(前回からの続き)
たとえ消費増税があっても、「日本」であれば、ドル等に対して円が高くなっていくから、税率引き上げ直後こそ苦しいものの、やがては円建て原材料コストとくにエネルギーコストが低下してモノやサービスの税込み価格も下がるため、増税の痛みは緩和されていく―――これまでそんな見方を綴ってきました。
ですがそれは「日本」での話です。いまは真逆の「アベノミクス日本」つまり円安万歳一色だからそうはいきません・・・というか、円安ドル高で原油や天然ガスの円建て価格を引き上げ、それが電気代やガソリン代を高くすることで商品価格を押し上げていく、つまりコストプッシュ型インフレ(=名目金利-予想インフレ率<0)が望ましいとされる政治・経済情勢になっているわけです、「アベノミクス日本」国では。これに加え、本稿の文脈から重要なのは、アベノミクスがよりによって原油に代表される商品投機までも扇動し、それらのドル建て国際価格上昇の原動力となっていること。このあたりはこちらの記事でも書いたので詳細は省きますが、わが国のウィークポイント「エネルギー」をさらに脆弱にして得意になる(?)なんて、さすが自称「異次元」な方々の政策だな~と、もう7年近くも驚愕させられ続けているところです・・・
で、そんな「アベノミクス日本」において消費税率がどんどん引き上げたらどうなるか、誰でも簡単に想像ができるというもの。すなわち、円安ドル高、本来の燃料から投資対象に変貌した(?)エネルギーの値上がり、そして・・・消費税率引き上げの「トリプルパンチ」(以前はWパンチでしたが、正確にはトリプルでしたね)を食らって国民生活は大ダメージを被るってことです。以下が、こちらの記事等でご紹介したイメージになります。これを見れば、上記3つのエンジンで上昇一途の物価に、国民大半の給与等の伸びが追いつけないであろうことは一目瞭然でしょう・・・
けれど「日本」にとって幸いなことに(そして「アベノミクス日本」にとっては不幸なことに)、アベノミクスの目論見―――年率2%のインフレ現出―――は達成されていません。その理由はいくつか考えられますが、第一はやはり円の強さ・・・というよりもドル等の外貨の円に対する弱さ、すなわちこれらの価値保存力の弱さ―――円ほどはインフレを防ぐ力がないこと―――といえるでしょう。本ブログで何度も紹介している「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」(実質金利の高い順に並べた不等式)が揺るがない、ということです。これが機能し続けているから、円建てエネルギー価格は一時的に上がることがあってもやがて穏当な水準に下がり、この国のアキレス腱をガードしてくれるわけです。言い換えれば、円こそが「アベノミクス日本」の脅威(?)から「日本」(わたしたち)を守ってくれている、といった感じでしょうか・・・