世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【イングランド、ポンドへのプライドが仇となる】スコットランド、英国からの独立・EU加盟がベターな理由④

2021-05-29 00:01:15 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 英国、というかイングランドは、スコットランドに独立され、EUに合流されてしまうと非常に苦しくなりそうです。つまり前述のように、それによって英国のGDPが減り、北海油田に関連する利益がEU側に移り、そしてポンド圏が縮小することで・・・英ポンドの対ユーロの評価が一段と下がって、インフレが激化してしまいそうだ、ということ。そして英国にはこのポンド安がもたらすインフレを制御する力量がなく、したがってスコットランド住民に、英国に留まったほうがトクだ、と思わせることができないのは先述のとおりです。

 そしてこれは英国内の北アイルランドとかウェールズにとっても同じでしょう。両地域の人々もまた、ポンドよりもユーロを持ちたいと思うだろう、ということです。とくに北アイルランドは、EU加盟国&ユーロ圏であるアイルランドと陸続きであり、人々の行き来や交易などの観点からも、アイルランドと同一通貨圏となったほうが何かと都合がいいはず。その場合の通貨は当然、ポンドよりはインフレに強いユーロが選択されるでしょう。こうして近い将来、スコットランドと北アイルランドは英国≒ポンド圏から出ていく・・・可能性が高いと予想されます。それは宗教とか民族とかの違い云々ではなく、インフレを避けるため・・・って、そのインセンティブはそんなことよりずっと大きいでしょう。実際、これらが異なる国々(とりわけ前述の「フランス以下/未満」の国々)がお互いに対して何だかんだ文句を言いながらもEUに留まっているのはそのため―――独自通貨よりも強い(実質利回りが大きい)ユーロという共通通貨を持てることでインフレの害悪を免れるため―――であるわけですからね・・・

 こうして最後まで?ポンド圏に残るのは・・・イングランドだけ、ということになりそうです。上記等によってポンドの対ユーロの価値がいっそう下落すると予想されるなか、イングランド住民はインフレにますます悩まされるでしょうが、スコットランドなどと違ってイングランドには、そんな弱い通貨のポンドを捨てることができないという「弱み」・・・というより、おそらくは・・・大英帝国時代から第一次大戦あたりまでの基軸通貨だったポンドに対する郷愁めいた「プライド」?があるはずです。そのあたりは、英国がEUメンバーであったときもEUに対して通貨と金融政策の独立を認めさせていたことからも推測がつくところです。まあ・・・そのメリットも当然あります・・・が、それはあくまでもイングランド経済が一番の貿易相手であるEUに対して優位な面がある場合に限ります。が、現実には先述のとおり、イングランドはEUに依存するばかりで、強いところはほとんど見当たりません・・・

 こうしたことでイングランドは、ポンドに対するアナクロな?こだわりが仇となり、ユーロ圏に合流するという経済合理的な判断ができず、ポンドと心中・・・か

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【EUはスコットランドの新規加入を歓迎する】スコットランド、英国からの独立・EU加盟がベターな理由③

2021-05-27 00:01:59 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 これまで綴ってきたように、スコットランド英国から独立してEUに合流したほうが、より正確にはそうすることで英ポンドを捨ててユーロに乗り換えたほうが、住民の利益は大きい―――インフレの脅威から守られる可能性がより高い―――と考えられます。そして、「Brexit」(英国のEU離脱)のおかげで(?)、スコットランドのEU合流には大きな支障がなくなったのも前述のとおりです。

 では、受け入れる側のEUにとって、スコットランドはどのような「国」なのか、ですが・・・このあたりは本ブログでEUについて論じるときに提示している、国債価格を高い順に(利回りが小さい順に)並べた不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」に照らして考えるのが適当でしょう。つまり、スコットランドがこの序列のどのあたりに位置づけられるのか、ということ。この点、上記のようにスコットランドはインフレ回避のためにEUに入りたいわけですが、EUにとってもそれは同じ。すなわち、EUとしてはスコットランドの加盟で物価がより安定する(ユーロが強い通貨になる)か、悪くてもインフレが悪化(ユーロの価値が下落)することがないよう願っているはず・・・

 で、そのあたりのニュートラルなラインが、こちらの記事等でも書いたように、上記不等式の「仏」(フランス)あたり、と推測しているところです。さて、ではスコットランドは?ですが・・・正直、これは予想がつきません、実際にスコットランドがEUに加わって、そのユーロ建ての「国債」に市場がいくらの値段をつけるか、までは。もっとも・・・先述した英国の現況から、その一部であるスコットランドが上記不等式の上位にランクされるほど強いとはとても思えませんが・・・

 とはいっても、スコットランドは、総人口が5百数十万人ほどでEUの他国と比べても多くはないため、そのEU加盟がユーロの評価に与える影響はプラス・マイナスのいずれであっても軽微であろうと考えられます(っても、ギリシャの例があるので、加盟申請時の厳格な財政審査等は必須でしょうが)。さらに、独立すれば、これまでは英国政府(≒イングランド)に持っていかれていた北海油田に関連する税収等を自分たちが享受できることなどから、そのあたりの信用に国債価格が支持される面もあるでしょう。これらをトータルで勘案すると、スコットランドがEUに合流した後のユーロの価値は、現在とそれほど変わることはなさそうだし、保守的に見積もっても、ポンドに対して切り下がっていく!?ってことは、まずあり得ない感じがします。であれば、EUとしてはスコットランドを新しい仲間として歓迎こそすれ、門戸を閉ざす理由なんてないでしょう。こうして、スコットランドとEUは晴れて一緒に・・・ということで・・・

 ・・・苦しくなるのは英国・・・ってイングランドです。こうしてスコットランドに出ていかれて何が苦しいって・・・北海油田のEUへの移転、ポンド圏の縮小等で、ポンドの価値がいっそう下がってインフレが激しくなってしまいそうだ、ということです。

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【Brexitはインフレ緩和の選択肢を提供】スコットランド、英国からの独立・EU加盟がベターな理由②

2021-05-25 00:01:13 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 英国で今月行われた地方議会選挙の結果、スコットランドでは英国からの独立を主張するスコットランド民族党(SNP)等が過半数の議席を得、これを受けて二コラ・スタージョンSNP党首らは同独立の是非を問う2回目の住民投票の実施に強い意欲を示したわけですが、そのとおり、Brexit」(英国のEU離脱)となった現状のもとでは、スコットランドとしては、英国から独立し、EUに合流した方が住民の利益は大きいと考えられます。その第一の理由は、前述のとおり、それによってスコットランドは自国通貨を現行の英ポンドよりは強いEU共通通貨のユーロに切り替えることができる、つまりインフレ(≒通貨の価値劣化)のダメージを和らげることができる―――ため、です。

 こちらの記事等でも書いたように、英国は慢性的な経常収支・貿易収支の赤字国であり、その最大の貿易相手であるEUに対しても大幅な入超となっています。そのうえ英国は野菜などの食料品をはじめとする生活必需品の多くをEUからの輸入品に頼っています。となると英国としては、市民生活の安定を図るためにも、これらをEUから少しでも安い値段で輸入したいところですが、そのための必須の条件が、その通貨ポンドがユーロに対して強いこと・・・なのに実際はその逆で、ポンドはユーロに対して中長期的に弱含みのトレンドをたどってきているわけです。そしてこれは、上記の赤字体質が構造的であるために、今後も変わりようはないでしょう・・・って英国民がもっとマトモに働いて輸出振興を図って対EU貿易で出超にでもならない限り(っても、かの国の実力から見て、まず不可能)。となればポンド安ユーロ高に向かう流れは止めようもなく、英国民はそれに比例して高まるであろう輸入インフレに苦しめられるしかないでしょう。インフレ緩和&ポンド防衛の利上げ?無理無理、そんなことをしたら、今度は「虎の子」?のロンドン不動産の価額が暴落→不良債権急増→英銀、続々と債務超過に転落→・・・の金融恐慌は必至ですからね・・・

 ・・・っても、スコットランド住民はこのインフレから逃れる選択肢があるわけです。それが、英国からの独立・EUへの加盟、すなわちポンド圏離脱・ユーロ圏合流ということ。そして、これも前述のとおり、Brexitのおかげで(?)、スコットランドのEU加盟にいまや大きな障害(≒EU加盟国の反対。Brexit前ならEU加盟国だった英国は絶対に反対しただろうし、スペインなども賛成しなかったかもしれない)はないはずです。であれば、スコットランドはこれ選ばない手はないと思いますね、誰もがイヤな物価高が落ち着く可能性が高いのですから・・・

 他方、英国・・・というよりイングランドのほうですが、ボリス・ジョンソン英首相はもちろん、国民の大半はスコットランドの独立には賛成できないでしょう。上記の文脈で言えば、これポンドの価値には間違いなくネガティブに作用する、つまりポンド圏のインフレを悪化させる要因となるからです。なので、英国はこれを何とか阻止しようとするでしょう、すでに予想されているように、上記住民投票の実施に英国首相が拒否権を発動する、みたいな嫌がらせめいた?策も含めて・・・

 ですが、ここでもしスタージョン氏が次のように正論で?訴えたら、ジョンソン英首相は何も言い返せなくなるのではないでしょうか―――「スコットランドに英国に留まれ!というのなら、じゃあ英国政府そしてイングランド銀行(英中銀)はインフレからスコットランド市民の生活を守ってくれますか?できないでしょう?」

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【英国からの独立派が過半数の議席を獲得!】スコットランド、英国からの独立・EU加盟がベターな理由①

2021-05-23 00:23:04 | ヨーロッパ
 今度は、独立を選択したほうがいいと思いますよ、EUに加盟できるのなら―――正確に言えば、自分たちの通貨をユーロに替えることができるのならば・・・

 英国で今月6日に行われた地方議会選挙で、スコットランドでは、英国からの独立を掲げるスコットランド民族党(SNP)が最多の64議席を獲得し、同じ独立派の緑の党と合わせて過半数の議席を確保しました。今回の選挙では、スコットランドの英国からの独立の賛否を問う2回目の住民投票の実施の是非が大きな争点となっていましたが、この結果を受け、SNPの二コラ・スタージョン党首は「スコットランド全体の意志」が示されたなどとして、同実施に強い意欲を示しました。そしてSNPは、現在のコロナ禍が収束した後の実施に向け、関連法案を準備していく方針を示しています。他方、スコットランドの独立に以前から反対している英国のボリス・ジョンソン首相は、現段階で同投票を行うのは「無謀で無責任」だと批判しつつ、スタージョン氏には書簡で「より良い関係をあらためて築けると信じている」などと伝えています。そのあたり、いまや過半数と思われる?分離独立派住民の反英国感情をこれ以上逆なでしないよう、非常に気を使っている様子が窺えますが・・・

 本ブログ過去記事でも綴りましたが、スコットランドの英国からの独立をめぐる一回目の住民投票は2014年に行われ、独立45%に対して英国残留55%となり、結果としてスコットランドは英国に残っています。しかし、その後、英国をめぐる諸情勢は大きく変化しました。すなわち「Brexit」―――英国のEU(欧州連合)からの離脱―――です。英国は昨年1月に離脱し、今年から同離脱協定も発効して、名実ともにBrexitとなりました。もっとも、こちらの記事に書いたように、Brexitしたとはいっても英国は、離脱前と同様にEUとの貿易では関税ゼロ等を引き続き享受でき、他方で移民の受け入れ等ではEU基準の縛りから解放されるなど、EUに対して有利な条件で離脱を勝ち取った印象があります。そしてこれらの利益は英国に属するスコットランドにも及ぶはず。であれば、スコットランドは、英国から分離独立・・・してEUへの合流をめざすべき理由や事情はそれほどないように思えますが・・・

 ・・・って、いやいや、Brexitによってスコットランドには大きなチャンスが来た、というべきでしょう。つまり・・・スコットランドとしては、英国から独立してEUに加盟できたら、その通貨を現状のポンドからEUの共通通貨であるユーロに転換できる可能性が出てきた、ということです。

 Brexit前は、英国はEUに所属していたので、スコットランドには、たとえ英国から独立できても、(スコットランドのEU加盟を認めると「スコットランドに続け!」みたいに自国内の分離独立運動がいっそう活発になることを恐れるスペインなどの反対によって)EUから加盟を認められないリスクがありました。けれどBrexit後は、上記の構図(EU加盟国内の分離独立を認めるか否かといった問題等)は生じませんから、独立スコットランドの単独でのEU参加には大きな障害はないと思われます。実際、ドナルド・トゥスク前欧州理事会常任議長(EU大統領)は、Brexit決定直後の昨年2月、BBCの番組で、(自動的に加盟が認められるわけではない、としつつも)独立スコットランドがEUに加盟する案について「共感」を覚えている、などと発言したそうです・・・

 といった感じで、スコットランドのEU加盟の「ハードル」はBrexitのおかげで(?)かなり下がってきた印象です。ではこれが現実となったとき、当然生じるはずの上記の通貨変更が意味することは、ですが・・・EU加盟国スコットランドは(少なくともポンドよりは)強い通貨であるユーロを手にする・・・ことでインフレの害悪を緩和できる、ということ・・・

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【不可分の米中両国の今後はインフレ次第も…共倒れ?】インフレに苦しむ米国民を救うのは中国か⑦

2021-05-19 00:03:00 | アメリカ
前回からの続き)

 ということで、インフレが制御不能になりつつあるなか(?)、アメリカ中国に対するモノの面そしてマネーの面での依存度をますます高めていくことでしょう。モノの面では、全米の必需品であるメイド・イン・チャイナが少しでも安く手に入れられるよう、米ジョー・バイデン政権は「トランプ関税」の撤廃あるいは大幅な引き下げに動くでしょう(?)。このときアメリカは、自分たちで代替品を作る能力も教育もないために、中国製品に助けてもらう以外の選択肢がないことを思い知るでしょう(・・・って、米メディアは(アメリカのほうが関税分がオンされたプライスに耐えられなかったのを米中貿易戦争の「敗北」とされるのが悔しいため?)中国が同関税に耐えた、なんて釈明?をするのでしょうが・・・)。

 そしてマネーの面では、前述のように、中国はドルの「質」の劣化(インフレによるドルの単位当たりの価値の低下)を「量」の確保で補おうと、米国民を相手にモノの売り上げ(対米輸出)を増やそうとし、実際にこれに成功してドルをさらに稼ぐことでしょう。その後、中国は、手にしたドルで少しでも利回りを得るべく、これをアメリカに還流させて米国債等を買うわけです。結果としてこうしてアメリカがファイナンスされれば、アメリカとしてはたいへんありがたいところです。何度も書いていますが、これで金利上昇圧力が多少なりとも和らぎますからね・・・

 こうしたことからアメリカは、好むと好まざるとによらず、実質的に、中国とは切っても切り離せないパートナーシップを築いているといえます。それは中国から見たアメリカも同じ。繰り返しますが中国・・・の通貨・人民元は、そのアメリカの通貨ドルに裏付けられた、いわば「疑似ドルですからね・・・

 とまあ、本ブログではずっと前から綴ってきた米中不可分論?をあらためて綴ってきました。けれど、これが今後、どうなっていくかは、これまたアメリカ&米ドルの「インフレ」(≒実質マイナス金利の拡大)がどうなるか、によります。そこのところはアメリカ(FRB)にはコントロールできず、さりとて中国でもまず無理―――「質」の劣化の勢いが強すぎて「量」の拡大で追いつけない―――でしょう。となれば、一蓮托生の両国は共倒れ必至ですね(?)。なので・・・わたしたち日本は真に賢く振る舞いたい(≒市場原理にしたがいたい)ものです・・・

(「インフレに苦しむ米国民を救うのは中国か」おわり)

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【中国、ドルの質の劣化を量の確保で補う以外にないが…】インフレに苦しむ米国民を救うのは中国か⑥

2021-05-17 00:01:58 | アメリカ
前回からの続き)

 前回、ジョー・バイデン政権は、高まる一方のインフレ圧力を少しでも和らげるべく、近いうち、米国民の日常生活に不可欠の中華輸入品に対する「トランプ関税」の撤廃(あるいは大幅な引き下げ)に動く・・・というより、そうせざるを得ないだろう、という個人的な見通しをご紹介しました。何度も強調しますが、本来のインフレ退治は金融政策(量的緩和停止そして利上げ等の引き締め)で行うべきところ、(今度はこれで生じる金利上昇に借金まみれの米国民米金融システムが耐えきれないので)アメリカ(FRB)にはこれができません。よって、金融政策以外のインフレ抑制策でちょっぴりでも効果がありそうなのは・・・って、それくらいしかないだろう、ってことで・・・

 まあそれほどに米国民はメイド・イン・チャイナに依存し切っているはずです。よってこれを代替する製品を自分たちで作る能力なんてありません。だからこそ、前述のように、対中関税が課された期間に当たる昨年もアメリカの貿易赤字は過去最大を記録し、相手国別では中国に対する赤字が相手国中で第1位になったわけです。であれば、貿易不均衡是正なんてできもしない(実際、できなかった)目標はさっさと取り下げ、米バイデン政権は、国民益の観点から同撤廃等を決断し、人々が中国からの輸入品を少しでも安く手に入れられるようにしたほうがよいと思いますけれどね・・・

 ・・・ってなれば、中国にとっては「しめたもの」です。上記のとおり、ただでさえ対米輸出は順調なところ、トランプ関税がなくなれば、その黒字(アメリカにとっては貿易赤字)がいっそう増えるのは明らかでしょう。もちろん中国は、トランプ氏らよりもずっとしたたかですから、アメリカがこうして「敗北」(同関税撤廃)しても「ほ~ら、いわんこっちゃない、どのみち貿易戦争に勝つのはわれわれ中国だ!」なんて本心は胸の内にとどめ、けっして口にしません。利益が増えればそれでいいのですからね・・・

 そして中国にも、こうしてドルをもっと稼がないとならない切実な事情があります。同国としては、ドルの利回りが実質マイナス圏に没入しているため、その単位当たりの価値の目減りを補うべく、ドルをもっとたくさん獲得しなければならなくなった、ということです。本稿一回目でご紹介したように、アメリカの「紙おむつ」代は昨年から8.7%も値上がりしていますから、これに沿っていえば、昨年1ドルの売り上げがあったとしたら今年は1.1ドル弱でトントン、同じ1ドルでは実質減益・・・みたいな感じでしょうか・・・

 こちらの記事に書いたように、中国という国は、共産主義・・・などではなく、米ドルに基づいてできています。したがって、その土台であるドルのインフレ化は、自身の存立が揺らぐことを意味します。これを食い止める策としては、上記のとおり、ドルの「質」の劣化をその「量」のいっそうの確保で補って総額での価値を維持することくらいしかないと思われます。かの国に、いまさら依って立つところをドルに代わる何か他の資産にチェンジするなんて無理でしょうからね。もっとも、米FRBの金融政策が実質的に制御不能に陥っている(金融引き締めができなくなっている)なか、ドル劣化は今後いっそう速まるでしょうから(?)、そんな綱渡りみたいなこと、できてもせいぜい数年くらいのような気が・・・

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【米バイデン政権、物価高抑制のため対中関税の撤廃へ動く?】インフレに苦しむ米国民を救うのは中国か⑤

2021-05-15 21:58:55 | アメリカ
前回からの続き)

 ということで、4月の米CPI(消費者物価指数)は事前の市場予測を大きく上回る対前月比0.8%・対前年同月比で4.2%もの高い上昇率を記録・・・って、ついこのニュースでわき道にそれましたが、何の話をしていたかといえば・・・中国でした。つまり、いまのアメリカを何とか保たせるには、中国が絶対に欠かせない、ということです。

 このあたり、このCPIすなわちインフレとの関連から言えば、こちらの記事等でも指摘したように、(ボーイング社の航空機を含む兵器武器以外の?)モノ作りの能力をすっかり喪失したアメリカは、身の回りの日常生活用品すら自分たちで作れず、中国からの輸入品なくして決して成り立たなくなっているところ、物価上昇の苦しみを和らげるには、これをできるだけ安い価格で供給できるようにしなければならないでしょう。インフレの高まり具合からも分かるとおり、実際、アメリカでは輸入物価のほうも上がっていて、3月には対前月で1.2%上昇と、4か月連続で同1%を超えてきました。これでは当然、すべての米国民必須のメイド・イン・チャイナの値段も上がるしかありません。ではどうするか・・・

 ・・・って、個人的には、ジョー・バイデン現政権は、近いうち、トランプ前政権が設けた対中関税の撤廃、あるいは大幅な引き下げに踏み切るのではないか、と予想しています。理由は上記のとおり、そうすることで少しでも物価上昇を抑えたい―――中国製品価格に上乗せされている関税分をなくしてそのプライスを引き下げたい―――ためです。これを含め、とにかくアメリカは、物価上昇の要因をこうして一つずつでも排除していかないと真にマズいわけです。前述のように、アメリカ(FRB)にはインフレ退治の抜本策である金融引き締めができませんからね・・・

 もっとも、上記関税には、中国に対して貿易不均衡を是正させることを目的とした、アメリカの実力行使という面があったわけで、これを撤廃等する(引っ込める)ということは、中国がアメリカの攻撃を、しのぎ切った、ということで、米中貿易戦争の観点からは、勝者は中国、敗者はアメリカ、という判定もできるかと思われます。なので、バイデン政権としては、この決断、し難いでしょう、トランプ前大統領とか米共和党から「中国に屈する気か?」などと非難されるリスクがありますから。けれど、上記から、(金融政策以外の)物価抑制策の断行は待ったなしであり、そんなことを気にしているヒマなんてないはず。それに・・・そもそも上記関税は、米国民の中華製品に対するニーズが大きすぎるので、上記不均衡の是正に効果なんぞないわけです。実際、アメリカの昨年の貿易赤字額は、コロナ禍拡大で経済活動が停滞したにもかかわらず前年比5.9%増の9049.4億ドルと過去最大を記録しました。そして貿易赤字の相手国別ランキングで1位となったのは・・・引き続き中国です・・・(って、ちなみに2位メキシコ、3位ベトナム・・・ときて日本は7位)

 これらを考えると、ヘンなプライド(?)にこだわって対中関税を続けるよりも、それを撤廃して物価高を少しでも和らげたほうが、よほど米国民の利益になるし、よって支持率にも好影響を与えるだろう、というものです。どうでしょうかバイデン大統領・・・

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【米CPI、4月は対前月比0.8%もの高い上昇率を記録】インフレに苦しむ米国民を救うのは中国か④

2021-05-13 00:10:45 | アメリカ
前回からの続き)

 やはりな・・・。本稿一回目で、要注目!としていたアメリカの4月のCPI(消費者物価指数)が対前月比で0.8%もの上昇となったことが明らかになりました(日本時間12日21:30米労働省発表)。これ少なくとも2019年以降の単月上昇率では今年3月等の0.6%を上回って最高値・・・であることに加え、もっと注視されるべきは、事前の市場予想値の0.2%を大きく上回ったことでしょう。同予想と実際値がこれほど乖離するなんてこと、最近はなかったのではないでしょうか。もっとも個人的には、本稿一回目を書いた7日の時点で、この予想は甘すぎ(?)であり、きっと0.6%を超えてくるだろう、と憂慮(?)していたので、そのとおりの結果となったことに正直、驚きはありませんが・・・

 そして対前年同月比の上昇率は4.2%と、2008年9月以来、じつに12年7か月ぶりの高い伸びとなりました。まあ昨年4月はコロナ禍の急拡大で物価が急降下したこともあり、そのリバウンドという面も多少はあるでしょうが、それにしても年4%を超える物価上昇率というのは―――本稿&本ブログの文脈に沿って正確に言えば、米(長期)金利が1%台後半程度のところ、こうして実質金利(=名目金利-インフレ率)のマイナス幅が2%を大きく超える事態というのは―――かなりマズいレベル、つまり一般の米国民に広くインフレのダメージが及ぶレベルといえるでしょう。ということで、彼ら彼女らの我慢の限界がいよいよ近づいている、という気がしてなりませんが・・・

 そう強く実感させられるのが、このインフレについて、ミョ~に?楽観的な見通しが米当局によって繰り返し語られている様子です。日経新聞によると、上記CPI発表の直前(・・・ってことはCPIがスゴい値になることを知ったうえで?)、FRBのブレイナード理事は講演でインフレの加速は「一時的」との認識を改めて強調したとのことです。これに先立つ4月には、FRBのパウエル議長も今年の米物価について一時的に「やや高く」なるとの見方を示しました。

 ・・・って、上記のようにインフレが厳しさを増しているのに、これを一時的、そして「やや高い」などと、のんびり構えている場合ではないはずです、本来の米中銀としてのFRBならば。しかし・・・やはりFRBには、こうして――「一時的」などとして―――インフレを容認する(見て見ぬふりをする)以外の選択肢はないでしょう。その理由は前述、そして本ブログのあちこちで述べてきたとおり、もはやFRBにはインフレ退治≒金融引き締めができない(≒借金バブル崩壊で不可避の金融危機に耐えられない)から。もっとも金融緩和しかやらずに同引き締めはやらない、もとい、やれない組織をセントラルバンクなんて呼べませんが・・・(?)

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【インフレを抑えるにはFRBではない誰かに米国債を買ってもらいたいが…】インフレに苦しむ米国民を救うのは中国か③

2021-05-11 00:10:14 | アメリカ
前回からの続き)

 前述したように、アメリカではインフレが高進・・・というより実質マイナス利回り状態が恒常化し、かつそのマイナス幅がさらに拡大しつつあります。よって米国民としては、今後の物価上昇から生活を守るため、この瞬間、手持ちの現金は預貯金(≒米国債投資)に回さず、前述の「紙おむつ」(年利8.7%!?)に代表される生活必需品(モノ)の購入に充てたいところです。そしてそれは、投資家にとっては、原油とか小麦のような商品(モノ)への投資のインセンティブにもなってきます。これらも加わって、アメリカの物価はさらに上昇していくことでしょう・・・

 他方で、こうしてモノの値段が上昇し続けていくと、現状、モノよりも利回りが小さくなってしまった米国債に投資する合理的な理由はなくなり、よってこれへのマネー流入が減少し、同価格の低下、すなわち金利上昇圧力を抑制することが難しくなります。となると、教科書的には、米連邦政府は財政赤字を減らすべく増税とか歳出削減等を超特急で進めないといけませんが、いまのアメリカにはそんなことできるはずもなく、それどころかコロナ禍対策などとしていっそうの財政出動をしようとしているわけです。もちろん、その原資は借金、つまりさらなる米国債の振り出しです・・・が、上記のとおり、市場にはこれを買う(米政府におカネを貸す)インセンティブはありませんから、そのままでは米政府は期待どおりのおカネを集められず、いっぽうで金利は上昇一途で、財政&金融システムは崩壊の危機に。やむなく「最後の買い手」FRBが売れない米国債を高値で買い支えますが(金利は急降下しますが)、そのたびにあらたにドルが発行されるわけだから当然、過剰流動性が発生、すなわちインフレになる(実質マイナス金利が常態化する)わけで・・・

 とまあ、何度も書いていることですが、アメリカはこうしてインフレで壊れていくしかありません(?)。つまり「国民皆武装」の国でインフレが制御できなくなったら何が起きるか・・・ってことですね。残された希望(?)は、これが現実化するのを少しでも後送りさせることくらいでしょう(?)。そのためには・・・(FRBが上記のようにプリントしたドルではなく)市中にあるドルが(実質利回りは「紙おむつ」[モノ]を大きく下回る)米国債投資に回ってくれることが必須の条件になります。では、いまの世界で、けっこうな量の米国債を買うことができるくらいのドルを保有しているのは誰か、といえば・・・その一番手は、いわずと知れた、中国、ということになりますね・・・

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【米国民はドル預貯金よりも「紙おむつ」投資をするべき?】インフレに苦しむ米国民を救うのは中国か②

2021-05-09 00:08:07 | アメリカ
前回からの続き)

 前回、アメリカではインフレがいよいよ顕著になってきている様子をご紹介しました。直近(今年3月)のCPI(消費者物価指数)は前月比0.6%、前年同月比2.6%もの上昇となっています。もっとも、ここで真に注視するべきは、インフレ率ではなく、実質金利(=名目金利-予想インフレ率)のほうになります。たとえインフレ率が年10%(≒現在1ドルのものが1年後は1.1ドル)であっても、金利が同11%(≒現在1ドルのドル預金が1年後は1.11ドル)であれば、実質の金利はプラス1%だから、10%は高いように見えても,市民生活にはそれほど大きなダメージが及びません。ようするに、実質金利がゼロを上回っている限り、インフレ率の大きさとは無関係に、人々は物価上昇の害悪を回避できる、といったことになりますが・・・

 ・・・って、いまのアメリカの危機の本質は、そこです。つまり・・・こちらの記事に書いたように、遅くとも昨春あたりには明らかな実質マイナス金利の状態が現出し、これが現在まで継続し、しかもこのマイナス幅が(インフレ率の上昇で)いっそう拡大していきそうだ、ということです。たしかに、アメリカでは、ここ10年ほどをみても実質利回りがマイナスになることがありました(たとえば、2013年の春には、現在と同じくインフレ率が年2.5%、一方で[長期]金利は年1%台後半となっていた)。しかし、マイナスの期間は数か月程度で収束してきています(2013年の夏には長期金利がインフレ率を上回った)。これに対して今回は・・・上記のとおりです。そして、もはやアメリカには、これを抑止することができない―――具体的には、インフレに追いつかせるべく金利を引き上げたいが、FRB(米中銀)にはこれができない―――はずです。そんなこと、すなわち金融引き締めをFRBがしたら、今度は金利が制御不能に急騰し、リスク資産(株、債券、不動産、商品などなどの)バブルがたちまち崩壊して金融危機が勃発してしまいますからね。実際、5日、FRBのクラリダ副議長は、現行の超緩和的な金融政策の縮小については「議論するべき段階ではない」と語っていますから、つまりはそういうことでしょう。かくしてアメリカは、バブル膨張(≒1%の富裕層の利益)のほうを優先し、インフレ抑圧(≒99%の一般国民の利益)は断念した、という次第です・・・って、本ブログではずっと前から予想してきたとおりの展開ですが・・・

 となると、米国民としては、自身の生活をインフレから守らないとならなくなります。ここで着目するところは、やはり利回りでしょう。このあたりを上記から年率で高い順に並べると・・・紙おむつ(8.7%[この1年間の価格上昇率])>CPI(2.6%)>ドル預金(1.6%[長期金利])>ドルのキャッシュ(当然0%)、となるわけで、「紙おむつ」・・・に象徴されるモノを、いまこの瞬間に買っておく、というのが、いちばん賢い投資・・・というか消費行動になることが分かります。なので、米国民の皆さんには、預貯金(≒米国債投資)なんぞをせず、「紙おむつ」を買って備蓄しておくことを強く推奨したいですね。そして米ジョー・バイデン政権は、同様の理由から、国民に対して、ドル現金支給策ではなく、「紙おむつ」とか「食料品」といった現物の支給策を実施するべきでしょう。そのほうが、実質利回りの観点から、国民の利益が大きくなるためです。

 う~ん、でもこうして米国民が「紙おむつ」(モノ)の投資・消費にマネーを振り向けたら、肝心の米国債におカネが十分に回らなくなって、金利上昇圧力が高まってしまいそうですが・・・

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