世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【傘下の米原発企業WHが巨額損失!】東芝の苦すぎる教訓「海外巨額投資はNGだ」①

2017-02-27 00:04:54 | 日本

 つくづく、本稿タイトルのとおりだ・・・と嘆くほかありません・・・

 ご存知のとおり、わが国を代表する総合電機メーカーの東芝が経営危機に瀕しています。その最大の元凶はアメリカ原発事業で発生した7千億円を超える巨大損失。これにより同社は今年度末時点で1500億円を超える債務超過に陥ると見込まれ、このままだと8月には東証2部へ降格となるほか、ガバナンスに問題があったとされたら最悪、上場廃止となるおそれもあるようです・・・

 で、東芝をそんな存亡のふちに追いやったのは、同社傘下のウェスティングハウス・エレクトリック社(WH)。そのWHを東芝は2006年、54億ドルもの巨費を投じて買収したたわけですが・・・上記のようにWHが手掛けた米ジョージア州原発事業等で多額の損失が発生しているほか、2011年の東日本大震災にともなう原発事故の影響により当初の目論見のとおり原発事業の受注ができなくなったこと、さらに2015年にWHが0ドルで買収した米エンジニアリング会社がとんでもない債務超過だったことが分かって減損処理をせざるを得なくなったこと、などなどのネガティブな状況が重なり、今回の悲劇的な局面に至ったもの・・・

 たしかに日本の原発事故は想定外だったことでしょう。それはよく分かります。でも、それを差し引いても東芝のWH買収は、以下の2つのリスクに対する認識を著しく欠いた、あまりに無謀なものだったといわざるを得ません、いまさらながら・・・

 1つ目のリスクとは、当たり前ですが原発が本質的に抱える事業リスクのこと。誰でも知っていることですが、万が一の大事故のとき原発は、一企業では制御不能な破局を引き起こしかねません。まあ東芝&WH案件にこれに該当する事故は起きないとしても、原発事業にはそうした重大事象を招かないためにも初期投資に莫大なおカネをかける必要があること、そのコスト回収に数十年もの長い期間を要すること、などなどの危険因子が付きまといます。これらに対処するよう、上手なリスクマネジメントを行って利益を上げるのはそう簡単なことではないでしょう。

 そして2つ目のリスクは、海外リスクリスクの塊といえる原発事業を、法律も安全基準も建築基準も、日本とは何もかも異なる外国で行うことの危うさのことです。東芝の場合はアメリカでのケース、ということで、建設とか工事監理の品質劣化が著しいとされる米インフラ事業を、自分たちが直接マネジメントしながら進めるのではなくWHに委ねてしまったのは大きな失態だったでしょう。さらに今後は関連の訴訟リスクもおそろしいところ。実際に同社は、上記エンジニアリング企業がらみの訴訟沙汰にも巻き込まれている模様ですが・・・

続く

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【本当にヤバいのは独仏ではなく・・・】「ユーロ解体」で混沌に向かう欧州⑥

2017-02-25 00:02:14 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前回、独国債とそれ以外のユーロ圏各国債の利回り差がジワジワ拡大している状況をご紹介しつつ、単一通貨ユーロの「解体」(?)を訴えている極右政党が支持層を拡大しているユーロ圏の枢軸・仏独両国そして両国債価格(金利差)はこの先、どうなってしまうのか・・・みたいなことを綴りました。

 ・・・おっと、そんな悠長なこと(?)を言っている場合ではないのかも。独仏よりもずっと早く火を噴きそうな国があるわけだから・・・って、ギリシャのことです。同国の長期金利は先週末(18日)時点で7.58%と、ちょっと目を離していた隙に(?)自力での資金調達が危ぶまれるとされる7%ラインを超えていました。よって、もはや同国の資金ショートは時間の問題かな~と思っていたら20日、ユーロ圏財務相会議は同国への追加融資が可能となる改革案の議論を進めることで合意! というわけでギリシャがまたも救われそう!との見方から同国債価格は反転上昇(って、いったい何回追い貸しすれば気が済むんだEU&IMF・・・?)。ところが一転、21日の同国の長期金利は7%を下回る水準にまで急降下・・・と思ったら23日には再び7%を上回って・・・という具合。たった数日で約60bpt.もの乱高下状態です・・・

 といったように、今年のユーロの動揺は仏大統領選挙が行われる5月から、とノンビリ(?)していましたが、じつはいまのこの瞬間、毎度おなじみギリシャから始まる!?と身構えていた方がよさそうですよ(?)。それにしても・・・ユーロ圏にギリシャは切れまい!と読んだ本邦投資家が先週末にギリシャ国債をしこたま買って、上記会議直後に売り抜けていたら、対円でのユーロ安→ユーロ高(リスクオフ→リスクオン)も手伝って、ボロ儲けでしたね・・・キレイな投資とはとても言えないけれど・・・

(「『ユーロ解体』で混沌に向かう欧州」おわり)

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【独国債とのスプレッドが不気味に拡大中…】「ユーロ解体」で混沌に向かう欧州⑤

2017-02-23 00:00:59 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前回まで、独仏両国で今年行われる選挙で(万一)極右政党(仏「国民戦線(NF)」 and/or 独「ドイツのための選択肢(AfD)」)が政権を取った場合の大混乱ぶりについて、個人的に想像するところを記しました。もっとも、先述した彼らの通貨政策(現行の単一通貨ユーロの解体につながりかねない政策)がユーロ圏各国(とくに南欧諸国)の支持を得られるとは考えにくく、実際に「新フランス・フラン」(NF案:フランス単独の新通貨)とか「ユーロA(?)」(AfD案:ドイツなどEU内の経済の強い国々だけで作る共通通貨)が誕生する可能性は高くはないでしょう。

 だからといって「いまのままでは・・・泥船」なのもまた事実。というわけで通貨ユーロの今後はじつに不透明です。ユーロ圏は金融・通貨統合をした以上、本来なら財政統合も実行し、税制等も統一して、ひとつの「ユーロ共和国」を建国する方向に進むべきなのでしょう。しかし、移民問題に象徴されるように、その実態は統合どころかむしろ逆に、お互いに距離を置こうとする空気が英国を含む欧州全域に広がっている感じ。言語も文化も習慣も異なる民族同士が一緒に、という理念は美しいけれど、実現は難し過ぎた、ということなのでしょうか・・・

 上記のとおり新しい枠組み作りは至難・・・となってくると、この先のユーロ圏では、今回のドイツとかフランスのように現状に不満を持ち、かつ経済基盤が相対的に強い国が、しびれを切らして自分の方からユーロを出ていこうとする動きが活発化するのではないか。こうして自らの通貨を再生すれば金融政策もECB(欧州中央銀行)から取り返すことができるわけで、ここに晴れて通貨・金融・財政の3つの経済主権が回復され、独立国としての体裁が整う・・・ってこれ、単にユーロ以前の状態に戻るだけのことですが・・・

 ・・・独仏の上記政治情勢を見ても分かるように、そんな気配が漂い出したせいか?足元ではユーロ圏各国の10年国債の価格差(長期金利差)が不気味に広がっています。先週末時点の各国債価格を高い順に並べてみると「独(0.30)>蘭(0.62)>仏(1.03)>西(1.61)>伊(2.17)>ギリシャ(7.58)」(カッコ内は長期金利)となっていて、ドイツとそれ以外の国々の利回り差(スプレッド)がじりじりと拡大する傾向にあります。実際に18日、独国債の価格は上がったのに仏国債は下がり、両者のスプレッドは6bpt.(0.06%)広がりました。同日、今春の仏大統領選で左派候補と決選投票が行われることになったらNFのルペン氏が有利、といった報道が流れたためと思われます。ということは今後、NFやAfDの支持率がさらに上がったら、いったいどうなることやら・・・

続く

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【独AfD案:独仏分断を推し進める危険性あり】「ユーロ解体」で混沌に向かう欧州④

2017-02-21 00:01:26 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前回、今春のフランス大統領選挙で極右政党「国民戦線」(NF)のルペン党首が万一(?)当選し、本当に同党首およびNFが本稿一回目で紹介したような単一通貨ユーロの「解体」に踏み出したら、2つの暴落―――1つ目:独国債に対する(仏および?)南欧諸国債の暴落、2つ目:ユーロのスイスフランドルに対する暴落―――が起こって欧州の経済・金融は大混乱に陥るだろうといった見方を綴りました。

 では、いっぽうのドイツ・・・の極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が9月の独連邦議会選に勝利し、政権党になって、モイテン党首の述べる「ユーロ圏を経済的に強い国々と弱い国々に分ける」という考えを実行に移したらどうなるか・・・?

 ・・・当たり前ですが、NFの場合と同じように、2つの暴落が起こってしまうでしょう。そしてさらに悪いことにこのAfDの案、経済面ばかりでなく欧州の政治的・民族的な分断をいっそう深める危険性を感じます。その理由は、同案がドイツ等とフランスおよび南欧諸国とを違うグループに分けるとしていること

 あらためてAfDのユーロ分割案を確認してみると、モイテン党首は強者グループとしてドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランドの4か国を想定しています(ユーロ中核グループに残るべきと主張)。いっぽう弱者としてはフランス、スペイン、イタリアポルトガルをあげ、ギリシャについては通貨を共有しようとする国はないだろう、と切り捨てるような言い方をしています。かりにこのとおりに組み分けがなされ、前者がユーロA、後者が連合してユーロBを構成するとなると・・・

 ・・・はっきりいってユーロAはバランス悪すぎ、つまりドイツが突出し過ぎです。同国の人口は8218万、GDPは3兆3653億ドルと、グループ内で2番目のオランダの人口1694万人、GDP7507億ドルのそれぞれ約4.9倍、4.5倍もの格差があります(数値はいずれも2015年時点)。これではユーロAグループは実質的にはドイツの経済支配圏になってしまうことから、ドイツは同じ仲間の国々からばかりではなく、フランスやイタリアといった近隣の大国からも脅威視されてしまうでしょう(一方のユーロBグループは、仏・伊・西という、人口・GDP的にも近い国の集まりで、ユーロAほど特定国の突出がないのが好ましいかもしれない?)

 それに・・・AfDの案にはドイツとフランスとを分断させてしまいかねないところがあるのも気がかりです。そもそもEUと通貨ユーロは、欧州を壊滅させた戦禍に対する反省から、2大対戦国であった独仏両国が中心となり、苦労しながらも手を携えてここまで築いてきた枠組みでもあるわけです。この「絆」を、両国経済の強弱だけで切り分けようとするのは、戦後の欧州史に対する配慮やリスペクトを欠いた、あまりに拙速なものに感じられるのですが・・・

 ・・・こうしたことから、独AfDのユーロ分割案は、仏NF案よりもいっそうアブナイ側面を持っているように思えてなりません。個人的には、たとえユーロを2つに分ける場合でも、上記経緯から、ドイツとフランスだけは同じグループに入るべきだ、と考えますが・・・

続く

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【ユーロの対円・ドルの暴落でドイツまで輸入インフレに】「ユーロ解体」で混沌に向かう欧州③

2017-02-19 00:00:35 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 今春の仏大統領選で、「通貨ユーロをやめて以前の一国一通貨制に戻ろう」みたいな提案をしそうな(?)極右政党「国民戦線」(NF)のルペン党首が万一(?)、当選してしまったら、前述のように2つの「暴落」が市場を襲うでしょう。1つ目がドイツ以外のEU諸国とりわけ南欧各国の国債の暴落。これによっておそらくドイツ長期金利10年債利回り)は現在の0.3%前後からゼロ近くにまで下がる一方、イタリアやスペイン等のそれは急上昇し、これら国々をリセッションに追い込むでしょう。

 なおフランスですが・・・その長期金利が下がれば同国はドイツの属する「強者グループ」、上がればイタリアなどと一緒に「弱者グループ」に区分されそう(?)だけれど・・・おそらくは後者になってしまうのでしょうね、独野党「ドイツのための選択肢」(AfD)の見立てのとおり・・・(?)

 で、2つ目の暴落は、ドルなどの他通貨に対するユーロの暴落です。これ、まあルペン氏周辺がその解体(?)をにおわせているのだから当然といえば当然でしょう。具体的には円>ドル>ユーロ」のとおりユーロは円に対して大きく下げ、そして(円ほどの下落幅にはならないものの)ドルに対しても下落するでしょう。これによって、ドイツを含むユーロ圏のすべての国々は、ドル建てで取引される原油をはじめとする原材料の輸入インフレに見舞われ、個人消費や設備投資も落ち込んで深刻な不況に突入するでしょう。

 上記2つの暴落がもたらす最大のリスクは、これが金融システムに与えるダメージです。1つ目の暴落で自国債をしこたま抱えた南欧諸国の銀行は一気に債務超過に陥りそう。それらに加えてドイツやフランスの銀行も大損害を被るでしょう。イタリア国債だけでもドイツの銀行は830億ユーロ以上、フランスの銀行は約2500億ユーロも保有しているそうですからね(2016年夏時点)。これら経営危機に瀕した欧州中の銀行を救済するのに、いったいいくらのおカネがかかるのか? この巨大負担に各国の財政が耐えられるようにはとても思えませんが・・・

 そして2つ目、通貨ユーロの暴落。これはアメリカやスイスそして日本といったユーロ圏外国の銀行のユーロ建て資産に為替差損を発生させ、その分それらの経営体力が奪われそうです。ここで個人的に懸念しているのがスイスの銀行。こちらの記事に書いたように、それらの資産の多くがユーロ建てのはずで、ユーロ暴落つまりスイスフラン暴騰でそれらのフラン換算の価額が激減することでスイスの銀行資産は米銀などよりも大きなダメージを食らうのではないか。もっとも邦銀もイタリア国債を276億ユーロほども持っているそうなので注意が必要ですが・・・

続く

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【仏大統領選も「まさか」となったらユーロは・・・】「ユーロ解体」で混沌に向かう欧州②

2017-02-17 00:02:07 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 今年2017年の前半、もっとも注目すべき世界の政治イベントは4~5月フランス大統領選でしょう。支持率が10%前後(!?)と超低迷中の現職フランソワ・オランド大統領(社会党)はすでに不出馬を表明しており、現時点では中道右派・共和党フィヨン元首相と極右政党・国民戦線(NF)のルペン党首の対決との見方が有力です。直近の調査によればフィヨン氏が優勢と伝わってはいますが・・・昨年の英国民投票米大統領選が大方の予想を覆す結果となったことからも推測されるように、フランスでも「まさか」が起こる可能性はゼロではない・・・

 で、万一(?)NFのルペン氏が勝つと、現行の通貨ユーロの枠組みを変えようとする動きが活発化しそうです(?)。前述のとおりNFは、ユーロに替えて、以前の欧州通貨単位のような為替の安定を図るためのシステムを作ったうえで、フランスを含むユーロ圏各国は独自の通貨を持とうと訴えています。そう主張する以上、彼ら彼女らは政権奪取後、直ちにこれを具体化するべく、EUECBを巻き込み、関連の準備に取り掛かるしかありません(?)。なぜなら、「EU圏を、ドイツを含む経済の強い国々とフランスなどの経済の弱い国々に分けよう」という、仏NFとしては絶対に飲めない案を提示したドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が9月の独連邦議会選で勝利するおそれ(?)があるため。ということは、それまでにフランスの国益に沿う自らの提案への賛成をEU内で取り付けておかないと、この秋以降はドイツ・・・のAfD案の台頭を許してしまい、フランスは最終的に弱い通貨グループに強制的に区分されてしまうかもしれませんからね・・・

 こうした事情もあって「ルペン新大統領」および与党NFは、独AfDの支持率の動向を横目で気にしつつ、実質的なユーロ解体に向けて動き出すしかないだろう、と予想する次第です。ではそんな(アブナイ)ことをやり出しかねない(?)新政権が誕生したらどうなるか・・・って、予想は簡単です。2つの暴落が起こるでしょう。1つ目は各国債の暴落です。具体的には、同じユーロ建てでもドイツやオランダ等の国債価格は上昇(利回りは低下)し、イタリアやギリシャといった南欧諸国の国債価格は大きく下がる(利回りは急上昇する)でしょう。

 で、肝心の(?)フランスですが、おそらく同選挙前よりも国債価格が下がり、金利は上昇して仏政府の資金調達コストを引き上げるほか、同国の景気にも悪影響が及ぶでしょう。そんなことで、これは皮肉なことに独AfD案の「強国・弱国」の線引きラインを明確化させる結果になりそうな気もします。つまり、やっぱりフランスは弱い方だったね・・・みたいな・・・

続く

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【独仏ポピュリスト政党、ユーロ解体案を提示!】「ユーロ解体」で混沌に向かう欧州①

2017-02-15 00:01:33 | ヨーロッパ

 ひょっとしたら2017年はユーロの枠組みが大きく変わるきっかけとなる年になる可能性もありますね・・・

 この1月、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のイェルク・モイテン党首がロイター社の電話インタビューで、EU圏の共通通貨ユーロの「解体」につながりかねない考えを語りました。同氏は「ユーロは南欧諸国にとっては強すぎ、ドイツおよび数か国にとっては弱すぎる」と述べ、EU圏はドイツを含む経済的に強い国々と、フランスを含む経済的に弱い国々に分かれるべきだと主張しました。さらにイタリア、スペイン、ポルトガル、フランスを名指しし、これらのユーロからの離脱が考えられる、としたうえでドイツ、オーストリア、オランダ、フィンランドはユーロの中核グループに残るべきで、通貨高になってこれら諸国からの輸出に悪影響が出ても、1~2年ほどでそうしたスランプは終わるだろうとの個人的な見通しを示しました。

 ドイツでは9月に連邦議会選挙が行われる予定ですが、現時点ではアンゲラ・メルケル首相が属する与党・キリスト教民主同盟が優勢です。いっぽうでAfDの支持率も15%ほどまで上がってきました。今後の社会情勢の変化や各政党の合従連衡の成り行き次第では、AfDがさらに支持を集めて与党の一翼を担うことになり、モイテン氏のこの考えを実現させようという動きが本格化しないとも限りません

 ユーロ解体―――ドイツと並ぶEUの大国フランスでも有力政治家がこれに言及しています。5月の同国大統領選に立候補を表明している(これまた)極右政党「国民戦線」(NF)のマリーヌ・ルペン党首・・・のアドバイザーが先日、もしルペン氏が当選したら、ユーロに替わって以前の欧州通貨単位に似た通貨バスケット制を導入するようEUとECB(欧州中銀)に要請すると述べました。この場合、フランスの通貨は「新フランス・フラン」(new French franc)という名称になり、当初はユーロに等価とし、その後は当該バスケットに対する変動率を20%に制限するとのことです。

 これ、EU各国で自前の通貨を持とう、それぞれの通貨でバスケットを組んで極端に為替が上下する事態を回避しよう、ということで、みんなで昔のやり方に戻ろう、と言っているに等しいと思われます。そのあたり、同じユーロ解体でも、ユーロを強者の通貨(ユーロA?)と弱者の通貨(ユーロB?)に分けようという上記モイテン氏のアイディアと大きく異なる点。「われわれの案はAfDのものとは違う」(Ours is not that one[the AfD's])と言っていることから分かるように仏NFとしては、独AfDの案には意地でも(?)賛同できないところでしょう。これだとフランスは否応なく(?)イタリアなどと一緒に弱者チームに分類されてしまうことになり、高すぎる(?)プライドが許さないし、強い通貨のメリットを失ってしまうから。そこで、「フランスさん、あなたはユーロB!」とドイツから屈辱の(?)宣告をされるくらいなら、いっそのことみんなでバラバラに・・・といった感じでしょうか。

 ・・・まあともかく、EU枢軸を形成する独仏両国の有力政党からユーロ解体に向けた考えが公然と語られるようになったインパクトは小さくないと思います。

続く

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【ロシア、シベリア・極東・極地開発&W杯で窮地へ?】デカ過ぎる国土を持て余すロシア③

2017-02-13 00:00:45 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前述のようにロシア自慢の(?)「シベリア鉄道」、現状もイマイチですが、将来の発展はさらに望めないと考えています。というのも、東西に長~いロシアの端から端へと大量の物資を鉄道で運ぶというモデルそのものが今後ますます合理性を失っていくと予想されるから。

 で、その最大の理由は、経済のグローバル化が進展する中、ロシアとしては相互の関係が希薄な自国東西を無理矢理結び付けるより、それぞれが関係の密接な他国と―――ロシア西部は同じ欧州内のEUと、いっぽうのロシア極東は近隣の中国や日本などと―――それぞれ連携を強めた方が効率的なことが指摘できます。つぎに、グローバリズムとも関連しますが、自動車のような主要消費財は世界的に現地生産が主流となりつつあり、もはやその原生産国つまり日本や韓国等にシベリア鉄道を使った輸出に関心があるようには思えないため(ドイツも日中韓への輸出にシベリア鉄道を活用しようとはしないだろう)。そして、ロシア最大の輸出品である原油・天然ガスは鉄道ではなくパイプラインで輸送するべきものであること・・・などなど。

 以上のような事情をふまえると、この先のシベリア鉄道は利益薄くコストばかりがかかる「カネ食い虫」になる可能性が大と考える次第です。にもかかわらず、相変わらずの冷戦思考から脱却できない(?)ロシア指導層は、国土横断軸としてのシベリア鉄道の重要性は今後も不変!とか、シベリア・極東地域の発展に向けたこれらエリアへの人口シフトは国家戦略上の優先課題!みたいに発想し、関連の政策や投資を続けるのでしょう。まあ中央の権力者はロシア国家の一体感を維持したいでしょうから、その気持ちは分からなくもないですが、上記のとおり、これらをやればやるほどかの国は・・・

 ・・・大きな声では言えませんが、ロシアのこの手の、広大な国土に国力を分散させるような取り組みは、中長期的に見れば北方領土問題の解決を早めてくれるだろうと考えています。冒頭ご紹介したロシアの極東振興策は同問題を複雑にする面はありますが、これで北方四島に居着くロシア人が急増するとは考えにくく、逆に極東のあちらこちらに中途半端な町が形成され、その建設や維持にかかる各種コスト負担がロジア財政にのしかかることになるでしょう。これに加えてロシアはシベリアとか北極圏の「開発」も進めなければならないし、来年には国家の威信をかけたサッカーW杯ロシア大会も控えているわけです・・・。こうしてロシアは行き詰まり、軍人への給料支払いにも窮して(?)、結局は「経済支援と引き換えに北方領土問題を話し合おうじゃないか」と日本に言い寄ってくるのは確実です・・・(?)。

 ・・・というわけで、わたしがモスクワに住むロシア人なら、まずは上記制度を利用して国後島あたりの土地の所有権をタダで取得し、とりあえずそこにリンゴの木か何かを植えて使用実績を作っておきます。やがて同島が日本に「返還」されるときにその土地を日本政府に高値で買い取らせ、それで得たおカネでモスクワに戻って豪邸を立てて一生遊んで暮らします・・・。ホントこれが賢いと思うよロシアの皆さん、「自国領」の島でたった1ヘクタールのリンゴ農園を営むより、日本に北方領土を返したほうが・・・

(「デカ過ぎる国土を持て余すロシア」おわり)

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【シベリア鉄道、「無用の長物」に?】デカ過ぎる国土を持て余すロシア②

2017-02-11 00:03:22 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前述のように、巨大な国土に比べて人口の少ないロシアのなかでもとりわけ人の気配が薄いエリアが同国の極東地区。日本の16倍以上もの広大な土地に居住する人々の数(619万人)は、北方領土4島の総面積(5003km2)ほどの日本の千葉県(5156km2)の人口(624万人)にも満たないほど。これらの数字からも分かるように、日本の過疎地域と比べても桁違いに過疎なエリアがロシア極東―――そう言えるかと思います。もっとも、だからとってすべての住民が均等に散らばっているわけではなく、多くはウラジオストクやハバロフスクといった都市部周辺に偏在しているもようですが・・・

 こうした現状をふまえると、ロシア政府が前回ご紹介した制度の適用を全国民に広げたところで、その目論見のとおり人口流入が拡大し、極東開発に弾みがつく可能性はほとんどないでしょう。かえって中途半端な規模の人口移動を促してしまい、結局は国民経済をさらに非効率なものにしてしまうおそれがありそうです。つまりこの制度のせいでロシア政府は、わずか数十人の新規入植地のために、何百kmもの(?)道路とか配電線や、新しい学校や病院や港湾などを今後、作らざるを得なくなる(?)といったこと。同じ費用を投じるなら、自動車工場の従業員数千人が利用する数kmの道路をモスクワ近郊に建設した方が有効だと思いますが・・・

 ・・・極東に限らず、デカ過ぎる国家ロシアにはデカいが故にこの手の不合理な投資が国中にあふれているように思えます。その代表格と言えそう(?)なのが、有名な「シベリア鉄道」。たしかにこの鉄道が果たす意義や役割は・・・遅くとも20世紀まではあったのかもしれません。ですが・・・21世紀の御世では、ヘタをすれば(失礼ながら)「無用の長物」になりかねないのではなかろうか・・・(?)

 Wikipedia等によるとシベリア鉄道は、並行するバイカル・アムール鉄道と合わせると全長14000km近くにも達する長大な鉄道。これだけで日本のJR本州3社の合計営業キロ(14290km)に迫るほどのスケールです。しかも、この沿線の多くが鉄道敷設や維持管理が極めて難しい永久凍土層の広がるシベリアの原野に当たります。したがって、その建設コストはもちろんのこと、日常メンテナンスの手間とか費用も莫大なものになるであろうことは容易に想像がつくわけです。

 シベリア鉄道と聞くと旅情を掻き立てられるところですが、その最重要の役割はロマンを求める旅人たち・・・ではなく貨物の輸送です。具体的には、極東やシベリアの天然資源とか、陸続きの隣国である中国の産品をロシア西部や欧州本土に運搬すること。しかし、現状はイマイチのようです。その理由はこの鉄道、たしかに輸送所要日数などの面では貨物船よりも優位にあるものの、コストや輸送キャパでは海運にかなわないため。これらの面でこの鉄道を船舶に勝る物流ルートにするには、老朽化した車両とか設備の更新に加え、これに接続する港湾や主要ターミナルの大規模な新設・改修が不可欠ですが、こうしたこと、いまのロシアにはまず、できないでしょう・・・

続く

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【ロシア政府、全国民に極東の土地を無償提供へ】デカ過ぎる国土を持て余すロシア①

2017-02-09 00:00:21 | ヨーロッパ

 その図体に比較すれば見えないくらいにちっぽけな島々の返還を惜しむほど領土に執着するかの国は、逆にそのデカさゆえに衰退する―――そう確信しています。

 報道によれば1日、ロシア政府が自国の極東の土地を無償提供する制度を、これまでの極東住民から全国民に適用させることにしました。昨年6月に開始されたこの制度、申請者には一人当たり1ヘクタールの土地が無料で供与され、5年間の使用実績が認められればその所有が許可されるのだそうです。ロシア政府にはこれによって全国の都市部から極東への人口移動を促し、その開発を進めようとの思いがあるのでしょう。

 まあこの取り組み、日本の目にはネガティブなものに映ります。なぜならその対象エリアには北方領土を含むクリール(千島)列島が入っているため。これによって北方領土へのロシア移民が増えたら、今後の返還交渉がますますややこしいものになりそうですから。

 ・・・ですが、わが国としてはここは冷静に構え、同国がどうなっていくか、当面は見守りたいものです。というのは、この制度をはじめとするロシアの極東開発を目論む諸政策は、その意図とは裏腹に中長期的にみれば同国を弱体化させると考えるため。限りある人的資源をあちらこちらのエリアに分散させたら、それだけ一人当たりの社会資本建設コストや学校・病院等の運営コストが上がってしまいます。よってこの手の政策を進めれば進めるほどロシア経済社会には非効率が蔓延し、同国は結局、落ちぶれていくのではないか(?)。そんな予想が成り立ちそうなほどロシアはデカい、いやデカ過ぎるということです・・・

 ご存知のとおり、ロシアの国土面積は1700km2あまりと断トツの世界一です。これに対して人口は約1.4億人と世界で9番目。同10位の日本(約1.3億人)とそれほど差はありません。ということで、日本(約38km2)の45倍もの広大な国土に日本と同じくらいの数の人々が暮らしている国―――それがロシアということになります。ちょっと想像しただけでも、いかに国民同士が遠い距離を隔てて離れ離れになって居住しているかが分かるというものです。

 そんなロシアでさらに人影が薄いのが極東、ということになります。この地域(正式名:ロシア極東連邦管区)、広さは617km2と全ロシアの36%を占めますが、人口は千葉県(624万人:2016年10月時点)よりも少ない619万人で同4.2%、人口密度も1人/km2にしかなりません(1月時点)。このようにロシア極東は、ただでさえだだっ広いかの国のなかでも文字どおり、極め付きの人口過疎エリアといえそうです。したがって、同国のモスクワ中央政府がこの地域の人口をもっと増やそうと、上記のような政策を打ち出すのも分かる気はします。しかしコレ、砂漠にコップの水を注ぐような、いやツンドラの大地にティーカップのお湯を注ぐような虚しい結果に終わるような気が・・・(?)

続く

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