世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【IMF:貸すほうも貸すほう・・・】増税しているのは日本だけ、だが・・・③

2014-04-29 00:02:46 | 世界共通

(前回からの続き)

 前回、「よその国」からの「借金」が政府債務の大半を占めるギリシャでは、全280万世帯の9割近くに当たる250万世帯が税金を滞納している、という話をご紹介しました。ということは、同国政府はその借金の返済原資となる税収を確保できていない可能性が極めて高いことになります。そのため、ギリシャにお金を貸しているほうには、貸し倒れのリスクがあるはずですが・・・。

 にもかかわらず、ギリシャへの資金支援はいまも続けられています。しかも、よりによって同国に対し、脱税防止を含む財政健全化を厳しく指導するべき立場の組織によって・・・。

 先述のように、ギリシャにお金を貸している「よその国」の主体は現在、EUIMFなどの国際融資団です。その総額は合計で2400億ユーロと、同国の債務全体の約8割に達します。いまの時点での予定では、EUは今年中に援助を終えるものの、IMFのほうは2016年第一四半期まで資金供与を継続するとのこと。ということで、ギリシャは2年先までの資金繰りが保証されるとともに、2023年まで支援金の返済を始めなくてよいのだそうです。いやはや・・・。

 それにしても・・・いくらEUとかIMFといった「最後の貸し手」としての役割を担う公的機関とはいえ、上記のように債務の支払い能力も意欲も皆無に等しいギリシャのような国に、いくらなんでも大盤振る舞い過ぎやしないか、というのが以前からの私の正直な思いです。こちらの記事にも記したとおり、とりわけIMFについては、後をすべてEUにまかせてギリシャ支援からさっさと手を引くべきだと考えているのですが・・・。

 ・・・といった個人的な感情はともかく、ギリシャは、世界的な流行となっている国家の「借金」とはいかなるものなのかを教えてくれる典型例だと思っています。それはつまり「他国に対する、身の丈を(はるかに)超える借金」ということです。ギリシャ以外のPIIGS諸国、いま話題のウクライナ、さらに外貨建て国債を次々に発行して資金調達にいそしむアジアやアフリカの「新興国」も、そしてそれらの債券を買う投資家もみな同じ―――危険な「借金バブル」に酔いしれているような気がしてなりません。

 そしてこれら諸国の「借金バブル」を結果として助長しているのがほかならぬIMFをはじめとする国際金融機関。上記のギリシャとかウクライナなどへの対応を見ても分かるように、いちおうは課税強化とか財政再建などの改革を融資の条件として求めつつ、なんだかんだで彼らの資金繰りが滞らないように小刻みな支援を続けています。なぜでしょう?

 結局、IMFなどは借金国のデフォルトが怖いのでしょうね・・・。そしてそんな事情を見透かしている借金国はデフォルトをちらつかせて国際社会からお金を「せびる」(しかも、返す気なし!?)―――まさに「モラル・ハザード」です。ギリシャやウクライナのゴタゴタを耳にするたび「借りるほう(借金国)も借りるほうなら、貸すほう(IMF等)も貸すほうだ・・・」などと内心であきれ返っています。

(続く)


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【ギリシャ:国民の8割が税金滞納】増税しているのは日本だけ、だが・・・②

2014-04-27 00:01:23 | 世界共通

(前回からの続き)

 前回、日本以外の外国の多くが、財政資金を「税金」ではなく、国債を発行して金融市場から調達する、つまり「借金」で賄っている、と書きました。で、その諸外国が抱える借金には次の2つの特徴があると思っています。1つ目は、(他国の投資家やIMFなどの国際機関を含む)よその国から借り受けたお金であるということ。そして2つ目は、その国の国力ではとうてい返済しきれないほどの金額に膨れ上がっているということ

 このあたりで真っ先に挙げられる国がギリシャでしょう。ご承知のとおり、2010年前後の欧州国債危機に見舞われたギリシャは現在、対GDP比174.7%(2013年:世界ワースト2位!)にも達する巨額債務を抱えています。同国の政府債務の総額は3000億ユーロをゆうに上回る規模ですが、その8割以上が「よその国」つまりEUとかIMF、そして欧州他国の投資家などからの「借金」です。ということは理屈上、ギリシャ国民はこの先、一生懸命働いて税金を納めるとともに、政府はその歳入の多くを借金相手への返済や利払いに充てなければならないことになるわけですが、はたしてギリシャにそんなことができるのでしょうか・・・。

 先日、日経新聞に載ったフィナンシャルタイムズの記事にこんなことが書いてありました。ギリシャの経済学者が示したデータによると、ギリシャ280万世帯のうち、何と!230万世帯が「税金」を滞納しているとのことです。いくら失業率が高い(2013年の若年層失業率は60%を超え、直近[1月]の失業率は26.7%だそうです)とはいえ、これほど多くの国民がマトモに税金を払っていないなんて、どう見てもマトモな国家とはいえません。そんな国に数千億ユーロもの「よその国」から借りたお金を返せるわけがないし、(おそらくは)ギリシャ国民にも返済する気なんてないのでしょう・・・。

 このギリシャをはじめとする欧州PIIGS諸国は、上で述べた「よその国」から身の丈を超えるほどの巨額の借金をした国の典型例です。当然ですが(?)、各国はお金が足りなくなったら増税してお金を集めようとはせず、また借金を重ねるのでしょう。だって増税は国民の抵抗が予想されるので実現はとてもたいへんだし、それにいまはけっこう楽に借金できる(資金調達金利が低い)わけだから・・・。

 ところで、2位のギリシャをおさえ、政府債務の対GDP比率で堂々世界ワースト1位となっているのは、ご存じのとおり、わが国です(2013年:243%!)。でも日本は上記の「借金」の定義にあてはまりません。「よその国」にほとんど頼ることなく自国民からお金を借りることができているということです。このあたりは「ホーム・イシュー」などとよく言われるように、同じ家庭のプアーなお父さんがリッチなお母さんからお金を借りるようなもの。いくらお父さん(=政府)の借金が多くてもお母さん(=国民)がお金を貸すゆとりがあるため、その家庭(=日本国)としては他の家庭(=外国)から借金する必要がない、というようなことです。

(続く)


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【借金で財政を組む諸外国】増税しているのは日本だけ、だが・・・①

2014-04-25 23:07:24 | 世界共通

 わが国で今月から始まった消費増税世界を見渡してみても、日本以外に、想定税収額で数兆円にも及ぶほどの大増税を行う国はいま、どこにもない、といってもいいでしょう。

 だからといって、わが国だけ増税が必要で、それ以外の国々には不要、というわけではけっしてありません。一部の例外を除いて、多くの国々もまた財政収支の悪化に悩んでいるからです。で、ふつうに考えれば、そんな諸外国も、財政資金を確保するためには日本のように増税を図るべき―――となるはずですが・・・。

 近ごろはモンゴルとかザンビアなどといった、(失礼ながら)これまでの金融市場ではなじみのなかったような国々が次々に外貨建て国債を発行しています。しかも驚くべきことに、こうした債権がけっこうな高値で欧米の投資家に売れるとのこと。国債価格が高くなるということは利回りが低くなることを意味するから、起債国はそれだけ少ない金利負担で資金を調達することができます。こうして集めたお金で、これらアジア・アフリカの国々は国づくりを進めようというのでしょうか・・・。

 数年前の国債危機以降、EUやIMF等の支援を受け続けている欧州PIIGSですが、各国が発行する国債の価格が最近は上昇傾向にあります。ウクライナとロシアの間で高まる緊張からの逃避という側面もありますが、それよりはやはり世界的な低金利のなか、少しでも高い利回りを求める投資マネーがこれらの債券を買ったためでしょう。おかげでポルトガルやイタリアなどの国債の利回りが低下し、欧州でもっとも格付けの高いドイツ国債とのスプレッド(ドイツ国債に対する利回りとの上乗せ幅)が縮小しているとか・・・。

 といったように、いまや財政資金は債券を発行してマーケットから調達することが世界的な流行になっているようです。このへんはIMFが特定国に対する資金援助を続ける期間を「その国が自力で市場から資金調達できるようになるまで」と言っていることにも表れていると思います。これに対して、日本のように、増税して歳入を強化するというやり方って、もしかしたら時代遅れだったりして!?

 ・・・いや、どう考えてみても、マトモなのはわが国のほうでしょう。必要なお金を税金であつめようという、財政の原則を(曲がりなりにも?)守ろうとしているからです。その原則を大きく逸脱しているのが―――マトモでないのが、財政資金を市場調達のみに依存している上記の諸外国のほうです。なぜなら、そのお金は税金とは違い、利子をつけて返さなくてはならない「借金だからです。

(続く)


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【誰もが「等しく」救われますように!】世界一:日本の医療②

2014-04-23 00:00:21 | 日本

(前回からの続き)

 ちなみに知人がこの入院・治療に要した全費用のうち、病院に支払った自己負担額は約33万円(2年ほど前の時点)。その後、自治体から高度医療関連の補助金約8万円が交付されたので、最終的な自己負担額は約25万円となりました。この金額、どう思いますか? 手術等のための本入院の前の検査入院に要した約2週間を合わせると、知人のトータルの入院期間は約2ヶ月間です(当然、1日3回の食事や入浴付き)。この金額は知人のような一人暮らしの高齢者の2ヶ月間の平均的な生活コストに近いように感じられます。2か月で25万円―――これほどに長い期間にわたる高度で親身な医療サービスの対価としては十分に妥当で、むしろ「安いくらい・・・」とすら思えました(個室等を選択した場合はそれなりに高くなるようです)。

 本格的な少子高齢化社会を迎え、公的医療負担がますます増加すると想定される中で、わが国では政府を含むいくつものステージで医療制度改革に関する議論が続けられていますTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加交渉では、アメリカが農業や金融などに加えて日本の医療分野の外資への開放を強く要求しています。こうしたことからも分かるように、現在のわが国の医療制度が大きな分岐点にあるのは事実と思います。知人がお世話になった病院にも様々な課題や悩みがあることを後になって知りました。

 しかし門外漢が垣間見たわが国の医療の最前線は、設備、技術、品質、そして何よりも現場を支える人々の高い・・・どれを取っても現時点で世界の最先端にあるように感じられました。そしてそこには、セレブも庶民も誰もが分け隔てなく、質の高い医療サービスをリーズナブルな金額で受けることができる環境がありました。

 その病院には今日も全国から重い疾病を抱えた患者が訪れ、そして数多くの人たちが無事に治療を終えて笑顔で退院していることでしょう。日本人にとっては当たり前の医療現場の一風景かもしれないけれど、知人との縁のおかげでその「当たり前」がいかに尊く、有り難いことなのかを痛感させられました。

 このかけがえのないわが国の医療技術や制度が諸課題を克服してさらに進歩することを願わずにはいられません。そして佳境に入っているTPP交渉を通じ、同交渉国を含む世界中に(とくにアメリカの「99%」の市民に)その素晴らしさが伝えられ、一種のスタンダードとなって世界中に広まり、病気やけがで苦しむ多くの人々が優れた医療システムに等しく救われる世の中になることを期待しています。

(「世界一:日本の医療」おわり)


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【セレブも庶民も受けられる高度医療サービス】世界一:日本の医療①

2014-04-21 00:02:27 | 日本

 2年ほど前と、少しばかり古い話になりますが、知人の病気治療を通じて垣間見た日本の医療の現場や制度について感じたことを綴ってみたいと思います。

 その知人は当時70歳代後半。大病を患い、外科手術を受けるために、とある大病院に入院しました。

 その病院には全国各地からさまざまな疾病を抱えた人々がやってきていました。患者さんは老若男女さまざまで、ごく普通の生活を営んでいる人ばかりのように見受けられました。

 知人が入った病室にはベッドが4床ありました。入院患者は通常はこの4床部屋に入ることになっているようです。追加料金を支払えば2床の部屋とか個室を選ぶことができます。

 そのほかにベッドが6床の病室もありました。その部屋の入院費は比較的安めに設定されていて、所得等が低い人から優先的に入れるようになっています(知人は人並みの年金受給者ですが、6床病室には入れませんでした)。とはいっても部屋に置かれたベッドの数が違うだけで、その病室の患者さんが受ける手術や検査などの医療サービスの内容や質は他の病室の入院患者と同じです(保険適用外の診療分は除きます)。

 同じ時期、知人と同じフロアに、ある有名俳優が入院していました。その俳優さんはカーテンで仕切られた廊下奥にある病室に入っていました。知人と同室の方々のウワサ話によれば、その病室はベッドが1つの個室ですが、部屋の大きさや構造は4床病室と同じとのことでした。入院中、その俳優さんはリハビリを兼ねてよくナースステーションを訪れ、看護師さんたちと談笑していたそうです。

 知人が受けた手術は早朝から夕方まで半日を要する大掛かりなものでした。執刀したのは豊富な手術暦を持つ腕利きの外科医。その彼を何人もの医師や看護師がしっかりサポートしていました。無事に手術が終わった後は約20日間に渡ってICUで投薬やリハビリなどの集中治療が行われました。

 結局、知人は40日あまりの入院・リハビリ生活を経て、無事退院しました。主治医の話によれば、知人が患ったレベルの病状ならば以前は手の施しようがなく、延命治療程度のことしかできなかったそうです。それが医療技術の進歩で、知人のような高齢者にも手術を含めたハイレベルの治療が可能になったとのことでした。それを聞き「日本国民の平均寿命が延びるのはもっともだ・・・」と感じました。おかげで知人はいまも元気に余生を楽しんでいます。

(続く)


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【「追加」緩和≒「追加」値上げ】高騰電気代:アベノミクスの優等生④

2014-04-19 00:17:57 | 日本

(前回からの続き)

 先日、安倍首相と会談した日銀の黒田総裁は、金融政策については必要があれば躊躇なく調整すると首相に語ったそうです。「調整」―――さまざまな解釈ができる微妙な言い方ですが、同氏は2%のインフレ率達成はまだ道半ばとの認識を示しているので、この場合は物価上昇トレンドをさらに強める方向、つまり「追加緩和」の実施をイメージしているのでしょう。消費税率が引き上げられ、景気や上場企業の業績のこの先に不透明感が漂うなか、株式市場の活性化を願うわが国の金融マーケットには、日銀のこの追加緩和への期待感が高まっているように見受けられます。

 で、日銀が計画している追加緩和の具体的な中身はともかく、それによって「円」のマネタリーベースがさらに拡大されるわけだから、当然、為替は円安に振れるでしょう。そうなれば外国人投資家の日本株投資が促され、株の資産効果が高まり、消費増税にともなう経済への悪影響を緩和できる・・・といったような思惑が政府・日銀にはあるのではないでしょうか。まあアベノミクスは「カブノミクス」(円安株高だけ[?]がウリということ)ですからね・・・。

 しかしこの追加緩和、肝心の個人消費とか企業活動といったわが国の実体経済のほうにはマイナスに作用するとみています。これによって円建て輸入燃料価格がさらに上がり、本稿で懸念している電気料金をはじめとするエネルギー価格が「4たび」上昇するおそれがあると予想するからです。4たび―――原発停止→円安誘導インフレ→消費増税、のこれまでの3つの値上げプロセスに、4つめのプロセス「追加緩和」が加わるということです。もっとも、これこそアベノミクスの目論見どおりといってしまえばそれまでなのですが・・・。

 というわけで、近いうちに実施されそうな日銀の金融緩和で、実体経済において「追加」されるのは「コスト」といえそうです。つまり、「追加」緩和≒「追加」値上げ、といった感じで、この策には、電気代を筆頭に、ガス代、ガソリン代などが「追加的に」上がる事態を引き起こすリスクがあるということ。

 さらにいえば、追加緩和で円安誘導を進めても、マクロ経済的には、わが国にはメリットはほとんどありません。こちらの記事などに書いてきたように、現状の日本の産業構造の下では、円安にしたところで輸出額はそれほど増えない一方で、輸入額のほうが輸出額以上に増加してしまうからです。したがってアベノミクス開始以降、円安になればなるほど、輸出額と輸入額の差引である貿易収支の赤字額が膨らんで経常収支が悪化し、その分だけ「貯蓄」が減る(あるいは伸び悩む)といった傾向が顕著になっています。

 以上のように考えているため、個人的には「追加緩和」と聞くと、「ミクロ面でもマクロ面でも、国民生活の面でも国益の面でも、いいことなんてないじゃん・・・」と憂鬱な気持ちになります。それにしても・・・消費増税が始まったばかりのこの時期、国民の経済的負担を少しでも和らげようとするのが政府・日銀の本来の使命でしょ!と思うのは私だけでしょうか・・・。

 とにもかくにも、いろいろな意味でアベノミクスを映し出す「鏡」のような「電気料金」にはこれからも注目していきたいと思っています。

(「高騰電気代:アベノミクスの優等生」おわり)


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【料金の値上申請で矛盾が露呈】高騰電気代:アベノミクスの優等生③

2014-04-17 00:00:15 | 日本

(前回からの続き)

 15日、政府は中部電力の家庭向け電気料金の引き上げ幅を同社申請の平均4.95%から3.77%程度に圧縮することを決定しました。経産省の認可が不要な企業向け電力料金の値上げ幅は同社が申請時の8.44%から7.21%に下げるとのことです。

 これに先立つ今月初旬、北海道電力が日本政策投資銀行からの500億円程度の出資受け入れを決定しました。北電は昨年9月に料金値上げに踏み切りましたが、原発再稼働の遅れと円建て燃料コストの高騰で経営状態が悪化し、今年度中にも債務超過に陥るおそれがあることから、今年2月に再値上げの検討を表明していました。これに対して安倍政権の茂木経産相はこの再値上げに(どういうわけか!?)難色を示したため、仕方なく北電はこの出資を政策銀に要請したものです。

 常識的な市民感覚でいえば、ただでさえ輸入インフレでわが国の個人投資や企業活動はダメージを受けているのに、消費増税が開始され、そのうえさらに電気料金まで引き上げられたら景気はいっそう冷え込んでしまうじゃないか!といったところ。このため、電力会社の料金値上げ申請に対しては、その上昇幅が可能な限り小さくなるように努めるのが政府として当然の対応です。ところが、その値上げの原因となる原発再稼働の遅れ、そして何よりも燃料代高騰をもたらした円安は、その政府自身が―――安倍政権が意図して引き起こしたこと―――このあたりにアベノミクスの政策的矛盾がよく表れています

 この矛盾―――為替を円安に誘導して電気料金をハネ上げることでインフレ率を高めようとしておきながら、景気に悪影響が及ぶという理由で電力会社の値上げ申請には渋い顔をしてみせること―――ですが、安倍政権は何かと立場の弱い電力会社に厳しくあたることで、自分たちが「それって矛盾でしょ!」と指摘されないようにしている感じです。つまり、今回の料金値上げの背景には(円安インフレよりも)電力会社の経営努力不足があることを国民に認識させようということ。

 まあそれも多少はあるかもしれませんが、もっと本質的な理由は政府が推し進める通貨安政策にともなう燃料費の増加であることは先述のとおりです。値上げの元凶はほかならぬ政府自身ということ。だから、決して口には出せないけれど、電力会社の経営者は内心「燃料コストの高騰は政府・日銀のせいじゃん・・・」とぼやいていたりして!?

 で、原発停止→円安インフレ→消費増税と、3段階のプロセスを経て順調に(?)上がってきたアベノミクスの「優等生」電気料金ですが、上にあげた再値上げに加え、この先さらに上昇するおそれ(チャンス?)が出てきました。そのきっかけになりそうなのが、金融マーケットが待ち望んでいる日銀の「追加緩和」です。

(続く)


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【3年間で2割超も上がった電気代】高騰電気代:アベノミクスの優等生②

2014-04-15 00:04:59 | 日本

(前回からの続き)

 前回、リフレ政策」(意図的に円安インフレを起こす政策)を推進している安倍政権・黒田日銀は、企業物価や消費者物価の押し上げに大いに寄与している輸入エネルギーの円建て価格の上昇をポジティブに捉える立場にある、と書きました。その意味で、値上がりが続く各種エネルギー料金のなかで、国民の経済活動や日常生活に与える影響がもっとも広い範囲に及ぶ「電気」の料金は、物価上昇への貢献度が大きいアベノミクス第一の「孝行息子」―――そんなふうに考えています。

 その電気料金ですが、2011年の東日本大震災以降のこの3年間で全国平均で2割以上も上がりました。東京電力の電気料金に至っては26%(2011/2→2014/2)もの上げ幅です。で、こちらの記事に書いたように、その値上がりは「2段ロケット」構造になっています。1段目は「原発停止」をふまえた料金改定によるもの。そして2段目は上記の輸入燃料費の増加にともなう燃料費調整額(燃調額)の上昇によるものです。

 わが国の大手10電力会社のうち東電を含む6社はすでに電気料金の本格値上げに踏み切っています。ここでいう「本格値上げ」とは経産省への申請・認可を経て実施されるもの。これらはいずれも上記の1段目、つまり原発停止にともない、火力発電所の焚き増しが必要になったことによる燃料コストの高まりに対応するものです。

 次に上記の2段目ですが、これは航空運輸業界の「燃油サーチャージ」と同じく、毎月の輸入燃料代の価格変動を電気代に織り込むもの。アベノミクス開始以来の円安誘導により、石油やLNGの円建て輸入価格が膨らんでいることから、この燃調額は最近、全国的に上昇トレンドを描いています。すでに本格値上げを実施済みの電力会社6社はともかく、まだ値上げを行っていない残り4社の料金もじりじりと上がっていますが、これはこの燃調額の上昇のためです。これまた先の同記事でご紹介のとおり、東電の場合、去年から今年にかけての電気料金の値上がりは、この燃調額の高まりが主因となっています。

 そんなこんなで高騰を続けるわが国の電気料金ですが、ここへきてもう一段、上昇しそうな気配となってきました。電力会社の一部が本格値上げに踏み出そうとしているからです。昨年9月に値上げした北海道電力はこの2月、再値上げの検討を表明したほか、先日は中部電力が震災後初めての値上げ(平均4.95%)を申請しました。その理由は、電力会社(そして政府・経産省)が目論んでいた原発再稼働の時期が見通せないこと、そして、もはや毎月の燃調額では賄いきれないくらい燃料費がかさんで各社の収支が悪化していること・・・。というわけで、わたしたち電気のユーザーにとってはさらなる経費削減とか節電が必須となりそうですね・・・。

 一方、この状況はアベノミクスには「追い風」といえるでしょう。繰り返しになりますが、政府・日銀が実現を願うインフレは実質的に電気料金をはじめとするエネルギーコストの上昇によって引き起こされているからです。なので、チャンス到来です! 「電気代のさらなる引き上げで確実にインフレ率2%を達成だ!」とばかりに、安倍政権は電力会社の値上げ申請に対して「満額回答」をする気だろう、と予想していたわけですが・・・。

(続く)


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【輸入燃料代の高騰を喜ぶ?政府・日銀】高騰電気代:アベノミクスの優等生①

2014-04-13 00:02:35 | 日本

 11日、日銀が発表したところによると、2013年度の国内企業物価指数(企業物価:企業同士が取引する際の物価の動向)は対前年度比で1.9%の上昇となりました。

 いうまでもなくこの最大の要因は政策的な円安です。アベノミクスの意向を受けて開始された日銀の「異次元緩和」という名の円安誘導により、昨年度の円相場は1ドル100.2円と2012年度(同82.9円)から2割近くも円安ドル高となっています。この円安によってさまざまな輸入品、とりわけ石油、LNGなどの円建てエネルギー価格が高騰したことが企業物価を押し上げました。実際、円ベースの輸入物価指数の上昇率は13.5%もの高い伸びを示しています。

 この企業物価の上昇分は、モノやサービスの価格に徐々に上乗せされ、わたしたちの身の回りの物価の引き上げにつながっていきます。日銀は金融政策を通じて2%のインフレ率確保を目指していますが、かりに上記1.9%の企業物価の上昇率がそのまま商品等の店頭価格に乗じられれば、その目標はクリアされることになります。ということは、日銀の「リフレ政策」って、意識的に円安を進めることで輸入エネルギー価格を引き上げる政策、と言い換えられそうです。

 本ブログで以前からいろいろと書いているように、私はこの円安誘導にともなう通貨安インフレは国民の多くを実質的に貧しくさせる「悪いインフレ」だと考えており、これを意図的に推進する現行の日銀の金融政策には疑問を抱いていますとりわけそれが引き起こすエネルギー価格の上昇は、原発全号機が停止中、消費増税開始、春闘賃上げの波及はわずか、などといった局面にある現在の日本経済には「百害あって一利なし」(≒スタグフレーション)といってもよいくらいに弊害が大きいものだと思っています。

 そんな個人的な懸念とはまったく逆で、安倍政権も黒田日銀も、アベノミクスによるエネルギーコストの高まりを、インフレ目標の達成をもたらしてくれる第一の要因として積極的に評価しているように感じられます。政府・日銀ともに物価高(悪いインフレ)を「よいこと」と捉えていることは明らかであり、その最大の原動力が上述した円建て輸入燃料価格の上昇だからです。

 そのような意味で、アベノミクス開始以降、跳ね上がった電気代、ガス代、ガソリン代、灯油代こそは、アベノミクスの優等生といえるでしょう。だから、電気料金の燃料費調整額がどんどん上がり、ガソリン価格がとうとう1リットル160円(!)を超えたことを、安倍総理も黒田日銀総裁も「してやったり!」とばかりに、さぞかしお喜びのことだろう、とお察し申し上げていたわけですが・・・。

(続く)


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【最大の波乱要因:アメリカの金利】波乱必至!? 2014年度株式市場⑦

2014-04-11 00:03:17 | 日本

(前回からの続き)

 アベノミクスで「円安にします」「規制緩和を進めます」「法人税減税を検討します」・・・そんな安倍政権の熱いアピールは、日本国民ではなく、外国人投資家に向けられたものといえるでしょう。これまで書いてきたように、わが国で株高の資産効果をもたらしてくれるのは、現状、彼ら外国人しかいないからです(一方、わが国の個人投資家は賢明なことに[?]アベノミクスは「売り」と判断し、昨年、日本株を9兆円も売り越し!)。「もっと政策をPRして海外マネーを呼び込まねば!」―――だからこそ黒田日銀総裁はこれほどまでに外遊するのでしょう。もっと国民の声を聞いたほうがいいのに!?

 でも、外国人たちが本当に気にかけているのはアメリカ―――このあたりは10日の東京株式市場でも感じられました。朝方、日経平均は前日よりも200円近く高くなりました(終値は前日とほぼ同じ)。これは完全に「アメリカ要因」によるものです。前日公表された米FRBの3月の公開市場委員会議事録によると、一部の委員が政策金利の上昇予測が市場にもたらすリスクを指摘したとのこと。これを受けた市場では、アメリカの早期利上げは遠のいた、との観測が広がり、米株価は上がった、ということ。

 そう「金利」―――日本株の値動きに多大な影響を与える米市場の成り行きを左右するのはアメリカの金利だと思っています。で、いま欧米投資家が注視するのは、今後、その金利がどうなっていくのか、そしてその最大の変動要因であるQE(量的緩和策)の行方はどうなるのか、ということだろうと考えています。

 米金利についてはこちらの記事に、またQEについてはこちらの記事に長々と記したのでここでは省きますが、すでにFRBはQE縮小と政策金利引き上げ検討を開始し、これまでの米市場の前提であった低金利維持の解除に動き出しています。当然、FRBのこの政策スタンスの変更は金利にはプラス方向、そして肝心の株価には・・・マイナス方向に作用するもの。で、これこそ―――アメリカの金利の上昇こそ、アベノミクスや消費増税以上に今年度の日本株に波乱のインパクトをもたらすファクターとなりそうだ、とみています。輸入インフレの脅威に加え、消費税率の引き上げが始まり、個人消費がますます抑圧されることもあり、今後の日本株は何とも厳しい局面を迎えそうな予感がします。

 ・・・などと綴りながらも、じつは今夏から秋にかけて、日米ともに株価は再上昇に向かうかも!?と楽観(?)したりしています。米FRBがQE縮小延期と金利引き上げの先送りを決定する可能性があるからです。なぜって、いまのアメリカは金利上昇に耐えることなんてできないから(QEをやめることなんて無理だから)・・・。で、株価、とくに米株価はさらに上がり、誰がどう見ても「バブル」の極みに達し、その後は???というのが私の今年度の株式市場予測ですが、はたしてどうなることやら・・・。

(「波乱必至!?2014年度株式市場」おわり)


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