世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【さすがのFRBも原油の「最後の買い手」にはなれず…】原油価格、長期にわたって低価格継続で…②

2020-04-29 01:20:05 | 世界共通

前回からの続き)

 ご存じのように、資産(借金)バブルの崩壊≒金融恐慌の破局を防ぐべく、米FRBは現在、超緩和的な金融政策(量的緩和:QE)を実行して、あらゆる債券(借金の証文)を購入して債務者(国家、自治体、企業などなど)の(ドル)資金繰りを支えているところです・・・

 ・・・が、そこまでしてドルを市中にばらまいても、なかなか「ついてこない」―――株、債券、不動産等のようにドル散布量に比例して価格が上昇しない―――のが、こちらの記事等で書いた「原油」価格。そのあたり、前述した先物価格の暴落においてもその理由の一端が窺えそうです。つまり、原油の保管庫がいまはどこも満杯で、かつ、今後もかなり先まで貯蔵キャパが限られるのなら、当分、現物の原油を買おうとするところは出てきそうにありません。もちろんその場合、原油先物の取引最終日における価格はゼロか、ひどい場合は先日のようにマイナスになってしまいます。となれば、先物価格は、時間の経過に従ってどんどん安くなる可能性が高いから、いくら市中に「借りて投機をやってください!」といわんばかりに超低金利マネーがあふれていても、これで原油先物を買おう、なんて、高値掴みリスクが大きすぎで、そうできるものではないでしょう。こうして原油価格は上がらずじまいになってしまう、せっかくQEで株や債券等の価格が押し上げられていっても・・・

 上記から考えると、QEが、こうして、ほとんど原油「だけ」をついてこさせられない―――その価格を押し上げられない―――のは、さすがのFRBであっても、原油の「最後の買い手」(ラスト・リゾート:last resort)になることができないから、というのが大きい・・・かと思います。当然ですがFRBは、石油貯蔵庫もタンカーも持っていないからです。他方、その他の大半の資産に対しては、実際にいまやっているかどうかは別として、FRBはラスト・リゾートを演じることが可能です。債券(米国債、自治体債、ハイイールド社債・・・)はもちろん株、不動産、金(ゴールド)などなど何でも、かつ市場価格を(大きく?)上回る価額で購入して・・・おカネ(ドル)を振り出すことができる、ってことですが・・・

 最近ではこちらの記事等でも書いたように、アメリカ、そして世界にとって、ドル≒石油交換券、つまり石油(原油)とはドルであり、ドルとは石油でもあるわけです。よって、原油の価値がこうして上がらない、そして(FRBの力づくでも)上げられない、ということは、ドルの価値も同じく、ということになりかねません。そのあたりが、上記NY原油先物市場の異常事態が伝えることの本質にも思えてきますが・・・

(続く)

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【NY原油先物、史上初のマイナス価格を記録!】原油価格、長期にわたって低価格継続で…①

2020-04-27 12:01:27 | 世界共通

 本邦メディアはネガティブな側面ばかり伝える(?)から、つい、よくないことなのかな~と感じさせられてしまうかもしれませんが、いえいえ、これこそ、わが国にとっては待望の経済環境といえますよ・・・

 こちらの記事等で論じた世界的な原油価格の下落ですが、このトレンド、さらに強まって、まさに異次元ゾーンに突入した感があります。そのあたりを象徴するのが、ご存じ、原油先物価格の「マイナス圏」入りです。

 20日、NY原油先物市場では、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート:アメリカの代表的指標油種)の5月物の清算値が1バレルでマイナス37ドル台と、前日から約56ドルも下がって、原油先物市場で価格が史上初のマイナスを記録しました。その意味は、買い手が売り手から原油だけではなく1バレル当たり37ドルを受け取る、ということで、通常の商取引では考えられない展開です。つまり、先物の売り手には、こうしておカネを支払ってでもいいから原油を引き取ってほしい、という切実な事情があったわけで・・・

 それが、いろいろ報道されているように、原油の貯蔵余地がなくなってきた、ということになります。原油先物の売り手としては、先物で買っちゃったけれど、その保管スペースがなくなってきたので、これを現物で引き取ることはできない、なので、おカネ払うからだれか引き取ってくれ~・・・となって、当該5月物の取引終了日(21日)前日に先物売りが殺到し、上記のとおり価格が暴落した、という次第。

 ということでこれ、米NY市場の、しかも5月先物という、かなり限定された場所とタイミングにおける特異な現象、とみることもできるかもしれません。しかしこれ、貯蔵タンク等が満杯になっちゃうよ~と売り手がネを上げるほど、原油の需要量に対して生産・供給量が過大になっていることに本質的な原因があるといえるでしょう。そのあたりは先日のこちらの記事に書いたとおりで、シェールオイル革命の進展等により、少し前から原油の供給が世界的に増加し、その需給がユルんでいたところ、新型コロナウイルス感染拡大にともなうグローバル経済の減速でその需要が大きく減少する見通しとなったため、差し引きの余剰感がますます高まった、といったあたりでしょう。ということは上記のマイナス価格、けっして一時的なものなどではなく・・・

 足元のWTI価格ですが、今週(27日)の始値は6月限で1バレル16.84ドル、11月限で同27.62ドルなどとなっています。これを見ると投資家らはこの先、原油価格は急速に回復していく、と読んでいるみたい(っても、これら価格は依然として年初の1/3程度にとどまっていますが)。ですが、上記のように、原油の供給過剰はもはや構造的なもの。したがって、今月20日に起こったことが、かなり高い確率で来月20日近くに再び繰り返されると予想されますが・・・

(続く)

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【このままではイタリアやスペインばかりかドイツ〇〇も破綻か?】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU⑧

2020-04-25 00:02:23 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 ・・・って、またまた先送りかい!?

 注目された23日の欧州連合(EU)テレビ首脳会議ですが、復興計画(reconstruction plans)のための基金の設立で合意しました・・・が、その規模や財源や、これをどの国にどのようなルールで配分等するか、などについてはまったく決まらず、それらの概要は来月6日に示されることに・・・

 たしかに復興基金なる新アイデア?が登場したのは一歩前進?に感じられるところです・・・が、これ、2021~2027年のEU中期予算のもとで準備されるそうだから、もともと計画予定だった予算を前倒しで使う、ってだけのこと? それに、いちばん肝心な上記事項、つまりこれまで綴ってきたコロナ債」(EU共通債)構想につながる財政移転(フランススペインイタリア等の財政資金をドイツ等に払わせること)の是非に関する合意が今回も見送られました・・・って、これまで延々と取り沙汰されてきたことが、あと2週間程度では細部・・・どころか「概要」すら決定できないような気がしますが・・・

 このあたりの空気を敏感に反映するイタリアの長期金利(伊国債価格)ですが、現時点(日本時間24日23:00)で1.89%と、同会議前よりも少し下がって(国債価格は少し上がって)います。ということは、市場はドイツがイタリア債務を肩代わりするって期待?しているのでしょうかね。

 ・・・といったことを含め、通貨金融統合・財政不統合であるがゆえに必然的に「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(国債価格の高い順[支払い能力の高い順]を示す不等式)となるEUでは、この種の合意形成がきわめて難しく、こうして先送りにされがちに・・・

 ・・・って、せっかちな市場はいつまでも待ってはくれず、やがて破綻のふちに追いやりますよ、イタリアやスペインを・・・ってばかりではなく、これらの国々にしこたま貸し込んだドイツ・・・の金融システムを(!?)。ちなみに、ドイツ銀行(資産規模でドイツ1位)そしてコメルツ銀行(同2位)の現時点(日本時間24日23:00)の株価はそれぞれ5.55ユーロ、3.13ユーロと、ともに上場来最安値付近に沈没中・・・

 というわけで、イタリアはもちろんドイツにとっても、やはりコロナ債しかない!みたいですよ、メルケル独首相!

(「金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU」おわり)

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【EU分離主義者の主張:伊はハッタリ、独は説得力あり?】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU⑦

2020-04-23 00:02:00 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 本日23日、欧州連合(EU)では、前述テーマのテレビ首脳会議が開催されます・・・が、結末は、イタリアの長期金利が暗示している?ように思えてなりません。その現在の値は2.24%(日本時間22日21:00時現在)と、欧州中央銀行ECB)が資産購入プログラムの実施を発表した先月25日以降でもっとも高いレベルに達しています・・・

 さて、このままだと、同国やスペインそしてギリシャなどでは、統一EUに対する失望や不信の感情が市民の間でいっそう高まり、いわゆる極右とかポピュリストなどと称される反EU政党が支持を集めて政権を獲得するかもしれません。そして彼らは、自分たちの主張に基づき、おのおのがEU離脱、そして独自通貨の創設に動き出す・・・

 ・・・なんて、まず考えられません。そのあたりはこちらの記事などに書いたとおり「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(国債価格の高い順[長期金利の低い順]を表す不等式)が」教えてくれています。すなわち、ここでフランス「未満」(or 以下)に当たるイタリアやスペインなどが、一時の感情に任せて?EUそして共通通貨ユーロの枠から飛び出してしまったら、彼らの新通貨はユーロよりも弱い通貨となるため、ただでさえ重いユーロ建ての債務の返済負担はさらに増して、次々にデフォルトしてしまうでしょう。しかも今度はECBなども助けてくれない?から、結局は、もっと条件の厳しい?国際通貨基金IMF)のマネーに頼るしかなくなります・・・

 それに、いうまでもありませんが、強い通貨であるユーロを放棄して、わざわざ弱い自国通貨に変更する、なんてのも、愚策以外の何物でもありません。それによって、かの国々では輸入インフレが巻き起こり、国民生活が破壊されるだけだからです。通貨安は輸出に有利・・・って、このダメージを差し引いてもEUにいたときよりリターンが増える、なんてことは起こり得ません。彼らにはそのあたりを期待できる産業なんてないし、たとえあったとしても、通貨安誘導で実現されるのは超プラスマイナス成長であることを、ほかならぬ、わたしたち「アベノミクス日本」が全世界に向けて数字で明らかにしているわけですから・・・

 ということで、イタリア等のEU重債務国で台頭が懸念されている?ポピュリストの主張は、何てことはない、一種のブラフに過ぎません(?)。つまり、EUを離脱しちゃうぞ~ユーロに替えて新通貨を発行しちゃうぞ~などと、実際にできもしないことを口にすることで、そうなったら困るでしょ、だから「コロナ債」(EU共通債)を一緒に発行してオレたちの借金を(ちょっと?)肩代わりしてくれよ・・・とドイツらに譲歩を迫ろうというもの(?)。もっともこの手口、ギリシャ危機以来、何度も繰り返されているから、いまさらドイツとかには響かないでしょうけれどね・・・

 他方、同じポピュリストでも、ドイツの一部同勢力が訴える「Gexit」(ドイツのEU離脱)のほうは、ハッタリなどではなく真に説得力のある主張になります。というのも、上記不等式で判断すると、ドイツにとってGexitは金融・財政的にはプラス面が大きい(ユーロよりも強い通貨を手にすることで、いま以上に物価の安定を図ることができ、資金調達コストも安くなり(調達金利が下がり)、そして何よりも仏西伊などにタカられずに済む)ためです。したがって、ただでさえウンザリしていたところにコロナ債でEU仲間のタカり気質に完全に愛想をつかしたドイツ国民が、分離主義の政治家らとGexitを本当に選択する可能性も・・・

(続く)

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【EU首脳会議直前、伊長期金利上昇、プレッシャーの独…】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU⑥

2020-04-21 00:04:47 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 欧州連合(EU)にとって23日のテレビ首脳会議は非常に重要です。なぜなら、その席では、新型コロナウイルス感染拡大に対する経済対策・・・というより、ぶっちゃけ「コロナ債」なるEU共通債の導入・・・というより、ぶっちゃけドイツやオランダら(の納税者)によるイタリアスぺインギリシャらの借金の肩代わり・・・の是非が議論されるわけですからね。とはいえ、前述した事情から、その結論はすでに見えているわけです(?)。すなわち、いつもの鳩首協議を翌朝まで延々と続けたあげく、コロナ危機に全EU加盟国が結束して当たることを確認した!みたいな、実質的には何らの中身のない声明を出して終わり・・・?

 金融市場もそう読んでいるのでしょう。そのあたり、いちばん象徴的で分かりやすいのが、イタリアの長期金利(新規発行10年物国債利回り)の動きかもしれません。前々回、それが15日時点で1.91%と、欧州中央銀行(ECB)による資産購入プログラムの実施決定(3月25日)以降でもっとも高くなった(価格はもっとも低くなった)様子をご紹介しました。その後、仏マクロン大統領の前述インタビューでの発言(イタリア等を支えるおカネの調達手段はコロナ債以外にない!)があって望み?が出てきたせいなのか、先週末は1.79%にまで下がっていましたが、週が明け、やはり共通債の導入なんて無理だろ、と皆が冷静?になった現時点(日本時間20日21:00)では1.94%と2%台入り目前にまで上昇してきています・・・

 足元でのこのイタリア・・・を含むEU重債務国の金利ジリ高は、上記会議に出席する各国首脳、とりわけドイツにはスゴ~いプレッシャーに違いありません(?)。なぜなら、これマーケットが、ECBの金融政策も現行の欧州安定メカニズムESM)も、重大な危機に陥りつつあるイタリアらを救済する手立てにはならないから、何か他の抜本的な解決策を早く出せ!と督促していることの表れ、とも捉えられるからです。これに対してドイツが、原則を曲げずに「ESMに融資を申請しろ」とゼロ回答で返したら(っても、それがもっとも筋の通った返事ではありますが)、イタリアやスペインなどは、失望した市場に国債を一斉に投げ売られ、金利上昇を抑制できなくなってデフォルト(寸前)に追い詰められることでしょう。そして、かの国々は、これまでの自身らの放漫財政を棚に上げ、その責任を、共通債導入を拒否し続けたドイツに押し付けるわけで・・・

 まあドイツだって上記の展開は想定しているでしょう。よって、上記会議の直前である現在、メルケル首相や政権与党そしてドイツ連銀幹部らは、自分たちが最大限譲歩できるのはどこまでか、みたいな議論をしているものと推測します。で、その具体的なところは・・・繰り返しになりますが、ESM融資の条件を相当程度緩和する・・・くらいなのではないか・・・

 まあともかく、ドイツとしても、イタリアやフランスの重篤なコロナ患者を自国に受け入れて治療する、みたいな、たいへん立派・・・だけれどカネは出さない、といったスタンスでやり過ごすことは、どうやら難しくなってきた感じですね・・・

(続く)

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【仏大統領、イタリア等の財政資金を独が払え、と主張?】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU⑤

2020-04-19 00:12:56 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 今月17日の英フィナンシャル・タイムズのインタビューで、フランスエマニュエル・マクロン大統領は、新型コロナウイルス感染拡大で厳しい経済状況下にあるイタリアやスペインの支援に必要なおカネを調達するには、上記した「コロナ債」のような欧州連合(EU)加盟の共通債以外の手段はない、と熱く語りました。そして同時に、こうして集めたおカネは、各国の経済規模に基づいて案分するのではなく、ニーズのある個別の国々に渡るべきだ、とも・・・

 このマクロン氏の言葉は、EUの現行の2つの枠組みが、こうした非常時には機能しないことを明らかにしてくれています。つまり、1つめの欧州安定メカニズムESM)は、融資を受けるかわりに守らなくてはならない条件がキツ過ぎて、そのおカネを財政規律等がユルいイタリアギリシャのような国が借りることは実質的には難しい、ということ。2つめは、欧州中央銀行(ECB)の資産購入プログラム(≒量的緩和策:QE)がキャピタル・キー(ECB出資割合)に基づくため、他国と比べ、より多くの国債等を買い入れて財政資金を低利でファイナンスしてほしいニーズが大きな上記債務国には十分なマネーが供給できない、といったことです。前回までに指摘した、EUの根幹をなすESMとECBの上記の制度上の不備が、マクロン氏の上記イラだちによって、またも露わになったわけですが、それもこれもEUの通貨金融統合・財政不統合に根差すものであるわけで・・・

 さて「コロナ債しかない」というフランス大統領の訴えを、ドイツやオランダなどは当然、突っぱねることでしょう。その理由も前述のとおりで、「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(国債価格の高い順[国債利回りの低い順]を示す不等式)により、かの国々にとってコロナ債のようなEU共通債は自分たちだけで国債を振り出すよりもコストが高いためですが、このほどマクロン氏が、調達した資金は(比例配分ではなく)ニーズのある国にあてがうべき、なんて明言したものだから、ドイツなどは、ますますこの構想には乗れなくなったはず。ようするにこれフランスに、イタリアやスペインやギリシャ(と、ついでにオレたちフランス?)などの財政資金をドイツ(の納税者)が払え!と言われたようなものだからです。したがって、いったんこの要求を受け入れたら、ドイツらは、コロナ禍の今回だけにとどまらず、今後、何かにつけて仏西伊などにタカられかねません。なので同国・・・のメルケル政権は、フランスらにどれほど非難されようと、共通債構想には反対し続けるしかないでしょう、選挙民の支持をつなぎとめるためにも・・・

 まもなく(23日)開催されるEUテレビ首脳会議では上記コロナ債も議論されることでしょう・・・が結論は上記のとおり、すでに見えています(?)。よって、同会議直後から、前記した独国債と伊国債などとのスプレッド(利回り差)はさらに拡がっていくだろうと推測されます。これにECBが十分な対処をすることができないのは上記のとおりで、このままだと本当にイタリアなどはデフォルトしてしまうかも!?・・・

 ・・・ってのは、さすがにマズいので、前述、そして上記のESMマネーの融資条件の大幅緩和とイタリア等へのディスバース、そしてESM債の大量発行とECBによる同債券の買い支えが行われる・・・ことになるのではないか、というのが、繰り返しになりますが、個人的な予想です。

(続く)

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【EU、イタリアのデフォルト!?は容認できずに…】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU④

2020-04-17 00:01:29 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前述したように、そしてこちらの記事を含めて以前から指摘しているとおり、欧州連合(EU)では通貨金融統合・財政不統合であるために、たとえば今般の新型コロナウイルス感染拡大がもたらす深刻な経済的ダメージに対して、すべてのEU加盟国が満足できる共通の財政・金融政策の実行はけっして望めません

 そのあたり、これまた先記「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(国債価格の高い順[利回りの小さい順]に並べた不等式:)に表れてくるわけですが、実際、ここで最上位にあるドイツと下位にあるイタリアの国債(10年物)の利回り差(スプレッド)がここへきて広がりつつあります。前回ご紹介、欧州中央銀行ECB)が総額7500億ユーロの資産買取プログラム(実質的な量的緩和策:QE)を発表した直後の先月26日時点のスプレッドは約1.5%(独-0.27、伊1.24)だったのが、その後はじりじりと拡大して4月15日時点では約2.4%(独-0.46、伊1.91)になっています。これ、ECBの上記政策ではイタリアを(借金の重みから)救うのは中途半端で無理そうだ、と市場が判断しつつあることのサインです。このままだとイタリアの資金繰りは厳しくなるばかりで、やがては債務不履行に・・・?

 ・・・ってなりそうですが、じつはそうはならない(?)ってのが、まあEU流?たしかに理屈上はそのとおり、イタリア・・・のみならず、ギリシャはいまさら言うまでもなく、最悪、上記不等式でフランス未満(以下?)の国々は軒並みデフォルトの危機に直面しそうです。しかし、実際にそこまで極端なことは起こり得ない・・・でしょう。本当にそうなったら、債務国はもちろん債権国のドイツやオランダなどの銀行の多くが破綻し、せっかく統合した通貨(ユーロ)や金融システム(ECB)も解体せざるを得ない・・・ばかりか統一欧州の理念は崩壊、各国は互いに憎しみ合い、それが場合によっては武力衝突等に発展し、かつてのように欧州は暴力やら紛争が絶えない地域になってしまう・・・ことになりかねません。

 じゃあどうなるのか?って、上述の理由からECBのQEは不可、となると予想は非常に難しいのですが、たとえばEU第3位の経済国イタリアをつぶすわけにはいかないだろう、となって・・・結局はイタリアのような重債務国には「欧州安定メカニズム」(ESM)マネーが融資されることになるのではないか・・・っても、現行の条件(財政健全化の目標など)を大幅に緩めて、といったあたりではないかと。これであれば、イタリアなどはESMのおカネを借りやすくなるし、一方のドイツ等は、ECBに、自分にとっては(バブルを煽るから)迷惑なだけの過度な自国債買い入れをさせずに済むから、まあいいかも・・・

 ・・・って、やはりこれもよろしくはありません。なぜなら、いったんこうしてESMのハードルを下げてしまうと、イタリアらは際限なくESMマネーを借りてしまうだろうから、です。このおカネはEU加盟国の国民が拠出した血税ですから、当然、有限であり、そんなふうにサクサク貸し出していけば、あっという間になくなってしまいそう・・・

 ・・・となって、結局ESMはおカネを調達するために債券を発行せざるを得ず、それをECBがQEで(無制限近く?)買い支えてファイナンスするとともに金利の上昇を抑制することになるのではないか・・・ってこれ、何ことはない、危機を理由に振り出す「コロナ債」と似たスキームになりますね。だって、こうして増発した不自然に?低利のESMマネーにすがってきそうなのはコロナ債の提案国になるでしょうからね・・・

(続く)

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【ECBのQEがあまり歓迎されない理由】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU③

2020-04-15 10:05:59 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前回、新型コロナウイルス感染拡大にともなう経済の落ち込みを大義名分とした「コロナ債」なるユーロ共同債の構想は、ドイツやオランダなどがほぼ必然的に反対するために実現される可能性がきわめて低いことについて、本ブログでたびたび登場させている欧州連合(EU)の構造的欠陥―――通貨金融統合・財政不統合―――を表す不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(国債価格の高い順)を示して論じました。

 となってくると、そのコロナ債を提案したフランスなど9か国、つまり上記不等式でフランスあたりから右側に位置する、相対的に資金調達コストが高い国々としては、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策による債券の買い入れ・・・による金利の低め誘導に頼りたくなります。そんなことでECBは、すでに先月下旬、総額7500億ユーロもの資産購入プログラム(実質的な量的緩和策:QE)の導入を決定しています。報道によるとこれ、これまでの国債購入に関する制限の多くを撤廃したとのことで、一見すると、これら諸国を大いにサポートできそうに思えます・・・

 ・・・が、それでもやはり十分とは言えないでしょう。たしかに上記スケールは大きいもの。しかし、ECBのこの手のルールには、こちらの記事等でご紹介した、EU各国の対ECB出資比率「キャピタル・キー:capital key」が適用されるはず。よって、コロナ債の実現を期待する国々にとっては、ECBは自分たちが必要とする財政資金の一部しかファイナンスしてくれないように感じられるでしょう。逆にドイツやオランダのように自力かつ低コストで資金調達ができる国々にとっては、これ以上金利が下がれば、ただでさえ鬱陶しい不動産等のバブルがさらに膨張して経済に悪影響が及ぶだけだから、ECBは余計なことをしてくれるな(われわれの国債をこれ以上買うな)、といいたいくらい(?)。このように、ECBがせっかく頑張ったのに、どこもこれを歓迎してくれていないみたい?・・・なのは、上記の不等式が成り立つためです、EUが財政不統合を続ける限りにおいて・・・

 上記をふまえると、EUが現行の枠組みを維持する以上、この非常時に対応するおカネを融通する仕組みは、コロナ債でもECBのQEでもなく、やはり「欧州安定メカニズム」(ESM)しかない・・・ように思えます。上記QEとは異なり、財政支援をしてもらいたいところだけがESMに資金申請をすればいいわけで、それ以外の国々の金融情勢(国債価格や金利等)が、これによって過度の影響を受けることはないわけですから。

 ということで、前回ご紹介、コロナ債構想の提案国に対するドイツ等の、ESMを頼れ、という回答は、まあ・・・そのとおりではありますね。もっともESMに頼らざるを得ない側は、財政改革等を迫られるからツラいでしょうが・・・

(続く)

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【「コロナ債」実現可能性が低い理由】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU②

2020-04-13 09:00:09 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 新型コロナウイルスの感染拡大で欧州連合(EU)加盟国、なかでもイタリア、スペイン、フランスといった国々は非常に厳しい経済情勢下にあるわけですが、これに向けた対策(雇用維持とか企業の資金繰り支援など)に必要な財政資金は、通常は新規の国債を発行して集めるべきところ、いまのマーケット環境では低コストでの調達が難しくなっています。となると、さらにおカネが必要なところは、EUの金融セイフティーネットである欧州安定メカニズムESM)に融資を申請する、ということになりそうですが、それには財政運営目標等に関する約束を守らなければならず、敷居が高過ぎて・・・

 ・・・となって出てきたのが、「コロナ債」なる構想です。これ、実質的に、以前からEU内で取り沙汰されてきたスキームであるユーロ共同債といえるもの。ぶっちゃけ、あれこれ条件を付けられるESMマネーはイヤだから、EU共通の債券を振り出して集めたおカネを使えるようにしようよ、いまはコロナ禍の非常事態時なのだからアリでしょ?といったあたりでしょうか・・・

 で、この構想、先月25日、市場での資金調達のために債務共通化の仕組みを設ける必要があると訴える共同書簡によって明らかになったものですが、これに加わった国がイタリアフランス、スペイン、ポルトガル、アイルランド、ベルギー、ルクセンブルク、スロベニア、ギリシャの9か国。他方、これに反対し、ESMを活用するべきだ、との姿勢を堅持しているのがドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランドなどといった国々。コロナ債については現時点まで長々と議論されているみたいですが、どちらかが歩み寄って・・・みたいな動きは見られないようです。

 上記コロナ債・・・のようなEU共通の債券の構想が、まず実現することはないだろう、ということは、本ブログで何度も登場させているEU加盟国の国債価格(利回り)の序列を示す不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」をみれば分かるというものです。以前から指摘しているように、そして本稿タイトルのとおり、EU圏は通貨金融統合・財政不統合なので、同じタイミング・同じ年限で発行された国債でも、発行国の財政状態(≒支払い能力)等が反映されるために、たとえばドイツのものとギリシャのものとでは価格や利回りが大きく異なってしまいます(当然、ドイツ国債は高価格低利回り、ギリシャ国債は低価格高利回り)。で、その中間付近にある国が、フランスあたり、といった具合になります。

 そういうわけで、ここでコロナ禍を大義名分としたEU共通債が発行されるとなると、その価格・利回りはおおむねフランス国債あたりになる(?)ものと思われます。それが上記不等式においてフランスより下位に当たるスペインやイタリア等、そして上位に当たるドイツやオランダ等にとって意味することは・・・前者にとってはトク(自力で国債を発行するよりも調達コストが安くすむ)で、後者にとってはソン(自力で国債を発行するよりも同コストが高くなる)ことになります。よってコロナ債を提案する側は、上記不等式で自分たちよりも上位にある国を起債の仲間に入れなければなりません。そうした国に該当するドイツやオランダ等は余計な(金利)負担が生じるので、自国納税者の手前、この構想に賛成できるわけはありません。かくして、この手の共同債が実現する可能性は極めて低くなってしまいます。もっとも上記9か国だけで発行、という手はありそう・・・って、やはりないでしょうね、その中で最上位にあたるフランスが(ソンするので)今度は反対に回るでしょうから・・・

(続く)

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【EU共通債としての「コロナ債」構想浮上】金融財政、統合かバラバラか:コロナ禍で決断を迫られるEU①

2020-04-11 00:04:16 | ヨーロッパ

 本当にたいへんな情勢下にあるのはよく分かりますが、ではどうすればよいのか?・・・って、少なくとも、いまのままではどうしようもない、とは言えるでしょうかね・・・

 ご存知のとおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響で欧州、とりわけ感染者数そして死者数が世界ワーストクラスのイタリア、スペイン、フランス等を含む欧州連合(EU)の経済が非常に厳しい状況に陥っています。これに対処するべく、先月あたりから、EU圏では、各国首脳そして欧州中央銀行(ECB)などが、雇用維持や企業の資金繰り支援等の政策に必要な資金をどう手当てするか、等について、何度も協議を重ねているところです。しかし、大枠では合意ができても、それを具体的にどのような枠組みで実践していくか、などは一向にまとまっていない印象です。

 そのあたり、先日、EUは財務相会合で総額5400億ユーロという大型の経済対策で合意はしています。このスキームのなかにはEU圏の金融セイフティーネットである欧州安定メカニズムESM)の活用の決定が含まれ、これによって各国はESMにGDPの2%までの融資を申請できることになりました。まあこのへんは妥当なところ・・・というか、基準が同じだから?EUの全加盟国が何とか合意できるぎりぎりのライン、といった感じでしょうか。

 問題はその先です。すなわち、同じEU圏でも、コロナ対策が相対的に手厚くできるところとそうでないところ、言い換えると、経済力(≒[ESM融資金等の]返済能力)が強い国とそうでない国がある中で、前者と後者とがどう協力等をするのか、についての折り合いがなかなかつかない、ということ。EUでこの種の議論があるときは毎回必ず引っかかってしまうところですが、これ、こちらの記事等で書いたEUの構造的な矛盾―――本来、金融と財政は一体不可分であるべきなのに、EUでは金融(ECB・共通通貨ユーロ)は統合したのに財政は不統合で各国バラバラ―――に根差しているので、これを解消しなければ、どうしても上記両者間の対立が生じるから、さんざん議論しても、最低限の合意しかできません。その結果、どの国も他国に対してイラっとしてしまうわけで・・・

 今回の場合、頼れるのがESM、それもGDP2%分までのアクセスしかできないといったあたりが、EU内で経済力が強いとは言えない国々にとっては大いに不満のはず。この点を含め、ESMのおカネは、借りるに当たっては(対GDP債務上限など)守らなくてはならないルール等があるので、こうした国々にとって使い勝手がいいわけではありません。そこで?今回「コロナ債」なるEU圏の共同債構想が出てきたわけですが・・・

(続く)

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