世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【外貨預金では負け戦、でアコギなことを・・・】米シティバンク日本撤退が意味すること③

2014-08-29 00:03:27 | 日本

(前回からの続き)

 このほどわが国における個人向け銀行業務から撤退の方針を決定したアメリカの大手銀行シティグループの日本法人は、2004年から2011年にかけて金融庁から3度にわたる業務停止命令を受けています。その「罪状」のなかには株価操作を目的とした資金提供、マネーロンダリング(資金洗浄)の手助けなどのほか、投資信託等の不適切な販売等があったとされています。なぜ彼らはそんなアコギなことをしてしまったのか・・・。

 シティなどの外資系銀行が主力商品である外貨預金だけで日本での事業を拡大するのは困難です。前回書いたように、それではライバルである邦銀等の円の預貯金に(それどころか「タンス預金」にすら)勝てないから―――「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」のとおり、ドルなどの外貨はよりも実質金利が低い(通貨価値の下落率が大きい)ので、預入期間中にドルが円に対して弱くなって(ドル安円高が進んで)為替差損が大きくなり、満期時の円建て受取額が多くの場合、円預金のそれを下回ってしまうからです(それどころか元本割れとなったものも少なくないはずです)。一番「安全確実」なはずの預金ですらこのありさま・・・といったことで、元手となる通貨が円よりも弱いドルやユーロ等であるという「ハンディキャップ」を背負った外銀が日本人投資家からの資金集めに苦戦するのは当たり前なのですが・・・。

 それでも彼ら日本法人のもとにはニューヨークの本部からノルマ必達の指令が飛んでくるわけです―――「1ドルでも多くジャパンマネーをゲットしろ!」と。そんなプレッシャーが日増しに強まるなか、結局、彼らは外貨預金での真っ向勝負は断念し(?)、ハイリスク・ハイリターンな金融商品、つまり「うまくいけば」円預金に勝てる(円預金以上に高い利回りを得られる)投資信託等のセールスに活路を見出そうとした・・・(もちろん「うまくいかなければ」悲惨なケースではこうなってしまう人々もいるわけで・・・)。

 そうこうするうちに、アセる彼らはコンプライアンスに抵触する取引のあっせんとか、強引で不誠実な売り込み等(元本割れなどのリスクがあることを十分に説明しなかった、とか?)をしてしまい、それらによって不利益を被った顧客からクレームが多発し、当局の知るところとなった―――上記の業務停止命令にはこうした背景があったのでしょう。

 「シティ日本撤退」をめぐるマスコミ報道には、シティなどの外銀が日本人相手の事業で苦労する理由として、資産運用における保守的な国民性、つまり円預金偏重の傾向を指摘するものが多いように見受けられます。まあそれもあるかもしれませんが、別な言い方をすると、それは、わたしたちに預貯金から外貨建て資産投資にシフトしてみようかな~という気にさせるだけのパフォーマンスを外銀が示せていないことの表れです。このあたりは上記のとおりです。

 一方、シティを含む欧米系の銀行は新興国市場では強さを発揮します。なぜならそこでは「ドル>新興国通貨」「ユーロ>新興国通貨」つまりドルやユーロは円にはかなわないけれど新興国通貨よりは実質金利が高い(インフレ率が低い)ので、欧米銀は容易に資金を調達することができるし、顧客も実質の利回りが大きいドル預金やユーロ預金で自国通貨を殖やすことができるので彼らを歓迎するからです(わたしたちから見ればカワイソーですが・・・)。そして欧米銀は預金者への利払い等に備えて「安全確実」な米国債やEU諸国債を買っておくだけでOK(それらの実質利回りは新興国の国債よりも大きいため)。つまり上記のシティ日本法人のようにハイリターンを狙って無理してリスク資産投資などをする必要がないということ―――彼ら欧米銀にしてみれば、シビアな日本市場に比べれば何と楽なことか、といったところでしょう。

(続く)

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【ドル預金の運用利回りは円預金を下回る!?】米シティバンク日本撤退が意味すること②

2014-08-27 00:02:13 | 日本

(前回からの続き)

 外資系銀行が日本人投資家向けの事業を拡充させるためには、「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」の市場環境のもと、「」よりも実質金利の低い「ドル」等の外貨を元手に「円」以上の運用利回りを上げなければならず、これら彼らにとって大きなハンディキャップとなっている、という見方を前回綴りました。

 それをもう少し細かく書くと―――「ドル預金」は彼ら外銀の主要商品ですが・・・一定期間の見た目の金利が円預金より高いドル預金でも、数年におよぶ金融緩和政策(Quantitative Easing:QE)の影響でアメリカは日本よりも物価上昇率が高い分だけドルは円に対して減価してしまうので(円高ドル安が進んでしまうので)、その満期時の円建ての受取金額は多くの場合、円預金よりも少なくなってしまう → したがって日本人の顧客はそんなドル預金に見切りをつけて邦銀等が扱う円預金のほうに戻ってしまう → 外銀は日本人相手のディールの材料となる通貨が円よりも弱いドル等であることにハンディを感じる―――といったところ。

 これに具体的な数字を入れてみましょう。たとえばある日本人投資家が1ドル100円のときに利回り3%の1年物ドル預金に100万円=1万ドルを投資したとします。1年後のドル建ての受取額は10300ドルです。一方でこの間、アメリカの実質金利が日本を下回ったので為替レートが円高ドル安になって同95円となりました。で、最終的な円建ての受取金額は、10300×95=978500円と元本割れに・・・(手数料等が控除されるので実際の受取額はもっと少なくなる)。ということで、ドル預金のパフォーマンスは邦銀の普通預金どころか「タンス預金」にすらおよばなかった、という惨めな結果に終わり、その投資家はドル預金をしたことを深く後悔するのでした・・・。

 もちろんこれは仮想の例にすぎませんが、これまでの長期的な円高ドル安のトレンドのなかではよくあるケースだと推察されます。ひどい場合はこちらの記事に書いたような財テク失敗倒産の原因となったものもあるでしょう。そんなこんなで日本では外銀やドル預金などの外貨建て商品は「危険だ・・・」と敬遠されることに・・・。

 とまあ、こうした日本の環境では外銀が苦戦するのも分かるというものです。上述のとおり、自分たちの運用元本となる通貨(ドル等)の実質的な利回りが円に負けているわけだから・・・。その「ハンディ」をはねのけて、為替差損を差し引いても最終的な円建て額を円預金以上のプラスにもっていくことはさすがのプロでも難しいわけで・・・。

 それでも彼ら日本法人には欧米の本部から「もっと利益を獲得しろ!」なんてシビアな指令やノルマが届くわけです。そんなことを言われても・・・主力のドル預金は円預金のパフォーマンスにかなわないからなかなか売れないし・・・で、困り果てた彼らは結局、円資産よりも高い利回りを得られる商品の販売等に活路を見出そうとします

(続く)

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【個人資産大国・日本から、なぜ撤退?】米シティバンク日本撤退が意味すること①

2014-08-25 00:04:12 | 日本

 先日、アメリカの大手金融機関シティグループが日本で展開している個人向け銀行事業からの撤退を検討していることが明らかになりました。NHKなどの報道によれば、シティは傘下で個人業務を扱う「シティバンク銀行」を売却する方針を固め、すでに3メガバンクを含む邦銀数行に営業譲渡を持ちかけているとのことです。一方でシティは今後、法人業務に特化し、日本に進出する外国企業や日本企業向けの融資等を充実させる、としているようですが・・・。

 最近の世界的な「リスク・オン」モードのなか、欧米の金融機関は世界各地のあらゆるマーケットに進出して投融資を活発化させている印象がありますが、わが国に限ればむしろその逆となっている感じです。今回のシティもそうですが、ここのところ有力な外資系銀行の日本からの撤退が目につきます。すでに欧州最大の銀行HSBCや英スタンダードチャータード銀行が富裕層向け事業を外銀他行に売却するなどして日本を去っています。

 それにしても・・・1600兆円以上(今年3月末時点の家計金融資産残高:1630兆円!)もの莫大な個人資産のあるわが国から、つまり本来ならプライベートバンキングのチャンスに溢れているはずの巨大マーケットから、いったいなぜこれら外銀は次々と出て行ってしまうのか・・・。

 「外銀の日本離れの原因は、日本の金融ビジネス分野における独特の規制や取引慣行にある」―――日頃、日本のマスコミ報道に接していると、ついこんな勘違いをしてしまいそうですが、けっしてそういうわけではありません。いちばん大きな理由は、当たり前のことですが、彼らが多くの顧客に支持されるほどの魅力的なサービスを提供できなかったから、つまり日本人(個人)が満足できる運用利回りを確保できなかったからでしょう。そんなことではわが国の個人投資家は彼らをパートナーに選ぼうとはしませんね。

 そして外銀がわが国で十分な運用パフォーマンスを発揮できないのは「もっともなことだ」と思っています。なぜなら、日本人相手の商売をするにあたって、彼ら外銀ははじめからハンディを背負っているからです。で、そのハンディとは・・・「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」(通貨の強さを示す不等式:実質金利の高い順に並ぶ)のもと、「円」よりも実質の利回りが低い「ドル」等を元手に、「円」以上の運用実績を上げなければならない、ということです。

(続く)

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【21世紀のCivil Warは不可避?】米FRB「量的緩和策」が終わったらバブル崩壊は必至!?③

2014-08-23 00:04:59 | アメリカ

(前回からの続き)

 アメリカ・ミズーリ州のファーガソンで起きた白人警官による黒人少年射殺事件をきっかけに始まった騒乱は、アメリカの行く末を暗示していると思っています。これはけっして偶然の不幸ではなく、アメリカ経済・社会のゆがんだ構造が生んだ必然の悲劇。背景にあるのは根強い人種差別と今世紀に入って広がる一方の資産・所得格差そしてその結果としての貧困―――多くの人々が克服しようとしたけれどできなかったアメリカの闇の部分です。

 QEの継続は、この闇をさらに深くすることはあってもその逆はないでしょう。大量のマネーがインフレを激化させ、貧富差をどんどん拡大するなか、生活苦にあえぎ未来への希望を失ったアメリカ中の人々が不平不満感をますます募らせます。そんななかで上記のような暴動や弾圧が多発するでしょう。やがてアメリカは民族、階層、州などの単位で四分五裂、そして内乱状態へ―――21世紀の「Civil War」へ。これはけっして「まさか・・・」ではないと思います(流血の惨事をともなうことなく、前回[=南北戦争]のように奴隷[のような困窮状態にある多くの人々の]解放につながるのかどうか・・・)。

 そんな連邦国家としての危機を米治安当局も予見しているのでしょう。「アメリカの真の敵は外ではなく内にあり!」―――だからこそ以前からテロ未然防止を大義名分にこっそりと多くの市民の通話やメールを監視しているわけだし、警察は軍隊から払い下げられた軍備品で重武装しているわけで・・・。アメリカの映画に警察の殺人メカを「正義の味方」に仕立てたようなものがけっこうありますが、これらはまもなくやってくる内戦(!?)の時代に備え、「権力による暴力行使はOK!」といった米国民間のコンセンサス醸成をスクリーンを通してやっておこう、という思惑のもとに作られているのでは、などと勘繰っています。

 で、そんな軍隊や武装警察が本気で守ろうとするものは、米国民の一体感とか安定などではなく、ほんの一握りの富裕層―――QEのマネーゲームをたっぷり享受できるスーパーリッチの既得権益。そしてその銃口の向く先は、「他国」のテロリストなどではなく、大多数のごくフツーの「自国」の民・・・。まるでどこかの独裁国家のような光景が「自由と正義の国」を自認するアメリカの現実となりつつあるのかも・・・。

 ということで最後はすっかり本稿のテーマから脱線してしまいましたが、FRBがもたらすQEという名の「麻薬」漬けの果てにアメリカを待つのは、バブルの膨張と破裂が引き起こす金融恐慌と、ある意味でそれ以上に恐ろしい国家の専制化とか内部分裂リスクなのではないだろうか、などと心配しています。そのときアメリカの市場関係者は、「地政学リスク」の真の中心が、ウクライナでもパレスチナでもなく、ほかならぬ自国であったことに気づくのでしょうか・・・?

 「アメリカが近い将来そうなってしまうかも・・・」―――わたしたちとしても可能性ゼロとはいえないこのシナリオに基づく国家的リスクマネジメントをいまから十分にシミュレーションしておいたほうがよいのではないでしょうか。

(「米FRB『量的緩和策』が終わったらバブル崩壊は必至!?」おわり)

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【米利上げ:逃げ水のように遠のくだけ】米FRB「量的緩和策」が終わったらバブル崩壊は必至!?②

2014-08-21 00:02:30 | アメリカ

(前回からの続き)

 それにしてもFRBの利上げが近いのではないか」―――この憶測はじつに意味深長だな~と感じます。以下のような理由から・・・。

 こちらの記事を含めて本ブログでいろいろ書いているように、そしておそらく米国内外の多くの市場関係者が感じ取っているとおり、もはやアメリカには超低金利環境を維持して資産バブルを膨張させる以外の道はありません

 ・・・にもかかわらずそれに冷や水を浴びせるような利上げがマーケットで取り沙汰されるということは、誰もがいまの資産バブルの危険性を意識しつつも、FRBがこの難局を金融政策(つまり利上げ)で制御し、米経済をソフトランディングさせる能力をいまも維持していることをどこかで信じたいからなのではないか・・・。

 でもそれは淡い期待に過ぎず、まもなくFRBが無力であることが明らかになりそうだと思っています。バラまき過ぎたQEマネーと企業・個人が積み上げた膨大な不良債権と借金を前に、もはやFRBは米金融経済をコントロールすることができなくなっている(バブルを無難に収束させる手段を失っている)―――唯一、バブルを永遠に膨らませること以外には・・・。まあFRBの実態はこんな感じでしょう。

 かくして、FRBは利上げを実行せず(というより実行できず)、この先も「利上げが近い」との観測だけがまるで「逃げ水」のように続くことに・・・。そんなこんなで近いうち(?)資産バブルはピークを打ち、一転して株価・不動産価格は下落に転じて資産デフレへ・・・って、絶対に×です。ということでFRBは利上げ見送りどころか「出口戦略」ですらも放棄し、悪夢のデフレ深化を阻止すべく、4たび(?)QEを発動してマネーを刷りまくることに・・・!?

 それを「Phase4(第4弾)」と呼ぶのかどうかはともかく、こうして必然的に(?)再開される次のQEで、おそらくFRBは米国債などにくわえて「不動産関連」資産の買い入れにいっそう力を注ぐだろうと考えています。株価もそうですが、それ以上にいまの米経済にとって恐ろしいのが不動産価格の下落だからです。

 不動産バブルの再破裂―――サブプライムローンバブル崩壊、リーマン・ショックを見ればわかるとおり、これが金融機関の財務悪化、金融システムの動揺、貸し渋り・貸し剥がしを通じた景況悪化などを招き、最悪の場合、アメリカを金融恐慌に陥れるおそれがあります。そんな破局は絶対に起こさない!―――と腹をくくったFRBはブラックホールと化す・・・。不動産担保証券等はもちろん、米銀が抱える不良債権、あるいは経営不安のある一部金融機関の株式などを片っ端から吸い込み、大量のマネーを市場に吐き出して、不動産価格のさらなる上昇とローン金利の引き下げを図ろうとするでしょう(まあバブルだから遅かれ早かれ崩壊しちゃうけれど・・・)。

 こうしてあふれかえったマネーはFRBの思惑どおり不動産価格を押し上げるかもしれません。しかしそれによってヘッジファンドなどの資産バブル受益者以外の大多数の米国民は、べらぼうに高い住宅価格がもたらすローンの重荷や賃料の高騰等に苦しむことになります。

 さらにこのマネーは石油や小麦などの国際商品市場にも流れ込み、生活必需品―――ガソリン代とか食料品価格を跳ね上げるでしょう(以前もちょっぴり書きましたが「インフレドルの刷り過ぎ」こそが今世紀に入ってからの商品価格の急上昇の真因だと思っています。けっして「中国をはじめとする新興国における需要の高まり」ではなく・・・)。これによってただでさえ減り続けてきたアメリカの一般庶民の実質所得は一段と少なくなり、貧困がいっそう広がっていくでしょう。やがて・・・。

(続く)


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【資産バブルを続ける以外に道はない】米FRB「量的緩和策」が終わったらバブル崩壊は必至!?①

2014-08-19 00:00:06 | アメリカ

 前回「日銀『異次元緩和』が終わっても国債暴落は起きない」と題して長々と思うところを綴りました。こうなると気になるのは、その日銀がお手本にした(?)アメリカの中央銀行・連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和策第3弾(Quantitative Easing Phase3:QE3)が終わったらどうなるのか、ということ。何度か書いていることですが、個人的な予想等をあらためて記してみたいと思います。

 こちらの記事等でも書いたように、すでにFRBはテーパリングと呼ばれるQEの幕引きの段階に入っており、現在は国債等の買い入れ額を徐々に減らしているところです。このままいくとQEは年内には終了の見込み。そのあとFRBはいよいよ本格的な「出口戦略」―――FRBがそれまでに買い入れた米国債や不動産担保証券(MBS)をマーケットに放出し、バラまいた(バラまき過ぎた?)マネーを回収すること―――を開始し、4兆ドルを軽く上回る規模に膨れ上がったバランスシートの縮小に取り掛かるわけですが・・・。

 私的な結論から先にいうと、「FRBは出口戦略を発動できない」と考えています。理由は本稿表題のとおり、そしてこちらの記事等に書いたとおりそれが資産バブルの崩壊―――株価と不動産価格の暴落による強烈な資産デフレを引き起こす可能性が高いからです。結局アメリカは引き続き資産バブルの膨張に活路を見出すしかないわけで・・・。

 付け加えると出口戦略は金利の上昇を引き起こしそうですが、これこそ資産バブル最大の敵です(まあ資産価値暴落と引き換えに債券は買われるだろうが、それでもMBS等は購入が手控えられてローン金利等は上がると思う)。ここ数年、アメリカは企業も個人もQEという「麻薬」がもたらした人造的な超低金利状態に、あまりにもなじみ過ぎてしまっています。だから米経済は金利の上昇にとても脆弱になっている―――ちょっと金利が上がっただけで住宅や車などのローン延滞率が急上昇したり貸し倒れが急増し、リセッションや金融システム不安が起こりかねない状態になっているといえます。そんなときにもう一段の金利の上昇を招きかねない金融政策なんて選択できるはずがない・・・。

 上記に関連して興味を惹かれるのが、米国内外の金融市場でいまや最大の関心事となっているFRBの利上げ(フェデラルファンドレートの誘導目標の引き上げ)の時期をめぐる議論です。いろいろな予想があるものの「0.5%までの利上げが来年[2015年]中に行われる」というのが大方の市場関係者の見通しのようです。ですが、私は上のような理由から「少なくとも来年の利上げはない。いや正確には米経済は金利上昇に耐えられないのでFRBには利上げができない」と予測しています。

(続く)

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【いつになったらできる?「やれやれ買い」】日銀「異次元緩和」が終わっても国債暴落は起きない⑨

2014-08-17 00:01:56 | 日本

(前回からの続き)

 以上、日銀当座預金に貯まり続ける巨大資金(100兆円超!)が、(近い?)将来、確実にやってくる日銀「異次元緩和」終了後の金融マーケットに大量に流入し、わが国を支えるだろう、という見通しを長々と綴ってみました。このジャパンマネーが日本国債、外国債、そして日本株を買い支えることで、日本経済の死命を制する長期金利は低位安定し、為替は円高方向(というよりは購買力平価等の観点で妥当な水準)に是正され、株価も一方的に下がることなく、各種指標で説明できるまっとうな水準で維持されるだろうと考えています。

 このプロセスで国債や株を買いながら、わが国の機関投資家は安堵の一息をついてこうつぶやくでしょう―――「あーやれやれ、やっと日本国債、日本株、ドル・米国債を買える市場環境になった・・・」。これを市場関係者は「やれやれ買い」と名付けそうです。異次元緩和中の「やれやれ売り」とは逆のアクションですね。

 というように、日銀の異次元緩和は、その開始とその終了によって、少なくとも本邦金融機関にはそれなりの恩恵をもたらしてくれそうです。「やれやれ売り」で利益確定、そして「やれやれ買い」で投資をリスタート、といったところ。これに対して損失を被るのはこの間、日本株などを高値掴みした外国人投資家(!?)でしょうか・・・。

 それにしても気になるのは、日銀は異次元緩和(≒円安誘導)をいったいいつまでやる気なのか、ということです。いくらなんでも国債買いには限度があります。これまで綴ったような構造があるので当面は大丈夫でしょうが、金融緩和が過ぎれば出口戦略はそれだけやっかいになるでしょう。すでに日銀は「銀行券ルール」を撤廃しているだけに一抹の不安が頭をよぎります。

 そのあたりも心配ではありますが、それ以上にヤバいのは目の前の危機です。下記のように、足元の実体経済面、そして金融面からみても、この金融政策はとっくに行き詰まっているような・・・。

 まずは実体面。上述のとおりネガティブなポイントはたくさん指摘できるけれど、ここでは「経済成長」を挙げておきます。こちらの記事等にも書きましたが、昨年度のわが国のGDPはドルベースで15%を軽く上回る「超」マイナス成長となりました。そして先日発表された今年度の第一四半期GDPは消費増税の影響等により年換算でマイナス6.8%・・・。安倍首相の力説によれば「アベノミクス」のセールスポイントは「成長戦略」なのだそうですが(冗談でしょ!?)、たしかに驚くべき急成長ですね、マイナスの!なんて皮肉のひとつもいいたくなるような惨状です。こんな「とほほ・・・」な情勢下で(追加緩和などで)さらに円安誘導を強め、「悪いインフレ」を煽りつづけたら、車を手放す人がますます増えちゃいますよ! 誰かこの当たり前のことを安倍首相・黒田日銀総裁に言える人はいないのか・・・。

 そして金融面。昨年こそ円安株高を享受できた金融機関ですが、これから先は益出しに苦労しそうです。手持ちの国債を日銀に売れば多少の利ザヤは稼げるとはいえ、もうそれも限界に近いでしょう。それにそれでキャッシュを手にしたところで新しい運用先なんて見つけられません。したがって「たしかに去年はありがたかったけれど、そろそろ『やれやれ買い』、つまり国債や外債や株に再投資できる環境に戻してほしい・・・」といったあたりが彼らの本音なのではないでしょうか。

 そんなこんなで、わが国の経済界、金融界、そしてわたしたち市民のあいだで、異次元緩和、そしてアベノミクスに対して「もう勘弁してくれよ~」という「うめき声」が日増しに高まっていく・・・そんな気がするのですが、どうでしょうか。

(「日銀『異次元緩和』が終わっても国債暴落は起きない」おわり)

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【緩和終了でリスク資産投資も再開】日銀「異次元緩和」が終わっても国債暴落は起きない⑧

2014-08-15 00:02:46 | 日本

(前回からの続き)

 日銀が「異次元緩和」を終え、「出口戦略」(それまでに日銀が買い入れた国債等の資産を市場に放出すること)を実行に移すとき、国債価格下落の一瞬のタイミングを逃すまいと、日銀当座預金口座に貯まった巨額の緩和マネーが一斉に日本国債に買い向かうだろう、と本稿⑥で述べました。これにより国債価格は(いまよりは少し下がっても)引き続き高値を保ち、利回り上昇・長期金利の上昇もわずかな程度に抑えられるため、この金融政策の終了が日本経済に大きなダメージを与えることはないだろうと考えています。

 なおこのときの長期金利の値を予想することは難しいですが、前述した内外の諸情勢から判断して、いまよりちょっぴり上がっても個人的には1%に満たないレベル、つまり異次元緩和開始前(0.7%前後)と同じくらいの水準になるのではないか、と思っています。いや、逆に「下がる」(!)可能性すらありますね。米欧中の政治・経済・社会の状態があんな感じなので・・・(!?)

 さらに、上の国債の動きから少しばかりインターバルを置いて、これらのマネーのかなりの部分は以下のようなプロセスを経て外貨建て資産および国内外の株式の購入にも回っていくと考えられます。

 前回(本稿⑦)において書きましたが、この資金はもともと外債や株などのリスク資産の売却によって生まれたもの。異次元緩和(≒円安誘導)が演出した「円安株高」モードにおいておもに本邦金融機関が「やれやれ売り」を出したことで得たものです。まあ各社にしてみるとリスク資産投資をいったんリセットできたといった感じでしょうか。

 異次元緩和が終わればマーケットは一転して「円高株安」モードとなるでしょう。円高株安―――いまのわが国ではマスコミがネガティブ面ばかりを強調する状態ですが、金融機関にとってはリスク資産への投資を本格的に再開・拡大するチャンスとなります。円が強くなればそれだけ安価で外貨建ての資産が手に入るし、株価が安くなれば当然、その株への投資によってより高い配当利回りや将来の値上がり益を享受する期待が増すからです。こうして日銀当座預金に蓄えられていたマネーの一部はふたたびリスクテイクするようになっていくでしょう。

 このお金の動きは当然、円高株安が進むほど活発となっていくはずです。ということは、これは結果として外債とか株の価格を下支えする力となるでしょう。したがって異次元緩和が終了したからといって為替が円高外貨安に行き過ぎたり、株価が極端に下がり過ぎることはないだろう、と思っています。

(続く)

本日は終戦記念日。わが国が物事を解決する手段として戦争を選択することがありませんように。

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【円安株高でリスク資産投資がリセット】日銀「異次元緩和」が終わっても国債暴落は起きない⑦

2014-08-13 00:03:59 | 日本

(前回からの続き)

 前回、日銀の「異次元緩和」とは、その開始によって「国債:金融機関→日銀」「マネー:日銀→金融機関」、そしてその終了によって「国債:日銀→金融機関」「マネー:金融機関→日銀」という現象が生じること、と書きました。ホント、「行って来い」だな~と感じます。

 これは結果として、異次元緩和は日銀・金融機関の間の国債のやり取り以外の他のマネーの流れ、つまり融資の拡大など、景気を刺激するようなおカネの流れを生み出す役目を果たしていないことを意味します。まあもとより超低金利下だし、異次元緩和でほんのちょっぴり金利が下がったくらいで資金需要が増えるなんて考えられません。

 そんなことは重々承知の日銀がそれでも金融緩和を実行したのは、何度も指摘しているとおり、ベースマネーを増やして為替を円安ドル高に誘導することで、輸出をいっそう喚起したり、輸入品の円建て価格を引き上げてインフレ(コストプッシュ型の「悪いインフレ」)を起こしたかったから。

 しかし、これまた本ブログでいろいろ書いているように、この円安誘導は、わが国の実体経済に対して、当初期待された働きをほとんどしていないばかりか、電気代ガソリン代などの高騰、事実上のスタグフレーション(景気停滞下のインフレ)、国際基準(ドル基準)での超マイナス成長・国民所得の大幅減、国富の損耗(円建て輸入額の急増にともなう経常収支の悪化)などなど、ネガティブな結果ばかりをもたらしているような気が・・・。

 だからといって異次元緩和を通じた円安誘導にポジティブな面がまったくなかったわけではありません。で、それは何か、ですが・・・本邦投資家にリスク資産売却・利益確定のチャンスを与えたことだと思っています。つまり、日銀の上記金融政策にともなう円安(外貨高)株高のおかげで、彼らの多くが以前に高値掴みをした外債や内外の株式を売って利益を得られた、ということ。このあたりのようすは2013年度の各金融機関の決算結果にも表れていると思います。もっともこれがわが国の実体経済が被ったダメージを埋め合わせるほどの大きな恩恵だったのかどうかは疑問ですが・・・。

 ちなみにこれを俗に「やれやれ売り」と言うのだそうです。「あーやれやれ、含み損があったために長いこと売れずに「塩漬け」のままになっていたこれらをようやく手放すことができた!」といった感じでしょう。こちらの記事にも書きましたが、実際、アベノミクスで沸いた昨年の株式市場で、外国人が日本株を買い越した一方で日本人はしっかり売り越しています。そう、やっぱりアベノミクスは「売り!」ですよね!?

 おそらくこれによって金融機関が手にしたキャッシュの多くもまた、日銀当座預金口座に積まれているものと推察されます。本稿前段のデータのとおり、同残高は今年3月末の時点で前年度末よりも70兆円ほど増えています。一方でこの間の金融機関の保有国債の減少額は約46兆円。この差の少なからぬ部分がこのリスク資産の売却によって生まれたおカネでしょう。

(続く)

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【適当な運用先は日本国債しかない】日銀「異次元緩和」が終わっても国債暴落は起きない⑥

2014-08-11 00:03:45 | 日本

(前回からの続き)

 では、日銀当座預金口座に貯まりつづける緩和マネーの行き先はどこになるのか、ですが、やはり「日本国債」以外にありえないと考えています。本稿でこれまで述べてきたとおり、この口座に積まれた数十兆円もの大量のおカネを吸収できる適当な運用先が世界中どこを見渡してもほかに見当たらないからです。もっともいまは「異次元緩和」実施中の日銀が国債を買いまくっているので(国債価格が高すぎる・利回りが低すぎるので)、日銀以外の他者はなかなか手が出せませんが・・・。

 したがって、わが国の金融機関の多くは、文字通り「とりあえず」当座の日銀口座に預金をしながら、時期が来るのを―――以前のように国債がもっとスムーズに買える環境になるのを―――じっと息を凝らして待っているのではないでしょうか。結局、それまでの(長い?)間、国債「買い!」の潜在的なエネルギーはマグマのように膨らみ続けることに・・・。

 やがて日銀が異次元緩和を終え、「出口戦略」(異次元緩和のあいだに買い入れた国債等の資産を市場に放出していくこと)を実行に移すときが、そのマグマの動き出すタイミングとなります。国債価格はそのとき下落し、利回りが上昇するからです。そのとたん「待ってました!」とばかりに、わずか0.1%/年の付利で耐え忍んできた巨額のマネーは同口座からとうとうとあふれ出し、熱き奔流となって日本国債に殺到するでしょう。

 もちろんこの際には異次元緩和の開始直後と同じような混乱―――長期金利の乱高下は避けられないと予想されます。これは十分に気をつけなければならない事象です。しかし、日銀がフォワードガイダンス(いつ、どのように出口戦略を進めるのか、を前もってアナウンスしておくこと)等を適切に行えば、これは十分にコントロールできる範囲にとどまるだろうと思っています。なぜって、繰り返しになりますが、ありとあらゆるリスクに満ちたいまの世界で、日本国債以外にこれだけのマネーの受け皿を見つけることなんてできっこないですから・・・。

 長々と綴ってきましたが、以上のような理由から、日銀の異次元緩和が終わっても日本国債の暴落や長期金利の急騰はまず起きないし、それが原因で日本経済が重大な危機に瀕することはないだろうと考えています。本稿冒頭で日銀の異次元緩和で起こったことは「国債:金融機関→日銀」「マネー:日銀→金融機関」(金融機関→日銀当座預金口座)と書きましたが、「異次元緩和」終了後に起こる現象はその裏返し―――「国債:日銀→金融機関」「マネー:金融機関→日銀」となるでしょう。要するに単なる「行って来い」ということです。

(続く)


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