(前回からの続き)
前回までに、「双子のバブル」(株と債券のバブル)のうちの債券バブルは原油バブルとともに2014年半ばにピークを打ち、以降は現在に至るまで両価格ともに下がり続けている様子を見てきました。そしてこの転換をもたらしたのが米FRBのQE終了(観測)です。実際にQEは同年10月末をもって停止されたので、上記タイミングの債券・原油価格の値下がりスタートはこれを先取りした動きだったと解釈されるでしょう。
いっぽうで「双子のバブル」のもうひとつの株バブル―――アメリカの株価のほうは債券価格とは違った推移をたどっています。たしかに債券マーケットは2014年の夏を境に潮目が変わりました。が、米株価はその後も上がり続けます。同年7月に1970あまりをつけていたS&P500種株価指数はQE終了直前の10月中旬、いったんは1860近辺にまで下がったものの、(同月末日に米QEのバトンタッチを受けたように開始された日銀の追加緩和で力を得たのか?)その後は再上昇に向かい、昨年5月21日に2131の史上最高値をつけています。
しかし、いま振り返ればこのあたりが株バブルのピークだったような気がします。実際、同月以降、米株価は2100前後という高値圏にこそあるものの、上記最高値を抜けないままになっています。これはまあ当然といえば当然でしょう。QEという株価上昇のメインエンジンがすでに停止されているわけだから・・・
逆にいえばQEが終わって1年以上も株の高値が維持されたことが不思議なくらいです。というのもいまのアメリカの(というよりは世界中の)株高は、景気が回復した、とか、企業業績見通しが良好、といった本来の株価決定要因ではなく、QEで超低金利マネーが市場にあふれているという異常な金融環境だけで支えられているためです。でも・・・さすがにその支えがはずれてずいぶん経ったし、昨年12月にはFRBによってとうとう利上げすなわちマネーの回収が始められたとなれば・・・
・・・案の定(というかこれまた当たり前ですが)、アメリカの株価は昨年末から急激に下がり始めました。12月29日の2078からわずか3週間あまり後の1月20日には1859と10%も暴落して上記QE終了前の安値を割り込んでいます。この株価急落の根源的な理由は、巷でいわれている中国の経済不安などではなく、上記のとおり―――QEマネーの供給途絶と(利上げによる回収にともなう)減少―――とみるべきでしょう。
こうして「双子のバブル」は崩壊に向かった―――債券バブルに続き、株バブルもまた一歩遅れて崩れ始めた・・・というのがいまこの瞬間、世界株式市場が目の当たりにしている「リスクオフ」の本質と思います。