世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【低い国債の外国人保有率】マネー流出!インドは粘れるか②

2013-08-29 00:00:17 | アジア

(前回からの続き)

 インドはこれまで外国資本に対してさまざまな規制を敷いてきました。世界経済のグローバル化にあわせ、1990年代以降、少しずつ緩めてはいますが、他のアジア諸国などと比較すると、まだまだ多くの資本規制が残っているといえます。

 その影響が端的に表れている数字が、わずか1~2%程度とみられるインド国債の外国人保有率。これはインドが外国人投資家の国債購入額に上限を設定してきたためでしょう。マネーの国外流出への懸念が高まりつつあった昨年から今年にかけて、外国マネーをもっと呼び込もうという意図から、インドはこの上限額を引き上げてきました。したがって直近の国債の外国人保有率はもう少し高いかもしれませんが、それでもインドネシアやマレーシア(30%超)、そして日本(8%台)などと比べたらずっと低いレベルにあるものと推測されます。

 逆に、インド国債のほとんどは国内の投資家が保有しています。おもな保有者はインドの民間金融機関(銀行や保険会社)とかインド準備銀行(中央銀行)など。彼らインド人が自国の国債を持っているのは必ずしも「インド国債は運用利回りが良いから」とか「価格が上がりそうだから」といった前向きな(?)理由からではありません。多くの場合、「国内投資家は規制で国債保有が義務付けられているから」だと思われます。事実、インドには金融機関に強制的に国債を保有させる法定流動性比率規制(預金総額の一定割合を国債等の流動性の高い資産で保有させる規制)があります(通貨防衛の観点から、現在23%の同比率を引き上げようという動きもある)。

 上記のようなインド国債に関する各種規制の結果として、大多数の国債がいまも国内勢によって保有されている(外国人の国債保有率が低いレベルにとどまっている)ことは、現状のインドにとって救いとなっている面があります。なぜなら、自国の投資家がしっかりと国債を持ち続けてさえいれば、外国人投資家による国債の売り浴びせによる悪影響(金利急騰など)をインド経済が受けにくいからです。

 このように見てくると、現在は何かと批判的に捉えられることが多い感じの資本規制ですが、少なくともインドに限れば、実体経済の安定にそれなりに貢献してきたということができるものと考えています。

 ちなみにインド国債の多くがルピー建て。外貨建て債務の場合は為替リスクがあるし、当該外貨準備が底をついたらデフォルトですが、自国通貨建ての債務ならばそんなことはありません。とはいっても激しいルピー売りに悩まされているインドにとっては「中銀の国債直接引き受け」は禁じ手でしょうが・・・。

(続く)


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【下げ止まらない通貨ルピー】マネー流出!インドは粘れるか①

2013-08-27 00:04:17 | アジア

 アメリカ・FRBの量的緩和策(QE)縮小観測が高まるなか、通貨や株価の下落など、このところ新興国の金融市場が動揺しています。そのなかでも最近とくにマーケットの注目を集めているのはインド。本稿ではそのインド情勢について思うところを書いてみたいと思います。

 インドの通貨ルピーが下げ止まりません。今月23日時点のレートで1ドル64.3ルピーと過去最安値付近にあります。ルピーは今年の5月くらいから大きく下がり始め、同月1日(1ドル53.7ルピー)と比べると現在は約17%も価値を落としています。それだけルピーがドルなどの外貨に対して売られているということでしょう。

 ルピー下落の大きな根拠となっているのがインドの膨大な経常赤字。以下のグラフのとおり、2012年のインドの経常赤字額は930億ドルあまりと、アメリカに次いで世界のワースト2位です。アメリカは基軸通貨国であるので、ある意味で別格と扱えば、インドこそは世界一の経常赤字国とみることもできるかと思います。

 以前こちらに書いたとおり、現在のシビアな資本主義の世界で、各国と競争しながら国民を豊かにすることができる国は、(一部を除いて)実質的には自国に産出する天然資源を売って外貨を稼げる「鉱業国」か、その資源を加工して高い付加価値を持つモノを作って売る「製造業国」のいずれかです。

 ではインドはどうかというと、どちらにも分類できない感じ。インドの輸出金額のトップ品目は原油・石油製品ですが、一方でインドは世界第4位の原油輸入大国(2012年)。原油の国内消費量の約8割を輸入に頼る国です。鉄鉱石はけっこうたくさん採れますが、オーストラリアやブラジルのように金額的に主要輸出品に数えられるほどではありません。

 で、資源輸出がそれほど当てにできないとなれば、国を富ますためには製造業がいっそう重要となるわけですが・・・インドの貿易統計をみると、たしかに衣料品など、伝統的に強い分野があることはあります。しかし、もっと高い価格で売ることができる工業製品等の輸出数量や金額はまだまだ少なく、総人口約12億人(!)どころか、数千万人程度の人々を養うことすら難しそうです。最近はソフト開発などのIT産業関連の売り上げも伸びてはいるものの、経常収支を改善させるほどのパワーはありません。

 ということで、製造業が脆弱なために通貨安という輸出に有利な環境を生かせず、逆に輸入エネルギー価格の高騰で経常収支がさらに悪化しそうなインドは、この先ますます苦しい局面に追い込まれそうな気配ですが・・・。

 ところが、そんな危うい状況のインドには「意外に粘るかもしれないぞ!?」と感じさせる面がないではありません。それがこの国特有の「資本規制」です。

(続く)


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【TPPの次のターゲットは水?】大切にしたい日本の「水」⑤

2013-08-25 00:01:04 | 日本

前回からの続き)

 ご存知のとおり、アメリカなどの諸国との間で各種交渉が進められているTPPで、わが国は農業、医療、保険などの分野への外国資本に対する市場開放が求められています

 上記3分野に比べると目立ちませんが、現状、公営がほとんどのわが国の水道事業も今後は開放要求ターゲットになりそう。日本の水道市場の規模は2~3兆円規模と、けっこうな大きさだからです。すでに日本に進出している仏ヴェオリア等に加え、アメリカのベクテル(世界最大のゼネコン)あたりも、わが国の水道事業に参画したいと思っていることでしょう。

 ちなみにアメリカの水道民営化率は2割程度と意外に(?)低い数字。TPPでは保険などの分野ほどはわが国に対する水道市場の外資開放要求が強くないのは、そんなところに理由があるのかも? それだけさすがの「何でも民営化大国・アメリカ」(私の勝手な命名です)も、水道のライフラインとしての重要性と民営化が与える米国民への不利益(料金高騰・給水不全のおそれ・水質悪化等)を認識しているということではないでしょうか・・・。

 先日の日本郵政とアフラックの突然の提携発表に象徴されるように、「平成の不平等条約」じゃなかった「平成の開国」と菅・前首相が言ったとおり、TPPは外資に対する一方的な「開国」(日本市場の開放)の様相を呈してきました。一方、アメリカの自動車輸入関税の撤廃といった、日本側にメリットとなる「得点」はこれまでのところほぼゼロ。これも「尖閣カード」の代償なのでしょう・・・。この勢いでいくと、保険や医療などの次は、やはり「水」―――そう懸念せざるを得ません。

 地下水目当ての外国人によるわが国の森林買収の拡大、そしてもっと深刻な脅威となりそうな外資への水道市場開放に向けた動きなど、日本の「」はかつてないほど重大な局面を迎えています。だからこそわたしたちはいま一度、この国の水の大切さに思いを馳せる必要があると考えています。

 「安全なこと」そして「おいしいこと」―――繰り返しになりますが、これこそわたしたち日本人がいただく「水」の絶対条件です。そのために求められる水をめぐる環境は、他人(外国人)まかせにすることなく、これからも自分たち自身で守り、育んでいかなければならない―――それが「火水(かみ)の国・日本」に生きるものの使命だと思っています。

(「大切にしたい日本の『水』」おわり)


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【失敗多い水道民営化】大切にしたい日本の「水」④

2013-08-23 00:01:34 | 日本

前回からの続き)

 狙われる日本の「」―――地下水目当ての外国人による森林買収よりも、もっと現実的な脅威として用心しなければならないのが、わが国の水道事業への外国資本の参入だと思っています。

 日本では水道事業はほとんどが公営ですが、欧州や途上国の一部では水道の民営化が進んでいます。これら諸国のなかでは英仏両国の民営化率が際立って高く、イギリスは約90%、フランスは約80%となっています。そんなこともあり、世界各地の水道民営化を先導しているのはイギリスとフランスの会社。とくに仏スエズ、同ヴェオリア、英テムズ・ウォーターの大手3社は企業規模やサービス人口が大きいことなどから「ウォーター・バロン(水男爵)」と呼ばれているそうです。

 日本もそうですが、現在、世界各地の行政はどこも厳しい財政運営を余儀なくされています。そのため何かとお金のかかる水道事業を民営化して公費削減を進めようと考えるところも少なくありません。さらに、中国などのように、水道は整備したいけれど肝心の設備建設や運営ノウハウがない国や自治体もたくさんあるはずです。そんなことで、民間水道会社の活動の場は今後ますます広がりそう。実際、水道事業の民営化市場規模は2010年の約7.5兆円から2025年には30兆円を超えるレベルにまで成長すると予測されているそうです。

 一方で水道民営化の失敗事例も目立ちます。最大のものは水道料金の過剰な値上げ。水道運営会社は、事業運営権をしっかり確保した後、独占利益を享受するために料金を引き上げるわけです(競争相手がいないから値上げしやすい)。そうしたケースは南米ボリビア(料金値上げに怒った民衆が蜂起し、「水戦争」が勃発!)とかフィリピン(マニラ市の水道料金は民営化によって当初の数倍にまで高騰!)などの途上国でいくつも見つけることができます。ネットでこれらの詳細を見ていると、日本での外資の数少ない参入事例である松山市の水道事業(仏ヴェオリア受託)の今後が心配になったりします。

 さらに、ある意味、料金高騰以上に懸念されるのが、水道民営化が水質の悪化をもたらすおそれがあること。その原因は、民間事業者が、利潤極大化をはかるべく、水道設備の改修や維持管理にかかわるコストを抑えようとするため。そうなれば自ずと事業品質は落ち、水質は悪化します。実際、こうした事例もまた、上記のボリビアやフィリピンを含む途上国の水道民営化事業で数多く見受けられます。

 水道事業の民営化は、料金を跳ね上げるうえ、水質まで低下させるわけだから、公営水道が事業品質や収支などの面で一定の水準で運営されているのなら、水道の利用者にとっては民営化のメリットはないことになります。もしここで民営化を敢行したら、潤うのは水道事業を受託した外国資本だけ・・・へたをすると、わが国もそんなことになりかねません。だから日本は水道事業の民営化には慎重であるべきだ―――そう考えています。

続く


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【日本の森林を買う外資】大切にしたい日本の「水」③

2013-08-21 00:03:56 | 日本

前回からの続き)

 というわけで、中国はいまも、そしてこれからはいっそう、安全な「」の確保に苦しみそうです(まあ自業自得ですが・・・)。とはいえ、国内の75%もの河川・湖沼の水、そして90%もの地下水が汚染されている現状を急に改善することなんてできるわけがないので、自国よりもむしろ外国から飲料水を調達したいという中国人も多いことでしょう。

 そこでいま懸念されているのが、中国人を含めた外国人による日本の水資源確保の動きです。このあたり、最近は「狙われる日本の水」といったような見出しで各種メディアでしばしば報道されているところです。

 具体的な外国資本による取水の手口は、日本の山林を買い取って、そこから地下水を汲み上げるというもの。地下水に目がつけられているのは、「水利権」(水を取水・利用することができる権利)が設定されている河川や湖沼の水と比べると、わが国では地下水の利用制限が緩いためだそうです(北海道の「水資源保全条例」のように、自治体が条例等で制限を設定している場合あり)。

 日本の山林の平均価格は1㎡あたり43円(平成23年度)。林業の衰退で林地価格も下落し、ピーク時(80年代前半)の約半額になっているとのことです。一方で外国資本による森林買収面積は年々増える傾向にあり、林野庁のデータによるとその面積は平成18年から24年までのトータルで約800ヘクタールに達しています。その大半が集中している北海道の調査によれば、外国人の道の森林取得件数は57件で、そのうち中国が21件を占めています。これらの多くは地下水の確保が目的とみられるとのことです。

 その他にも湧水豊かな富士山ろくや九州などで中国資本による地下水汲み上げの動きがあります。いずれも日本の安全なミネラルウォーターとして中国への輸出を目的としたもので、一部はすでに輸出されているものもあるそうです。

 外国人による日本の水の確保に向けた森林買収等のアクションは今後ますます高まっていくことが想定されます。いうまでもなく水は数少ない日本の貴重な天然資源。したがってわが国としては、自治体だけではなく中央政府としても、水に関する彼らの動向をこれまで以上に注意深く見守る必要がありそうです。

 もっとも個人的には、外国人がわが国の地下水の一部を吸い上げていることへの気持ち悪さは感じるものの、彼らが取水制限や環境保全などに関する法令やルールを遵守する限り、日本における外資の水ビジネスはある程度は許容してもよいかな、と思っています(甘いかな?)。それによって中国などで日本の水に対する信頼性やニーズが高まれば、日本ブランドのイメージは良くなるし、本邦企業(大手飲料メーカーや水質改善機器メーカーなど)も水関連の商品・製品の輸出売り上げを増やすことができるからです。

 わが国の水に関連してむしろ気になっているのが、日本の水道事業への外資の進出の動きです。

続く


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【中国:真の危機は「水」】大切にしたい日本の「水」②

2013-08-19 00:01:46 | 日本

前回からの続き)

 すっかり世界的に有名になった中国の大気汚染ですが、それと同じくらい、いやもっと深刻といえるのが水質汚染でしょう。

 急速な経済発展のなか、キャッシュを生まず、コストのかかる環境対策をないがしろにした結果、いまや中国の大気、土壌、そして「」の汚染レベルは危機的です。

 すでに中国の河川や湖沼の水の3/4は垂れ流された汚物や化学物質などで汚染されているうえ、最近は大量の水の汲み上げや井戸への廃棄物投棄等の影響から、都市部の地下水の汚染度は90%に達しているとのこと。

 「中国の河川は、赤や緑、紫など、キレイな7色に染め上げられている」とか「川で死んだ人の死因を調べたら、溺死ではなく、汚水を飲んだことによる中毒死だった」などなど、ネットで検索してみるとヤバそうな話がゴロゴロしています。

 そんな環境だから、もちろん給水システムも劣悪です。中国の都市の給水管は劣化しやすい素材(鉄とかコンクリートなど)でできているうえ、維持管理もいいかげんなこともあって、水道水の(中国の!)安全基準を満たした配水エリアはわずか50%程度・・・。

 だからといって「ミネラルウォーター」なら大丈夫と安心してはいけません。水質基準が水道水よりも甘いものが出回っているからです。そのためなかには大腸菌が混じっているなど、日本ならば下水並みの品質のものも! いったい何を飲めばいいのか・・・。

 そんなことで、中国では毎日7億人もの人々が汚染された飲料水を飲んでいるとのことです・・・(中国駐在の日本人の皆さんの健康が本当に心配です)。

 最近は、輸出の減速からGDP成長率の伸びが落ちてきた、とか、「影の銀行問題」で金融システムが危機に陥るのでは、といったように、中国は経済面で不透明な局面を迎えつつあるという見方が目につきます。そして、戸籍差別に代表される圧倒的な貧富格差に対する民衆の不平不満が極限に達し、「歴史は繰り返す」の言葉のとおり、近いうちに政治・社会的な混乱が引き起こされるのではないか、といった憶測もあります。

 しかし、現代中国の真のリスクは、上記の水質汚染に象徴される環境問題なのではないか、と感じています。水、大気、土壌、さらには食品などの汚染は、生命体としての人間の存続を脅かすからです。だから、20XX年、中国はアメリカを抜いて世界一のGDP大国に、なんてあり得ない・・・。それどころか、近いうちに(いや、すでに現在)、もはや「手遅れ」と一部でいわれるほどの悲劇的な環境汚染によって、中国人は民族としての「いのち」の危機に直面するように思えてなりません(一部のお金持ちはそうなる前にアメリカなどに逃げ出すのでしょうが、そうなると今度はアメリカの「水質」が心配になりますね・・・)。

続く


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【世界最高レベルの水道事業品質】大切にしたい日本の「水」①

2013-08-17 00:02:47 | 日本

 毎日暑い日が続く今年の夏。熱中症の予防に水分補給は欠かせません。本稿ではその「」について感じることを綴ってみたいと思います。

 この7月から8月にかけて、東京都水道局を含む首都圏の7水道事業体が「首都圏New!水道水キャンペーン」を実施しています。各水道局のHPによれば、今年は「水道水の『安全性』と『おいしさ』を伝えることで、みなさまに蛇口から手軽に水道水を飲んでいただくこと」を目的にしているとのこと。

 国土交通省が毎年公表している「日本の水資源」によると、わが国の生活用水の使用量は1998年をピークに現在は緩やかな減少傾向にあります。一方で水道設備の老朽化が進み、それらに起因する減水などのトラブルや改修コストの増加などが各水道事業体の大きな課題のひとつとなっています。したがって今回のキャンペーンには、水道水の利用を少しでも促して、水道事業の収支改善につなげよう、という狙いもあるのだろう、と推測しています。

 それでも、これだけミネラルウォーターが日常生活に浸透したなか、水道水は「安全です」どころか「おいしいです(!)」とまで言い切る首都圏の水道事業体の強気の(?)姿勢には個人的にはとても好感を持っています。それだけ水質と、浄水の技術や水道設備のメンテナンスを含めた事業品質に自信を持っていることのあらわれと思うからです。

 それにしても、首都圏のような世界有数の人口密集地帯で水を蛇口から直接、しかもおいしくいただけるなんて、考えてみればスゴイことだし、とてもありがたいこと。そんな水道インフラを支える方々の日々の努力に(もちろん水を大切にしようとする市民や企業のさまざまな努力にも)敬意を表したいと思います。

 水道品質の高さは首都圏に限りません。たとえば九州の熊本市。今年3月、同市は、優れた水資源の維持管理に取り組む都市等を表彰する国連の「生命の水」最優秀賞に輝きました。受賞テーマは「自然のシステムを利用した地下水保全」。約73万人の市民の水道水をすべて地下水で賄っていることや、地下水を涵養するために休耕田に河川水をためるなどの取り組みが高く評価されたものです。阿蘇の豊かな伏流水、そして人々の高い意識と創意工夫とが調和した、まさに「いのち」にやさしい水道事業だと思います。

 国土交通省などのデータによると、水道水が直接飲める国は日本を含めて世界で10数カ国程度しかないそうです(諸説あるようです)。そのなかでも安全な水道水を飲むことができる人数の多さでわが国は群を抜きます。それだけ日本は清らかな水に恵まれた国、そして世界最高レベルの水道技術を有する国ということができるでしょう。そんな国に暮らせるわたしたちは幸せです。人間の身体の60~70%が水分であるわけですから・・・(もっともわが国ではゲリラ豪雨などの水害に十分な注意と対策が必要ですが)。

 さて、水をめぐる環境について、何もかも日本の対極に位置する国がすぐ近くにあります。いうまでもなく中国です。

続く


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【アベノミクスで低迷必至?】個人消費は盛り上がらない③

2013-08-15 00:03:26 | 日本

(前回からの続き)

 とはいえ、いくら食費やエネルギー代がかさんでも、それを上回る収入の伸びがあれば、差し引きで贅沢品の購入とか教養や娯楽のために使えるお金が増え、生活レベルは向上することになります。

 しかし、本稿前段でご紹介した公務員のように、今年度の所得額が昨年度並みとなる人たちにとっては、上述のとおり、円安の影響で食料品やエネルギーを筆頭に生活コストが上昇傾向にあるため、実質の可処分所得は昨年度よりも減少する可能性が高くなりました・・・。

 仕事柄、公務員の皆さんはプライベートでも堅実な家計を営む方が多いことでしょう。資産運用のスタンスも預貯金中心の安全志向なのではないでしょうか。そのため「アベノミクス」(というよりは米FRBのQE)がもたらした株の資産効果の恩恵を受けている人もそれほど多くはないでしょう(公務員に限らず、一般的な日本人は皆、そんな感じでは?)。

 ということで、この先の厳しい家計運営が予想されるなか、わが国の全勤労者の7%を占める公務員、そしてその家族の「財布のひも」は今年から来年にかけて、一段と引き締まるものと推測されます。

 それでも公務員の皆さんは民間の勤労者と比べるとまだ恵まれているのかもしれません。なぜなら、最低でも昨年度と同じレベルの給与・ボーナスが保証されているからです。民間企業のなかには今年の給料支給額が昨年よりも減ったところも少なくないでしょう(もちろん、大手輸出企業とか証券会社などのように、今夏のボーナス支給額を大きく増やしたところも多数あるようですが・・・)。

 さらに公務員には法的な雇用保障があります。不透明な経済情勢のもと、大幅増は期待できないまでも安定した収入を得て、定年まで勤務できるのは大きな救いです。これに対し、民間会社に勤める人の雇用は先行き不安定になるばかり。安倍政権が進める「雇用制度改革」も「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策シフト」を謳っていることですし・・・。現状、賃金の低いわが国の非正規雇用(契約や派遣など)は全雇用数の1/3あまりですが、アベノミクスのもとでこの割合はさらに高まりそう・・・。このように将来の雇用保障が揺らぐなか、中長期的には民間の消費行動は(場合によっては公務員以上に)慎重なものにならざるを得ず、したがって個人消費主導によるデフレ脱却は難しい―――そう予測しています。

 足元の景気、とくに投資が弱いということで、安倍政権はここにきて法人税の減税を検討しているようです(以前から「財政再建が急務!」と言っていたことと矛盾しているような気が・・・)。はたしてそれは真に効果的な施策といえるのか? 多くの企業が潤沢なキャッシュを持っているなかで設備投資を手控えているのは、決して税金が高いからではなく、需要、つまり個人消費が弱いからではないでしょうか。

 というわけで、円安誘導による生活コスト引き上げに消費増税と、アベノミクスは堅実な家計の個人消費を大いに盛り下げてくれています。このままでは個人消費の低迷が企業業績にも悪影響を与えて唯一の頼みの株価まで停滞へ・・・そんな気配をいちばん身近に感じているのはほかならぬ公務員(財務官僚?)の皆さんだったりして!?などと思っています。

(「個人消費は盛り上がらない」おわり)

(本日8月15日は終戦記念日。戦没者のご冥福と、わが国の平和と繁栄を祈念したいと思います。)


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【円安でエンゲル係数上昇?】個人消費は盛り上がらない②

2013-08-13 00:01:22 | 日本

(前回からの続き)

 足元の物価ですが、総務省が発表している消費者物価指数(CPI)の直近の「総合」値(今年6月)は前年同月比で0.2ポイントのプラスと、この1年では大きな動きは見られない感じです。

 一方、この総合値から食料とエネルギーを除いた値(「コアコア指数」と言ったりします)をみるとマイナス0.2ポイントになっています。ということは、他のモノやサービスと比べて、それだけ食料品およびエネルギーの価格が上がって、総合値をプラスに引き上げたということになります。現行のCPIの構成費目のうち、食料(お酒は除く)とエネルギー(電気・ガス・灯油・ガソリン代)の割合は約31.7%。この割合と上記の指数値をもとに食料およびエネルギーの価格変動率をはじくと、前年同月比で約1.1%の上昇となります(あくまでも机上での計算値ですが・・・)。

 いかがでしょう。たしかにトータルのCPI値をみる限り、物価の動きは微々たるものです(それでもこれまでの緩やかな下落傾向が止んでプラスに転じつつありますが・・・)。しかし、わたしたち消費者の日々の生活感覚としては、この「31.7%」の部分、つまり食料品や電気・ガス料金、ガソリン代といったエネルギー価格の対前年同月1%あまりの値上がりが、数字以上にキツく感じられるのではないでしょうか。

 毎日口にする食べ物や、本ブログで何度か取り上げている電気やガス、そして1リットル160円(!)前後にまで価格が跳ね上がったガソリンなどは日常生活の必需品。しかも東日本大震災以降、すでに多くの人たちはさまざまな「生活防衛策」(節約)を実行中のため、さらにこれらの購入量を減らすのは難しいでしょう。食料やエネルギーは、もはやCPI構成費目のその他のモノ(耐久消費財など)とかサービス(教養娯楽など)のように「買うのをやめよう」とか「値段が下がるまで買い控えよう」といったことをする余地が少なくなっている、ということです。そんなこともあり、何だかこの先、けっこうな数の日本人のエンゲル係数(消費支出に占める食費の割合)が上がっていきそうな気配(?)を感じます(エンゲル係数は、低い人ほど豊かで、高い人ほど貧しい、といわれる)。

 では、どうして食べ物とかガソリンの値段が上がっているのでしょう。景気が良くなって需要が増えたから? 決してそうではなく、最大の理由は「円安が進んだから」でしょう。いうまでもありませんが・・・(そしてシツコク指摘しているように、その円安をもたらした最大の貢献者は「アベノミクス」の金融政策「異次元緩和」です)。こうしてみると円安には、わたしたちが絶対に欠かすことのできない食料品やエネルギーの価格を引き上げるとともに、それによってわたしたちに他の財やサービスを享受する「ゆとり」を失わせる効果をもたらす面があるといえそうです。

(続く)


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【人事院報告は据え置き】個人消費は盛り上がらない①

2013-08-10 18:17:50 | 日本

 先週8日、人事院は、今年度の国家公務員の給与とボーナスの据え置きを求める報告書を安倍首相に提出しました。毎年この時期に実施されている「人事院勧告」ですが、2年連続の据え置きということで、法改正等が必要な勧告内容がないために、今年度は人事院「報告」となっています。報告にとどまったのは昭和29年以来、戦後2回目という異例のケースとのことです。

 今回「据え置き」となった理由は、現在の公務員と民間との給与・ボーナス格差が小さいこと。国家公務員の給与は、平成24年度から2年間、東日本大震災の復興財源に充てる臨時特例で平均7.8%ほど引き下げられています。人事院の資料によると、この引き下げ前の水準で民間と比べると、国家公務員の平均月給は40万5463円で、民間とほとんど差はなかったとのことです(民間より76円低い水準)。そしてボーナスの年間支給月数は3.95ヶ月分で民間と同じでした。そんな現状をふまえ、人事院としては官民格差はきわめて小さいと判断して据え置きを報告したものです。

 この「人事院勧告」(今年は報告)の対象となる国家公務員の人数はおよそ27.5万人(平成25年度)。国家公務員のなかの「非現業職員」に区分される人たちで、国家公務員約63.9万人のうちの約43.0%を占めています。

 なお、地方公務員の人数はおよそ276.9万人(平成25年度)。ということで国家・地方を合計した公務員の総数は約340.8万人と、日本の勤労者全体の7%程度となっています。ちなみに労働人口に占める公務員数の割合のOECD諸国(経済協力開発機構:先進国グループの集まり)の平均値は約15%となっているので、この「7%」という値は先進国としては低い方ということができそうです(以上、データは人事院)。

 さてこの人事院勧告ですが、上記のように、これが直接適応される「非現業職」国家公務員の人数は全公務員数と比較すると多いとはいえません。しかしこれは、その他の国家公務員(大臣、裁判官、自衛隊職員、独法職員などなど)や地方公務員の給与・賞与額を決定する際の重要な判断材料ともなっています。なので、今回「据え置き」が報告されたということは(最終的な決定は内閣や国会に委ねられてはいますが)、国家・地方のほとんどの公務員の今年度の給与・ボーナスは前年度と同じ額ということになりそうです。

 今年の月給やボーナスの額が去年と変わらない―――これが意味することは、公務員家族の方々の生活水準が昨年よりも良くなる(実質所得が増える)ためには、生活コストのほうが下がる必要があるということになります。で実体は、といえば・・・。

(続く)


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