世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【デフォルトで国内ユーロはドラクマに強制転換?】ギリシャが教える金(ゴールド)の大切さ①

2015-02-27 00:01:58 | 金(ゴールド)

 ここのところ連日のように日本以外の(?)世界中の政治家や投資家をハラハラドキドキさせてくれる欧州の小国・ギリシャ。この国を見ていると、つくづく(ゴールド)って個人にとっても国家にとっても大切なのだな~と痛感させられます。本稿ではこのあたりで考えるところを綴ってみたいと思います。

 まずはギリシャの一個人の立場からみた金のありがたさについて。

 ご存知のとおり、現在、新たな支援策をめぐってギリシャはユーロ圏諸国と厳しい交渉を行っている最中です。で、大多数の同国民からすれば、様々な面で債権国を相手に戦っているチプラス現政権を応援したいところでしょう。

 しかし、その一方で人々は冷静に自身の資産を守るための行動を起こさなければなりません。さもないと彼ら彼女らの「ユーロ」預金の価値が強制的に切り下げられて多大な損害を被る可能性が高いからです。もしも上記交渉が決裂し、融資金の供給が断たれてギリシャがデフォルトと「Grexit」つまりユーロ圏からの退出に追い込まれたら、同国債を大量に抱えたギリシャの銀行は預金の払い戻しができなくなるため、当局は預金封鎖を断行せざるを得なくなります。とはいえ、いつまでも閉店を続けられるはずはなく、遅かれ早かれ銀行は窓口を開いて何らかの「おカネらしきもの」を預金者に渡さないとなりません。で、そのとき支払われるのはユーロではなく、おそらくはユーロ札に「D」のスタンプが押された(?)以前の通貨「ドラクマ」札・・・。

 その対ユーロの交換比率がどうなるのか見当はつきませんが、オフィシャルは1:1でも、実勢レートの大幅な下落は間違いないでしょう。おそらくは1ドラクマが0.5ユーロ以下、つまり50%以上の暴落なのではないかと・・・。かくしてギリシャの銀行におカネを預けている人は国家のデフォルト前後でその半分(以上)を失うことに・・・。

 なので、いくら政府には「少しでも対外債務が減らせるようがんばってほしい!」と願いつつも、こうしたヤバい事態が十分に想定される以上、ギリシャ市民としては預金を早めに現金に換えておきたいところです。いまギリシャで起きている預金流出(実質的な「bank run(取り付け)」)にはそんな預金者として当然の行動原理が反映されていると思っています。

 しかし・・・いくら預金封鎖の前に手元にユーロ紙幣を集めておいても、「これで一安心」とはいかないでしょう。たぶんギリシャ当局は国内にあるユーロの流通を大きく制限するとともに、そのドラクマへの公定レートでの交換を強いると予想されるから。まあヤミの両替商に行けば実効レートに近い額のドラクマを手にすることはできるかもしれませんが、それらはあくまでも非合法なので当局の取り締まりがコワいわけで・・・。

 ならば、ギリシャ以外の外国の銀行に預貯金しよう!という手が考えられます。たしかにこれなら同国の追及等が及びにくいし、富裕層を中心に実際にそうしている人々が多くなっていると聞きます。でもこれにしたって100%逃げ切りとはいえないでしょう。「Grexit」の際は、これらギリシャ人預金者の「ユーロ」をどう扱うかが同国とそれら銀行の所在国とのあいだで大問題となり、結局は何らかのペナルティ等が科せられるリスクがゼロとはいえないからです。

 こうしたことをあれこれ想像すると、ギリシャの人々にとって、母国が破綻した後も「ユーロ」の現金や預貯金を持ち続けながら資産の保全を図ることはなかなか難しそうだ―――そんな気がしています。

(続く)

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【諸外国起因の円高が日本を救う!?】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~⑨

2015-02-25 00:01:33 | 日本

(前回からの続き)

 安倍首相の唱える「戦後以来の大改革」―――このうち本稿で関連するところを指摘すると、それは「反ピケティ宣言」を意味する、要するに「アベノミクス(≒円安誘導)」を通じた「r>g」(資本利益率>経済成長率)の「r>>>g」化推進による格差の大きな社会への転換を図るもの―――前回、そんな個人的な解釈を綴りました。

 でも・・・わが国はけっしてそんな国にはならないし(貧富差は大きくならないし)、「お互い様」の精神はこれからも受け継がれていく、たとえ為政者がその枠組みをどれほど破壊しようと企てても―――と固く信じています。

 で、今回、そんな良き日本社会の伝統をアベノミクス(≒円安誘導)の先述の「挑発」から守ってくれるのは・・・諸情勢から判断して「外国のような気がしてなりません。つまり、直近では欧州(ギリシャ)であり、やがては中国、そして最後のトリは、何といってもやはりアメリカ様でしょう(?)。いずれも資産バブルの再膨張、そしてその最終清算で大量のマネーを刷るしかない―――自国通貨の価値を切り下げることで、結果として日本を救ってくれる―――円安誘導の目論見を打ち砕き、の価値を高めてくれる―――ハイパーインフレな(???)国々(の銀行群?)・・・。

 というわけで、安保条約の取り決めに基づいて(?)、われらの御大将がアベノミクスの脅威からこの国を守ることになる―――良し悪しは別にして、そんな結末が待っているのではないでしょうか・・・。

(「ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~」おわり)

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【「アベノミクス宣言」≒「反ピケティ宣言」】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~⑧

2015-02-23 00:01:13 | 日本

(前回からの続き)

 ということで、90%は個人的な「ひがみ節」になってしまいましたね、どうかご容赦を・・・。それでも10%は「r>g」(資本収益率>経済成長率)がもたらす日本の衰退を憂える気持ちを記しているつもりです。

 以前、「世界長者番付であまり目立たない日本の幸せ」と題して、日本には世界トップクラスの資産家こそ少ないけれど、その分、他国と比べて貧富差が小さく、そこそこの「小金持ち」の数が多いことが、わが国の経済や文化の発展につながっている、と書きました。100人中、1人だけがフェラーリを10台所有し、残りの99人が自転車しか持っていないような社会と、フェラーリに乗っている人は1人もいないけれど、100人全員が何らかの自動車を持つ社会のどちらが豊かといえるか―――断然、後者であり、それに近いのが日本の社会だ、といったようなことです(もっとも、中国やインドがそんな国になったら、地球は保たないけれど・・・大丈夫、両国ともそんな社会は作れそうにないから!?)。

 こうした格差の小さな社会を、(共産主義とか社会主義国家のような)過剰な政府の介入なくして築いてきた日本は、カネがすべて!のこの弱肉強食の現代世界では稀有な国といえるでしょう。その理由はいろいろ考えられますが、いちばんの根底に国民の品格の高さ―――けっして「自分さえ良ければ・・・」ではなく「楽しいときも苦しいときもお互い様」という他者に対する思いやりの気持ちがあるのは間違いのないところ。それは不幸にも大規模な自然災害に見舞われた人々の助け合う姿などに如実に表れていると思います。そんな国に生まれたことを本心から幸せに思っているのですが・・・。

 安倍首相は先日の施政方針演説で「戦後以来の大改革」と銘打ち、「アベノミクス」(≒円安誘導)を引き続き進める意向を表明しました。本稿で述べていることに関連付けすれば、これって「r>g」を「r>>>g」にすること、つまりエネルギーおよび食料を狙い撃ちにするように円安インフレを煽り立て、これと平行して消費税率を引き上げて大半の国民の実質所得や資産を目減りさせつつ、「円安株高」の演出で外国人の日本株・不動産投資を促して資産効果を高め、一握りの資産家層の資本利益率を向上させようとする政策方針と解釈できそう・・・。

 その意味で首相の同演説は時節柄「反ピケティ宣言」と言い換えられると思っています。それは上記のこの国の「お互い様」の伝統や美徳を根底からひっくり返し、「r>g」のいっそうの推進、要するに「資産を持っている者から豊かになれ、そしてそれをほぼ丸ごと子孫に相続して世代を超えた特権階級入りをめざせ」という中国の「先富論」さながらの格差社会をこの日本にも現出させる!という強い決意の表れなのかも(?)。であれば、たしかに戦慄を覚えるほどの「大改革」には違いありませんが・・・。

(続く)

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【さらなる強化が求められる相続増税】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~⑦

2015-02-21 00:03:52 | 日本

(前回からの続き)

 本ブログで以前から綴っているように、わたしは相続税および贈与税の増税が、わが国の主要政策課題等―――社会保障制度の維持・充実、歳入面の強化、資産格差の理不尽な拡大の抑制など―――を解決・達成する重要な手段だと考えています。

 で、その相続税ですが、今年1月1日から改正法が施行されています。これによって相続税を納付することになる人の割合は、改正前の4%程度から6%程度に高まると見込まれています。また税収のほうも2400億円ほど増加すると試算されています。フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が言う「r>g」(資本収益率>経済成長率)に基づく相続財産の世襲が広げる貧富差の緩和を図る観点からすれば、今回の法改正は適切だったと考えています。

 それでも・・・この程度の「小規模」な改正では、相続税や贈与税が持つ経済的不均衡の是正機能を働かせるには不十分といえるでしょう。先述したとおり、わが国の1年間の相続資産の合計額が50~100兆円ほどと推測されるなか、相続税収額は改正後でもせいぜい2兆円程度にとどまり、当該資産の大半が引き続き世襲される構図に大きな変化はなさそうだからです。なので、上記課題に本気で取り組むためには、もっと同税収が増えるような大胆な法改正が必要なのではないかと・・・。

 このあたりについては以前、こちらの記事に試案を書きました。それは、相続税・贈与税を増税して、それらの税収合計額を20兆円程度まで高めるというものです。「20兆円」とした理由はおもに2点。1つ目は、年金等の財源として国民の年間相続資産から国が徴収する割合が4割程度(20兆円/50兆円)までなら許容されるだろうと考えたため。そしてもう1点は、消費税率が10%になった際の消費税収額(20兆円台と推定)と相続税収額をほぼ同じにすることで、「逆進性」のある消費税の増税で中間層以下の世帯や若年層により重い負担を強いる分、富裕層にはその代わりに相続税・贈与税をいっそう多く納付させることで、両者間の過剰な格差拡大を防ぐ必要があると考えたためです。

 もっとも、上記のような相続増税が実現する可能性は高くはないでしょう。税制に関する意思決定者―――政界(二世議員等)、官界、財界、学界のリーダーたちの多くは資産家であり、「r>g」―――要するに資本収益率の高い方々なわけですからね・・・(100%ひがみ根性で書いています、スミマセン)。したがって、この恩恵が脅かされることになる相続税や贈与税の増税を自分たちから唱えるインセンティブはありません。その逆に、消費増税の必要性をさらに訴えることで、ピケティ・ブームに後押しされた資産課税の強化に向けた動きを封じようとするのではないでしょうか。なぜなら、彼ら彼女らにとっては「相続税>消費税」だから・・・。

 ということで、もし自分が政府税制調査会の委員で、親の遺産を当てにできる立場、あるいは子孫に十分な財産を遺せる立場なら、香水の匂いがプンプンする(?)会場で、間違いなく「消費税率をもっと引き上げよ!」なんて主張をしますね~。ついでに「ピケティ理論は間違っている。少なくとも日本には当てはまらない」とか、「日本は資産格差の小さな国だし、これからもそうだ」なんてことも・・・。ああ、そんなことが言える星の下に生まれたかった・・・!?

(続く)

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【格差大国に変貌しつつある日本・・・】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~⑥

2015-02-19 00:01:20 | 日本

(前回からの続き)

 さて日本です。

 先述のアメリカや中国などと比べると、現時点のわが国は貧富差が比較的小さい国だといえるでしょう。しかし近い将来、日本も米中両国のような格差大国に変貌する可能性は十分にあります。それを示唆するデータが、高齢者に偏った個人資産の分布と相続税収の少なさです。

 上記のグラフは個人の金融資産の年代別の所有率(2013末時点、出典:日経)を表したものです。これによると、金融資産をいちばん多く持っている年代は60代で全体の34%、次が70代以上の29%と、60歳以上の「リタイア世代」の合計で63%を占めています。他方、50代以下の「現役世代」の合計額は37%に過ぎません。

 たしかにリタイア層、とくに60代の方々が多額の金融資産を有している事情は理解できます。還暦を迎えたあたりは現役引退の前後であり、退職金等を取得するタイミングに当たるため、たいていの人にとっては資産額が人生でもっとも多い時期に相当するだろうと考えられるからです。それまでの長い社会人生活のなかでこつこつと預貯金し、老後生活等に備えてきたという方も少なくないでしょう。

 それでも、上記リタイア世代と現役世代との金融資産額のギャップは大きすぎるように感じます。なぜなら、この国のGDPの6割を構成する「個人消費」の主役は50代以下の人々のほうだからです。このまま現役層、とくに若年層の資産額が貧弱なままでは、住宅や車などの耐久消費財の売り上げはなかなか伸びないし、育児や教育に支出を増やす余裕が持てないために子どもの数も増えず、成長停滞や少子化に拍車がかかるリスクが一層高まります。

 もっと問題だと個人的に思うのは、上記リタイア層の資産の多くが自分たちの子孫(相続人)だけに受け継がれる一方で、それ以外の一般国民への資産配分が不十分なままに放置されていること。もう少し具体的には、日本では相続税贈与税が持つ資産格差の是正機能が十分に発揮されてはいないということです。

 わが国の個人金融資産の合計額は約1645兆円(2013末時点)となっています。で、これらのうち毎年発生する相続資産額は・・・正確に算出するのは難しいですが、かりに上記の70代以上の所有資産の1割がこれに当たるとすると、1645×29%×1割=48、ということで、50兆円くらいと推定されます。これは金融資産だけだから、不動産等を加えると50~100兆円のあいだくらいになるだろうと思われます。これに対し、相続税の税収額は約1.55兆円(2014年)。つまり毎年生じる数十兆円もの相続財産の大半が次世代のための社会保障等の財源に回ることなく世襲されていることになります。

 というわけで、アメリカとか中国のような「r>g」(資本収益率>経済成長率)がもたらす「世襲制資本主義」が日本でも形成されつつある、いやすでにそれは形成され、年々強固になっている―――そんな懸念を抱いています。

(続く)

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【中国:すさまじき「r>g」で動乱は不可避?】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~⑤

2015-02-17 00:01:40 | アジア

(前回からの続き)

 先述したアメリカ以上にr>g」(資本収益率「r」が経済成長率「g」を圧倒的に上回って持続不可能な格差を生み出している状況)のすさまじさを見せつけている国が中国でしょう。

 本来ならば「平等」こそ最高の理念とすべき共産党の一党独裁が続く中国ですが、その実態は・・・ご存知のとおりです。たしかに毛沢東時代(1970年代半ばまで)には皆がそろって貧しいという意味での平等感があったのでしょうが、1980年代半ば以降の小平の「改革開放」以降、今日までの中国は、まさに同氏の「先富論」(「可能な者から先に豊かになれ。そして落伍した者を助けよ」:Wikipediaより)のとおりの社会になっています

 いや、違いますね。まあ前半はそのとおりになったけれど、後半―――落伍した者を豊かになった者は助けよ―――はとても実現したとはいい難いでしょう。その意味で、中国ほど「トリクルダウン仮説」なんて成り立たないことを如実に教えてくれる国はないと思っています。かくして一握りの富者はますます富み、99%の人々の所得や資産はなかなか増えず、両者の格差は拡大する一方・・・。

 そのあたりを示す例として「労働分配率」(生み出された価値のうちの労働者に還元された部分の割合)をあげることができると思います。中国の率は40%程度と、独仏等の欧州諸国の60~70%、アメリカや日本の60%台前半などと比べると極端に低くなっています。その一方、残りの60%(資本分配率)は特権階級(共産党幹部とか国営企業の経営者等)の取り分となっています。たしかこの国、プロレタリアート独裁(労働者階級)の国であって、ブルジョアジー(資本家階級)は「敵」なんじゃなかったっけ・・・?

 で、この赤い「資本家」たちに厚く分配された富は財産となって加速度的に、かつ世代を超えて増え続けていきます。なぜなら、中国では富裕層の資産所得等への税率が低い(一律20%程度)うえ、いまだに相続税が導入されていないからです。まさに「r>g」・・・。これではお金持ち、とくにその子息子女はウハウハですね・・・。

 いま中国の習近平政権は「反腐敗キャンペーン」を展開し、不正蓄財等に走る多くの共産党幹部や役人等を摘発し断罪しています。まあその志は評価できますが、これがかの国の経済的不均衡の抜本的な是正につながることはないでしょう。本気で中国が「平等」の理念を実現するためには、ピケティ氏が推奨する累進課税制度とか資産課税の導入・強化等が不可欠でしょうが、これは習氏を含む共産党という名の既得権益層の利益に真っ向反する仕組みだから、まず無理なはず・・・。

 結局、中国は3千年のカルマの歴史を繰り返すことになる―――一部の富者の理不尽な支配に耐えかねた大多数の人々(多くは農民)が蜂起、これを打倒しようとして国が乱れることになる―――のではないでしょうか。それが「王朝国家」中国の宿命だと思っています。

(続く)

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【「アメリカン・ドリーム」は死語に・・・】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~④

2015-02-15 00:04:24 | アメリカ

(前回からの続き)

 フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が述べるところの「世襲制資本主義」(経済の大部分を相続による富が占める状態)がアメリカにおいて顕著に形成されていることを象徴的に示すように思える方がわたしたちの身近なところにもいます。それは、キャロライン・ケネディ駐日大使。

 同氏は言わずと知れた故ケネディ大統領の長女。「偉大な米大統領ランキング」上位常連のJ.F.K.のお嬢さまという超セレブです。で、セレブなのは生まれ育ちばかりではありません。この方の資産規模がまたスゴい・・・。

 ブルームバーグ報道によると、2013年の駐日大使着任前に規定によって公開されたケネディ氏の個人資産額は6700万~2.78億ドル(1ドル117円換算で約78~325億円!)におよぶそうです(日本の比較的リッチな政治家の資産額よりもゼロが2つ以上多い額!)。N.Y.やワシントンの不動産、各種の金融資産に加え、米課税当局の手が及ばないタックス・ヘイヴンとして有名なケイマン諸島にも資産を所有していることが明らかになっています。

 もちろんこれらのなかには同氏が長年の労働の結果として手にした分も少なくないのでしょう。ですが・・・この資産のスケールは、一般人なら100回くらい生まれ変わって汗水流して働かないと積み上げられないくらいの超ハイレベル。ということは、やはりケネディ家の・・・と憶測せざるを得ないわけです、(ひがみっぽい)日本の一庶民としては・・・。

 この「ケネディ」氏、そして前回述べた「クリントン」氏や「ブッシュ」氏に象徴されるように、現在のアメリカには、大統領輩出一族のような一握りの人々だけに世襲を通じて巨万の富や権力が集中する傾向があるといえそうです。彼ら彼女らの桁違いの資産額からすると、アメリカにはそれを結果的に許容するような仕組みがあるのでしょう。つまり、相続財産とか株・債券・不動産等が生み出す利益=キャピタルゲインに対する課税がユルいということです。

 さらにいえば、大統領や国会議員などのトップ政治家になる層が限定されていることがアメリカの既得権益者(大企業経営者とか株主など)にとっては都合が良い、という面も米エリート支配の風土醸成に寄与しているものと思われます。なぜなら、自分たちの利益の維持拡大を働きかける相手(政治家等)が少ないほうが、その手段としての企業献金とかロビー活動を効率的に行えるため。

 こうして互いのニーズが一致した政財界(ついでに学会)は結託し、特権階級の仲間内で利益を極大化することで、この地位を脅かしかねない他者(≒大多数の国民)の取り分(労働分配率等)の増加や勢力伸長を抑制します・・・。かくしてもたらされたのが1%層と99%層のあいだの絶望的なまでの格差―――これが自由と正義の国を自称するアメリカの現実。誰でも努力すれば夢は叶えられる「アメリカン・ドリーム」はもはや死語に等しい―――そう思っています。

 今月はじめ、米オバマ政権は、富裕層増税や中間層向けの支援策を織り込んだ来年度予算教書を米議会に提出しました。長年の「r>g」(資本収益率>経済成長率)がもたらした財産や所得の格差を少しでも是正しようという思いが多少は(?)感じられる内容です。

 しかし・・・それが実現される可能性は限りなく小さいでしょう。議会の多数派を占める共和党がこれを否決するであろうことはもちろんですが、それ以上に、現在のアメリカの上記のシステム―――トップ1%が富を独占するシステムは、いまやそんな小手先の政策程度で揺らぐはずがないくらい堅牢だからです。で、もし将来、アメリカで経済的格差が大きく修正される出来事が起こるとしたら、そのきっかけは、選挙等の民主的なプロセスを経たものではなく、多くの犠牲がともなう何らかの「力」によるものになるのかもしれない・・・そんな予感がしています。

(続く)

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【またもクリントン?ブッシュ?】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~③

2015-02-13 00:00:14 | アメリカ

(前回からの続き)

 日米欧中銀の量的緩和策(QE)のもと、トップ1%の資産家が不動産や株を左右に動かすだけで巨額のキャピタルゲインを手にしている。その大きさは一般的な勤労者の月給や年収を軽く凌駕するほど・・・。となれば「真面目に働くのがバカバカしくなる!」―――99%の人々はそう感じるのではないでしょうか。

 そのうえ、彼ら彼女らはインフレ(手持ち資金の目減り)に悩まされます。もちろんQEによってマネーが市場にあふれたことで引き起こされたもの。これは一握りの富裕層にとっては資産価格を跳ね上げるので好ましいですが、大半の人々にとっては、自分たちの収入の伸びをはるかに上回る勢いでモノやサービスの値段を押し上げるという「悪いインフレ」にほかなりません。住宅価格は手が届かないほどバカ高くなるのはもちろん、何とも悩ましいことに日々の食料とかエネルギーといった生活必需品・サービスの価格が消費者物価指数の上昇率を超えるペースで上がっていきます。ついでにいうと、アメリカなどでは大学が上記のインフレに便乗して(?)学費を大幅に値上げしたため、もはやお金持ちの子息しか高等教育を受けられなくなり、貧富の格差が教育の格差を生み出すという悪循環が生じています

 以上のようなr>g」(資本収益率>経済成長率)の状態が一定期間続けば、「21世紀の資本」を著したフランスの経済学者トマ・ピケティ氏が指摘するように、持てる者と持たざる者の間に大きな格差が生まれるとともに、それが次世代に受け継がれてさらに広がっていくという「世襲制資本主義」が形成されていくであろうことは容易に想像がつきます。

 で、そのあたりはやはり新自由主義の母国でありQEの先鞭国とでもいえそうなアメリカにおいて顕著に見受けられる傾向です。そのへんについて以下、具体例を挙げながら考えるところを綴ってみたいと思います。

 アメリカで財産とか権力の世襲が進んでいる様子が端的に現れている例が、来年に予定される大統領選の有力候補者の顔ぶれだと思っています。つまり、民主党のヒラリー・クリントン氏、そして共和党のジェブ・ブッシュ氏―――ご存知のとおり、前者はクリントン第42代大統領の奥さま、そして後者はブッシュ第41代大統領の息子で43代大統領のG.W.ブッシュ氏の弟(ややこしい・・・)。まあ現時点で誰が大統領になるのかは分かりませんが、このお二人のいずれかが次期アメリカ大統領になる可能性は十分にあると思われます。

 たしかに両氏ともに米大統領にふさわしい資質を備えていらっしゃるのでしょう。でも・・・正直、「誰かほかにいないのか・・・」とも思ってしまうわけです。なぜならアメリカには2億を超える多種多様な才覚を持つ人々(成人)がいるはずだからです。にもかかわらず、またもや(?)「クリントン」「ブッシュ」になってしまうということは・・・かの国ではエリート層の固定化および非エリート層との断絶化が進み、あらたな才能が頭角を現すチャンスがきわめて小さくなってしまったということなのではないでしょうか。

(続く)

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【貧富差はむしろ広がる傾向・・・】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~②

2015-02-11 00:01:54 | 世界共通

(前回からの続き)

 「r>g」――――――資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るとき、資本主義はおのずと持続不可能な格差を生み出す。資産によって得られる富のほうが、労働によって得られる富よりも早く蓄積されやすいため、資産金額で見たときに上位1%の位置にいる人のほうがより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しやすい。また、蓄積された資産は、子に相続され、一方で労働者には分配されず、今日の世界は、経済の大部分を相続による富が握っている「世襲制資本主義」となっている・・・。

 フランスの経済学者ピケティ氏が唱えるこの経済論は、個人的にはたいへん共感できるものであり、これが世界各地で大きな反響を呼んでいることをポジティブに捉えています。というのは、たいへん僭越ながらこのわたしも、現代社会の最大の問題が「格差」であり、その是正こそが最優先の政策的テーマだと考えているため。だから今回のピケティ・ブームを機に、国内外で貧富差の問題に対する関心や危機感が高まり、この解決・解消への動きが活発化することを期待しています。

 このあたりについては以前、こちらの記事に「差取り」と題して綴ったことがあります。当時の各国(アメリカ、フランス、韓国、そして日本)における格差の実態と、その均平化を図ろうという取り組み等を紹介し、他方で金融政策とか消費増税がそれを妨げる方向に作用することを指摘しつつ、この差取り、つまり格差是正こそ、国や社会の健全な発展の方向性であるとともに、財産等に対する過剰な執着を弱めることで人々を文字通り「悟り」に至らしめる道だ、なんてことを書きました。

 あれから2年あまり・・・。差取り(悟り)は遅々として進まず、といった感じかと思います。それどころか、最近の統計データや各種報道を見るにつけ、世界各地の持てる者と持たざる者の差はむしろ広がったといえるでしょう・・・。

 それはまあ当然の話です。この間、日米欧中ともに中銀の量的緩和策(QE)をエンジンとする資産バブル(不動産、株、債券)の膨張に走ったわけだから。まさに上記「資産によって得られる富のほうが、労働によって得られる富よりも早く蓄積されやすい」とピケティ氏が指摘するとおりの展開です。バブルの恩恵を受けた一握りの資産家のキャピタルゲイン(資産の価格上昇から得られる利益)の増加率が、大多数の勤労者の賃金上昇率を圧倒的に上回り、両者の所得や財産額の差が絶望的なくらいに開いてしまった、ということです・・・。

(続く)

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【「r>g」大いに共感】ピケティ・ブーム~格差是正の契機に~①

2015-02-09 00:04:44 | 世界共通

 「r>g」―――資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るとき、資本主義はおのずと持続不可能な格差を生み出す

 このシンプルな結論を導いたフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」が世界的なベストセラーになっています。わたしは同書こそ未読ですが、関連本やネット情報などを通じて得たピケティ理論にはたいへん興味をひかれ、かつ共感しました。ということで本稿ではピケティ・ブームについて考えるところを綴ってみたいと思います。

 で、まずは「21世紀の資本」の中身ですが、仏語原本、英語版・日本語版のいずれも700ページ前後を超えるほどの大部です。なので、ここではその概要をWikipediaから抜粋させていただきます。

(抜粋はじめ)---------------

資本主義の特徴は、格差社会が起きることである。そして、富の不均衡は、干渉主義を取り入れることで、解決することができる。これが、本書の主題である。資本主義を作り直さなければ、まさに庶民階級そのものが危うくなるだろう。

議論の出発点となるのは、資本収益率(r)と経済成長率(g)の関係式である。rとは、利潤、配当金、利息、貸出料などのように、資本から入ってくる収入のことである。そして、gは、給与所得などによって求められる。過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年に5%程度であるが、経済成長率(g)は1%から2%の範囲で収まっていることが明らかになった。このことから、経済的不平等が増してゆく基本的な力は、r>gという不等式にまとめることができる。すなわち、資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、資産金額で見たときに上位10%、1%といった位置にいる人のほうがより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しやすい。また、この式から、次のように相続についても分析できる。すなわち、蓄積された資産は、子に相続され、労働者には分配されない。たとえば、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのベル・エポックの時代は、華やかな時代といわれているが、この時代は資産の9割が相続によるものだった。また、格差は非常に大きく、フランスでは上位1%が6割の資産を所有していた。

一方で、1930年から1975年のあいだは、いくつかのかなり特殊な環境によって、格差拡大へと向かう流れが引き戻された。特殊な環境とは、つまり2度の世界大戦や世界恐慌のことである。そして、こうした出来事によって、特に上流階級が持っていた富が、失われたのである。また、戦費を調達するために、相続税や累進の所得税が導入され、富裕層への課税が強化された。さらに、第二次世界大戦後に起こった高度成長の時代も、高い経済成長率(g)によって、相続などによる財産の重要性を減らすことになった。

しかし、1970年代後半からは、富裕層や大企業に対する減税などの政策によって、格差が再び拡大に向かうようになった。そしてデータから、現代の欧米は「第二のベル・エポック」に突入し、中産階級は消滅へと向かっていると判断できる。つまり、今日の世界は、経済の大部分を相続による富が握っている「世襲制資本主義」に回帰しており、これらの力は増大して、寡頭制を生みだす。また、今後は経済成長率が低い世界が予測されるので、資本収益率(r)は引き続き経済成長率(g)を上回る。そのため、何も対策を打たなければ、富の不均衡は維持されることになる。科学技術が急速に発達することによって、経済成長率が20世紀のレベルに戻るという考えは受け入れがたい。我々は「技術の気まぐれ」に身をゆだねるべきではない。

不均衡を和らげるには、最高税率年2%の累進的な財産税を導入し、最高80%の累進所得税と組み合わせればよい。その際、富裕層が資産をタックス・ヘイヴンのような場所に移動することを防ぐため、この税に関しての国際的な協定を結ぶ必要がある。しかし、このようなグローバルな課税は、夢想的なアイディアであり、実現は難しい。

---------------(抜粋おわり)

 「21世紀の資本」の原書には、上記を裏付けるための200年以上にわたる資産や所得等の膨大な量のデータが包含されています。その一方、一般的な経済論文とは違って同書には数式がほとんど出てきません。その代わりに英仏の小説などを引用して、相続財産が富をいかに手早く得られるための手段であるか、について言及しています。

 興味深い内容としてはアメリカン・ドリームの否定が挙げられます。つまり、アメリカでは長い間、生まれが貧しくても努力すれば豊かになれる、と信じられているが、ピケティ氏は現在のアメリカは他国と比べてそうした事実が高くはないことを実証し、合わせて大学進学においても両親の経済力が大いにモノをいうということを指摘しています(そりゃそうでしょうね。いまのアメリカの大学は「蓄財の府」だし・・・)。

 また氏は「クズネッツの仮説」(「資本主義経済では経済成長の初期には格差が拡大するが、その後、格差は縮小に向かう」という説)について分析し、たしかに1955年時点では格差は縮小していたが、1980年代になると格差がふたたび拡大していることを示してこれを否定しています。そのうえでこの仮説は「冷戦時代に共産主義に対抗するために作られたものにすぎない」と述べています。

 以上、Wikipedia等をベースに、ピケティ理論の概要をご紹介してみました。

(続く)

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