(前回からの続き)
前述のように、金(ゴールド)のドル建て価格が、政策金利が年5%超もの高金利のもとで、史上最高値に至ったのは、今春の米中堅銀SVBの破綻およびその際の米当局の対応(不良債権の事実上の買い上げ等)をみた市場が、やはりFRBそしてアメリカにはインフレ抑制(ドルの信認回復)は不可能だ、インフレ高進(ドルの価値劣化)しかない、となってマネーを金に移したことの結果といえるでしょう。
その点は米不動産も金と同じ、ということは、こちらの記事で予想し、そして先日のこちらの記事で詳述したとおりです。FRBの昨年春の利上げ開始から夏ごろまでは、不動産価格は、その目論見のとおり(?)少しずつですが下がっていましたが、年明けを境に上昇に転じて以降、対前月で8か月連続のプラスを記録しこれまた金とともに史上最高額に至っています(直近9月時点)。
このような金そして不動産の価格推移と現時点での同水準だけをみれば、インフレ圧力MAXということで、中央銀行は金融引き締めを早急かつ強力に推し進めるべきでしょう。そこはFRBだって分かっているに違いありません。ただし、FRBとしては、金と不動産では感じ方が次のように微妙に異なっているはずです。
まず金ですが、FRBは、その価格は絶対にこれ以上は上がってほしくない、と素直に?願っていることでしょう。それは先記のとおり、このまま金価格の上昇が続けば、それに反比例してドルの価値の下落に歯止めがかからなくなり、インフレのさらなる激化、そして最終的に通貨としての金の復権そしてドルの消滅を招きかねないためです。それはドルの番人としてのFRB自身の存在理由が失われることでもあるわけですからね。
他方で不動産は・・・繰り返しになりますが、上記の先日記事に書いたとおりになります。すなわち、米ドルは、わが国(の日銀の現行金融政策)の強力なサポートもあって?すでに脱却不可能の「不動産本位制」(ドルの価値を米不動産の価額に裏付けるシステム)に基づいている以上、その価格が下がってしまっては―――不動産価格に照らした実質金利が上がってしまっては)―――ドルの価値そのものも下がってしまうのでNG、といったこと。もっとも、同価格がさらに上がっていってしまうのも、(家賃等の値上がりを通じて)インフレ圧力を高めるのでけっして好ましくはないでしょう・・・が、上記を考えれば、そこは目をつぶらざるを得ませんね。
ということでFRBとアメリカには不動産本位制を極めていく以外の道はありません。それは必然的に金の価格のドルに対する上昇―――ドル価値の金に対する一段の下落―――の黙認やむなし、ということになりますね・・・