いちばん何にナーバスになっているかって?株価?それともジャンク債の利回り?・・・いいえ、ズバリ金(ゴールド)価格!・・・なのでしょうね・・・(?)
金価格が高騰しています。現時点で1トロイオンス当たり1413.7ドル(NY先物6/28終値)と、2013年8月以来、じつに6年ぶりの高値圏に達しています。そして注目されるのが、その短期間での上昇ぶり。ちょうど1か月前の5/28は同1282.5ドルと1300ドルを下回る水準でしたから、わずか1か月で100ドル以上もの値上がり、10%を超える上昇率を記録したことになります・・・
では、どうして金価格は突然これほど上がったのか?ですが、すでにあちこちで解説されているように、米経済の現状、そしてマーケットや米ドナルド・トランプ大統領らの催促もふまえれば、米FRBの利下げが近い、との観測がマーケットで高まったため、といえるでしょう。このあたり本ブログでは何度も書いているとおり、FRBが利下げで金融を緩和すれば・・・低利マネーを借用した投資が活発になり、株、債券、不動産、商品(石油や小麦等)の価格が上昇(債券価格が上がるので利回りは低下)することになりますからね。
ということで、これと同じ理屈から「商品」の1ジャンル?である金の価格も上がっている、といえそうです・・・が、今回の金についてはもっと別の視点からとらえるべきでしょう、つまりその「通貨」的な面から・・・
これまたしばしば指摘されるように、金は商品・・・であるとともに通貨でもあるわけですが、2007年のサブプライム・ローン・バブルの崩壊そして2008年のリーマン・ショック以降は後者の通貨としての性格をより強く帯びてきています(だからこそ中国等の中銀は金の保有量を増やしている)。要するに、これらによって引き起こされる金融恐慌(資産価格暴落→不良債権・貸倒損失急増→大銀行が債務超過に転落・・・)に財政が耐えられない(銀行救済の公的資金が用意できないために長期金利が急騰する)ので、中央銀行が紙幣を大増刷して資産の価額を維持・上昇させる、つまりインフレを起こすしかない・・・ってことは、その単位当たりの価値は激減するから、ペーパーマネーに替わる「通貨」としての金の価値と需要が高まっている、ということです。
目の前の金価格急騰の背景は、このように他の資産(株や債券や石油等)価格の上昇の背景とは根本的に違うといえます。それは・・・紙幣=中央銀行券への信認の低下ということ。ゆえにその紙幣、つまり「ドル」の価値を守るべき立場のFRBとしては、今後の金融政策のかじ取りに当たっては、金価格の上昇(投資家のドルに対する不信感の高まり)は何としても抑え込まなければなりません。したがって、いまFRB・・・のジェローム・パウエル議長は、冒頭のとおり、金価格の動向に非常に神経質になっているのだろうな、推察するものです。ヘタをすればその上昇に歯止めをかけられなくなり、その結果、FRBそして同議長らは「ドルの番人」として失格の烙印を押されかねません・・・が、だからといってこれまでの引き締めスタンスを維持し、利下げを見送ったりしたら、これを織り込んで株や債券やらの爆「買い」に走っていた市場が一転、大量に失望「売り」し、そのせいで資産バブルが崩壊しかねない・・・
・・・って、①金価格が上がっても(つまり金融を緩和しても)マズいし、②それを防ごうとしても(金融を引き締めても)マズいってこと?じゃあFRBはどうすればいいの?―――「どうしようもありません」が答えになります。だって①はもちろん②の場合でも結局は①に逝く以外になく、どのみちFRBは金価格のコントロール(ドルの信認維持)に失敗することになりますから・・・(?)