世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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QE3発動が示すFRBの危険な賭け「バブルよ、もう一度」④

2012-09-29 00:02:11 | アメリカ

(前回からの続き)

 とはいえ、近い将来、アメリカはこのGSE発行のMBS(不動産担保証券)の政府保証の有無に関する「あいまいさ」を明確にせざるを得ない局面に至るだろうと予想しています。不動産価格がいっこうに再上昇軌道に乗っていかないなかで、ローン破産者の増加や金融機関等の破綻が今後も相次ぎ、MBSの実質的な価値がますます低下し、しびれを切らした内外の多くの投資家から米政府はMBSに対する保証をするよう迫られてしまうだろう、と考えているからです。その結果がもたらすものは前回書いたとおりです。

 アメリカの不動産価格のピーク時の価格を100(2006年春)とすると現在は約68(今年6月)で、ピークから約32%も下落した状態です(全米20大都市圏指数による)。2006年から現在までの6年間の通算インフレ率は約13%だから、2006年当時の100を現在価値に換算すると約113です。よって(少し荒い計算ですが)インフレを勘案したピーク時に対する現在の不動産価格は68/113=約60%にしかならないことになります。

 一方でファニー・メイとフレディ・マックの両GSEのMBS残高だけで現時点で3兆ドル以上もあります。これらのベースとなる不動産価格がこれだけ落ち込んでいるのだから、いかに早くこの価格を再び高めていくことが大事なのか、容易に想像できるというものです。

 さもなければ、時間の経過とともに住宅ローン返済に耐えられずに破産に追い込まれる世帯が増加し、不動産債権の多くがどんどん不良化していき、これらMBSの価値が激しく損なわれてしまうことは明白だからです。そうなれば両GSEの経営危機がさらに深刻化し、投入された公的資金が消失するばかりか、QE3でMBSをさらに大量に(6000億ドル?)抱えることになるFRBの財務も傷ついて、ドルの信認が大きく揺らぐことになってしまうでしょう。

 ということで、今回のQE3(量的緩和策第3弾)発動でFRBは、「MBSの無期限の買い入れ」を選択したことで、マーケットに対して「アメリカ経済の再生には不動産バブル再膨張による資産効果しかない!」という悲壮な覚悟(?)をあらためて示したと思っています。

 これはきわめて危険な賭けでしょう。バブルが思惑通りに膨らまなければ先に述べたようなリスクがあることに加え、量的緩和で大量に散布されるドルが悪質なインフレ金利高騰を引き起こし、市民生活を一層苦しめる可能性が極めて高いからです(個人的にはそうなるしかなさそうだと悲観しているので、ドルの大洪水に備える意味で、商品インフレに強く不換紙幣のアンチテーゼとなる世界共通通貨・金[ゴールド]の保有を推奨しているわけです)。

 そんなことはバーナンキFRB議長は百も承知。それでもMBSを買い入れてマネーのバラマキをするしかないところに、FRBとアメリカ経済の苦悩の深さが感じられます。まさにアメリカとドルは正念場を迎えつつあるといっても言い過ぎではないと思っています。

(「QE3発動が示すFRBの危険な賭け『バブルよ、もう一度』」おわり)

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QE3発動が示すFRBの危険な賭け「バブルよ、もう一度」③

2012-09-27 00:03:39 | アメリカ

(前回からの続き)

 ところでこのMBS(不動産担保証券)はジニー・メイ(連邦政府抵当金庫)、ファニー・メイ(連邦住宅抵当公庫)、フレディ・マック(連邦住宅金融抵当金庫)といった米政府系機関(GSE:Government-supported Enterprises)の発行残高が大きなシェアを占めています。

 ここで気になるのが、政府全額出資のジニー・メイが発行するMBSには完全な政府保証があるのに対し、民間上場企業であるファニー・メイフレディ・マックの両社が発行するMBSには明示された政府保証がないこと。いまのところ、住宅政策支援機関として優遇措置がとられていることが「暗黙の政府保証」とされ、この両GSEのMBSは国債に次ぐ信用力を持つとされているようです。だからこそFRBも買い入れを決めたのでしょう。

 さてこの両GSE発行のMBSですが、以前から「政府保証があるのか否か」がことあるごとに議論されています。

 住宅バブル崩壊後のここ数年を振り返ってみても、たとえば2008年のはじめには米財務省が両社に対する政府保証のうわさを全面否定したため、その直後には米国債価格が反発した、という報道があります。一方で両GSEは支払い能力が低いサブプライム層に対する住宅ローン債券を保証していたことが主因で経営危機に陥り、リーマン・ショック直後の2008年9月、政府による資本注入を受け、事実上、公的管理下に入っています。

 こうした経緯をみても分かるように、この両GSEのMBSに政府保証がついているのかどうか、どうもはっきりしないというのが現状のようです。

 ではなぜこのMBSの政府保証の位置付けがこれほどまでに「あいまい」なのか。これには次のような理由があるのでしょう。

 かりにこれらに政府保証が付いているとします。そうなればMBSは真に米国債と同格の債券となるわけだから、世界中の金融機関や投資家はMBSを保持し続けるでしょう。一方、住宅ローン破綻が今後も相次いでMBSの価値が毀損すれば、その損害は政府が補填しなくてはなりません。つまり米連邦政府の財政支出・財政赤字がいっそう拡大するリスクが高まります。だからこれらを「政府が保証する」ことが明らかにされた時点で、おそらく米国債価格は急落(利回りが上昇)してしまうでしょう・・・。

 次にこれらのMBSには政府保証が付かないということになったとします。そうなればこれまで「暗黙の政府保証」があったからこそ持ち続けていた投資家が一斉にこれらを売り出します。MBSの価格は急降下するとともに住宅ローン金利が急騰するほか、FRBの財務も毀損してドル暴落(長期金利の暴騰)を誘発するでしょう・・・。

 このように、両GSEが発行するMBSに対する政府保証の有無が明らかになった時点で、どのみちドル危機が起こる可能性が高いものとみています。そのためMBSは今後もしばらくは「暗黙の政府保証」という「あいまいさ」(脆弱さ?)に裏づけされたまま、QE3のもとでFRBによって大量に買い支えられることになりそうです。

(続く)

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QE3発動が示すFRBの危険な賭け「バブルよ、もう一度」②

2012-09-25 00:03:28 | アメリカ

(前回からの続き)

 今月13日に開始が発表されたQE3に話を戻します。

 報道等によれば今回のQE3の骨子は次のようなものです。

 ・ゼロ金利政策を2015年半ばまで延長(従来は2014年終盤まで)
 ・不動産担保証券(MBS)を400億ドル/月のペースで新たに買い入れ(無期限)

 ここで個人的に注目しているのは①FRBの買い入れ資産に長期国債が入らなかったこと(短期国債を売却し長期国債を購入するツイストオペは別)、および②MBSの無期限の購入、の2点です。

 はじめに①について。これまでのQEでおもな買い入れ対象だった長期国債が今回除外された理由を想像してみます。まずは金利がすでに低い水準に下がっていることが指摘できるかと思います(当面、国債を購入して長期金利を引き下げる必要がない)。次に11月の米大統領選の時期が迫っていること。かねてからFRBの金融政策に批判的な共和党に配慮したのかもしれないなと考えています。そして今年末の「財政の崖」が近づくなかでFRBとしては米国債をさらに買い上げて米政府の「財政ファイナンス」をしていると思われたくなかったという意図があったのだろうと推測しています。

 次に②のMBSの無期限の購入について。現時点ではMBSを、いつまで、いくらまで買い入れるかFRBは明示していませんが、ロイターなどによれば失業率が7%台に下がるまで、総額6000億ドル(1ドル78円として約47兆円)におよぶとの見方が一般的のようです。

 さてMBSとはMortgage-backed Securitiesの略で住宅ローンの担保融資を裏づけとして発行された証券化商品のこと。FRBのバーナンキ議長は、このMBSを購入することで住宅ローン金利の低下を促し、(アメリカの景気低迷の元凶である)不動産市場へのテコ入れを図る、と13日の会見で説明しています。不動産価格を再び上昇させて資産効果(不動産の含み益を生み出してローン負担の軽減や個人消費の活性化を促す効果といったところ)を狙うつもりなのでしょう。何度も繰り返して恐縮ですが、要するに「資産バブルよ、もう一度!」ということですね。

(続く)

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QE3発動が示すFRBの危険な賭け「バブルよ、もう一度」①

2012-09-23 00:05:50 | アメリカ

 9月12、13日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備制度理事会(FRB)は新たな金融政策、いわゆるQE3(量的緩和策第3弾)の開始を決定しました。

 先月、バーナンキFRB議長は講演の中で「必要があれば追加の金融緩和策を実施する」と予告していたので、今回の決定はそれに沿ったものとなりました。直前に発表されていた市場予想を下回る雇用統計結果(雇用数の伸び悩み)やいっこうに改善されない失業率(8%台で高止まり)を受け、FRBとしても景気浮揚のために新たな金融政策の発動に踏み切らざるを得なかったということなのでしょう。

 個人的には、次のQEこそ「切り札」だから、2008年のリーマン・ブラザーズのような大銀行の経営破綻やギリシャのデフォルトといった決定的な金融危機が起きるまで、FRBはあらたな量的緩和策を発動しないだろうと予想していました。以前から指摘しているように、過度の金融緩和策には激しいインフレや金利の高騰といった副作用を引き起こすおそれがあるので、こうした副作用もいとわずにQEに突入するのはよほどの危機的な緊急事態に直面するとき以外にはないだろうと考えたからです。

 そのためQE3開始の知らせを聞いた感想は「FRBは堪え切れなかったか・・・」というもの。財政の崖」に象徴されるように、財政政策等の展開の余地がほとんどないアメリカにとってはもはや金融政策しか経済を活性化する手が残っていません。

 先日のさえない雇用指標の公表の後は、マーケットでは「もう新たなQEしかない!」といったセンチメントが支配的になっていました(実際、通常ならばネガティブな統計結果が出された直後は株価が下がるのに今回のFOMC直前はQE3期待で逆に上昇しました)。だからバーナンキ議長の本音を勝手に推測すれば「切り札(QE3)はもっと先まで持っていたかったけれど、これほどまでにFRBが頼られるのならば仕方あるまい・・・」といったところではないでしょうか。

 そのようなわけでFRBは現時点のリスクが顕在化していない局面でQE3カードを切ってしまいました。

 そのためアメリカおよびFRBは、次の量的緩和、つまりQE4に追い込まれるのはほぼ確実だとみています。なぜなら近い将来、上記のようなリーマン・ショックをも上回るほどの金融危機に見舞われ、混乱するマーケットを沈静化するために大量のマネーを金融システムに供給するしかなくなるだろうと想定されるからです(2008年の同ショック直後に行われたQE1と似た構図ですが、はるかに規模がデカいはず・・・)。そしてその次のQEこそ、少しオーバーな言い方をすれば正真正銘の住宅バブルの最終清算に対処する手立てとなるだろうと予想しています。

(続く)

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欧州金融危機の拡大におびえる韓国⑤

2012-09-21 00:04:52 | アジア

(前回からの続き)

 この秋から冬にかけて、韓国経済は微妙な時期を迎えそうな予感がしています。

 ギリシャに対するトロイカ(IMF、EU、ECB)による追加支援の可否判断が10月にも出る予定です。場合によっては、ギリシャは改革を履行していないとみなされて追加支援が断たれ、デフォルトに追い込まれるかもしれません。あるいはそこまで行かないまでも、ユーロ圏での金融危機対策の遅れなどからPIIGS国債が暴落(利回り急騰)して財務にダメージを受けた英国勢などの欧米金融機関が韓国の融資先から速やかにマネーを回収しようとするかもしれません。

 そうなればこれまで書いてきたように、韓国はまたもや通貨危機に見舞われ、最悪の場合は外貨が枯渇し、またもIMF進駐軍を受け入れざるを得なくなるリスクが出てきます(あるいは恥を忍んで(?)わが国に資金貸与を要請するか、それともチャイナマネーに頼って中国の実質的な属国となるとか・・・)。

 本稿の冒頭で触れたように、経済社会情勢があやしくなると、韓国の為政者は、自らの失政に対する批判の目をそらすため、一層わが国に対する理不尽な非難のトーンを強める傾向があります(まあ中国もそうですね。尖閣諸島の領有権をめぐって反日運動が盛んになっているのはそれだけ中国市民が現状に不満を抱えていることの表れでしょう。わが国としては中韓両国でのこうした動きに過剰に反応しないことが得策と考えます)。それらに呼応して多くの人々が反日デモに加わるために街頭に繰り出すかもしれません。

 でもデモを終えて家に帰った彼らを待つのは厳しい現実、借金の山です。しかもこの山、低くなるどころか、ウォン安や高金利でこの瞬間も高まる一方。そうなってしまったのも、身の丈以上に(実質的には海外から)借金を重ねた自分自身のせいだし、サムスン電子や現代自動車といった一部の大企業だけを為替面や税制面などで過度に優遇し、一方で国民の資産・所得格差の是正や社会福祉向上を怠ってきた自分たちの政府のせいだということに、そろそろ大多数の韓国国民は気づいてもいい頃だと思っているのですが・・・。

 膨大な対外債務と頼りない外貨流動性の上に立つ現状の韓国経済の命運はユーロ圏の動向次第といってもいいかもしれません。「どうかアジア通貨危機の悪夢が再現することなく、ユーロ金融危機が終息しますように!」はたして韓国当局者のそんな切なる願いが叶いますかどうか・・・。

(「欧州金融危機の拡大におびえる韓国」おわり)

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欧州金融危機の拡大におびえる韓国④

2012-09-19 00:04:52 | アジア

(前回からの続き)

 韓国の外貨準備に話を戻します。

 これまで本稿で書いてきたような外貨建て借金の大きさの割には頼りない通貨防衛力を強化するうえで、昨年の秋、日韓両国の間で交わされた通貨スワップ協定の拡充は韓国にとって有り難かったとみるべきでしょう。

 財務省HPの「日韓通貨スワップの総額700億ドルへの拡充について」(2011年10月19日)によれば、日韓両国は同日、金融市場の安定を目的に、日銀と韓国銀行の間で期間1年(今年10月末まで)の300億ドルの通貨スワップを新たに結びました。これらにより、日韓スワップの総額は、それまでの130億ドルから700億ドルに拡大されています。

 一応は日韓双方がドルを融通し合える体裁をとってはいますが、言うまでもなくわが国には韓国が持つドルに対するニーズはないため、同協定は実質的には日本の韓国に対するウォン救済策といえるでしょう。

 先月の韓国大統領の竹島上陸、さらには天皇陛下に対する戦争責任に関する謝罪要求などを受け、わが国政府内では同協定の期限延長の取り止めが検討されているようです(個人的には同取り止めは当然のことと考えているのですが・・・)。

 これに対して韓国では「通貨スワップ拡充は日本が先に提案した(→日本に同拡充の必要はまったくないので「韓国が先に要請した」[日本政府筋]とみるのが自然でしょう)」とか「スワップ枠縮小でウォン安となって損をするのは国際市場で価格競争力が低下する日本の方だ(→ウォン「安」を通り越してウォン「暴落」となりそうですが、韓国は大丈夫なのでしょうか)」などと、強気な発言や論調が目に付きますが、本音では同取り止めにともなう通貨防衛のセイフティネットの弱体化を大いに心配していることでしょう。現に先月末、韓国の企画財政相は「竹島領有権問題と通貨スワップ期限延長問題は分けて考えるべき」といった趣旨の発言をしていますが、わが国からのサポートが減らされることに対する内心の「あせり」が如実に感じられるコメントですね。

 で、同協定ですが、現行の枠組みがそのまま延長されるかどうかはともかく、個人的には何らかの形で継続されることは確実だろうとみています。

 先に記したように、韓国の外貨流動性は乏しいため、かりにウォン危機が起こったら、韓国はその他の外貨建て資産を売却してドル資金を確保せざるを得なくなります。それらの中にはアメリカの不動産関連の証券類が多く含まれているもようです。したがって、もし韓国がこれらを売り始めると、世界中の投資家の売りまで誘発するおそれが出てきます。そんなことになったら一番困るのはアメリカでしょう。

 同協定に似た構図は欧米間などでも見られます。昨年、FRBはドルのスワップ協定を発表し、欧州を中心とした各国中央銀行を通じてドルを無制限に供給する行動に出ましたが、これも「金融システムの安定」の名目のもと、欧州の金融機関がドルを確保しやすくすることで、彼らが所有するアメリカの不動産担保証券を投げ売りしたりしないですむようにする意図があると推察しています。

 そんな意味で、日韓通貨スワップは、アメリカのドル覇権の一端を支える重要なスキーム。その効力を薄めるようなこと(つまり同拡充期限延長の取り止め)が、はたして現在の日本政府にできるのかどうか・・・。

(続く)

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欧州金融危機の拡大におびえる韓国③

2012-09-17 00:00:20 | アジア

(前回からの続き)

 前回までに書いた外貨の資金繰りに対する懸念に加え、韓国には支払い能力についての懸念も指摘できます

 先月27日、米格付け会社ムーディーズは韓国国債を格上げし、わが国の国債と同格のAa3としました。そして今月6日、フィッチ・レーティングスも同AA-に格上げしています(日本国債の1段階上)。これまた韓国メディアは、2010、2011両年度の財政黒字などを例にあげて韓国の財政健全性などが評価された、などと肯定的に伝えています。

 しかしこれはあくまでも「財政」などの一部指標だけにとらわれた見方に過ぎません。先述したような対外債務の存在や輸出依存度の高さ(50%超[日本は15%前後];それだけ海外の不確実性に左右される)、そして何といっても失業率や家計部門の巨大な借金の存在が見逃されています。韓国の公式の失業率は3.4%(2011年)と世界的には低い方ですが、国際労働機関の基準ではじき直すと潜在的な失業率は約21%に跳ね上がるそうです。

 さらに韓国銀行によれば、2011年末の家計負債は912.9兆ウォン(約67.6兆円)と過去最高を更新しています。韓国のGDP約1237兆ウォン(2011年)の70%をゆうに超える規模です。

 黒字を計上するほど「財政」は健全なのに「家計」は火の車・・・。政府・企業・家計の各部門を合計した国家全体をひとつのバランスシートと見立てたとき、家計・企業部門が潤沢な資産を持つかわりに政府部門が赤字を一手に担っている日本とは真逆の、最も脆弱な家計部門に巨額の債務を背負わせている韓国国家のバランスシートに不健全さと危うさを感じるのは私だけではないでしょう。

 結局は先に書いたような通貨ウォンの危機が発生し、家計の破産急増→金融システムの破綻→金融機関に公的資金投入へ→財政赤字の拡大→さらなる通貨下落・インフレ高進・金利上昇・政府の支払い能力低下(国債格下げ)で韓国経済はますます悪化へ・・・と、まさにいま欧州PIIGS諸国が直面しているのと同じ苦境に落ち込んでいくのではないでしょうか。

 そもそも、もしムーティーズなどの評価が真に的を射たものであれば、通貨ウォンや李大統領の政策に対する国民の支持率がこれほど低迷することはないはずです。実際、同社の韓国国債格上げ発表にも外為市場は反応薄でした(1ドル1130ウォンあたりで大きな変動無し)。

(続く)

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欧州金融危機の拡大におびえる韓国②

2012-09-15 00:02:48 | アジア

(前回からの続き)

 前回、海外勢の韓国に対する全与信残高の約3/4が欧米金融機関によるものであることを指摘しました。

 現状の不透明な世界経済下で、これは韓国にとっては実にコワイ状況といえそうです。この数値が示すとおり、韓国は、欧州ソブリン危機の渦中にあって常にバランスシート縮小を意識せざるを得ない欧米諸国の金融機関の融資に過度に依存しているからです。つまり、もし何かをきっかけに欧米、とりわけイギリス金融機関のマネーが韓国から逃げ出したら、韓国経済はあっという間に危機に瀕する可能性が高いということです。ちなみに個人的にイギリスはこうなっていくと見ています(イギリスの金融機関の動向から目が離せませんね)。

 近いうちに、たとえばギリシャが(事前調整されたものであろうが無秩序であろうが)デフォルトしたりユーロを離脱したりして、世界の金融マーケットで一気にリスク回避の動きが高まることがこの先何度もあるでしょう。かりにギリシャがそのとおりコケてしまったとすると・・・

 ギリシャがデフォルト・ユーロ離脱へ
 →欧米金融機関が資産圧縮へ動き、韓国に対する投融資を一斉に引き揚げ
 →通貨ウォン暴落
 →韓国、通貨防衛のためにウォン買い外貨売り為替介入を実施
 →韓国、外貨枯渇
 →韓国、またもIMFに支援要請(?)

といった流れが容易にイメージできます。まさに1990年代後半のアジア通貨危機の再現です。

 もっともこのあたり、韓国メディアでは、同危機の頃に比べて韓国の外貨準備は増えて通貨防衛力がついているから大丈夫、といった楽観的な報道振りが目立ちます。たしかに7月末時点の韓国の外貨準備高は3100億ドルあまりで世界第7位の規模(韓国中央日報)と、一見すると万全そう・・・。

 しかし日経新聞や韓国銀行(中央銀行)のデータによれば、実際に通貨防衛に使えそうな流動性の高いドル資産はそのうちの30%あまりしかないそうです。多額の資産を持っていたのに、いざというときに換金できる資産が少なかったため、結局は流動性が尽きて破綻したリーマン・ブラザーズの姿とダブります。これで先の例のように急速に拡大する「キャピタル・フライト」のような事態に機敏かつ十分に対処できるかどうか、はなはだ心もとないとみるべきでしょう。

(続く)

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欧州金融危機の拡大におびえる韓国①

2012-09-13 00:02:48 | アジア

 先月10日、韓国の李明博大統領が韓国の歴代大統領として初めて竹島に上陸して以来、日韓両国の対立が激しくなっています。

 よく言われているように、このタイミングで李大統領がこうした行動に出たのは、自らの大統領任期の終盤にあたり、不人気な政策運営や親族のスキャンダルなどで低迷する自身に対する支持率(竹島上陸前までは20%台半ば)を回復させるためのパフォーマンスと解釈するのが適当でしょう。

 そのため、わが国としては李政権を取り巻く厳しい状況を見据え、あまり韓国の過激さに調子を合わせることなく、冷静に対応するほうが無難と考えます。そうしないと、以下に記すような事態に韓国が陥ったときに、完全に自業自得であるにもかかわらず「日本のせいでこうなった!」などと韓国に言われかねませんから・・・。

 ところで、欧州PIIGS諸国を別にすれば、まもなく世界経済を襲うことになりそうな金融危機で真っ先に大きなダメージを受けることになりそうなのが新興国とみています。理由は、以前からここに書いているように、リスクオフ不等式「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」にしたがって、新興国に投融資されている欧米マネーの多くが母国に引き揚げられるためです。すでにインドなどではその傾向が顕著となっており、昨年8月からの1年で通貨ルピーはドルに対して約18%も減価しています。

 とりわけ、他の新興国に比べても最もリスキーな状況に追い込まれていきそうな国こそが韓国でしょう。一見すると好調そうな経済状態とは裏腹に、海外からの膨大な借金を積み上げているからです。

 その根拠は韓国に対する海外金融機関の与信残高などから推察することができます。内閣府・日銀・国際決済銀行などのデータによれば、2011年6月時点のこれら海外勢の韓国に対する同残高は約3000億ドルあまり(1ドル79円換算で約24兆円)。韓国側から見れば、韓国はGDP(約1.1兆ドル[2011年])の約27%にも上る巨額の外貨建て借金を背負っていることになります。

 この与信シェアの上位3カ国(金融機関別)は次のようになっています。

  第1位:イギリス(27.0%)、 第2位:アメリカ(26.2%)、 第3位:日本(11.9%)

 国別ではイギリスの金融機関が1位となっていることが分かります。そしてイギリスを含めた全欧州の金融機関が韓国に対する全与信の約半分のシェアを占めています。さらに2位のアメリカの金融機関の与信残高を合わせると、じつに対韓国の全与信残高の約3/4が欧米金融機関によるものとなります。

(続く)

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どうするべきか資産の運用(今後を読む)⑨

2012-09-11 00:01:33 | 金(ゴールド)

(前回からの続き)

 ということで、マネー雑誌などでよく見かけるポートフォリオとはかなり違う大胆な?私案を提示してみました。このベースとなる指標はリスクオフの不等式「金>円>ドル>ユーロ>新興国通貨」です。

 今後、世界の資産運用のトレンドはますますリスク回避指向を強めるはず。そのためわたしたち日本人のポートフォリオは、引き続き最も安全な通貨「」建ての資産(預貯金)を基本に、金融危機、外貨暴落、およびインフレのヘッジとして(ゴールド)の割合を高めたものにすることがよろしいのではないかと思っています。

 他方、これからは円よりも弱い(対円で減価リスクが高い)外貨および外貨建て資産(株式等)は投資対象としてのリスクが大きそうです。よほど為替トレードに自信があるか、大化けする外国株式を見極める眼力があるのなら別ですが、通常の場合、これらへの過度な投資は敬遠するほうが無難でしょう。

 まもなく(今月12、13日の両日)、米FRBの公開市場委員会(FOMC)が開催され、アメリカの当面の金融政策が決定されます。個人的には「切り札を切るのはまだ先だ」と感じているので今回はQE3(量的緩和第3弾)発動は見送られるとみていますが、遅かれ早かれFRBおよびアメリカはQE3に追い込まれるのはほぼ確実でしょう。なぜなら、多くの人々がアメリカ再生にはこれしかないと感じているだろうからです。つまり「資産バブルよ、もう一度!」。

 このQE3こそはまさに劇薬。ふたたび住宅などの資産価格を上昇させる効力を発揮するかもしれませんが、一方でインフレと制御困難な金利上昇をもたらす懸念があります。私は悲観的に見ています。つまり肝心の資産バブル回復はうまくいかず、その逆に商品インフレなどの副作用が世界経済と市民生活を大きく混乱させるだろうということです。

 そんな個人的な見通しはともかく、いろいろな意味でQE3が大きな節目となるのは間違いなさそうです。次回のアメリカの量的緩和こそが世界金融秩序の大変動の序章となるような気がしています(それよりも前にギリシャがデフォルトするかユーロ圏を離脱していたりしたら第2章ですね)。そのため、わたしたち日本人もFRBのQE3発動を前提とした投資スタンスを今から取っておくことが望ましいと思っています。

(「どうするべきか資産の運用」おわり)

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