世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【汎欧州主義すたれユーロ・ペシミズム再び…】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?⑨

2015-07-29 00:01:21 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 よく言われるように、通貨「ユーロ」の最大の問題点は、その発行体および金融政策こそECB(欧州中央銀行)に一本化させたのに、財政とか税制など、これらと不可分に連動する重要政策のほうはユーロを使用する各国間でバラバラのままの状態で導入されたことでしょう。これまで綴ってきたユーロ圏のゴタゴタは、この根源的な問題点を解消しなければ如何ともし難く、遅かれ早かれ統一通貨としてのユーロの崩壊は必然のように思えます。

 やはりユーロを救うには・・・ユーロ圏が現在の独立国家の連合体からさらに進化し、お互いの国境をなくして「ユーロ連邦共和国」みたいな一つの国家となり、金融・財政政策の統合を図るしかない、と思います。そうすれば、ドイツ「地方」の税収がユーロ版地方交付税のシステムを通じてギリシャ「地方」の公共事業に使われる、みたいな感じで、域内のさまざまな不均衡は(多少は)是正される方向に機能し、ユーロのほうも上記問題点が解消され、ふたたび市場の信認を得て強い通貨となっていくでしょう。というのは、現時点でのユーロ圏の国々の経常収支をトータルするとおおむね黒字になるからです。

 しかし・・・いまのユーロ圏を見ていると、ユーロ誕生時の「国や民族や文化の違いを超えて、みんなで一つの国家になろう!」といった「汎欧州主義」的な高揚感はすっかり失われ、ふたたび「ユーロ・ペシミズム」(欧州経済の日米等に対する回復の遅れや地盤沈下を嘆くこと)が頭をもたげてきたように思えてなりません・・・。先述のとおり、ギリシャに対するいらだちとか、ドイツに対する反発の感情など、お互いへの不信感ばかりが高まっている印象があります。それにベルギー、スペイン、イタリアなど、狭い国家内でさえ特定の民族とか地域があちこちで独立したがっているし・・・それでいて通貨は引き続きユーロを使う!なんて皆さん(虫のいいことを?)言っていますからね・・・。こんな様子ではやはりユーロ圏の統一は無理だし、共通通貨ユーロがマトモに機能する素地はできそうもないな、と悲観(?)しています。であれば、これまで書いてきたように、ユーロの行く先は見ていますね・・・。

 通貨と国々の統合ははかない夢に終わり、停滞と分離と不信が欧州を覆う---せめてこれが国家間の激しい対立や戦争(!?)に至ることがないよう、祈るばかりです・・・。

(続く

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【独仏対立はユーロ崩壊の前兆?】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?⑧

2015-07-27 00:01:08 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 ギリシャへの第3次救済融資の是非をめぐるユーロ圏内の議論のなかでもっとも注目されるのは、これまで共通通貨「ユーロ」プロジェクトをけん引してきたドイツフランスの意見対立でしょう。ここには、いまのかたちでのユーロの存続を近いうちに脅かすほどのリスクが内包されているように感じます。

 まずはドイツですが・・・先述のとおり、本音をいえば今回のギリシャ支援はしたくなかったし、それがもとで同国がデフォルトに陥ってユーロ圏を離脱したとしても、そのダメージに耐える覚悟ができていた(?)と考えています。なぜなら、これまで綴ってきたようにドイツは、ここでギリシャを助けた場合のほうが、結局はコストがはるかに高くつく(つまり、ギリシャを切ったほうがマシ)、と冷静に見積もっていたであろうからです(?)。

 これに対してフランスは・・・ドイツと比べて財政、金融の両面で「リスクオフ」に対してずっと脆弱なので、ギリシャの財政破綻がもたらす負のインパクトに同国経済(とくに同国の金融システム)は耐えられそうもない。したがってフランスは、ドイツが難色を示すギリシャへの「追い貸し」を何が何でも各国に認めさせるしかなかった。それが最終的にはユーロの崩壊=ハイパーインフレにつながりかねないアクションであることを考える余裕すらなく・・・

 といったようなそれぞれの事情から、本来ならば強固に手を携えてユーロの信認強化と領域拡大をリードするべきユーロ圏の二大国・ドイツとフランスは鋭く対立したわけです。この「独仏枢軸」の揺らぎは今後の欧州の政治経済情勢に暗い影を投げかけそうな予感がします。まあ今回はドイツが折れて(?)ギリシャ援助の継続が決まりましたが、「次」―――近々必然的に訪れる(?)4回目の同国危機時(あるいはその他重債務国の同危機時)―――はどうなることやら・・・

 ・・・そのときドイツは「ほーらいわんこっちゃない、やっぱりギリシャへの追い貸しは間違っていた!」とフラストレーション大爆発、フランス等を公然と批判しそう・・・(?) これに対してフランス・・・そしてギリシャをはじめとするユーロ圏重債務国は一斉に開き直り、「自分ばかりいい思い(その反映が経常黒字の積み上げ)をしておいて、ドイツは仲間に厳しすぎるし傲慢すぎる!」みたいな反感の声を上げるのではないでしょうか・・・。まあ筋が通っているのは(どちらかといえば)ドイツのほうですが、いかんせん多勢に無勢、ドイツの「正論」はここでも封じられ、各国が順守すべき緊縮策は放棄され、先述したとおりのECB(欧州中央銀行)による「財政ファイナンス」の乱発で、ドイツがチョ~嫌うインフレが止まらなくなる・・・

 その結果、Gexit(Germany[ドイツ]+Exit[出口])―――ユーロに愛想をつかしたドイツが自らユーロ圏を離脱し、どんな犠牲を払ってでもかまわないという決意のもと、旧通貨「マルク」を復活させる・・・。たとえこれまでの「盟友」フランスを「敵」に回してでも・・・

 ・・・みたいな可能性も否定できなかったりして!? もちろんそうなったら・・・ユーロはこれまた空中分解ですね。そして欧州には、強大な(、でもせいぜい円よりは弱くドルより強い程度の?)ドイツマルク、「抜け殻」と化した債務国御用達のインフレ通貨ユーロ、新興国通貨並みに弱いいくつかの通貨と・・・ドイツに対するやっかみと憎しみ、そしてお互いに対する深い不信感が残った・・・なんてことになるのでしょうか・・・?

(続く)

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【ドイツのインフレ懸念、理解されず・・・】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?⑦

2015-07-25 00:00:48 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 ユーロ圏を襲う巨大な債務危機は最終的にECB(欧州中央銀行)のとめどもない「財政ファイナンス」(に限りなく近い金融政策の発動)を誘発するだろう、という見通しを前回綴りました。そしてこれは高い確率で「ハイパーインフレ」といっても過言ではないくらいの激しいインフレ、つまり通貨「ユーロ」の信認失墜をもたらすでしょう。で、これを何よりも恐れる国が、ユーロ圏の盟主ドイツになります・・・

 「インフレファイター」―――ドイツ連邦銀行(連銀:ドイツの中央銀行)がこう呼ばれるように、ドイツは政府・中銀・国民ともにインフレという経済現象を(おそらく世界一、)嫌ってきました。第一次大戦後に起こったハイパーインフレが当時の同国経済社会を破壊し、結果としてそれがナチズムの台頭と新たな大戦を招いたためです。「だからインフレは最悪・・・」―――この苦い歴史の教訓を生かし、連銀は長年、どちらかといえばタカ派的な金融政策を実行してインフレの抑制に努め、戦後ドイツの発展を下支えしてきました。通貨ユーロが誕生し、ECBに通貨・金融政策権を譲った現在でも、連銀や人々の反インフレ感情は引き続き根強いと思われます。

 そんななか、ギリシャが債務危機に陥った・・・。上記の観点に立てば、それでもギリシャには超緊縮策を断行させなければならないし、借金の踏み倒しは絶対に許されないということになります。ここでギリシャを安易に助けたら、それは結果としてインフレの大きな原因となり、ドイツはもちろん、すべてのユーロ加盟国に大きなダメージを与えかねないからです。したがって今回の第3次支援が決まる前、ドイツがギリシャに示したとされる(一時的な)ユーロ離脱案などは(かなり無理があるように思えるものの)、ユーロ圏全体をインフレの脅威から守るという意味で一定の合理性があったわけですが・・・

 「#ThisIsACoup」(これはクーデターだ)―――有名になったこのツィートが象徴するとおり、上記ドイツのギリシャ再生プランと真意はほとんど理解されず、逆に「ドイツはあまりにギリシャに厳しすぎる!」というギリシャへの同情(?)とドイツに対する反感が喚起されてしまいました。そんなこともあって結局、フランスなど他のユーロ圏各国の、ギリシャのデフォルトがもたらす混乱を回避したいという切なる思いに抗しきれず(?)、ドイツは自らの提案を引っ込め、ギリシャへの「追い貸し」を認めざるを得なかった・・・。ほんの一瞬の「リスクオン」と引き換えに将来の巨大なインフレリスクを抱え込むことが分かっていながら・・・

 ギリシャ救済融資の実行が決定され、その前提となる緊縮策の関連法がギリシャ議会で可決された後、ドイツのショイブレ財務相はインタビューで、ギリシャが債務を減らす唯一の方法はユーロ圏を離脱することだ、とこれらの合意等の意義を否定するかのような発言をしています。このあたりショイブレ氏の無念の思いが感じられますね・・・。個人的には氏に共感するし、ドイツの考え方のほうが他国よりもずっと筋が通っていると思っていますが・・・残念ながら(?)理不尽な判断が優先されるところがいまの欧州流、なのでした・・・。

(続く)

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【ECBのスーパーマリオがハイパーインフレへの扉を開く?】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?⑥

2015-07-23 00:01:55 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 近い将来、ギリシャをはじめとするユーロ圏重債務国の債務整理(借金棒引き)および金融システム救済等のため、ユーロ圏各国には恐ろしいほど巨額の財政支出が必要となるだろう、と前回、綴りました。もちろんそんな大金、ユーロ圏のどの国も用立てすることはできません(「いま」ならともかく、当該債務額が膨張する今後はドイツですら難しいだろう)。

 そこで登場するのが・・・「最後の貸し手」ECB(欧州中央銀行)です。で、その各国を救うための手段とは・・・いわずとしれた「財政ファイナンス・・・って、建前上は(?)ECBにはこれができないことになっている(マーストリヒト条約で禁じられている)のですが、以下のような「グレー」なオペレーションを繰り出して、財政危機に陥った国への資金供与を行う(つまり、限りなく財政ファイナンスに近いことをやる)のではないか、と危惧(?)しています。ECBとしては苦しいところですが、そうでもしないとドロップアウト(デフォルト)する国が出ちゃいますからね・・・。

 まずは、QE(量的緩和策)のヴァージョンアップです。ECB(と各国中銀)は、借金利回りの上昇を食い止めるため(?)、今年3月からQEを通じてユーロ圏諸国の国債を買っていますが、ヤバい国と大丈夫な国の違いが明瞭となってきそうなこの先はもっとメリハリをつけるのではないか。つまり前者の国債を後者よりも多く買う、みたいなことをやりそうだ、と・・・。もっともこのQEには国債の全発行額に対する買い入れ量の上限が規定されているから、重債務国の国債だけをひたすら購入するなんてことはちょっと難しいかも・・・

 そこで個人的に「ありそうだな」と想像しているのが、ESM(欧州安定メカニズム)債券の購入です。ESMはユーロ圏で危機に陥った国の救済に必要な資金を債券の発行によって確保しますが、今回冒頭のような巨大リスクの発生局面では調達金利が上がって十分な金融支援ができなくなるおそれがあります。そこでECBが投資家に代わってESM債を買い取り、潤沢なマネーをESMへ・・・というよりはESM経由で支援要請国へ供給します。このやり方ならば、これは国債の直接買い取りではないから財政ファイナンスには当たらない、といえる・・・(かな?)。

 さらなる手は、すでにギリシャに対して実行しているELA(緊急流動性支援)の拡大展開です。その本来の目的は、担保の拠出と引き換えに、財政危機国の民間銀行に対して預金引き出し等に応じられるだけの流動性を提供するものですが、一方でこのおカネを使ってこれら銀行に当該国の新規国債を買わせるという策もあり得るのではないか・・・(こちらの記事に書いた想定シナリオのとおりです)。これだって、国債を買うのは銀行であってECBではない、と言い訳できそう・・・。

 ・・・うーん、無い知恵絞って考えてみたけれど、やっぱり無理がありますね。これらのいずれも、あるいはその他のスキームを編み出したとしても、すべては事実上の財政ファイナンスですよ・・・。

 それでもユーロ圏が加盟国すべてのデフォルト&ユーロ圏離脱の阻止を決断した以上、ECB・・・のマリオ・ドラギ総裁は上記奇策(?)を含めてとにかく「行動」するしかありません。で、その行動とは・・・「けっして財政ファイナンスではない!」と強弁しながら、そこら中にある巨大債務の穴を埋めるためにひたすらユーロ札を刷り続けることです。まさに「スーパーマリオ」のような異次元緩和、ではなく異次元感覚な動きに違いありませんが、これこそ通貨の番人たる中銀の自殺行為―――通貨に対する信認の崩壊すなわち「ハイパーインフレ」に向けた絶望的なアクション・・・。

 ・・・かくしてユーロは短い生涯を終え、複数の通貨に分裂することになりました―――これがユーロに対して描く私的な未来予想図です。

(続く)

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【欧州の財政金融メルトダウン、始まる】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?⑤

2015-07-21 00:02:53 | ヨーロッパ

(前回からの続き) 

 前述したように、ギリシャに対する3回目の救済融資実行の決定により、ユーロ圏諸国は引き返すことのできない地点を過ぎてしまったと感じています。というのは、実質的に無価値のギリシャ債権の損切りをするのならば「いま」しかなかった、と考えるから。でも、彼らはそれをせず、ほんの束の間(・・・自分たちの大統領・首相・財務相任期が無事に過ぎるまで?)の「リスクオン」が欲しいがために、数千億ユーロもの対外債務を抱えた破綻国への「追い貸し」の道を選択してしまいました・・・。ということは、この先の展開は見えています。それは・・・壮大なスケールの債務整理とそれがもたらす大混乱です。

 本稿一回目にも書きましたが、今回の支援が決まる前から、ギリシャの債務持続性をキープするためには少なくとも数百億ユーロもの大規模な借金減免が必須とみられていました。にもかかわらずユーロ圏諸国は現状、この減免を認めないで上記追い貸しを実行しようとしています・・・って、当たり前ですが無茶ですね、追加融資金も合わせてまるまる踏み倒されますよ。こんなふうに、今回の貸し倒れ処理先送りのツケはさらにデカくなって、もう誰が見ても先送りが許されなくなる2~3年後(いや、早ければ数か月後?)、間違いなく債権国側に超危険なブーメランとなって返ってくることに・・・。

 ・・・そのころはギリシャだけではなく、ユーロ圏の他の重債務国・・・ポルトガル、スペイン、イタリア等の債務のかなりの部分が再編の検討対象となっているでしょう。ギリシャで認められたらこれら諸国だって資金供与や借金棒引きの要求をする権利があるってもんです、モラル・ハザードですけどね・・・。これによって彼らへの支援原資であるESM(欧州安定メカニズム:ユーロ圏諸国の金融支援基金)等のマネーは大きく損なわれるか、へたをすれば底をついてしまうかもしれません(ESMの融資能力は5000億ユーロしかありませんから、ギリシャに加えてあと一国でもコケたら、それでジ・エンドとなる可能性も?)。

 そして・・・もっと恐ろしいのは金融システムの機能不全でしょう。上記のような局面では、南欧諸国を中心に、多くの金融機関が保有債券の評価損計上等を余儀なくされ、過小資本あるいは債務超過に陥って多額の公的資金注入を必要としているはずです。でも・・・ただでさえ上記ESMのサポート弱体化などで苦しむ彼らには銀行救済に応じられるだけの財政余力なんてありません。そうこうしているうちに体力の乏しい銀行から次々に閉鎖に追い込まれるような事態となり、各地で取り付け騒ぎが起こって・・・

 ・・・とまあ、こんな感じで今後、欧州各国の財政・金融両面の危機はまるでメルトダウンのように連鎖的に進んでいくことになりそうだ、と予想しています。このままでは欧州の経済・社会が大混乱に陥って、ユーロ圏統合の理念は瓦解してしまう!ということで登場するのは・・・もうこのお方しかいません。マリオ・ドラギ・・・ECB(欧州中央銀行)総裁です。で、同氏がそのニックネームのとおり「スーパーマリオ」と化したとき、通貨「ユーロ」・・・の崩壊は必至です・・・(?)

(続く)

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【ギリシャ債務・不良債権の膨張は必至】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?④

2015-07-19 00:03:50 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 ユーロ圏諸国は、ギリシャのデフォルトがもたらす同国債権の貸し倒れの恐怖に耐えきれず、とうとう第3次支援という名の破綻国家への巨大「追い貸し」に乗り出した―――これは本稿一回目に書いた展開です。つまり・・・これらの融資金はギリシャの成長には全く寄与しないどころか、1,2回目の援助がそうであったように、結局はギリシャの対外債務をさらに膨らませるだけに終わるでしょう。

 これを逆からみれば、融資した側には実質的には無価値のギリシャ債権が積み上がることになります。なぜなら先述したとおり、とっくの昔にギリシャの債務履行能力は失われているからです。したがって今回(3回目)こそ上記追い貸しで逃れたものの、債権国が近い将来、ギリシャ債務の巨額減免に追い込まれることはほぼ確実です。

 そのとき―――この理不尽きわまる借金棒引きの是非を判断せざるを得ないとき―――各国は「あ~やはりあのとき(3次支援を決定するとき、つまり「いま」)思い切って損切りし、ギリシャをユーロ圏から放逐すべきだった・・・」と深く後悔するのではないでしょうか。というのもこの際のギリシャの借金総額と要貸し倒れ処理額は、現時点(個人的な試算では少なくとも約4000億ユーロ)よりもずっと増えているだろうからです。もはやその財政負担にはドイツですら耐えられない、よってギリシャを切るに切れない・・・から、同国におカネを貸し続けるしかない・・・

 「Point of No-return」―――今回の対ギリシャ救済決定で、ユーロ圏はついに引き返すことが不可能な地点を越えてしまった、と考えています。かっこいい言い方をすれば、通貨ユーロの不可逆性が保たれた、なんてあたりかもしれませんが、それはメンバーの誰もが、自ら出ていく以外に、何をやらかしてもユーロ圏にとどまることができてしまうということ。たとえどれほど借金三昧をしたギリシャのような国でも、実効性のない名ばかりの「改革法」を制定しさえすれば、いくらでも仲間から資金を出してもらえるというわけ。そのあげく、誰が見ても債務持続性が破綻する将来のどこかの時点で(ギリシャはすでに「いま」、不可能だが・・・)、その国の「債務再編」が大規模に実施される・・・

 で、必然的にこうなるでしょう―――ギリシャが許されたのだから、おれっちも~、とばかりに、ポルトガル、スペイン、そして悪名高き(?)ギリシャのバルファキス前財務相に「債務は持続不可能!」と図星を突かれたイタリアといった欧州の重債務国がこの先、さらなるおカネの無心と借金棒引きを公然と要求する・・・。これこそユーロ圏の盟主ドイツがもっとも恐れる「モラル・ハザード」・・・ですが、そうなれば、もうドイツ以外、そんなマトモな指摘ができなくなっているはずです。ポルトガル等はともかく、スペインやイタリアはユーロ圏の中核国ですからね・・・

 こうして「ギリシャのユーロ圏離脱は認めない」という立派な(?)コンセプトを堅守したあげく、債権国には持続不可能な債務が、そして債権国には損失処理不可能な不良債権(ギリシャ等の国債)がたまり続けることに。その行き着く先は・・・

(続く)

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【案の定、対ギリシャ支援継続決定!】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?③

2015-07-17 00:03:34 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 前回、もし債務危機に直面したギリシャに対する3回目の金融支援が発動されず、同国がデフォルトに追い込まれたら、ユーロ圏債権国にはギリシャ国債の評価損確定および純資産が毀損したECBへの資金拠出等により、総額4000億ユーロ(いや、おそらくそれ以上)にものぼる巨大な財政負担が生じるおそれがある、といった見方を綴りました。これはこれら諸国には耐えがたいほどの苦痛を与えるでしょう。

 それでも・・・上記の道を選んだほうが、長い目で見てギリシャ債権国の損害は少ないだろうと見積もっています。なぜなら先述したように、ギリシャの債務持続性はとっくに失われているとみられるから。ここでギリシャ支援継続を決めたら、各国は公的資金をいっそう拠出させられるとともに、遅かれ早かれ「債務整理」という名の借金棒引きを強いられる事態へと確実に導かれるでしょう。こうして、どのみちギリシャ債権はド派手に貸し倒れるのだから、その損失処理(とギリシャのユーロ圏離脱)は早いほうが負担が軽く済む・・・はずだったのですが・・・

 ・・・「ユーロ圏諸国、ギリシャ追加支援で合意!」・・・やはりな、という思いがします。本稿一回目で予想したとおり「ギリシャの勝利、債権国の敗北」となりましたね。内外メディアは「ギリシャ全面降伏」なんて書いていますが、とんでもありません!その逆の「ユーロ圏全面降伏」ですよ。なにせギリシャは「改革」を法制化しさえすればこの先3年間で860億ユーロもの新規融資を得られるのですから(15日、ギリシャ議会は改革案を可決!)。本稿の文脈からすれば、これを認めた時点でユーロ圏の負けは決まり・・・って正しくはギリシャにではなく、数千億ユーロの損害額確定の重圧に対して負けた、ということ。

 で、その改革とやらの中身は・・・たしかに付加価値税(VAT)の増税とか年金支給額の削減など、ギリシャ国民には痛みがともなうものもありますが、残念ながら同国の債務持続性を満たす内容からはほど遠いことは明白です。レストランのVATを引き上げました!とか、観光地の軽減税率を廃止しました!程度のお寒い改革で、どうやったら差し引き年間数十~数百億ユーロの返済原資を確保できるというのか・・・。

 さらに、今回融資の条件としてギリシャが実行を約束させられた総額500億ユーロの国有資産活用策も超「どんぶり勘定」です。これらの売却等で得たおカネの半分を返済に、残りをギリシャの銀行の資本強化と成長投資等に充てる・・・なんて「絵に描いた餅」もいいところ。これら資産に現在、500億ユーロもの価値なんてあるわけないからです。したがって、いますぐにでも必要な同国の銀行救済資金は別途、ユーロ各国とECBがひねり出すことになるのでしょうが、いったいどうやって・・・?

 まあ上記以外にもツッコミどころはたくさんありますが、それはともかく今回の合意は目先の「リスクオフ」(ギリシャのデフォルト等がもたらす大混乱)を回避するためだけの、債務弁済能力「ゼロ」の破産人に等しいギリシャに対する巨額「追い貸し」プロジェクト第三弾、といったあたり。逆にいうと、厳しいけれど、まだマシな上記第二の道―――これ以上の支援を断念し、ギリシャのデフォルト・ユーロ圏離脱を認めたうえで、ユーロ圏諸国はギリシャ国債の貸し倒れ処理を実行する―――は選択されなかったということになります・・・。

(続く)

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【ギリシャのデフォルトに耐えられないユーロ圏】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?②

2015-07-15 00:04:42 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 ギリシャへの金融支援を重ねれば重ねるほど、同国の対外債務は膨らみ続け、ユーロ圏各国のギリシャ債権の貸し倒れ損失は増え続けるだけ・・・。ということで、目先だけの、ほんの束の間の「リスクオン」と引き換えに抱えるリスクはあまりに大きいわけです、ドイツなどの援助国にすれば・・・。

 で、そうなると次は、ギリシャの要請に基づく5年間で3回目となる今回の資金援助を実行しない、という道となります。これは・・・当然ながら大混乱をもたらすでしょう。もちろん、一番苦しむのはギリシャですが、ここでは債権者サイドで予想される諸問題について思うところを記してみます。

 さて、ギリシャの公的債務額ですが、今年3月末時点で3130億ユーロ。その内訳は・・・最大の債権者EFSF(欧州金融安定ファシリティー:欧州の暫定的な財政救済基金)に対して1309億ユーロ、ユーロ圏各国529億ユーロ(独29%、仏22%、伊19%、西13%など)、ECB(およびユーロ圏各中銀)が270億ユーロ、一般投資家が400億ユーロ・・・などとなっています。見てのとおり、これらのほとんどが外国に対して負っている借金です。

 で、いま議論真っ最中の第3次財政支援が実行されなければ、ギリシャにはこれらの債務一切の履行が不可能なことは明白です。なぜなら先月、同国は弁済順で第一位の債権者であるIMFに対する債務15億ユーロを「延滞」してしまったため。最優先すべき支払先に借金を返せないのなら、ギリシャはそれより劣位の債権者―――ユーロ圏諸国等―――には1ユーロたりとも返済することはできません。となると、IMF以外の貸し手が持つギリシャ国債等の価値は実質的に「ゼロ」ということに・・・。

 したがって、ギリシャ支援が打ち切られた場合(ギリシャがデフォルトに陥った場合)の債権国の対応としては、その債権全額の貸し倒れ損の確定と処理、つまり財政資金による穴埋め等が求められます。が・・・その損害額はトータルで3000億ユーロ、日本円で40兆円ほどにも達する巨額。はたしてそんな大掛かりな損失処理がいまのユーロ圏諸国にできるのか・・・。まあドイツや北欧諸国の一部は可能かもしれませんが、その他多くの国々―――ポルトガル、スペイン、イタリア、そしてフランスなど―――には、まず無理でしょう。彼らのほとんどは現在、厳しい緊縮策の実行を強いられているからです。これ以上のよけいな公的負担増に耐えられるわけがない・・・。

 さらにあります。ECB(欧州中央銀行)が上記保有債券とはべつにギリシャに提供した流動性です。

 ECB(およびユーロ圏各国の中銀)はELA(緊急流動性支援)と呼ばれるスキームを通じて、預金流出に悩まされているギリシャの銀行に1180億ユーロもの資金繰り支援を行ってきました。で、その際に差し出される担保は・・・またもやギリシャ債権(多くが国債)です。ECBはギリシャ危機の深刻化にともなってそのヘアカット率(担保割引率)を引き上げてきましたが、同国がデフォルトすればヘアカットは意味を失い、受け入れた担保は無価値、つまりこの大金はパーとなります。当然それだけ純資産は毀損するからECB等としては、ユーロ圏諸国に対して同額レベルの補償を要求したくなるでしょう。そのおカネの工面に各国はいっそう苦しむはず・・・

 このように、ギリシャ支援の停止とそれが不可避的にもたらす同国のデフォルトは、巨大な財政負担の痛みを欧州債権国にもたらすことになるでしょう。

(続く)

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【ギリシャ債務持続性は失われている】通貨ユーロはどのみち崩壊へ向かう?①

2015-07-13 00:02:31 | ヨーロッパ

 いまこの瞬間(13日0:00)、債務不履行とユーロ圏離脱(?)の瀬戸際にあるギリシャに対する追加金融支援の是非を巡るユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が開かれています。まあその結果がどうであれ、そして短期的には持ち直すことがあるとしても(対ドル、対円で買われることがあるとしても)、通貨「ユーロ」がこの先、長持ちしそうにないことはもはや誰の目にも明らかでしょう・・・

 「ギリシャの勝利、債権国の敗北」

 以前から本ブログで、ギリシャの財政危機を巡る「チキン・レース」の勝敗についてこう綴ってきました。こちらの記事等でも書いたとおり、その理由は、ギリシャのデフォルトがもたらす「リスクオフ」(債券価格の暴落等)のインパクトに債権国の多くが財政・金融の両面から耐えられそうにない、と考えるからです(なので、現在行われている会議はユーロ圏諸国の大幅な譲歩に終わる、と読むが・・・)。

 そのあたりのダメージを現在、もっとも懸念しているのがユーロ圏の大国・フランスのように思えます。実際に9日、ギリシャ政府が提案した改革案(増税・年金削減等の改革実行と引き換えに債務整理や今後3年間で535億ユーロもの救済資金供与を求めるもの)に対して同国のオランド大統領は「真面目で信頼できる(serious, credible)」と評価し、追加支援に前向きな姿勢を示しています。これはつまり、ドイツに次ぐ二番目のギリシャ債権保有国であるフランスがこれらの貸し倒れを極度に恐れていることの表れといえるでしょう。同国債権の損失確定を絶対阻止するため、何が何でもギリシャへの「追い貸し」を認めたい・・・といった感じでフランスはいま、必死の思いで各国財務相を説得していると推察されます。

 で、そんなフランスの望みがかない、晴れて(?)ギリシャへの5年間で3回目(!)の巨額融資実行が決定されたらどうなるか? まあ目先はリスクオフが回避されるでしょう。つまりギリシャ国債や同国株価指数は急騰、借金の利回りは低下し、通貨ユーロも対ドル等で上昇してマーケットは「リスクオン」モードに戻り、めでたし、めでたし、となりそうです。

 が・・・至極当然なことに、2~3年後(いや早ければ数か月後?)、ギリシャは4たび(いや、何度でも)資金繰りに窮し、追加救済資金の無心と借金棒引きを要求してくるのは必至です。というのも、今回の支援協議が始まる前の6月、ギリシャは今後も大規模な債務減免および欧州による融資延長が不可欠であるとの見通しが立てられているからです。IMFによれば、もっとも楽観的な予想(個人的には、ありえないほどの超甘~い予想)でも、2012年に策定された同国の債務目標達成には、GDPの3割以上に相当する額(500~600億ユーロ)の債務元本の減免が必要になるとのこと。ということは、債権者からすれば、時間の経過とともにギリシャ関連の貸し倒れ損は増え続け、ギリシャにすれば対外債務が膨らむ一方・・・

 そんなわけで、たとえ今回、上記支援が決定されたとしても、真の問題解消にはなっていない―――保つべきギリシャの債務持続性、そしてユーロ圏各国の支援持続性はすでに失われている、と考える次第です。

(続く)

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【金(ゴールド)>円>ドル等外貨、が成り立つ】日本国債、最強の証明⑨

2015-07-11 00:01:46 | 日本

(前回からの続き)

 本稿の最後に、日本国債)とゴールド)の関係について思うところを付記しておきます。

 「金(ゴールド)>円>ドル>ユーロ>新興国通貨」―――本ブログでたびたび登場させている、通貨の強さの順番(実質金利の高い順番)を示す不等式です。本稿は表現を変えてこの不等式のことをあらためて述べたものです。

 さて、本稿一回目の「リスクオフ」想定シナリオは、アメリカの連邦政府が金融システムに巨額の公的資金を投入せざるを得ない事態に追い詰められ、それまではユーロ圏の大混乱などを受けてじりじり下がっていた米長期金利が一気に跳ね上がる、というところで終わっています。で、おそらくそこまでのプロセスでは円建ての金価格はほぼイーブンで進むのではないかと考えています。

 このことを具体的な数字で表すと・・・現在、金の国際価格は1トロイオンス1200ドル弱、そして円建ては1グラム約5000円です。ここで上記のシナリオ終了時点、つまり米長期金利が急騰した局面で前者が1オンス1800ドルにまで上がるとします。これを円建てに換算すると・・・5000円×1800/1200×80/120=5000円、となって、いまの円建て価格と等しくなります。ドル建て価格は1.5倍になっても、ドル/円が120円から80円へと、リスクオフ前後で2/3倍にまで円高ドル安が進んだために、結果として円建て価格は大きく変化しなかった、ということです。リスクオフで金融マーケットが動揺し、金の国際価格が大幅に上昇する場面でも、金に対する円の価値は下がらない―――それだけ円が強い通貨、というよりは不換通貨で世界一であることが明かされるでしょう。

 それでも同シナリオ以降、つまり米長期金利の急騰以降の展開では、金価格はドル建てはもちろん、円建てでも上がっていきそうです。自国だけでは銀行救済資金をまったく工面できないアメリカは、もはやFRBによる米国債の直接引き受け(財政ファイナンス)によるドルの大量発行くらいしか手がないからです(金融システムが危機に瀕するたびにFRBはQEを何度でも繰り返すだろう)。そうなったらドルの価値は大暴落・・・ですが、上記不等式のとおり、円以外の通貨はドルよりも弱い通貨ばかりだから、円を除いたほぼすべての外国通貨に蓄えられた価値は・・・円、そして・・・金に流れ込むほかないでしょう。そのとき世界で何が起こるのか、まったく想像できません・・・

 ・・・みたいな最終シナリオを個人的に妄想しているわけです。こちらの記事等で、日本人向けの個人資産ポートフォリオは円預貯金50%、金35~40%、日本株10~15%くらいが適当(自己責任でお願いいたします)と書いているのは、そんな理由からです。

 はてさてこの先、国際金融市場はどうなることやら・・・。通貨ユーロの本格的な崩壊過程を迎えた感じの欧州、怪しい債券の元本保証や株価つり上げのためにひたすらマネーを刷り続ける中国、そして・・・利上げ=債券価格急落(?)がもたらす金利上昇に耐えられそうもない(?)金融リスクの総本山アメリカ・・・と眺めてみれば、ミョ~なことさえしなければ、新しい世界金融のリード役は、(好むと好まざるは別にして)われらが日本国となるだろう、いや、そうならねばならない―――と、半ば本気でそう思う次第です。

(「日本国債、最強の証明」おわり)

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