世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【債券に一歩遅れて株価の崩落も始まった・・・】バブルのピークは完全に過ぎ去った③

2016-01-29 00:01:27 | 世界共通

前回からの続き)

 前回までに、双子のバブル」(債券のバブル)のうちの債券バブルは原油バブルとともに2014年半ばにピークを打ち、以降は現在に至るまで両価格ともに下がり続けている様子を見てきました。そしてこの転換をもたらしたのが米FRBQE終了(観測)です。実際にQEは同年10月末をもって停止されたので、上記タイミングの債券・原油価格の値下がりスタートはこれを先取りした動きだったと解釈されるでしょう。

 いっぽうで「双子のバブル」のもうひとつの株バブル―――アメリカの株価のほうは債券価格とは違った推移をたどっています。たしかに債券マーケットは2014年の夏を境に潮目が変わりました。が、米株価はその後も上がり続けます。同年7月に1970あまりをつけていたS&P500種株価指数はQE終了直前の10月中旬、いったんは1860近辺にまで下がったものの、(同月末日に米QEのバトンタッチを受けたように開始された日銀追加緩和で力を得たのか?)その後は再上昇に向かい、昨年521日に2131の史上最高値をつけています。

 しかし、いま振り返ればこのあたりが株バブルのピークだったような気がします。実際、同月以降、米株価は2100前後という高値圏にこそあるものの、上記最高値を抜けないままになっています。これはまあ当然といえば当然でしょう。QEという株価上昇のメインエンジンがすでに停止されているわけだから・・・

 逆にいえばQEが終わって1年以上も株の高値が維持されたことが不思議なくらいです。というのもいまのアメリカの(というよりは世界中の)株高は、景気が回復した、とか、企業業績見通しが良好、といった本来の株価決定要因ではなく、QEで超低金利マネーが市場にあふれているという異常な金融環境だけで支えられているためです。でも・・・さすがにその支えがはずれてずいぶん経ったし、昨年12月にはFRBによってとうとう利上げすなわちマネーの回収が始められたとなれば・・・

 ・・・案の定(というかこれまた当たり前ですが)、アメリカの株価は昨年末から急激に下がり始めました。1229日の2078からわずか3週間あまり後の120日には185910%も暴落して上記QE終了前の安値を割り込んでいます。この株価急落の根源的な理由は、巷でいわれている中国の経済不安などではなく、上記のとおり―――QEマネーの供給途絶と(利上げによる回収にともなう)減少―――とみるべきでしょう。

 こうして「双子のバブル」は崩壊に向かった―――債券バブルに続き、株バブルもまた一歩遅れて崩れ始めた・・・というのがいまこの瞬間、世界株式市場が目の当たりにしている「リスクオフ」の本質と思います。

続く

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【債券バブル崩壊と原油価格暴落はリンクする】バブルのピークは完全に過ぎ去った②

2016-01-27 00:03:03 | 世界共通

前回からの続き)

 前回、アメリカの債券、とくにハイイールド債(ジャンク債)の「スプレッド」(米国債との利回り差)が2014年半ばを境に徐々に大きくなり、昨秋から急拡大して現在(1月下旬)はこの5年間で最大となっている様子をご紹介しました。

 で、ジャンク債の価格が下落に転じた(利回りが上昇に転じた)上記2014年の半ばというタイミングに、これまた価格急落に向かい始めた重要な国際商品があります。原油です。

 2011年以降、おおむね1バーレル100ドル前後の高値を続けていた原油価格は20147月以降、急激に下がり始めました。WTIでみると同月はじめに同100ドル台後半だった価格が同月末には100ドル台を割り込み、以降、とくに1012月までの各月では同10ドル前後も下がって2015年初頭には同50ドル前後と、わずか半年で半額になりました。昨年は秋まで5060ドル程度で推移したものの、11月以降は下落基調を強めて現在は同30ドルと、2015年初の40%安、ピーク時の1/3以下の水準・・・。まさに相場暴落時の格言「半値八掛け二割引き」を地で行く展開です。

 この原油価格の急落と冒頭に書いたジャンク債のスプレッド拡大は密接に関連しているといえます。現在、アメリカの社債市場で資金調達しているのはおもにエネルギー関連企業とくにシェールオイルの掘削や販売等を手掛けるシェール企業彼らはそれまでの高い原油価格の継続を前提とした資金繰りをしているので、原油価格が下がってしまうと一気に窮地に陥ってしまいます。そのへんの反映が原油価格下落と反比例で拡がりを続けるスプレッドということになるのでしょう。

 以前こちらの記事に世界的な「リスクオフ」はアメリカのジャンク債市場から始まるという個人的な見通しを書きましたが、現状はまさにそのとおりになりつつある感じです。実際、ブルームバーグの報道によると昨年、アメリカでは石油・天然ガス企業42社が破綻、負債総額は170億ドル超に上ったとのことです。経済制裁が解除された大産油国イランの本格的な原油市場への再エントリー、1バーレル20ドル台も取り沙汰されるほどの原油価格の下落トレンド、いっぽうで上がり続ける調達金利・・・となれば今年のシェール業者の破綻は数、負債額ともに昨年を上回るのではないでしょうか。

 さて、上記のように2014年の夏にピークを打った感じの債券と原油の価格、どうしてこの時期から両者ともに急速に下がり始めたのか、ですが、明らかにQE(量的緩和策)終了がその理由でしょう。つまり2008年以降、3回にわたって実施されてきた米FRBによるQEという名の超低金利マネーの市場への放出が201410月末をもって終わったということです。それより少し前にあたる同年の初夏から市場ではQE終了を織り込んだ動きが出てきた―――QE終了が間近い→金利が上昇へ向かう→利払い能力が低い企業の社債や金利を生まない原油等の商品は同年の夏から「売り」となった→ジャンク債・原油価格ともに急落へ―――ということかと思われます。

続く

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【不気味に拡大を続けるスプレッド】バブルのピークは完全に過ぎ去った①

2016-01-25 00:00:02 | 世界共通

 わが国の不動産バブルを典型例に、バブルは終わってから「あのときはバブルだった」と回顧される、なんていわれます。同じようにいま、大荒れのマーケットのなか、世界中の投資家が過去を振り返りつつあるのではないか・・・バブルは、少なくともバブルのピークは完全に過ぎ去った、と。で、そのピーク期とは・・・2014年の夏だった・・・。

 以前こちらの記事に、アメリカを中心とする世界市場では、米FRBQEQuantitative easing:量的緩和策)によるドル散布によって、本来ならばありえないはずの債券の両者が同時期に、ともに異様な高値に達する「双子のバブル」(株と債券のバブル)が発生した、といった見方を綴りました。ここで「発生した」と過去形にしたのは上記のとおり、この「双子のバブル」、現在は明らかに崩壊過程に入っているからです。

 このあたりを如実に表しているのが、アメリカの債券でもっとも安全とされる米国債と他の債券との利回り格差である「スプレッド」の拡大です。最近はどくに、債務弁済能力が低いハイイールド債ジャンク債)の拡がりが急です・・・

 バンクオブアメリカ・メリルリンチの指数データでみた格付け「CCC」およびそれ以下の債券のスプレッドですが、この10年(2006/12016/1)でもっとも小さかったのが20146月下旬~同7月上旬となっています(オプション調整後のもので6%台前半)。じつは同時期、格付けの違いによって数値こそ違いはあるものの、ほぼすべてのスプレッドが最少を記録しています。

 スプレッドが小さいということは、それだけ当該債券の価格が米国債の価格に近いことを意味しています。いかに当時、これらの(ジャンク債を含むすべての)債券が高値で売れていたのか、すなわちそれだけ投資家がリスクを取れるほどにカネ余りな市場環境だったのかが窺えるわけです。そのあたりからこの時期―――2014年の6月から7月にかけてが債券バブルのピークだったと振り返ることができるでしょう。

 逆に、上記10年間でスプレッドががもっとも大きかったのが200812月頃。上記ジャンク級では一時、40%台半ばを付けています。同年9月の「リーマン・ショック」直後の金融危機で信用度の低いこれら債券の価格暴落が起こっていた様子がしのばれます。で、そのままいけば債券発行企業は軒並み破綻、金融機関は巨大債務超過に陥って経済・金融恐慌・・・となる寸前の同年11月、当時のバーナンキ前FRB議長によって開始されたのがQE第一弾。これが超低金利マネーのマーケットへの大量供給を促すことでスプレッド縮小に大いに寄与するかたちになりました・・・

 で、そのスプレッドですが・・・上述、最少となった2014年半ばを境に、少しずつ広がり続け、昨年の秋以降は急拡大して現在(1月下旬)は、この5年間ではもっとも大きくなっています・・・

続く

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【豪、米QEで鉄鉱石価格再上昇を期待するが・・・】オーストラリア経済、中国よりもピンチか⑤

2016-01-23 00:02:25 | その他の地域

(前回からの続き)

 年明け以降の激しい「リスクオフ」モード―――株価、原油価格、ジャンク債価格等の急落―――を受け、アメリカはいったん引き締めに向けて切った金融政策の舵をまたもや(って、何回目なんだか・・・)、緩和方向に戻さざるを得ないでしょう(こちらの記事等で書いているように、アメリカに利上げのようなバブルの幕引きなんて不可能なんだって!?)。

 ・・・具体的には、FRBは昨年12月に引き上げたばかりの政策金利をゼロ近傍に再度引き下げたうえ、米国債等の資産を購入して流動性を市中に大量に供給するというQE(量的緩和策)を4たび(!)発動するだろう(?)ということです。こうでもして株価等の再上昇を促さないとアメリカは資産デフレから金融危機すなわちドル危機に陥ってしまうからです・・・って、まあ次回のQEこそドル危機(ドル暴落)の反映だけれどね。もっともプライドの超高~いアメリカ様のことですから、FRBはQEリスタートの際、それを自国ではなく中国のせいにする―――つまり中国をはじめとする世界経済の動揺に対処するため、みたいな言い訳をするに違いない(!?)

 で、そのQE再開は、株価ばかりではなく本稿で述べているオーストラリアの最大の輸出品である鉄鉱石の価格にプラスに働く可能性があります。QEで超低金利のマネーが市場にあふれれば、その一部がまたまた商品市場に流入して鉄鉱石価格を押し上げるといった見方も成り立つからです(?)。2007年以降の鉄鉱石価格の急騰率は実需の伸び率を大きく上回っていますが、その差の多くはこの間に実行されたQEに由来する投機マネーがもたらしたもの・・・ということで、この再現を米QEで!とオーストラリア(などの資源国)が内心で期待するのはもっともなところです。

 ・・・たしかにアメリカがQEに踏み出せば上のようになるかもしれません。しかしそれでも個人的には、次のような理由で鉄鉱石価格がもう大きく上昇することはないとみています。その最大の根拠はやはり先述、得意先・中国の構造的な経済不振。これは米QEの再開程度でどうなるものではないくらい深刻なだけに、同国の鉄鉱石需要は今後、そうな伸びないし、よってその価格の頭も抑えられるでしょう。第二は上記中国リスクにともなって商品投資が以前ほどは活発になりそうもないこと。第三は2015/7から全面適用となっている「ボルカー・ルール」等が投機色の濃い商品先物取引を抑制すること、そして、次回のQEによって鉄製品の大需要地アメリカの凋落ぶりがあらためて強く意識されること、などにより、鉄鉱石の実需も価格もそうは高まらないでしょう。

 ・・・かくして頼みの鉄鉱石も、中国はダメ、QEもパワー不足、で期待外れ、あらたな付加価値創出の能力もなし、そんななかでも対外債務は膨らむばかり、というわけでオーストラリアはやはり苦境に向かうしかなさそうです。よってわたしたち日本人は豪ドルとか豪国債には手出ししないほうが無難でしょう。くれぐれも「高格付けのわりに高リターン(高金利)」なんて看板には惑わされることのないようにしたいものですね(投資等のご判断は自己責任でお願いします)。

(「オーストラリア経済、中国よりもピンチか」おわり)

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【中国を当てにできない豪州の唯一の頼みは・・・】オーストラリア経済、中国よりもピンチか④

2016-01-21 00:04:46 | その他の地域

(前回からの続き)

 前回までに綴ったように、オーストラリア経済はこのままではジリ貧・・・ではどうするか?

 まあオーストラリアには自国産の鉄鉱石&石炭を元手に鉄鋼業を興すという手も考えられなくはありません。しかし・・・同国は人口が少なく市場規模が小さいこと、資源の産地がシドニーなどの同国都市部から遠く離れていること、日米欧中などの鉄の主要消費国からも遠いために鉄鋼製品の輸出拠点になるのは難しいこと、そして失礼ながら、同国民には原材料に高い付加価値を付ける能力(鉄鉱石を加工して鉄鋼製品に仕上げる能力)も、その気もあるようには思えないこと、などからオーストラリアが製鉄立国になるなんて絶対といってよいほど、無理でしょう。

 「資源の呪い」という言葉があります。石油や鉄鉱石などの天然資源に恵まれた国は、それらを外国に売れば国の運営ができるので、日本のような非資源国と比べて工業化が進まないし、経済成長も遅い、といったような意味になります。オーストラリアは、とくに今世紀に入って以降、これに完全に呪縛されてしまった感じです。誰によって・・・って、中国によって。中国がド高値で鉄鉱石等を爆買いしてくれたから、何も苦労して産業振興する必要なんてなく、ただ資源を安直に「掘って売るだけ」でよかったわけです。結局オーストラリアは、それしかできない国すなわち何ら付加価値を生み出すことのできない国になってしまった。しかも持続不可能なほどの巨大対外債務を抱えて・・・

 ・・・以上により、オーストラリアの将来は暗いと思います。唯一の期待は、鉄鉱石価格の再上昇、すなわちまずはこれをもたらす中国経済の立ち直りでしょう・・・が、先述のとおりこれはほぼあり得ない、少なくとも同国のバブルが完全に清算されるまでは(って、その暁には共産党中国は分裂し、広東国、満州国など、各地域別の独立国家が乱立する事態になっているかも?)。したがってオーストラリアが中国の今後に望みを託すことは難しそう

 じつはもう一つ、資源価格を上昇に向かわせるきっかけが想定できます。それは・・・アメリカQE(量的緩和策)再開です。これは中国復活などよりもはるかに起こり得る可能性の高い出来事でしょう・・・というより誰が見ても(?)時間の問題―――再開はいつか?ということかと思われます。最近ではこちらの記事を含めて本ブログで何度も書いているように、アメリカにはもうQE(という名の実質的な中銀による「財政ファイナンス」)しかないからです。米FRBによってQEが4たび(!)開始され、ドルが世界市場に多量に散布されれば、鉄鉱石をはじめとする商品価格は再び力強く(?)上昇し、これによって収支が改善するオーストラリアは苦境から脱する・・・というシナリオ―――これならいけそうですね・・・(?)

(続く)

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【豪経済の脆弱性を示す高い長期金利】オーストラリア経済、中国よりもピンチか③

2016-01-19 00:01:39 | その他の地域

(前回からの続き)

 前回、オーストラリアが身の丈をはるかに超えるほどの対外債務を抱えている様子を綴りました。同国のGDPに対する対外債務額の倍率は1.6倍(2014年)と、アメリカのそれ(1.64倍)に匹敵するほどの巨大さです・・・

 以前、こちらの記事にオーストラリア等が「鉱業立国」として国を維持・発展させる可能性について思うことを書いたことがあります。先述のように同国の貿易収支はここ数年、黒字をキープしています。もしオーストラリアがこの範囲で、つまり主要産業である鉱業がもたらす貿易黒字と・・・旅行収支の黒字(オーストラリアの旅行収支は黒字基調)の範囲内で地道な国家運営をしていたならば、慢性的な経常赤字体質に陥ることはなかったし、これほどの債務を積み上げることもなかったでしょう。でも同国はそんな堅実な道を歩まず、贅沢に明け暮れ、あげく外国から借金をしまくってしまったわけで・・・。おそらくこの債務は持続困難でしょう・・・

 ・・・そのあたりの反映がオーストラリアの長期金利だと思います。S&Pのソブリン格付けでは同国は何と!「AAA」(いったい、なぜ!?)。で、同じAAA格の国々の直近(1/15)の長期金利を並べてみると低い順に次のようになります。

 スイス-0.14、ドイツ0.54、英国1.66、アメリカ2.04、オーストラリア2.69

 AAAとは債務支払い能力がもっとも高いことを示す格付け。にもかかわらずオーストラリアの長期金利は2,69%もの高率です。それだけ同国は投資家からインフレリスクすなわち通貨(豪ドル)の相対的な価値下落リスクが高いとみなされているわけです。まあ当然でしょう、上記のとおりだから。豪ドル札を大量に吐き出す以外、オーストラリアには膨大な借金の穴埋めはできそうにありませんからね。

 ちなみに日本のソブリン格付けは「A+」。つまりオーストラリアよりも数ランクも低位ですが、長期金利のほうは0.21と、スイスについて世界2位の低さ。ということは、格付け会社かマーケットのどちらかの判断が間違っていることになりますね。格付けが真に正しいのなら、日本の長期金利はオーストラリアよりも高くなっていないとオカシイはずですが・・・

 先日のブルームバーグの報道によると、米シティグループはオーストラリア最大の輸出品・鉄鉱石の今年の平均価格は1トン当たり36ドル程度であり、場合によっては30ドルを割り込む可能性もあると予想しています。直近価格(2015/12)の39.6ドルをさらに下回る水準です。となると同国の貿易収支は昨年(2015年)から今年以降は一転、赤字に転じるおそれもありそうです。これがもとで経常赤字も拡大し、対外債務はますます膨らんで同国は窮地に追い込まれるでしょう。このままではオーストラリアはジリ貧必至ですが・・・

(続く)

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【豪の対外債務額の対GDP比率は米に匹敵!】オーストラリア経済、中国よりもピンチか②

2016-01-17 00:01:30 | その他の地域

(前回からの続き)

 前回、オーストラリアについては、同国の主要輸出品である鉄鉱石等の価格が低下するなかでも貿易収支はここ数年、おおむね黒字基調であることをお伝えしました(2013,14年は黒字)。しかし、同国の経常収支のほうは・・・これまで30年以上にわたって赤字が続いています。とくに2000年代以降は同赤字幅が急拡大し、2004年から2014年まで毎年400600億ドル台という世界的にみても大きな経常赤字を記録。もちろん貿易収支が黒字となった2013,14年も経常収支は大幅な赤字です(2013年:515億ドル、2014年:438億ドルの赤字)・・・

 で、上記オーストラリアの慢性的な経常赤字の最大原因は・・・所得収支の赤字です。同国においては、外国に対する利子・配当の支払い額が外国からのそれらの受取額を大きく上回っている状態が延々と続いているということになります。それだけオーストラリアはいまに至るまで外国の投資マネーを大量に借り入れてきました。

 その累積が同国の対外債務額にあらわれています。その規模ですが、経常赤字と同じく2000年以降急増し、2014年時点には2.3兆ドルと、同国の同年の名目GDP1.44兆ドルの1.6倍にまで膨張しています。これは世界一の純債務国アメリカの値(約1.64倍、2014年)に匹敵しますが、アメリカが基軸通貨国であることを考えると、そうではないオーストラリアの対外債務額がその国力に照らしていかに巨大かが分かるというものです。

 オーストラリアの経常赤字と対外債務額がこうして増えた期間は、高度成長期を迎えた中国の鉄鉱石や石炭の需要が急激に高まった時期であり、これを受けてオーストラリアの主要輸出品である両者の価格が上昇を続けた時期でもあります。だからこそ同国は、最大の得意先・中国がこれからも鉄鉱石&石炭を高値でじゃんじゃん買ってくれるだろうという都合の良い見通しを立て、外国から派手にマネーを借りまくってしまったのでしょう。

 その中国は・・・ご存知のように不動産バブルが崩壊し、建設ブームも去って、いまや作り過ぎてしまった鉄鋼製品を内外に投げ売りしているような有様です。地方政府や国営企業が抱える過剰債務や金融システム内の不良債権の処理といったバブルの清算はこれからが本番(って、処理の道筋はまったく見えてきませんが・・・)。そんな中国に、以前のようなオーストラリア産品の爆買いなんて望めるわけがない・・・

 ・・・ということで完全に当てがはずれた感じのオーストラリアはこの先、ますます厳しい状況に追い詰められそうです。中国がコケて輸出に大きな期待ができなくなっているのに経常赤字体質―――国力以上に贅沢をする体質―――はまったく改善されていないから。そのあたりを示唆するのが本稿冒頭でご紹介した豪ドルの他通貨に対する急速な値下がりですが、加えてこれから注意を要するのが同国の長期金利の動向でしょう。

(続く)

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【豪ドル、対円で目下、人民元以上に値下がり中!】オーストラリア経済、中国よりもピンチか①

2016-01-15 00:01:23 | その他の地域

 年初来の世界的な「リスクオフ」モードの現時点の根源は「中国」(・・・でも中国は「三の丸」に過ぎない?)ですが、その陰に隠れて目立たない(?)けれど、じつはもっとマズい事態に落ち込みつつある国がいくつも見受けられます。その代表格が「オーストラリア」。

 以下のグラフは年明け第一週(1/41/8)のに対する為替レートの推移をみたものです(1/4の円に対するドル、ユーロ、人民元、豪ドルの値下がり率の推移)。これをみると・・・まあ、あれだけ騒がれている人民元が円はもちろんドル・ユーロに対しても値下がりしているのは理解できるとして、豪ドルの対円減価率がその人民元を上回り、わずか5日間で5%超にも達したことが目を引きます。それだけ豪ドルつまりオーストラリア経済の現状および今後に投資家が中国以上にネガティブになっているようすが窺われるわけです。

 で、そのオーストラリアに悲観的にならざるを得ない理由ですが・・・まずは交易面での懸念が指摘できるでしょう。そのなかでも最大の貿易相手国・中国の経済不安が同国に与える悪影響が心配されます。オーストラリアは輸出・輸入ともに中国に大きく依存しています。とくに輸出では全輸出額のうち3割超が中国向け(2番目が日本で15%ほど、3番目が韓国で7%ほど)ということで、中国経済が動揺するとオーストラリアの輸出振興はままならないわけです。

 そのつぎは、オーストラリアの主要輸出品である鉱物資源価格の低下です。同国の輸出品は金額の大きい順に第一位:鉄鉱石(全輸出額に占める割合は22.6[2013/14年度])、第二位:石炭(同16.6%)、第三位:金(非貨幣用)、などとなっており、石油・天然ガスを含めた鉱物・燃料の輸出額が全体の6割を大きく超えています。これらは最近、価格が大きく下がっているわけですが、同国にとっては上記トップ2の価格ダウンがとくに痛いところ。実際、鉄鉱石の直近価格(2015/12月間平均)はトン当たり39.6ドル、石炭56.0ドル(同)と、前年同月比でそれぞれ42%、16%も下がっています(ピーク時[2011/2]の価格からはそれぞれ79%、60%もの大幅ダウン!)・・・

 もっともオーストラリアの貿易収支ですが、上記のような「逆風」―――中国経済の変調や資源価格の下落等―――があるなかでも、それほど悪化した気配はみられません。まあ、鉄鉱石・石炭の価格が上述のようにいっそう下がった昨年(2015年)から今年以降はどんな結果が出るかは分かりませんが、少なくとも2013,14の両年、同国は貿易黒字を記録していますから(2014年は40億ドルあまりの黒字)・・・

 それよりも―――貿易収支よりも―――オーストラリア経済がこの先、厳しい局面に向かわざるを得ないだろうと予想させる根拠が、同国の対外債務額の多さです。

(続く)

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【スイスフランの価値は金の価値、ならば金を買えばいい】スイスフランは「買い」か?④

2016-01-13 00:02:01 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 日本人が、資産保存の観点から、(ドルやユーロ等はもちろん)安全通貨とされるスイスフランCHF)さえも買うべきではないと個人的に考える理由として、スイスの当局が同国の銀行救済のためにCHFを大量増刷せざるを得ない事態に追い詰められるリスク(インフレリスクを前回までに指摘しました。

 もうひとつ、CHFが円よりも劣るポイントを上げておきたいと思います。それは、CHFと交換されるべきスイスが生み出す財およびサービスのラインナップが日本に遠く及ばないことです。以前もこちらの記事等に書きましたが、通貨には、その通貨発行国の財やサービス等の交換券としての性質があります。その点からみたの価値は・・・いまここで多くを語るまでもないでしょう。ちなみに中国の通貨・人民元SDR採用通貨にまで成り上がったのには、同通貨が世界を席巻するメイド・イン・チャイナの交換券としての側面があるからだと考えています。

 一方のCHFですが・・・スイスの貿易統計をみると、同国第一の輸出品は「医薬品」(全輸出額の1/3くらい)で、2番目がご存知「時計」(同1/10くらい)となっていて、この両者で4割以上を占めています。上記の理屈からするとCHFはこれらの交換券になるわけですが、円およびメイド・イン・ジャパンと比べると、医薬品や時計だけでは圧倒的に品不足。それにこれらなら日本製でいくらでも代替が効くし、良いものがありますからね(まあスイス時計の場合はブランド価値とかが高いですが・・・)。そんな意味でも―――商品交換券としての価値の高さでも―――CHFもまた円にはかなわない・・・そう思っています。

 以上、CHFには円を超える価値を見出すのは難しいわけですが、唯一(?)CHFが円に勝る要素として、(ゴールド)による裏付けがCHFのほうが円よりもしっかりなされている点が指摘できるでしょう。スイス国立銀行(SNB)の資産に計上されているスイスの金準備は現在1040トン(SNB全資産の7.5%ほど)。これを国民一人当たりの量に換算するとスイスは日本の20倍を大きく上回るほどの金準備を有していることになります。それに、結果として否決されましたが、201411月にはSNBの資産の20%を金にすることを義務付ける提案が国民投票にかけられたことからも推察されるように、いままでも、そしてこれからもCHFには相当量の金の裏付けが維持されることは間違いないでしょう。このあたりは(残念ながら)円には見られないところで・・・

 ・・・と綴りながら気が付いたのですが「CHFの価値はすなわち金の価値。だったらCHFではなく金そのものを持った方がいいじゃん」ということになるわけで、総合的に考えると「金>円>CHF>ドル等」つまり、わたしたち日本人が円以外に持つべき資産(外貨)として推奨されるのは、やはり「金」ということになりそうですね・・・(!?)

(「スイスフランは『買い』か?」おわり)

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【スイスもまた中銀のマネー乱発に陥る?】スイスフランは「買い」か?③

2016-01-11 00:01:49 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 前回、スイスの二大銀行UBSUBS Group AG)とクレディ・スイスCredit Suisse)は、世界的なリスクオフ・イベントが起こった際、ユーロドルなどのスイスフランCHF)よりも弱い通貨建ての過剰所有資産が価額低下に加えて為替差損を被り、これによって財務が大きく傷つき、過小資本(ひょっとして債務超過?)に陥るだろう、なんて見通しを綴りました。そうなればスイス当局は、かつての日本がそうしたように、金融システム救済のために両行に対して公的資金の注入に乗り出さざるを得なくなりそうです(?)。

 しかし・・・はたしてスイスにこれがスムーズにできるのか疑問です。というのは先述のとおり、スイスの国力に対して両行ともにデカ過ぎるからです。つまり、上記救済に必要な資金額が膨らんで同国の財政支援だけでは不足するおそれがあるということ。スイスの歳出額は2028CHF2014年)程度です。このなかでやり繰りをして上記資金を捻出できたとしても、歳出総額の1/10200CHF)くらいが精いっぱいでしょう(?)。これでは両行の総資産の合計額およそ2兆CHFのわずか1%にしかなりません。繰り返しますが両行は、CHFに対して減価する可能性の高いユーロやドル建て資産をしこたま抱え込んでいるだけに、資産価値の下落とユーロ&ドル安CHF高のWパンチの強烈なインパクトがそんな少額にとどまるわけがない(!?)。

 このように、UBSとクレディ・スイス救済に財政資金だけではまったく足りそうもない(増税も難しいだろう)・・・となれば、残る手はおそらくひとつだけ(?)。つまり最後の資金の出し手である中央銀行すなわちスイス国立銀行(SNB)の登場です。具体的には、SNBが両行に対し、株式の引き受けを通じてマネーを発行して供給する、といったような手です。こうしてSNBの資産はその分だけ増加し、その負債であるCHFの供給量もまた増えて・・・インフレCHFの価値低下)になる・・・

 ・・・かくしてCHFは、現状、世界主要国で一か国だけ、金融システムの健全性を保っている日本の通貨・に対しては減価せざるを得ない、とみるわけです。本ブログのあちこちで書いているように、これは何もCHFに限らず、ドル(アメリカ)ユーロ(欧州)ポンド(英国)などにもいえること。いずれの通貨もCHFと同じ理由で―――金融システム救済のために―――(爆発的に?)増発される定め(インフレになる定め)にある、つまり「円>日本以外のすべての国の通貨」になるしかない(?)ということです。

 ゆえに日本人は、資産保全に当たっては、CHFを含むすべての外貨は買うべきではない、唯一の例外、円よりも強い通貨・(ゴールド)を除いては―――というのが本稿のタイトル「スイスフランは『買い』か?」に対するわたしなりの答えです。

(続く)

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