(前回からの続き)
ご存じのように、このほど日銀は、これまでの金融緩和策の見直しを決定しました。短期金利の誘導レンジがマイナス0.1%程度だったのが、今後は0~0.1%程度になるように促す等との由です。となれば・・・日本の金利が上がるとの見通しが立ち、先述から逆に利下げに向かう(しかない)であろうアメリカとの金利差縮小が意識され、為替レートは円高ドル安へ・・・となりそうですが、足元ではむしろ年初来でいちばんの円安ドル高となっています。上記見直しとはいえ日本では金融緩和的な政策スタンスが継続、他方でアメリカはインフレ高止まりで高金利が継続(?)との観測で、そうなっている模様・・・
上述のように、日本経済そして国民所得の世界史的なマイナスの元凶はこの円安、そして、この国家存亡の危機を現出し続けてきたのは日銀の金融政策(円安誘導)です。よって同政策を見直そうというのなら同レートの円高への転換を強く意図したものではなくてはならないし、政府等もそれと連携して、この間に「高値掴み」してしまったドル等資産の売却等に動かないと・・・って誰一人としてこのあたりに言及するはずもなく・・・
以前のこちらの記事等で述べたように、短期金利とは異なり、長期金利は本来、中銀が金融政策でどうこうできるものではありません。ゆえに、この長期金利とインフレ等の関係は市場原理のもとで自然に決まるところ、日銀がヘンにこれに介入しない限り、わが国は、そのファンダメンタルズ(世界一の純資産国&恒常的な経常黒字国であること等)から、両者の差である実質金利(=長期金利-インフレ率)はつねにプラス基調となるでしょう。このプラスこそ、真の意味での成長の配当であり豊かさの増分であることも、過去記事で繰り返し指摘済み。裏を返せば、日銀がヘンな介入をしてこれをマイナスにしてきたからこその「体たらく」だったわけです。したがって、上記撤廃は「体たらく」状態からの脱却に向けて絶対に必要な最初の一歩になり得るわけで・・・
なお、日本の昨年のインフレ率は年3.2%(!)もの高さで、一方の長期金利はほぼゼロだから、実質金利はマイナス3%もの低さ(・・・って、そりゃ大半の日本人の実質賃金はマイナスになりますよ!)。となると数字上は、実質金利がプラスになるには長期金利は3%台半ば程度は必要ということになります。が、これ実際にそこまで上がることはないはず。というのも、今後、日本の金利が上がるにつれて円高になり、それだけエネルギーをはじめとする輸入原材料インフレが緩和されてインフレ率全体が低下すると予想されるためです。これが1%程度になれば長期金利は1%(あまり)でかまわない(実質金利がゼロ以上となる)わけで、この程度なら、本邦財政の利払い負担も大きくはならないし、ジャパンマネーはプラスリターンを得られる日本国債投資に戻るため、その価格が支持されて金利も大きくは上がらない(上がりようがない)というものです。
もっとも、日銀そして本邦政府は、引き続き上記「ヘンな介入」―――市場原理に反する介入・・・って、ぶっちゃけ(円よりも本来は利回りが低い)米ドルの買い支え誘導―――をし続けるつもりでしょう(?)。さもないと実質金利が「日>米」となって円高ドル安、つまりドルとアメリカの「終わりの始まり」を加速させかねませんからね・・・