世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【日銀がアメリカを財政ファイナンス!?】日銀の「外債購入論」を排す③

2016-09-29 00:01:48 | 日本

前回からの続き)

 マイナス金利政策で本邦金融機関の利益水準やそれらの株価を下げることなく、株高をもたらす円安を促す手はないか・・・とあれこれ考えた末に出てきそうなのが、日銀の「外債購入論だと思っています。

 ここで想定される日銀の外債購入とは、日銀が外国の国債、ぶっちゃけ米国債を買い入れて円のベースマネーを拡大しようというものでしょう。これは実質的には財務省が主導するドル買い円売り為替介入と同じで、日銀からすれば無理してマイナス金利の深堀りなどをせずとも円安誘導が可能となり、金融各社を苦しめることなく円安株高を演出することが可能になるかもしれません。

 前回書いたように、先日導入された日銀の「長短金利操作付き量的質的金融緩和」においては長期金利のゼロ%近辺への引き上げ誘導が想定され、これが円高を招くリスクがあります(あくまでもアベノミクス推進者にとってのリスクという意味で、円高が日本経済全体のリスクということではありません)。そこで日銀が、米国債買い≒ドル買いをして円の供給量を増やせば、金利上昇にともなう円高圧力に勝る円安要因を生み出すことができる―――まあこんなふうな発想が安倍政権・黒田日銀の関係者から出てきそうな予感があります(って、一部の方はすでにこの日銀による外債購入の実行を強く訴えていらっしゃいますが・・・)。

 個人的には日銀の外債(≒米国債)購入には絶対に反対です。その理由を思いつくままに書いてみると・・・まずは、政府・日銀の為替介入と違って日銀の外債購入では円貨が際限なく発行されるリスクが指摘できます。前者の場合、介入に必要な円は市場から(国庫短期証券の発行を通じて)調達されるため、その前後で円貨の増減はありませんが、後者では日銀が外債の購入額に応じた円貨を新たに発行するためにそれだけ市中の円貨が増える、つまりインフレリスクが高まることになります。

 そしてこれは日銀による事実上の国債直接引き受け(財政ファイナンス)になるでしょう・・・って、日本ではなく、アメリカ様のための。日銀が喜んで(?)買うことからアメリカは米国債をじゃんじゃん振り出しかねない(?)。さらにアメリカは日銀・・・を含めた日本の中央政府がしこたま買い上げる米国債を絶対に売れないことも分かっているわけです。というのは、こちらの記事に書いたように、わが国(政府・日銀)が米国債を購入したら決して売却せずに保有し続けることこそ、日米同盟のキモだから(たぶん?)。かくしてアメリカは、この日銀の無限の米国債買い(!?)によって、国債の大量発行でもっとも警戒すべき長期金利の上昇を抑えることができることに・・・(?)

 ・・・こうして日銀が大量に抱えた米国債は将来のある時点で、アメリカのデフォルト(ようするに借金踏み倒し)により、タダの紙切れとなる・・・という可能性も少なからずあるはずです。同じ米国債ホルダーでも中国などとは違って一切文句を言えない従順な日本をターゲットに、アメリカは債務不履行を通告するかもしれませんからね(?)。そのとき米国債に裏付けて発行された円貨もまた無価値となって、日銀は円の強制切り下げに追い込まれるかもしれない・・・(?)。もちろんこの場合も、国民は激しいインフレに苦しめられるおそれがあるわけです・・・

続く

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【長期金利の実質引き上げ誘導で円高へ?】日銀の「外債購入論」を排す②

2016-09-27 00:00:12 | 日本

前回からの続き)

 前回、日銀21日に導入した「長短金利操作付き量的質的金融緩和」という意味深な(?)名前の長期金利ゼロ%誘導には、マイナス金利政策発動後の利益減少にあえぐ金融業界のために利ザヤ確保(って、ほんのちょっぴりだけどね?)ができる市場環境に戻すことで、ここのところ落ち込んでいた銀行株の反転を促し、ひいては株価全体の押上げを図ろうという意図がある、なんて見方を綴りました。当日の東京株式市場では日経平均、TOPIX、そして金融株ともに前日比で上がり、まずは狙いどおりの展開、ということで黒田日銀総裁らはホッと胸をなでおろしたことでしょう。

 しかし・・・このゼロ金利誘導策には副作用があります。それは・・・黒田日銀そして安倍政権が超~ネガティブ視する円高を引き起こす面があるということ。つまり、その発動前まではマイナスだった長期金利がゼロ近辺に上げられることで、日本国債の利回りが回復する期待が生じる結果、マネーがドルから円にシフトすることで円高ドル安になりそうだ、ということです。そんな意味ではこの新政策、金融引き締め策と解釈すべきなのかも・・・?

 実際、21日の長期金利や為替レートの動向にはそのあたりが反映されていたように思えます。同日の長期金利は、日銀の上記発表前後でマイナス0.067%程度から0.005%程度へと久々のプラス圏に浮上しました(っても、ほとんどゼロだけど)。ようするに日銀の新政策を受けて国債が売られ、その価格が下がったということなのでしょう。そしてドル円ですが、新しい緩和策!という目新しさ?で直後こそ1円ほど円安ドル高に振れて1ドル102円台後半になりましたが、おそらくは上記が意識され、ほどなく円高ドル安に転じ、上記発表時のレートを下回り、その日の海外市場では100円台前半まで円高ドル安が進みました。

 日銀にとってさらにタイミングの悪いことに(?)、直後に開かれた公開市場委員会で米連邦準備制度理事会(FRB)が(大方の予想どおり?)利上げを見送りました。これでは日米金利差が開かないどころか、かえって縮小してしまう、ということで外為市場は相対的に妙味の増した(?)円が買われドルが売られる展開になっています。かくして注目されていた日米中銀の金融政策が出そろった結果、ここ当面の―――少なくともどちらかが次の会議を迎えるまでの間の?―――マーケットのモードは「円高ドル安」に決定!といった感じです(?)。

 ・・・となると日銀は苦しくなってしまいます。上記事情から邦銀の経営成績や金融株にネガティブとなるため金利引き下げ(マイナス金利の深堀りなど)はおいそれとはできず、かといってこのままだとわが国の長期金利は以前よりも上がって円高がさらに進んでしまいかねない・・・って、これまた株価にネガティブなわけです。頼みの綱だったFRBも利上げをせずじまい・・・(というか、米国内外の状況からFRBは利上げができない、どころかその逆に緩和方向へ舵を切らねばならなくなるだろう、というのが以前から書いている個人的な見通し)

 ・・・うーん、本邦金融機関を苦しめず、円安株高を維持できる手はないか・・・で今後、取り沙汰されそうなのが日銀の「外債購入論」ではないか・・・

続く

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【日銀「長短金利操作付き量的質的金融緩和」導入】日銀の「外債購入論」を排す①

2016-09-25 00:03:32 | 日本

 第一印象は、「あ~やっぱり『カブノミクス』なんだよね・・・」といったところでしょうか・・・(カブノミクス:「アベノミクス」の個人的別称、「株のみ」が唯一の取り柄)

 黒田日銀は21日の金融政策決定会合で、「長短金利操作付き量的質的金融緩和」という名の、現状のマイナス金利政策を維持しつつ、長期金利を0%程度に誘導することなどを目標とする新たな金融政策の導入を発表しました。長期金利の誘導はこれまでのとおり国債の買い入れで行い、その額は当面、現状の年80兆円程度を目安にするとのこと。さらに日銀は実行中の年額7.5兆円程度のETF(上場投資信託)購入について、日経平均連動型の割合を減らすかわりに東証株価指数(TOPIX)連動型を増やすことも決めました。これによって前者はそれまでの3.1兆円から1.6兆円程度に減少する一方、後者は2.3兆円から3.9兆円程度へと増える見込みです。

 これらの新しい政策は明らかに株価の押し上げを目論んだものといえるでしょう。上記前段の長期金利ゼロ誘導は本邦金融機関の株価にプラスに働くものになりそうです。マイナス金利の開始以降、国債の利回りはいっそう低下(価格は上昇)し、銀行や保険会社は深刻な利ザヤの減少や預り金の運用難に陥り、各社の株価も低迷していました。その意味で、こちらの記事に書いた三菱東京UFJ銀行の国債プライマリー・ディーラー返上は、国債取引で利幅が取れる市場環境に戻してほしいという銀行界の日銀に対する切なる要望だったわけです(?)。今回の日銀の新政策すなわち実質的な金利の高め誘導は、そうした苦境にある金融機関へ一定の配慮をすることで銀行株の上昇を促そうとしたものでしょう。実際、21日の株式市場では銀行株が日経平均やTOPIXを上回る上昇率を記録しました。

 そして上記後段のETF買いの継続も、当然ながら株価を下支えしようというものになります。このほど(10月より)、日銀がTOPIX連動型の購入割合を高めることにしたのは、より多くの株式に広く薄く投資するスタイルに修正することで、日銀は日経平均採用株(225種類)に偏って買い上げて他の株以上にそれらの価額上昇(や企業支配?)を狙っているわけではないというところを市場に見せたかったのかも、と推測しています。なおこの政策変更の発表を受けたせいか、21日のTOPIXの上昇率は2.71%と、日経平均のそれ(1.91%)を上回りました。こんなあたりを見ると、やっぱりいまのわが国の株式市場は、ファンダメンタルズとか企業の業績予想といった本来の株価決定要因ではなく、日銀の金融政策動向のほうに大きく影響されていることを痛感させられます。となると、どの株価も日銀マネーのかさ上げ分だけ、バブリーになっているんじゃないかな・・・?

・・・まあともかく、カブノミクス実行部隊である日銀としては、今次政策によって、とくにマイナス金利導入以降落ち込んでいた金融株の浮上を図ることで、株価全体を押し上げたいところ。とりあえず初日の21日は上記のとおり幸先良い感じです。しかしこの新政策、日銀からすると厄介な面もあります。それは・・・いまの日本株にネガティブに働く円高を招く要素があるということ

続く

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【伊銀行危機は全欧州そして米に伝播必至?】イタリア、世界的金融危機の発火点となるか⑤

2016-09-23 00:02:09 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 これまで綴ってきたように、イタリアでは大手銀の一角モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)が資金繰り倒産の瀬戸際にあるわけですが、イタリアでアブナイ銀行はモンテ・パスキだけではありません。繰り返しますがイタリアの金融機関は総額で3600億ユーロもの不良債権を抱えていると見積もられているわけですからね。したがって今後も同行に続いて経営危機に陥る銀行が出てくることは避けがたいでしょう(?)。

 とりわけ厳重警戒(!)すべきは総資産額で同国第一位のウニクレディト。この銀行についても50億ユーロの巨額増資が検討されていることが明らかとなっています。それだけ資産の劣化が進み、自己資本が目減りしているということなのでしょう。ウニクレディトはモンテ・パスキとは違って「大きすぎてつぶせない」(too big to fail)銀行です。よってこの増資計画が失敗でもしたら、イタリアのみならず欧州ひいては世界の金融システムに甚大な影響を与えそうです。そのとき、モンテ・パスキですら持て余している伊当局に、単独でこのデカすぎる銀行を助けられるわけはない・・・

 ・・・ということで、どうやらイタリアの金融システムが機能不全に陥り、それが全欧州に金融恐慌を引き起こす可能性が非常に高くなっているみたい・・・で、その発火点が、モンテ・パスキの経営破綻―――てなことになるのではないか、と危惧する次第です。

 そして当然、このイタリア危機は欧州にとどまらず新興国や・・・金融システミックリスクの本丸アメリカにまで伝播するでしょう(?)。なぜならイタリアそして欧州やアメリカの金融機関は密接な関係に・・・一例を挙げるとデリバティブズで一蓮托生の関係にあるから。モンテ・パスキなりウニクレディトなりが逝ってしまったら、CDSCredit Default Swap)の大規模決済が発生し、それが欧州ばかりかアメリカの大手銀行に巨額の支払い履行という大ダメージを与えかねない・・・。だからこそ上述モンテ・パスキの50億ユーロ資本増強の引受先に米銀JPモルガン・チェースがなったのではないか・・・って、モンテ・パスキが破綻したら自分もヤバくなりますからね、CDS等をしこたま抱えているだけに・・・。もっともどうやらこの計画、うまくいきそうにない―――誰もおカネの出し手がいないことは前述のとおりですが・・・

 いまのこの瞬間もイタリア、そして欧米を含む全世界の金融情勢は刻々と悪化していると思われます。主要国で唯一、これらとの関わりが希薄なわが国がすべきことは、以前から書いているように「君子危うきに近寄らず」の「巣ごもり」ですからね・・・

(「イタリア、世界的金融危機の発火点となるか」おわり)

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【政権変わっても伊にはEU依存・従属しかない】イタリア、世界的金融危機の発火点となるか④

2016-09-21 00:01:43 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 経営危機にあるイタリア3位の大手銀行モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)ですが、いよいよカウントダウン状態に入ったもようです(?)。先述のような資金調達・不良債権処理プランが浮上ているにもかかわらず株価は下げ止まらず、0.22(9/14)→0.20(9/16)ときて、足元(9/20)は0.18~0.19ユーロにまで落ち込んでいるほか、ブルームバーグ報道によれば同銀行債の価格も同プラン公表後の安値を更新したとのこと。このあたり、マーケットが同救済策の実現性とか同行の資金繰りに強い疑いを持っていることの表れといえそうです。

 おそらく近日中、モンテ・パスキに何かが起こるでしょう(?)。その何かが何であれ、イタリアの当局がやることはどれも有権者の猛反発を受けるものになりそう。ベイルインであれば大損をすることになる株主や債権者が「われわれの資産をどうしてくれる~!」、いっぽうのベイルアウトであれば納税者の多くが「どうして放漫経営をした銀行の救済に公金を使うのか!」といった具合に、それぞれ怒りの声をぶつけるということです、現政権に・・・

 ・・・こうしてレンツィ首相らは退陣に追い込まれ、総選挙が行われることになったりして(?)、その結果、政権の座に就くのはまさか「五つ星運動」?・・・って、この政党、単にイタリア国民の欲求不満の受け皿になっていただけで、モンテ・パスキに象徴されるイタリア経済最大の問題―――過剰債務&不良債権問題にどう向き合うというのか、明らかにしていません。そのあたりがポピュリスト政党だなんて揶揄される所以に思えます。

 それに五つ星運動は英国みたいにイタリアでもEU離脱の是非を問う国民投票を実施するといっているみたいだけれど、その結果、離脱賛成票が多数を占めたらどうする気なのでしょう・・・。本稿で綴っているように、そしてこちらの記事でも書いたとおり、イタリアは近いうちにモンテ・パスキ破綻(って、これは数日中か!?)を含めた金融システミック危機に陥るのは必至の情勢で(?)、これに対処するには自国の財政資金ではまったく足りず、結局はドイツ他EU圏の仲間にすがりつく以外にない―――具体的には、欧州安定メカニズムESM)とか欧州中央銀行におカネを融資してもらうしかないわけです(?)。そんななか、五つ星運動が上記国民投票にあたって安易なEU懐疑論を振りまき、有権者の反EU感情を煽った結果、本当に脱EUが決定し、ESMへのアクセスが遮断されたら・・・間違いなくイタリアは逝ってしまう―――金融システムは崩壊し、銀行の株主、債権者、預金者、そして納税者といったすべての国民が資産の大半を失って同国の経済社会は大混乱に・・・(?)

 ・・・まあ五つ星運動だってEUから離れた場合は最悪こうなるかも?くらいの想定はするでしょうから、政権を取ったら現実路線に多少は転換するような気がします。具体的には、EUに留まりながらも、財政赤字達成目標のハードルを下げよ、とか、ESMのマネーを直接、金融機関に注入することを認めよ、と訴えるとか・・・

 ・・・って、そんな虫のいい要求、EU加盟各国とりわけドイツが飲むわけがなく、結局イタリアは、政権党がどこになるかにかかわりなく、EUのいまのルールに縛られるしかない、つまりイタリア国民にはいまの厳しい緊縮財政等を甘受する以外の道はないでしょう・・・(?)

続く

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【伊政権、反EU政党への対抗上、ベイルインできず?】イタリア、世界的金融危機の発火点となるか③

2016-09-19 00:00:19 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前回綴ったように、深刻な資本不足状態にあるイタリアの大手銀行モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)に対しては、「ベイルイン」(bail-in:銀行の内部者に損失を負担させる方法)も「ベイルアウト」(bail-out:銀行の外部者に損失を負担させる方法)も、いずれも適用が難しく、このままでは近日中に同行の資金繰りは行き詰まってしまいそうですが・・・

 ・・・本来、銀行が破綻に瀕した場合は株主、債権者、預金者の順番に損失を被らせるのが筋です。にもかかわらずイタリアでこれができないのは、前述のように債権者らに負担を求めることが困難という政治的な事情があるため。イタリアでは個人投資家が2千数百億ユーロもの大量の銀行債を保有しており、政治家としては―――現レンツィ政権としては、彼ら有権者に損をさせたくはない(債権の放棄を求めにくい)ところです。かりにこれを強行したら政権・与党は猛反発を食らい、かわって反EU・反移民を旗印に掲げる野党「五つ星運動」の伸長を許してしまうかもしれません・・・

 で、その五つ星運動ですが、欧州ソブリン危機以降の景気低迷や緊縮財政といった現状に対するイタリア国民の強い不満感をエネルギーに(?)、近ごろはますます支持層を拡大している感じです。実際、6月にはローマとトリノの市長選で勝利したほか、同月の「Brexit」(英国のEU離脱)決定で反EU感情を刺激されたさらに多くの人々が五つ星運動の支持に回りそうな気配です(?)。

 ・・・となるとレンツィ政権としては、同党に対抗するためにも有権者にいい顔をしようとする、すなわちモンテ・パスキ対処においては銀行債保有者に負担をかけないようにすることになります(?)。これが上述ベイルインの非実行であり、今後の同政権はおそらく前記の欧州安定メカニズムESM)のおカネを無心するのではないか、債権者や預金者に損失負担を求めることをせずに・・・(?)

 でもこれはEU共通のルールに反してしまいます。EU圏は銀行救済に当たって安易な血税投入を避けるため、株主や債権者らに所定のベイルインを求めています(負債の8%分)。これに従わない限り、イタリアはモンテ・パスキに財政資金を投入できないし、その穴を埋めるためのESMの融資を受けることもできない、というかドイツがこれらを絶対に認めはしないでしょう。かといって、繰り返しになりますが、7月に発表された50億ユーロ資本増強&92億ユーロの不良債権証券化というプランはあまりに非現実的・・・

 このように予想していくと、イタリアにいまできることは・・・やはりEUルールを順守したうえでのベイルインしかないように思えます。まあこれは政治的信条の違いにかかわらず、そのときの政権が決断・実行する以外にないわけですが、これって明らかに不人気な政策だから、国民からすると現政権・与党には反感を、野党には共感を覚えることになりがち。ということでレンツィ政権はこの先、厳しい政局運営を迫られそうです・・・

続く

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【ベイルインもアウトも無理で危うしモンテ・パスキ?】イタリア、世界的金融危機の発火点となるか②

2016-09-17 00:01:47 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前述のとおり、深刻な資本不足に陥っているイタリアの大手銀行モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)の再建策(50億ユーロの資本注入、92億ユーロの不良債権の証券化)は実現の可能性がほとんどないもの。その後も下落・低迷を続ける同行の株価がそれを物語っています(9/16の株価はさらに下がって0.20ユーロ!)。となると、この再建策は絵に描いた餅に終わりそうですが・・・

 ・・・ちなみにモンテ・パスキはイタリア第3位の総資産を持つほどの銀行ではありますが、同国1位のウニクレディトとは違って世界の金融システムに大きな影響を与える銀行(global systemically important banks)に分類されているわけではありません。なので、伊当局が腹をくくればその破綻を容認することも可能なはず・・・

 ・・・と簡単にはいかないのがイタリアのややこしいところです。ようするにモンテ・パスキの処理等に当たっては「ベイルイン」ができそうもないということ。ベイルイン(bail-in)とは、銀行の内部者に損失を求める方法で、具体的には株主、債権者、預金者の順にその負担を強いるものです。つまり破綻銀の株価はゼロに、債権者は債権放棄を強制され、預金者は預金保険で保証された額(イタリアは一預金者あたり約10万ユーロまで)以上の預金を失う、といったあたりになるわけです。ところがイタリアの場合、2015年に地方金融機関が経営危機に直面した際の再建策で損失を被った債権者が自殺したことが社会問題に発展したため、政治がこの実行に及び腰になってしまいました。

 ベイルインが難しい、となると伊当局は必然的に「ベイルアウト」(bail-out)を模索することになります。これはベイルインとは逆の、政府などの銀行の外部者におカネを出してもらおうという手です・・・が、これは経営の失敗で危機に陥った一民間銀の株主や債権者らを税金で救うことになるため、国民の反発は必至でしょう・・・

 さらにいうと、安易なベイルアウトにはEU圏の盟主ドイツが猛反対しそうなことも事態を複雑にしています。かりにモンテ・パスキに公的資金を注入することになった場合、伊政府はEU加盟国共通の金融支援スキームである欧州安定メカニズムESM)に支援申請をすることになるのでしょうが、それが認められるためにはイタリアが応分の負担をすべきというのがEU圏、とくにドイツの主張。つまりドイツには、ESMがイタリアに財政融資をするのは、イタリアがモンテ・パスキの利害関係者に対して厳しいベイルインを実行した後だ、という強い思いがあるということです。まあ当然でしょう、ESM最大の出資者はドイツ・・・国民なのだから。

 となってしまうとモンテ・パスキへの出資に当たってイタリアは、ベイルアウトも、そしてベイルインも困難ということになります。だからこそ、民間の銀行や投資家のマネーを当てにした前回ご紹介のスキームをひねり出したのでしょうが、これまた書いたように、いまの同行に投資しようという人なんて、いるわけがない・・・(?)

 ・・・こうして万策尽き、資金繰りに窮する(?)モンテ・パスキの破綻は、もはや時間の問題ということに・・・(?)

続く

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【モンテ・パスキ銀、株価下げ止まらず・・・】イタリア、世界的金融危機の発火点となるか①

2016-09-15 00:00:43 | ヨーロッパ

 どこで金融危機が勃発してもおかしくはない昨今の世界経済情勢ですが、どうやらまずはユーロ圏・・・のイタリアが火を噴きそうになってきました・・・

 EU圏第三の大国・イタリアの不良債権問題がクローズアップされています。まあコレ、以前から危険視されてはいましたが、後述するような政治的な動きもあって、「Brexit」(英国のEU離脱)決定がさらに事態を深刻化させたような感じがします。

 で、その不良債権額ですが、イタリア全体では約3600億ユーロと、同国のGDPの2割近くに達していると見積もられています。そして同国銀行の全資産に占める不良債権の割合は8月時点で16%と、最悪期の日本(8%)やアメリカ(5[って、低すぎ?])の2~3倍もの高率です。そんなこんなでユーロ圏では銀行が抱えるすべての不良債権の1/3以上をイタリアの銀行が占めているそうな・・・

 で、そんな伊銀のなかでも直近でとりわけヤバイとされたのが、総資産規模で同国第3位のバンカ・モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)。この銀行、不良債権比率が伊銀中、最悪レベルの約40%と、危機的な経営状態にあります。株価も71日時点で0.38ユーロと、2007年高値(5月)93ユーロのわずか0.4%・・・。

 といったことで同行は7月、欧州中央銀行(ECB)から、バランスシートの抜本的改善を図るべく、今後3年間で不良債権を40%減らすよう求められました。これを受けて同行、そして伊政府は同月末、米銀JPモルガン・チェースなどを引受先とする総額50億ユーロの資本増強策、および92億ユーロの不良債権の証券化という枠組みを取りまとめました。これがうまくいけば同行の不良債権率は年内に18%程度にまで下がるとみられていました・・・

 ・・・が、その後もモンテ・パスキの株価は下げ止まらず、現時点(9/14)で0.22ユーロと、7月初旬からさらに40%以上も下落して上場来安値を更新中! ということはマーケットはこの救済策が成立するとはみていないのでしょう。まあそうだろうな、と感じます。この銀行は201415年にかけて80億ユーロもの資本注入を受けたけれど、現在の株価はこのとおり。ということはこの大金、雲散霧消してしまったに等しいわけで、この後の50億ユーロの追加投入だって常識的に予測すれば無駄に終わる・・・となればその新株を買ってくれる投資家なんていないだろうし、売れ残り分を保有したところで巨大評価損を被るだけだろうから、JPモルガンらは・・・

 不良債権の証券化も同じでしょう。そんな証券、怪しすぎて誰も購入しないということ。まあこれらのうち60億ユーロには伊政府の保証が付くそうですが、いっぽうでこれらの多くには政府保証に必要な投資適格を格付け会社から得られないとの予想があります。なので、この銀行がそんな都合よく92億ユーロもの不良債権の切り離しに成功するとは思えません。

 こうした理由から、モンテ・パスキの上記救済スキームはうまくいくはずがない―――そんなマーケットの悲観的な見通しが上記株価には反映されているわけです(?)。

続く

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【尖閣防衛コストは数十兆円!?】尖閣に自衛隊を常駐させたいが・・・⑤

2016-09-13 00:01:49 | 日本

前回からの続き)

 日本政府が尖閣諸島自衛隊部隊を配置しない理由・・・もっとも有力なのは、やはり(?)「日米安保条約のような気がしてなりません。つまり、尖閣エリアを無人のままにして中国にいつ取られてもおかしくはない状態にしておくことで、日米安保のありがたさを国民に知らしめる、ということ。それでも中国が尖閣の島々に手出しできないのはアメリカ様のおかげ、というわけです(?)。

 でも、先述のように、このまま何も起こらない状況がいつまで続くのか、はなはだ心もとないところ。さらにいうと、こちらの記事などに書いたようにアメリカはいま、他国を武力で守ることができる国力を明らかに失いつつあります。それは同国の次期大統領候補であるドナルド・トランプ氏も指摘しているとおりです・・・。このあたりを見透かした中国(軍)が冒険に出ないと誰が断言できるでしょうか・・・

 以上を総合的に考えれば、わたしたちは自分たちの領土は自分たちで守る、という当たり前の国家防衛方針に立ち、覚悟を決めるべきではないか。それが尖閣諸島の場合、有人拠点の設置になるのではなかろうか・・・

 ・・・さて、「尖閣」について思うところを長々と綴ってきましたが、あらためて痛感させられるのは尖閣防衛費用のバカ高さ。これは数百億円・・・どころか数十兆円(!?)規模になるはずです、コチラを含めれば・・・。では尖閣はこれに見合う利益を日本国にもたらしてくれるのだろうか・・・? まあ尖閣周辺海域にはかなりの量の石油資源が眠っている可能性があるそうですが(だからこそ中国は突如、尖閣の領有権を主張し始めたわけだが)、中国の妨害(?)を排除しながらこれを無事に掘り出し、上記コストを上回る兆円単位の利益を尖閣海底油田(?)から得るなんてことが、本当にできるのだろうか、わが国に・・・(?)

 ・・・そんなことも意識しつつ、個人的に今回お勧めした自衛隊常駐化を含め、わたしたちは尖閣を効率的に守る手立てを冷静に考えたいものだ、と感じる次第です・・・って、(上述のように実際には使えもしない)「ミサイル」増税なんてされたら、たまりませんからね・・・

(「尖閣に自衛隊を常駐させたいが・・・」おわり)

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【尖閣有人防衛は利権の減少につながるのでNG?】尖閣に自衛隊を常駐させたいが・・・④

2016-09-11 00:02:30 | 日本

前回からの続き)

 日本政府尖閣諸島の有人防衛化に着手しない理由ですが・・・やはり胸のうちで、これによって中国との関係をさらに悪化させたくはない、という意識が強く働いているためではないか。かりに自衛隊が魚釣島などに常駐拠点を作ったら当然、中国は猛抗議をしてくるとともに、周辺海域に巡視艇どころか軍艦とか戦闘機をいま以上に送り込んでくるでしょう。これらによって日中関係は一気に緊張し、さらに冷え込んでしまう。であれば、中国をいたずらに刺激しないように無人のまま放置しておこう、幸いアメリカ様が「尖閣諸島は日米安保の適用範囲」と言ってくれているわけだし・・・といったあたりではないでしょうか、政府の考えは。

 ・・・でもこれは、尖閣が日本の固有の領土であるとする政府の公式見解と矛盾します。というのは、もし上記が本心ならば、自衛隊を配置することにためらいを感じさせるほどの激しい対立が尖閣諸島の領有権を巡って日中間に存在することを政府自らが認めることになってしまうからです。「尖閣は日本領だ。だから自衛隊の基地を作ることに関して外国にあれこれ言われる筋合いはない!」という正論を口に出せず、行動に移せないということになります。

 ・・・まあこのあたりは分かる気はしますけれどね、外交当事者はたいへんですから・・・。でもそんな遠慮をいつまでもしていたら、上述のとおり、尖閣が第二の竹島になってしまうかもしれませんよ。無人島をひとたび外国人に乗っ取られたら、もう取り返せませんからね・・・

 そのほかに考えられるのは、尖閣諸島を無人状態にしておくことで、大量の武器兵器の購入に当たって「同諸島を守るため」という口実を成り立たせることができるため(?)。本稿冒頭でご紹介したように日本政府は、尖閣防衛を念頭に、(実際にはぶっ放せっこない?)新型ミサイルの研究開発等を進めるとしています。その総額は数百億円を超えるくらいの巨大なもの・・・となればコレ、(とくに欧米先進国の)軍事メーカーにとっては(言い方は悪いが)オイシイわけです。日本としても彼らへの支払いが増えれば、貿易不均衡の緩和につながるので、悪いことではない・・・(?)

 ということで政府は、そのあたりに関連する財政支出が批判を浴びることなく継続できるよう、同ミサイル等が尖閣防衛に有効であるかのように見せる必要を感じているのではないか。したがって、ミサイルよりもずっと低コストで実効力のある尖閣への自衛隊配置の推進は、ミサイル不要論につながりかねないので、NGとなる・・・みたいな。

 もうこうなってくると尖閣は完全に巨額「防衛利権」のタネになるわけですけれどね・・・

続く

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