル以外の通貨が石油代金として受け入れられるケースも多くなりましたが、それでもドルが石油交換券の最高位を保っていることには変わりがありません。

 ドルがここに至った経緯等は省略しますが、これが最重要物資である石油にリンクしていることがその価値になっているといっていいでしょう。コレがあれば石油が手に入るし、石油交換券だから他国産の食料品や医薬品などとも交換してもらえる―――といったようなわけでドルは、一国の通貨という枠を超え、産油国、非産油国の違いによらずに各国が進んで持とうと思いたくなる通貨、つまり基軸通貨・準備通貨になりました。

 上記ペトロ・・・のような、産油国が自国の原油に紐づけた通貨は、ドルのこうした特権的な地位を脅かすインパクトがあると思います。ドルがその発行国アメリカではない(サウジのような)「よその国」の石油の交換券であるのに対して、ペトロ等はその発行国産の石油にちゃんと裏付けられます。したがって、「よその国」すなわち産油国サイドが(ドル受け入れに替えて)自分自身で石油交換券を発行し始めたら、ドルの価値が低下するのは明らかです。なぜならそうなってしまったらドルはもはや、本質的には石油交換券とはいえなくなってしまうためです。世界屈指の産油国であっても基本的にアメリカは、いくら目の前にドルを積まれても石油を外国に売りませんし、サウジやベネズエラみたいに大量に輸出できるほどのゆとりはないでしょうからね・・・

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【原油埋蔵量に裏付けた仮想通貨「ペトロ」発行!】興味深い?ベネズエラの石油リンク型仮想通貨①

2018-02-27 00:00:05 | その他の地域

 こちらの記事で少しだけふれたように、近い将来、石油仮想通貨を結び付けようという動きが出てくるだろうと思っていました。したがってこれ、今後の成り行きに注目しています。はたして成功するのか、それとも・・・

 南米の産油国ベネズエラ20日、政府公認の仮想通貨「ペトロ」(Petro)の前売りを開始しました。発行総額は1億単位。ペトロのウェブサイト等によれば、ペトロは国家が発行する世界初の仮想通貨で、同国の(2位サウジアラビアをしのぐ)世界一の石油埋蔵量に裏付けられます。売り出し価格は1ペトロ当たり60ドルと、現状の原油1バーレル当たり国際価格とおおむね同じ水準に設定されています(一定量にはディスカウントがあるもよう)。既存の仮想通貨と同様、ブロックチェーン技術に基づきインターネット上で流通させるようになっていて、ドル、ユーロのほか、ビットコインBitcoin)およびイーサ(Ethereum)の2種類の仮想通貨と交換可能になっているようです。

 ベネズエラ政府はこれによって約50億ドルを獲得する見込み―――といったあたりから推察するに、同国がこのタイミングでペトロ発行に踏み切った本当のねらいは、これによって外貨を得て、膨大な借金の支払いに充てよう、というものなのでしょう(?)。実際に同国は現在、1300億ドルもの対外債務を抱え、デフォルトの危機に瀕しています。苦し紛れに通貨を増刷したせいか(?)激しい物価上昇が起こっており、国会の集計によると昨年のインフレ率は2616%に達したとのこと。同国の通貨「ボリバル」は著しく減価し、公定レートが1ドル=10ボリバルなのに対して実勢レートは1月中旬時点で約20万ボリバル(!?)と、ハイパーインフレ状態が現出しています。そんななか、食料品や医薬品の値上がりや不足が深刻化し、市民生活も危機的局面を迎えているわけですが・・・

 ベネズエラが上記のような悲惨な状況になってしまった原因の一端に、アメリカとの関係悪化と、これに関連する同国による経済制裁があげられます。チャベス前政権から現マドゥロ政権にわたって同国は反米社会主義的な政策を推進、石油部門を含む主要産業を国有化して米欧資本を排除、中露その他の反米諸国との関係を強化してきました。いっぽうで石油関連設備の更新等を怠たったために原油産出・輸出量が減少するとともに、逆オイルショックにともなう石油価格の低下などにより国際収支が急激に悪化し、上記のように対外借り入れが膨張。そんな情勢のなかでアメリカは同国に経済制裁を発動しました。現在、ベネズエラはアメリカに資金調達手段としての債券発行を禁止され、さらには石油輸入制裁もほのめかされています・・・

 ・・・といった厳しい局面にあって、当面の支払資金を確保する必要に迫られてベネズエラは上記ペトロを発行したのでしょう。でも、目論見のとおり同国政府がドルを得られるのか不透明なようですし、たとえ目標の50億ドル程度を集めたとしても、債務総額にはまったく足りていないため、危機的状況は続くわけで・・・

 それでも、このたびの「ペトロ」の仕組みは興味深いものがあります。何といってもこれ、ベネズエラ産原油の交換通貨という位置付け・・・ってことは、唯一無二のはずの(?)「石油交換券米ドルとバッティングしてきますからね・・・

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする