(前回からの続き)
ご存じのように、資産(借金)バブルの崩壊≒金融恐慌の破局を防ぐべく、米FRBは現在、超緩和的な金融政策(量的緩和:QE)を実行して、あらゆる債券(借金の証文)を購入して債務者(国家、自治体、企業などなど)の(ドル)資金繰りを支えているところです・・・
・・・が、そこまでしてドルを市中にばらまいても、なかなか「ついてこない」―――株、債券、不動産等のようにドル散布量に比例して価格が上昇しない―――のが、こちらの記事等で書いた「原油」価格。そのあたり、前述した先物価格の暴落においてもその理由の一端が窺えそうです。つまり、原油の保管庫がいまはどこも満杯で、かつ、今後もかなり先まで貯蔵キャパが限られるのなら、当分、現物の原油を買おうとするところは出てきそうにありません。もちろんその場合、原油先物の取引最終日における価格はゼロか、ひどい場合は先日のようにマイナスになってしまいます。となれば、先物価格は、時間の経過に従ってどんどん安くなる可能性が高いから、いくら市中に「借りて投機をやってください!」といわんばかりに超低金利マネーがあふれていても、これで原油先物を買おう、なんて、高値掴みリスクが大きすぎで、そうできるものではないでしょう。こうして原油価格は上がらずじまいになってしまう、せっかくQEで株や債券等の価格が押し上げられていっても・・・
上記から考えると、QEが、こうして、ほとんど原油「だけ」をついてこさせられない―――その価格を押し上げられない―――のは、さすがのFRBであっても、原油の「最後の買い手」(ラスト・リゾート:last resort)になることができないから、というのが大きい・・・かと思います。当然ですがFRBは、石油貯蔵庫もタンカーも持っていないからです。他方、その他の大半の資産に対しては、実際にいまやっているかどうかは別として、FRBはラスト・リゾートを演じることが可能です。債券(米国債、自治体債、ハイイールド社債・・・)はもちろん株、不動産、金(ゴールド)などなど何でも、かつ市場価格を(大きく?)上回る価額で購入して・・・おカネ(ドル)を振り出すことができる、ってことですが・・・
最近ではこちらの記事等でも書いたように、アメリカ、そして世界にとって、ドル≒石油交換券、つまり石油(原油)とはドルであり、ドルとは石油でもあるわけです。よって、原油の価値がこうして上がらない、そして(FRBの力づくでも)上げられない、ということは、ドルの価値も同じく、ということになりかねません。そのあたりが、上記NY原油先物市場の異常事態が伝えることの本質にも思えてきますが・・・