世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【頼みの米市場も・・・】日米株高「金融緩和相場」の危うさ③

2013-05-29 00:00:42 | 世界共通

(前回からの続き)

 「アベノミクス」的な内需拡大策(資産効果・財政出動)の成果は期待薄・・・かくして、10兆円を越える需要不足を解消するために現状の「アベノミクス」が取るべき唯一の道は輸出振興、つまり「円安誘導による外需狙い」ということになりそうです。「日本は通貨安競争を仕掛けている!」といった諸外国からの批判を恐れてか、最近、安倍政権は円安善玉論(円高悪玉論)をはっきりとは口にしなくなっていますが、前回書いたとおり内需拡大効果の乏しい「アベノミクス」の唯一の実体経済刺激策が円安効果で輸出振興を図ることは明白です。

 で、そのターゲットとなる外国市場は、信用不安がくすぶるヨーロッパでも、成長のペースが鈍化し始めた中国でもなく、多くの人々が本格的な景気回復過程に入ったとみているアメリカとなるでしょう。

 ではアメリカは、わが国の輸出セクターが当てにできるほど(わが国が対米輸出売り上げを伸ばすことで上記の需要不足を減らすことができるほど)、力強い成長軌道に復したと本当にいえるのでしょうか。

 まあ株式市場をみるかぎり、アメリカ経済は好調そうです。現在、ダウ平均は15000ドルを上回り、史上最高値近辺を推移しています。先週、日本株の急落から始まったアジア市場や欧州市場での株安の影響も軽微で、株価の下落幅はわずかにとどまりました。

 しかし、このアメリカの株式市場の盛況ぶりをよくみると、日本と同様、むしろ日本などよりもはるかに実体経済から遊離した「金融緩和相場」の傾向が色濃く出ていることが分かります。

 たとえば現在の株高を主導している銘柄にそれが感じられます。いまの人気株はP&Gに代表されるような「消費・生活必需品」とか「ヘルスケア関連」などといった、景気動向に左右されにくい業種のものが多くなっています。別な言い方をすれば、これら以外の銘柄については投資家が「現状の経済情勢ではこれ以上の高値は狙えないだろう」と、購入を手控えている様子が窺えます。このあたりはアメリカの実体経済が順調に回復しているとは言い切れない現状の一端を反映していると思われます。

 そして直近のアメリカ市場で何といっても注目されるのは、上場企業による「自社株買い」が盛んになっていること。

 ブルームバーグなどのメディアは、先日の日本株急落の局面で、アメリカの株価が大きく崩れなかった理由として、各企業が自社株買いを活発に行っていることを指摘しています。たとえば軍需セクター大手のノースロップ・グラマン社は、自社株買いプログラムをそれまでの10億ドルから40億ドルに拡大すると発表しました。これを受けた同社の株価は史上最高値を記録しています。こうした事例から判断すると、世界の株式市場が動揺するなかにあっても、アメリカ市場では自社株買いの動きが相場を支えたことは間違いなさそうです。

 たしかに自社株買いは1株あたりの価値を高めるとともに1株あたりの利益も増やす効果があるので、投資家にとっては好ましいこと。でも、これほどまでに企業の自社株買いが活発化しているということは・・・その背後に、株価の高値維持のために自社株買いというテクニカルな金融手法に頼らざるを得ないほど、肝心の収益や利益率は株価に見合うほどには高まってはいないという本業の厳しい現実があるのではないでしょうか。

(続く)

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【内需浮揚は困難】日米株高「金融緩和相場」の危うさ②

2013-05-27 00:01:46 | 世界共通

(前回からの続き)

 実際、このあたりを感じさせるデータが、日本株が大きく値下がりした23日に政府から公表されています。

 そのデータとは「GDPギャップ」。この日の内閣府の発表によれば、今年度1~3月期のGDPギャップは2.3%のマイナスとなりました。昨年10~12月期(マイナス2.9%)からはマイナス幅が縮小したとはいえ、わが国の実体経済には依然として大きな需要不足が存在していることが示されました。これを金額にすると10兆円をゆうに超えるレベルとなります。

 以前も「内需振興へ期待したい政治のリーダーシップ 」に書いたように、このマイナスのGDPギャップこそ日本経済が抱える大きな課題と考えています。この「デフレ」を解消する需要を生み出すことがわが国の経済政策が目指すべき方向であることに異論のある方はそれほどいないものと推測します。

 で、「アベノミクス」はこの需要不足解消に向けてどのように対処しようとしているのか?

 まずは内需面ですが、「資産効果」と「財政政策」の2つでしょう。

 前者の資産効果は、ご存知のとおり、日銀の「異次元緩和」によるベースマネー拡大と金利低め誘導で株や不動産の価値上昇を促し、その売却益や含み益で実体経済の消費や投資を促そうというもの

 しかしこれは一部の資産家のみに恩恵を与えるだけで、実体経済を広く持続的に拡大させる力はないでしょう。それに、何度か書いているように、資産効果が高まるためには株や土地などの資産価格が上がり続ける必要がありますが、わたしたちはそんなことはありえないことはすでに(内外のバブル発生・崩壊で)学習済みだし、いままた株価急落を目の当たりにしているところです・・・。ということで、(とりわけ株の)資産効果に過度な期待を寄せることは禁物であり、せいぜい実体経済点火のための種火くらいに位置づけておいたほうがよさそうです。

 つぎに後者、つまり「財政政策」です。じつは個人的には、これまた「内需振興へ期待したい政治のリーダーシップ 」あたりで述べたとおり、その頃はけっこう期待していたのですが・・・。いまは「微妙だな~」と感じています。日銀「異次元緩和」のせいで(?)国債価格や長期金利が乱高下している現況下では、財政政策の拡大で金融システムの安定が損なわれ、政府の資金調達コストが跳ね上がる懸念があるように思えるからです。こちらの記事にも書きましたが、わが国にはせっかく一定規模の財政政策が効果を発揮しそうな素地があるのに、日銀の度を越した金融政策がそんな環境の良さを打ち消してしまっているように感じざるを得ないのですが・・・。

 といったわけで、「アベノミクス」のもとでの株高資産効果と財政政策には、いずれも内需拡大を促す効果を期待できそうもないな、と考えています。そして来年度からはいよいよ消費増税開始(「デフレ脱却」どこへやら・・・)。かくして内需主導の景気浮揚はきわめて難しくなるばかりです・・・。

(続く)

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【日本株急落!】日米株高「金融緩和相場」の危うさ①

2013-05-25 00:01:21 | 世界共通

 23日、日本株が急落しました

 当日、東京株式市場では、取引開始直後は株価は上昇に向かい、一時は同16000円に近づく勢いでした。ところが長期金利の上昇基調に対する警戒感が高まるなか、中国製造業に関する指標が悪化したとのニュースが伝わると株価は一転、全面安となり、日経平均は前日終値から7.3%も低い14484円まで下がりました。この日経平均の下落率は史上10番目の記録だそうです。

 そしてある意味で23日以上に注目された昨日24日の株式市場も引き続き大荒れの展開。日経平均は高値と安値の差が1025円と乱高下しましたが、結果として終値は前日比128円高の14612円となりました。

 23、24両日のこうした株価の激しい動きは、現在の相場が中銀(日銀のみならず世界主要中銀を含む)の金融緩和策にいかに大きく依存しているかを示すものだと思います。

 それを象徴するのが、この2日間を含む17日~24日の東証業種別株価指数の週間推移。この間、全33業種のうち実に30業種が値下がりしましたが、値下げ率第一位は「不動産業」(-12.2%)、同第二位は「その他金融業」(-12.1%)、同第三位は「銀行業」(-10.7%)、同第四位は「証券・商品先物取引業」(-9.1%)となっており、先日こちらに書いた「金融緩和で最もメリットが大きい業種」の株価が軒並み大きく下がっています。それだけ株式市場では内外の金融政策の今後に不透明感が高まったということなのでしょう。最近はFRBの出口戦略、つまりQE3の縮小・停止に関する観測が流れていますし・・・。

 もっとも個人的には、やはり(日銀のみならずFRBの)金融緩和策(低利マネーの市場への供給)は続かざるを得ないだろうとの見方が市場に広がり、その結果、短期的には日本の株価は持ち直すのではないか、とみています。この予測が当たっていたら、足元で大きく値を下げている上記「金融緩和敏感株」の株価は近々大きく反発しそう(?)。ここで一儲けするなら金融・不動産株でしょうか(自己責任でお願いします)!? 

 それに、急ピッチで上昇してきたとはいえ、いまの日本の株価のレベルは高すぎるわけではなさそうです。実際、24日時点の東証第一部全銘柄のPER(16.6倍)や配当利回り(1.64%)などの指標(予想値)をみても、決して割高とはいえないし・・・。

 とはいってみたものの、株で勝負をするならあくまで短期に徹し、景気を冷やす(?)消費増税が正式に決まりそうなこの夏から秋までのどこかで、いったん手仕舞いをしたほうがよさそうだ、とも感じますが・・・。

 それにしても、上記の株価の動きをみても分かるとおり、アベノミクス」が演出する株高は「金融緩和」がもたらす景気回復へのバーチャルな「期待」にますます依存する一方、実体経済の「実態」からはどんどん遊離しつつあるように思われます。

(続く)

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【輸入インフレ緩和効果】消費増税決定で「株高」資産効果は終焉?④

2013-05-23 00:00:48 | 日本

(前回からの続き)

 というわけで、アベノミクス」庶民を襲う「3本の矢」―――輸入インフレ増えない実質所得金利上昇に加え、消費意欲や株高の火を消す「消費税率引き上げ」という「4本目の矢」がいよいよ登場しそうです。

 (決して健全とはいえないけれど)株価上昇にともなう資産効果には実体経済を点火させる効果もある程度見込めるはずですが、せっかく膨らんだ株バブルが消費増税によってしぼんでしまったら、もはや「アベノミクス」にプラス面は皆無・・・などと思っていたのですが、もしかすると消費増税は市民生活に意外なプラス効果をもたらすかもしれないぞ、と考えています。それは、円高による「輸入インフレ」の緩和効果です。

 たしかに消費税率の3%ものアップ(5%→8%)は一般市民に多大な負担を強いることになります。しかし一方で国の財政状態はそれなりに改善するものと期待されます。財務省などによれば、消費税率を1%引き上げることで約2兆円の税収増になるとのこと(消費税[現在の税率は5%]の税収は最近は10兆円前後で推移)。ということは3%の税率アップで6兆円ほど歳入が増えるという計算になります(まあ、消費税の税収がいくら増えても、その分個人消費が減退してデフレが深化し、結果として法人税や所得税などの税収が下がって、トータルの歳入は思ったほど増えなかった、という事態も十分に想定されるのですが・・・)。

 で、そんな消費増税が決定されると、「日本の財政再建が進む」との思惑から、為替市場ではこれまでの円安ドル高が止まり、一転してドルを売って円を買い戻そうという動き(円高モード)が出てくるかもしれないと予測しています。もしそうなれば、ドル建てで決済される石油やガス、小麦などの輸入必需品が円建てで安くなる期待が生じます。

 たとえば、1ドル100円で目の前に消費税込みで105円の輸入財があったとします。ここで消費税率が5%から8%にアップしても、為替が円高になって1ドル90円になれば、その輸入財の税込価格は約97円と、税率アップ前よりも円建てでは価格が下がるということになります。

 実際のモノやサービスの価格はこんなに単純には決定されてはいませんが、消費税率が引き上げられても、為替が円高になれば輸入必需品の価格が下がるから、多少なりとも増税にともなう生活への悪影響は和らぐのではないでしょうか・・・。

 本稿で述べてきたように、どうやら安倍政権は、「アベノミクス」最大の成果である「株高資産効果」を縮小させてもかまわない覚悟で(?)消費増税を決行しそうです。個人的には、こんなデフレなのに消費増税をするというのなら、せめて輸入インフレを促進する円安誘導だけはしないでほしい、と切に願っているのですが・・・。

(「消費増税決定で『株高』資産効果は終焉?」おわり)

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【夏で株高は終わり?】消費増税決定で「株高」資産効果は終焉?③

2013-05-21 00:04:09 | 日本

(前回からの続き)

 政府首脳によれば、来年4月に消費税率を5%から8%へ引き上げるかどうかを最終的に決定するのは10月とのことです。

 その時点で、消費増税に耐えられるほど景気が回復してきたということが確認できるかどうかですが、この判断材料としては8月に発表される今年度第1四半期(4月~6月)のGDPの伸び率が使われるようです。もしこの期間のGDP成長率が年率換算で3%程度となれば、昨年成立した消費増税法における税率アップの前提(名目3%、実質2%程度の成長がみられること)をクリアします。実際、現時点で民間シンクタンク等の多くはこの伸び率をおおむね3%前後と予想しています。ということは、この先、内外経済情勢の「激変」でもなければ、税率引き上げを停止したり延長したりする事由はないことになります。

 ということで、この8月には実質的に来年度からの消費増税が決まりそうな雲行きですが、これが現状デフレ下にある日本経済に与えるインパクトは甚大だと思います。さまざまな分野で多くの影響が考えられますが、はたして「アベノミクス」最大の成果である現在の「株高」はどうなってしまうでしょう・・・。

 ところで、消費増税が決定されると・・・わが国GDPの約60%を占める個人消費が減退します。勤労者の実質所得も減ります。収益・利益が増えないために民間企業は新規の設備投資を控えます・・・これらの結果、景気はさらに落ち込むとともに、デフレがいっそう深化するだろうとみています。

 で、「リフレから消費増税でデフレ・アゲイン」・・・こうした見通しが広がりそうなこの夏、日本株は大きな調整局面を迎えるのではないでしょうか。個人的な予想ですが、この8月から10月前後にかけて多くの投資家、とりわけ外国人が日本株をいっせいに手放すのではないか、とみています。

 現在のわが国株式市場における外国人投資家の売買割合は6割といわれます。一方で外国人の7割が短期売買指向ともいわれています。そんな彼らは、昨年来の日本株価の急上昇で利益確定のタイミングを虎視眈々と見極めていることでしょう。そうしたなか、消費増税決定の判断材料となる第1四半期GDPの発表(8月)は、外国人にとって「日本株売り」に転ずる絶好の機会となるのではないでしょうか。

 こうしてこの夏か秋のある日、「アベノミクス」第一の成果だった「株高」が終焉し、それとともに肝心の「資産効果」も一気に収縮する・・・。消費増税決定によってこんなマイナスの展開が現実化するおそれも十分に予想されると考えています。

 それにしてもデフレ脱却」こそ「アベノミクス」の最大目的であるはずなのに、安倍政権は消費増税を敢行することで、よりによって実体経済のデフレをさらに促進させるとともに、現状、ほとんど唯一のプラス効果である株高に冷や水を浴びせて「資産効果」を消滅させようとしているように感じられるのですが、いかがでしょうか。

 いったい「アベノミクス」とは「インフレ促進策」なのか「デフレ促進策」なのか? 個人的には理解がますます難しくなってきました・・・。

(続く)

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【大きい株高効果】消費増税決定で「株高」資産効果は終焉?②

2013-05-19 00:00:37 | 日本

(前回からの続き)

 実際、アベノミクス」の開始後、わが国の株価は大きく上昇しました。

 当時の安倍自民党総裁がインフレ目標政策(当時は2~3%)を発表した昨年11月中旬から現在までのわずか半年間で、日経平均は約8800円から15138円(5月17日)へと、70%を超える伸び率を記録しています。

 東証一部の時価総額でみてみても、昨年10月末時点の約258兆円から、現時点(5月17日)は約439兆円と、率ではこれまた70%の上昇、金額では約180兆円あまりもの増額となっています。

 ところでこの半年(昨年10月末~今年4月末)の株価上昇率上位3業種は、第1位:証券・商品先物取引業の184%、第二位:その他金融業123%、第三位:不動産業103%となっています。証券、金融、不動産・・・つまり金融緩和の恩恵が最も大きそうな業界ということになります。こんなところをみても「アベノミクス」が日銀の金融政策「量的・質的金融緩和策」に大きく依存しているようすが窺えますね。

 そんな株式市場の活況にひかれるかたちで、預貯金から株へのマネーシフトも起こっているようです。最近は長期金利が上昇傾向にありますが、その原因のひとつにこうしたマネーの動きがあるものと考えられます。株を購入するために預貯金を解約等することは国債の売却(国債価格の低下・利回り上昇)を促します。

 もっとも本来、金利の上昇は景気の回復にともなう現象です。つまり、企業収益が増加→設備投資が増加→銀行の企業貸し出しが増加→金利上昇、といったプロセスを経て起こってくるものです。

 これに反し、現在の金利の上昇は、上記のように国債が売られることにともなうもの実体経済があいかわらずの需要不足(デフレ状態)にあるなかでの金利の上昇は決して好ましいことではないでしょう。ましてや黒田日銀は目標インフレ率2%に向けて金利の安定的かつ低めの誘導に努めるとしていたはず。これができていないことに、これからの日銀の金融システムのコントロールは大丈夫なのか?などと不安を感じているところです。

 まあ何はともあれ、わずか半年で7割もの株価上昇、時価総額で180兆円もの価値創出をもたらしたことは、「アベノミクス」序盤の最大の成果といってもよいのではないでしょうか。これだけの規模の「資産効果」が日本経済に大きな影響を与えることは確実でしょう。輸入インフレや実質所得の減少に対する国民の不満感の高まりによって内心「あせり」を感じている(?)安倍政権や日銀幹部にとっては、この資産効果には大いに期待したいところ。安倍首相や黒田日銀総裁らはきっと(本来の実体経済回復のプロセスとは違うけれど、)「株価上昇がもたらすバブルで消費が活性化し、企業収益が回復し、そして設備投資が増加して実体経済点火へ、といったシナリオがどうか実現してくれ~」と祈るような気持ちだろうと推察しています。

 しかし・・・そんな目論見や株高に冷や水をかける決断をしなければならない時期が近づいてきました。それが消費税率を8%に引き上げるかどうかの最終的な判断を下すタイミングです。

(続く)

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【3本の矢でタジタジ】消費増税決定で「株高」資産効果は終焉?①

2013-05-17 00:04:39 | 日本

 「アベノミクス」が実質的に始まってから約半年が経ちました。

 本ブログ記事「円安インフレ懸念で国民が気づく『円高』のありがたさ 」などに書いてきたように、この間、実体経済面では、1ドル約80円から同100円あまりへと急速に進んだ円安ドル高により、輸入インフレによるマイナスの影響が広がってきています。すでにお気づきのように、電気・ガス料金をはじめ、ガソリンや灯油、さらには小麦やマヨネーズといった食料品など、あらゆる日常必需品の値段が次々に上がってきています。まあこのあたりは「インフレ率2%達成!」を目論む安倍政権および黒田日銀の思惑どおりなのでしょうが・・・。

 一方、7日の参議院予算委員会で「アベノミクス」のリスクとして「賃金より先に物価が上がる可能性が高い」と安倍首相自らが認めているとおり、肝心の賃金や給料は物価上昇ほどには増えてはいません。それどころか、「収入マイナス支出」で計算した一般市民の実質所得は、支出が上記の円安ドル高で急増しているなか、多くの場合、むしろアベノミクス開始後は下がっているのではないでしょうか。

 安倍首相は経済界に、労働者への利益分配を早くしてほしい、とお願いしたそうですが、「お願い」は政策とは違います。つまり、安倍政権は、物価高は煽るけれど市民の給与所得を増やすための政策は打たない、ということなのでしょうか?それにお願いされたほうの経済界だって、外需が不透明な情勢のもと、いくら日銀が円安誘導をしてくれたといっても、わずか半年くらいで労働分配率を大きく増やせるほど輸出売り上げを伸ばすことなんてできないでしょう。

 さらに加えると、景気が回復してきたわけでもないのに、後述する状況により、ここにきて金利が上昇してきました。これに合わせて住宅を含む各種のローン金利も引き上げられそうです。人々の借金返済の負担はますます重くなっていくことでしょう。

 というわけで、「アベノミクス」序盤の国民の日常生活は、輸入インフレ実質賃金の低下、そして金利の上昇(ローン支払い負担の増加)という「3本の矢」による攻撃(?)にさらされ、早くも厳しい状態に追い詰められていきそうな気配です。あいかわらず肯定的な評価が多い感じの「アベノミクス」や日銀の金融政策ですが、さすがのマスコミもそろそろこうしたネガティブな側面から目をそらすことができなくなってくるのではないでしょうか。

 さて、国民生活に与えるデメリットに焦点を当てた個人的な「アベノミクス」評を綴ってみましたが、一方で「アベノミクス」には唯一(?)かつ大きなプラス効果があります。場合によっては、上記のマイナス面を補って余りある利益をもたらしそう。

 それが株高」にともなう資産効果です(株を持っている人限定ですが・・・)。

(続く)

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【欧州を他山の石に】「モノ作り」を忘れたヨーロッパのたそがれ⑤

2013-05-15 00:04:29 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 すっかり脱線してしまいました。イギリスと欧州の話に戻ります。

 前回、イギリスには、世界各地の油田や鉱山の権益を有する資源メジャーがいくつも存在するという、「鉱業国」としての顔があるという点を指摘してみました。

 とはいうものの、実際にこれらの資源会社がもたらす利益の分け前を得られるのは、会社の役員や従業員、株主や債権者などのステークホルダーに限られます。大多数の国民は、そんな恩恵とは無関係。(ここがわが国と大きく違うところですが、)生産活動や雇用に関連する実体経済を支える製造業の基盤が脆弱なうえ、慢性的な経常赤字にともなう高いインフレ率(ポンド安・実質マイナス金利)や高い失業率(8%:2012年)などに苦しい生活を余儀なくされています。実質的な「財政ファイナンス」としての色彩が強いイングランド銀行(中央銀行)の金融緩和が継続すれば、前者の「持てる者」と「持たざる者」との資産格差は広がるばかりでしょう。階級社会」の歪みはますます大きくなっていきそうです。

 厳しいリセッションや深刻な失業問題などといった、まったく先の見通せない欧州重債務国の情勢から判断すると、ユーロ圏17カ国と同様、近いうちにイギリスにも何らかの金融危機が起こる可能性はけっして低くはないと思います。そうなればイギリス政府は大量の公的資金を金融システムに投入しなければならなくなります。製造業」が低迷し、北海油田の枯渇化にともなって「鉱業」も衰退するなか、唯一の頼みの綱である「金融業」までもバブル最終清算で危機に瀕することになるでしょう。身の丈以上の生活で借金を重ねてきたイギリス経済とイギリス国民は、そのときの巨大な負担にはたして耐えることができるのか?世界中が重大な関心を持って見守ることになりそうです・・・。

 ということで、ユーロ圏17カ国やイギリスなどのヨーロッパ諸国が「モノ作り」の衰退や資産バブルの後始末で世界経済における地位をますます低下させていくだろう、という個人的な見通しについて長々と綴ってみました。本稿前段で述べたとおり、国家・国民をより豊かにしていくためには、(一部の「鉱業国」を除けば)産業振興、とりわけ製造業を充実させることが第一に大切だと思っています。その意味で、製造業が国際競争力を失いつつあり、一方で製造業の再生や質的向上をおろそかにしたヨーロッパの多くの国々が没落していくのは、厳しいけれど仕方のないことかもしれないな、と感じています。

 そしてわが国としては、そんな「哀愁のヨーロッパ」を他山の石としたいところわが国は、金融政策が引き起こす資産バブルなどに過度に頼るのではなく、引き続き付加価値の高い「モノ作り」を基盤に据えた国家であり続けるべきだと考えています。

(「『モノ作り』を忘れたヨーロッパのたそがれ」おわり)

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【イギリスも衰退へ】「モノ作り」を忘れたヨーロッパのたそがれ④

2013-05-13 00:02:48 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 ところで、「製造業」の衰退とともに地盤沈下しつつあるのは、ヨーロッパではユーロ圏17カ国(ドイツを含む;このなかで実質的に唯一の製造業立国だが、他の16カ国に足を引っ張られ、結局、17カ国一緒に没落していくと予想)だけではありません。代表的なのはイギリスです。

 イギリスについては、先日「北海油田の恩恵を生かせなかったイギリスの教訓」で書いたとおりです。ずいぶん前に「製造業」が国際競争力を失ったものの、北海油田のおかげでしばらくは「鉱業国」(石油輸出国)としての恩恵を享受しました。しかしその間、チャンスを生かせず(製造業再生を怠って)、安易な石油・ガス関連の輸出に依存し過ぎたため、いまや北海油田の斜陽化とともに経常赤字が拡大し、それとともに国力も低下の一途をたどりつつあるように見受けられます。

 もっともイギリスにはある意味でいまでも「鉱業国」としての顔があると思っています。それを感じさせられるのが、世界中の油田や鉱山の権益を持つ「資源メジャー」の存在です。たとえばBP(石油)、リオ・ティントやBHPビリトン(鉄鉱石、銅鉱石、石炭等)、アングロ・アメリカン(金、プラチナ、その他レアメタル等)などが代表例。これらを含む世界的な資源会社の多くはイギリスに本部、あるいは主要事務所を構えるほか、ロンドン証券取引所に上場しています(上記4社はFTSE100種総合株価指数を構成する資源株14社に含まれる)。こんなところをみると、イギリス経済はかつての植民地遺産(オーストラリアなど、以前の植民地で開発した鉱山の権益等)がもたらす富に現在も支えられているといえるかもしれません。

 ここで話は飛びますが、こうしたイギリスのスタイルは、今後のわが国の国家戦略を描くうえで大いに参考になりそう。海外資産(鉱山権益や企業など)からの利子・配当金収入を増やすという戦略です。すでに商社をはじめ、わが国の大手企業の多くは、これまでの円高のアドバンテージを活かし、外国鉱山の権益や企業の買収に積極的に取り組んでいます。実際、2012年上期の日本企業による外国企業のM&A件数は前年同時期で15%増の262件に上ったそうです(バブル期1990年上期[247件]を上回って過去最高!)。

 すでにこうした投資の効果ははっきり現れています。最近は円安にともなう石油・LNGの輸入価格の高騰により、単月で貿易赤字を記録することが多くなっていますが、トータルの経常収支はおおむね黒字を維持できています。それは所得収支(海外からの利子・配当収入から海外への利子・配当支払いを差し引いた収支)の黒字のおかげ。財務省によれば、直近の今年3月、わが国の経常収支は1.2兆円の黒字となりましたが、そのうち所得収支は1.7兆円の黒字と、2010年同月以来の3年ぶりの黒字幅を記録したそうです。

 所得収支は円安局面では円換算で増えることになります。したがって所得収支は、円安傾向にある現在、高止まりする貿易赤字のマイナスを打ち消して、経常収支を改善(黒字化)してくれる効果をもたらします。そういった意味で、外国の優良企業買収や鉱山権益の確保は、所得収支のさらなる改善向上につながることから、日本経済をさらに強化する手として有効と考えられます。

 わが国には高い競争力を維持する製造業の基盤と、バブル清算を終えた健全な金融システムがあります。それに加え、いまや海外に持つ資産がもたらす利益が増えつつある―――政策さえ間違えなければ、日本経済の今後は決して悪くはないと思います。

(続く)

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【バブル崩壊で深みへ】「モノ作り」を忘れたヨーロッパのたそがれ③

2013-05-11 00:04:35 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 とはいえ、スペインやキプロスなどを見れば分かるとおり、すでにヨーロッパの不動産バブルは崩壊しています。多くの国々で土地や建物の価格は下落し続けています。

 それでもこれらの国々は(懲りもせず)不動産バブルの再来に期待するしかないのではいないでしょうか。これまで書いたように、巨額の借金に見合うだけの稼ぎをもたらすマトモな産業(国際競争力のある製造業)が国内に見当たらないなか、もはや自分たちの土地に再び外国の投機マネーを呼び集め、それを元手にキャリートレードなどの金融業を展開する以外に、現在の苦境を脱する手はないように思えます。

 しかしこの策が功を奏するには、繰り返しになりますが、バブルがひたすら膨張する必要があります。不動産の価格が絶えず上がり続けるという前提が必須ということ。もはやそんな前提は幻想であることは明らか・・・。かくしてユーロ圏問題国の最後の砦「不動産」も風前の灯です。(とりわけ欧州金融関係者の)一部には「欧州の金融危機はヤマを超えた」などという声もあるようですが、その本音は、ともかくいまのうちに(金融市場が「リスクオン」のうちに)何とか儲けておいて、金融危機再発前までに不良資産を上手に売り抜けておこう、といったあたりではないでしょうか。

 結局、17カ国、約3.3億人の「巨大人工国家」であるユーロ圏を実体経済面から支えるのは、GDP3.4兆ドル(2012年)、人口8千万人あまりのドイツ一国(の製造業)ということになりそう。しかしこのユーロ圏、借金バブルの最終処理はこれからが本番です。GDP5.9兆ドル(2012年)、人口1.3億人、バブルの清算がすでに終わっている日本の経済規模と比較してみても、いかに「製造業立国の雄」とはいえ、ドイツがそんな傷だらけのユーロ圏を一国で支えるのはあまりに難しすぎる、というように感じられます。

 そう考えると、やはり通貨「ユーロ」は、遅かれ早かれ、何らかの激変を迎えざるを得ない・・・(ギリシャやスペインなどがユーロ圏から実質的に放逐されるか、あるいはドイツが自ら脱退するか・・・)。「モノ作り」を忘れ、あるいは「モノ作り」の国際競争力を失うなかで、禁断の(?)麻薬・資産バブルに手を出し、その崩壊でさらなる深みに向かうユーロ圏諸国、そしてそんな国々のバブルの後始末に「モノ作り」で培った国力を奪われていくドイツ・・・ユーロ圏17カ国の前途は本当に多難です。

(続く)

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