世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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戦争なき世界へ

2016-05-29 00:04:55 | 世界共通

 無辜の一般市民に対する原爆投下という神をも畏れぬ残忍な行為―――これを「人類」(mankind / human race)」の所業といった表現を用いながら、けっして自国民すなわちアメリカ人によってなされたものだとは口にしなかった。でも、それ以上は言うまい。大事なのは言葉ではなく、アクションなのだから・・・

 27日のバラク・オバマ米大統領の被爆地・広島訪問そしてその演説を歓迎したいと思います。大統領はその中で「We must have the courage to escape the logic to fear and pursue a world wituout them.(われわれ(核兵器備蓄[nuclear stockpiles]のある国)は恐怖の論理を放棄する勇気を持ち、核兵器なき世界を追求しなければならない)と語っています。

 今回の歴史的なスピーチでもっとも価値があるのはココ、つまり世界一の核兵器大国・アメリカの大統領がヒロシマで、核兵器のない世界作りをめざすと宣言したことだと考えています。誰にも過去を変えられない以上、そのための行動こそが唯一の贖罪になるからです。そしてそれは日本の戦後そのものでもある・・・

 日本は1945年からの71年間、平和憲法のもとで、国家として一人の外国人も殺傷してはいません。そして今日、世界のどこかで使われている銃やミサイルなどの人殺しの道具を、金もうけのために他国に売ってはいません。もちろん核兵器も持ってはいない。理由の如何によらず、殺さない日々、殺しに手を貸さない日々をたんたんと重ねていく―――これこそわたしたち日本人が身をもって示す戦争の償いです。「日本は謝罪せよ!」―――何度となくこう繰り返す国々はいまのこの瞬間、いったい何をしているというのか・・・

 アメリカ、そしてすべての核保有国はオバマ大統領の言葉のとおりに行動しなければならない。日本は、その良き手本であり続ける―――そう確信しています。

(「戦争なき世界へ」おわり)

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【「Jカーブ効果」なんて期待できない】Brexit是非の議論から日本が学ぶべきこと④

2016-05-27 00:04:04 | 日本

前回からの続き)

 先述のように、日銀異次元緩和」(≒円安誘導)が始まったばかりの2013年春からしばらくのあいだ、黒田日銀総裁はしきりに「Jカーブ効果」(自国通貨安によって短期的に貿易収支の赤字が増えるが、その後反転し、貿易収支の黒字が[Jの字を描くように]増えること)を強調し、しばらく貿易収支は悪化するが、やがては円安の後押しを受けて輸出額が増え、同収支が好転することで日本は輸出主導の経済発展を遂げる、みたいな発言を繰り返していました。しかし・・・

 ・・・こちらの記事でも綴ったとおり、そして以下のグラフでも一目瞭然、わが国の輸出も貿易収支も、黒田総裁が力説したJカーブを描いていないことは明白です。その理由はこちらの記事等で詳述したとおりですが、端的にいえば、日本の輸出産業・輸出貿易構造がとっくの昔に為替レートに大きく影響されないものになっているということ。べつに円安になったら急に輸出額が増えるわけでも、逆に円高になったからといって急減するものでもない。ようするにJカーブ効果なんてそもそも期待薄だった・・・

 いっぽうで輸入はそうはいきません。円安誘導を開始したとたんに輸入額は急増することになります。原油・天然ガス・鉄鉱石・小麦などなど・・・ドル建てで取引される輸入原材料の円建て価格は円安になれば即座に跳ね上がりますからね、かくしてわが国の貿易収支はかえって悪化することに・・・。輸出額はほとんど増えず、輸入額が一気に増えれば当然です。これがアベノミクス開始以降の日本の貿易の実態です。

 さすがの黒田総裁も最近はJカーブ効果というワードを口にすることはなくなりましたね~。おそらく「円安誘導は輸出振興に効果なし」―――この当たり前すぎる(?)事実に(ようやく?)お気づきになられたのでしょう(?)。であれば―――輸出という唯一の成長エンジンに力を与えることができないのならば―――いったい何のための円安誘導なのか?と自問していただきたいものです、黒田日銀には。まさか・・・本稿前段で書いた「自国通貨の大幅下落で経済成長率は押し下げられ、輸入インフレが起こって、実質所得も大きく減少へ」という、英国におけるBrexit(EU離脱)是非を巡る議論では国家的な災難と考えられる事態に日本国を意図的に陥れて喜ぶことを目的にしている(?)とは思いたくはないが・・・(って、それでは売〇〇になってしまいますからね)

 とまあ、いつものように脱線気味ですが、EU離脱すべきか否かを問う国民投票が近づく英国発のニュースに接したら、本稿で記したことを思い浮かべていただくのもよろしいかと。「あれ?日本は英国民ならばイヤがるような方向に行こうとしているぞ」ってことに気付くでしょうから・・・

(「Brexit是非の議論から日本が学ぶべきこと」おわり)

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【英国も日本も通貨安の輸出促進効果は小さい】Brexit是非の議論から日本が学ぶべきこと③

2016-05-25 00:02:05 | 日本

前回からの続き)

 ここで通貨安のほとんど唯一のメリットである輸出振興効果について簡単に確認しておきたいと思います。結論から先にいうと、英国日本も、貿易面における通貨安誘導政策のプラス面はそれほど見られず、逆にそのマイナス面がずっと大きく作用して、差し引きでは経済や国民生活への悪影響のほうが大きくなってしまうということになります。

 で、英国の主要輸出品ですが、自動車を含む機械類等34.8%、医薬品等を含む化学製品15.5%、鉱物性燃料(原油等)11%など(出典:JETRO)となっていて・・・うーん、自動車などは通貨安の後押しで輸出拡大効果が期待できるかもしれませんが、Brexit(EU離脱)したらEU諸国への輸出品にいまより高率の関税が課せられるなどのおそれがあり、その恩恵は削がれてしまいそう。さらに・・・そもそも英国には自動車とか電機等の世界的メーカーが存在せず、国家の発展を輸出に賭けるのならばどうしても他国資本に来てもらうしかありませんが、Brexitで対EU貿易の優遇措置を得られないとなると外国企業は英国進出を手控えたり同国から撤退しようとするでしょう・・・

 以上に加え、英国のGDPに占める輸出額の割合は17%程度(2014年)と、いくら輸出促進に力を入れてもそれが同国GDP全体を押し上げる効果は限定的といわざるを得ません。これらのことからも、英国にとって通貨安はメリット少なくリスクばかりが多いという、同国にとっては回避したい状態だし、だからこそポンド急落をもたらしかねないBrexitは選択するべきではないということになるわけです。

 同様のことが輸出額の同割合が15%(同)しかない日本についてもいえます。そのあたりはこちらの記事を含めて本ブログでいろいろ書いているので詳細は省きますが、本稿では「円安誘導しても『Jカーブ効果』なんてほとんど見られない」ことを指摘しておきたいと思います。

 「Jカーブ効果」とは、「自国通貨安によって短期的に貿易収支の赤字が増えるが、その後反転し、貿易収支の黒字が(Jの字を描くように)増える」(Wikipedia)こと。日銀の「異次元緩和」という名の円安誘導政策が始まったばかりの2013年春から夏ころにかけて、黒田総裁はことあるごとにこのJカーブ効果についてしきりに言及し、いまは(原油等の輸入額が増えて)苦しくてもやがては円安の輸出促進効果で貿易黒字が増えて、これが日本経済のプラス成長に大いに寄与する、といった見方を示していたはずですが・・・

続く

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【英国は通貨安を招く選択をすべきではない?】Brexit是非の議論から日本が学ぶべきこと②

2016-05-23 00:01:47 | 日本

前回からの続き)

 自国通貨の大幅下落で経済成長率は押し下げられ、輸入インフレが起こって、実質所得も大きく減少へ・・・。これらは、英国の一大イベント(?)であるEU離脱(Brexit)の是非を問う国民投票日(623日)が迫るなか、EU残留を主張する勢力が英国がBrexitに踏み切った場合の「リスク」として挙げる状況です。「そんなことになったらイヤだろ?だから英国はBrexitしないでEUに留まるべきだ」というのが彼らの訴え。たしかにこれには説得力がありますね。わたしが英国人なら、「そうだね、物価高になるうえに収入が減るのはかなわないもんね、んじゃEU残留に一票!」ですが・・・

 ところが、これらを「リスク」ではなく恩恵とか成果みたいな歓迎すべき事象と捉える政策が前述のとおり、日本の「アベノミクス」(ようするに日銀異次元緩和」による事実上の通貨安誘導政策)です。これってまさに異次元緩和、じゃなかった異次元感覚。なぜって、アベノミクスによって日本は実際に「自国通貨の大幅下落で経済成長率は押し下げられ、輸入インフレが起こって、実質所得も大きく減少へ」と英国人が嫌悪する事態になったというのに、アベノミクス推進者(安倍政権・黒田日銀・経済学会・メディア等のみなさん)はドヤ顔なわけですからね・・・

 ということは、わたしたち日本国民も一緒にドヤ顔?・・・って、まったく逆でしょう。最近ではこちらの記事に綴ったように、アベノミクスは富裕層とそうでない層の格差を意識して(?)広げてきたわけですが、この国では大多数が後者、つまり日々の暮らし向きがアベノミクスでかえって悪くなった人々のはず。でなければわが国のGDPも賃金もこんなに落ち込むはずはない。こうして英国人の上記懸念はまさに日本において実現し、それゆえにわたしたちの日常生活は悪化の一途をたどることに・・・

 したがって英国民には、Brexitなんて選択、すなわち通貨安を招くような選択はしないほうが身のためだよ、と警告したいですね、実際にこれに苦しめられる日本人のひとりとして。そして日本はBrexitを巡る英国の議論から気づくべき―――通貨安政策が自らを窮乏化させるだけの自殺行為に等しいことに・・・

続く

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【EU残留派、Brexitでポンドは20%下落と警告】Brexit是非の議論から日本が学ぶべきこと①

2016-05-21 00:00:28 | 日本

 英国EU(欧州連合)に残留すべきか、それとも離脱(=BrexitBritainExitの造語)するべきかを問う英国民による国民投票の日(623日)が近づいてきました。現時点の各種世論調査を総合的に読むと・・・Brexit派が追い上げてはいるものの、EU残留派のほうが依然として優勢、しかしながら両者の差は数%程度とわずか(?)であり、予断を許さない、といったあたりでしょうか。

 以前、こちらの記事に書いたように個人的には、Brexitする・しないによらず、英国の行く末は明るくはない、と予想しています。そのいっぽう、Brexitに関するさまざまな議論には何かと興味深い面も多いので、その成り行きには関心を持っているところです。で、そんな議論のなかでいまの日本がもっとも注目すべきだと考えるのがコレ―――Brexitによって高い確率で起こるであろう通貨ポンドの下落が英国の今後にとってネガティブとの見方が支配的だということ。

 今年2月、米銀シティグループのエコノミストは、英国がEUから離脱すれば、同国のGDPは2019年までに最大4%押し下げられるとともに、ポンドは最大20%切り下がり、これによって輸入物価が上がってインフレ率が今後数年で3~4%上昇するとの見通しを公表しました。OECD(経済協力開発機構)も先月、Brexitによって同GDPは2020年までに3%程度、やはり押し下げられる可能性を指摘しています。

 これらの結果、英国民のフトコロ具合はどうやら悪化してしまう模様です。LSE(London School of Economics)のレポートによると、Brexitで英国家計1軒当たりの年間所得は8501700ポンドほど減る見込みで、もっとも悲観的なシナリオに基づくとその減少額は6400ポンド(約100万円!)に達するだろう、とのことだそうです・・・

 ・・・さて、そんなジリ貧状態をもたらしかねないBrexitの是非はともかく、ポンドが20%程度も下落、GDPは数%程度押し下げられる、そして家計収入は最悪数千ポンドも減少・・・これらは英国そして同国民にとって望ましいこと、それともその逆、のいずれなのでしょうか?・・・って、常識的には当然、後者つまりネガティブで忌避すべき事態のはずです。収入がガクッと減って喜ぶ人なんて、フツーはいないでしょうからね・・・

 ん? 自国通貨は外貨に対して大幅に減価、GDPはマイナス成長、そして実質賃金は激減・・・英国民が懸念、というか世界の誰もが頭を抱えたくなるようなこうした状況を、こともあろうに意図的に作り出して得意満面(?)になっている稀有な政策があるぞ!・・・って、それこそわが国の「アベノミクスです。

続く

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【アニメ主人公よろしくむりやり小さくさせられている円】ドル暴落!?にいまから備えよ⑥

2016-05-19 00:03:24 | アメリカ

前回からの続き)

 以上、米巨大債務を巡るドナルド・トランプ氏(アメリカの次期大統領選に向けた共和党予備選でトップに立つ実業家)の上記奔放発言について感じることを記していますが、これは以前から本ブログでしばしばご紹介している通貨の強さを表す不等式「(金>)円>ドル>その他通貨」(実質金利の高い順)のことを表現を変えて述べたものです。

 もっともアベノミクス」(≒円安誘導)のいま、わたしたちの通貨「」は人気アニメの主人公のように「毒薬」(黒田日銀の「異次元緩和」?)でむりやり小さくさせられているから、「ドル」みたいなインフレ通貨ですらも大きいように(あたかも価値があるように)錯覚させられているわけだけれど・・・。両者ともに「黒」がかぶっていますしね(前者:黒き[]金融政策、後者:黒〇〇〇の組織)。まあアニメと同じで最後に正義(?)は勝つでしょう、きっと・・・

 ともかくホント、も個人も一刻も早く危険な投資は手仕舞いしたほうが身のためだと思いますよ(個人の場合は自己責任ですが・・・)。トランプ氏が米大統領になっちゃったりしたら、いろいろたいへんですからね・・・?

(「ドル暴落!?にいまから備えよ」おわり)

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【米、QE停止状態&利上げは耐えがたい?】ドル暴落!?にいまから備えよ⑤

2016-05-17 00:04:59 | アメリカ

前回からの続き)

 これまで綴ったように、アメリカFRB(米連邦準備制度理事会:中銀)によるQE(量的緩和策)という名の実質的な「財政ファイナンス」(中央銀行が国債を直接引き受けること)を通じてドルを吐き出し続けるしかありません

 こう書くと・・・「でも実際にFRBは201410月末でそのQEを終了し、すでに利上げに着手して市中からのドル回収に乗り出しているじゃん?」・・・みたいなお尋ねがあるかもしれませんので、私見を述べますと・・・たしかにそのとおりですが、これはアメリカが上述のこと、つまりFRBの通貨印刷に頼らずともドルの価値を維持しながら(インフレ長期金利暴騰を起こすことなく)借金の返済をしてみせる!という精いっぱいの虚勢を張っているのだと解釈しています、こちらの記事等で書いたように・・・(「だから米国外の投資家の皆さん、引き続き米国債を買ってプリーズ!」ということだったりする?)。

 なので、しょせんは見栄(?)である以上、アメリカはいまのこの状態(QE停止&段階的な利上げ)にいつまでも耐えられるわけがない、と超楽観(?)しているわけです。現にFRBは昨年12月、9年半ぶりの利上げに踏み切って以降、わがステイツは(利上げしても)大丈夫だけど中国など世界経済が減速しているからね~、みたいな「他人のせい」的な言い訳(?)をしながら追加利上げに踏み出していないしね・・・

 そんなこんなで、結局はQE再開等でドルの大量放出は不可避、であれば前述のとおり、ドル資産(米国債など)の価値下落もまた必然。したがって(まあ・・・いままでもそうだけど)今後、アメリカの債権者(米国債ホルダー)は評価損&為替差損を食らわないよう最高度で警戒しないと・・・。とりわけアメリカなどと違って、基本的に中銀による国債買い支えの必要がない(借金穴埋め目的のインフレを起こす必要がない;市場原理に委ねていれば財政資金を低金利で調達できる立場にある)国の投資家にそれが強く求められます。いうまでもなくその代表格は日本(あとはスイスとか)。わたしたちにとってドル・米国債はいっそう投資に値しない資産になりつつあるということです。ドルは円に対して減価する一方―――ドルのベースマネーは円以上に勝手に(?)膨張するしかなく、ドルの単位当たりの価値は円のそれに対して下落するしかない―――なわけですからね・・・

続く

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【やはりFRBのQE以外にない】ドル暴落!?にいまから備えよ④

2016-05-15 00:01:39 | アメリカ

前回からの続き)

 総額19兆ドルにも及ぶ巨大な米連邦政府債務の減免を債権者に強いること、あるいはその返済のためにドル紙幣を刷りまくることのいずれも、ドル米国債の暴落と長期金利の暴騰を招く策―――前回までにご紹介した米債務に関するドナルド・トランプ氏(アメリカの次期大統領になるかもしれない共和党筆頭候補の不動産王)が唱えるやり方は、結局は同じ結末―――アメリカの破局をもたらしかねない超危険なものといえそうです。

 とはいっても・・・前回書いたようにアメリカには、現実的には紙幣を印刷して借金を返すという手しか残されていません。まあ財政赤字を少しでも減らすために大増税をするという策も考えられますが、これはいまのアメリカを実質的に支配する一握りの富裕層―――資産・所得の多いトップ1%層への課税を極端に強化することであり、あまりに非現実的。このあたり、民主党の次期大統領候補であり同党指名争いでトップのヒラリー・クリントン氏を急追しているバーニー・サンダース氏がその導入を強く訴えてはいますが、実現することはまずないでしょう・・・(?)

 ということで、トランプ氏が大統領になるかならないかにかかわらずアメリカは、このドルの無限発行策で借金を埋め続けるしかなさそう。でもそんなことをしたら、これまた前述のとおり、米国債価格急落&長期金利急騰でアメリカは逝ってしまう・・・。では、どうしたらよいか・・・って、こちらの記事を含めて何度も書いていることになりますが、結局は「FRB(米連邦準備制度理事会:アメリカの中央銀行)による米国債の買い支え」すなわち量的緩和策(Quantitative EasingQE)以外にあり得ません。なぜならFRBこそは「最後の貸し手」として米国債を無制限に引き受け、そしてドルを唯一、無制限に発行することができる組織だからです。

 QE―――アメリカはこれによって少なくとも長期金利の上昇は食い止めることができます。しかし、ドルがどんどん市中に供給されることから、そのモノやサービスに対する価値は下がり続ける、つまりそれらのドル建ての価格は上がり続けるというインフレ(通貨価値の下落)は不可避となります。足元でドル安トレンドとなっているなかで原油価格がじりじしと上がってきているのは、そのあたりの反映でしょう。

 当然ながらこのドルのインフレはアメリカの債権国が持つドル建て資産の価値下落を意味します。上述のとおりこれは必然の流れ(?)、となればこれらの投資家はこの先、ドルも米国債もできるだけ早く手放さないと大やけどを負うリスクがありそう・・・

続く

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【「借金はドルを刷って返す!」も同じ破局への道】ドル暴落!?にいまから備えよ③

2016-05-13 00:02:31 | アメリカ

前回からの続き)

 米連邦政府の債権者(とくに中国や日本などの米国外の投資家)に対して債務減免を強要するというドナルド・トランプ氏(米次期大統領選に向けた共和党指名争いでトップを走る実業家)の過激な政策は、先述の理由から実際に強行される可能性はきわめて低いでしょう。しかしいっぽうで、アメリカの借金が持続不可能なほどに膨れ上がってしまったという厳しい現実を放っておくわけにもいかず・・・

 ・・・ということに早くも気づいたのか(?)、トランプ氏は先日、CNNとのインタビューで上記とは正反対といえるこんな見方を示しました―――「This is the United States government. First of all, you never have to default because you print the money, I hate to tell you, OK?」(アメリカ政府なのだからデフォルトするなんてことはまずあり得ない。紙幣を刷るだけでOKという話だろ?)―――つまり債権者にはドル札をあらたに刷って渡せばよい、ということです。

 ・・・そう、アメリカにはそれしかない、外国に徳政令を呑ませることができないのならば・・・。どれほど優秀なエコノミストが知恵を絞ったところでトランプ氏のこのシンプルな考え以上に説得力のある策なんて、出てくるわけはありません。そんなことでホント、いつもながらこの御方は何て正直なんだろう、と感心させられることしきりですが・・・

 借金を返せなければ紙幣を刷って返す。これは、100ドルを借りた政府が100ドル(プラス利子)を返すために徴税等によって市中から100ドルを集めようとするのではなく、あらたに100ドル札を印刷してそれを債権者に渡すようなことを意味します。ということはその前後で市中のドル量は100ドルから200ドルへと増加してしまう。経済成長のペース以上にそんなことを繰り返したらモノやサービスに対してマネーが増え過ぎてしまう現象すなわち「インフレ」(=通貨価値の毀損)の発生は不可避です。で、このインフレ、おカネを借りた側にとってはありがたいもの。なぜならインフレが起これば、おカネの価値が借入時点よりも返済時点で下がっているから、その実質的な返済負担が軽くなるからです。

 他方、そんなことをする政府に100ドルを数年間、貸した(当該政府発行の国債を買った)側にとってはどうか、といえば・・・たしかに100ドル(プラス、わずかばかりの利子)は戻っては来るけれど、その間に利回り以上にインフレ率が高く推移すれば、その元利合計の実質価値は元本の100ドルを下回る、なんてことになって損するリスクが高まることになります。したがってもし、トランプ氏が言うような、借金の穴埋めを紙幣印刷で!みたいなことをアメリカが本気で始めたら、同国にカネを貸す余力のある投資家(日本など)は元本割れするようなボロい債券(米国債)なんぞ買おうとしなくなるわけです。そうなればアメリカは資金調達ができずに結局、投資家に対する借金棒引き強要の場合と同じ破局―――ドル・米国債暴落&長期金利急騰―――を迎えることになる・・・

続く

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【債務減免要求でドル&米国債は暴落へ】ドル暴落!?にいまから備えよ②

2016-05-11 00:04:55 | アメリカ

前回からの続き)

 前回ご紹介のとおり、アメリカの次期大統領になるかもしれない(?)共和党のドナルド・トランプ氏はこのほど、総額19兆ドルにのぼる米連邦債務の債権者(creditor)に対して債務減免を迫る(!)という大胆な考えを示しました。

 で、現時点でその枠組みや進め方のイメージははっきりしないものの、同氏の理念「America First」(アメリカ第一)からするとこれをすべての米国債ホルダーに対して公平に適用することはなく、おそらく特定の債権者に対して高い減免率を押し付けてきそう・・・(?)。具体的にはアメリカ人以外の投資家、つまり中国日本などの(アメリカから見た)外国の債権者にだけ借金の棒引きを一方的に求めるのではないか・・・。まあ、さまざまな宗教の信者のうちイスラム教徒に限ってアメリカ入国を禁止するという提案と似たような発想かな?・・・

 ・・・これまた前回書いたように、アメリカは国家債務の約1/3、総額6兆ドルあまりもの巨額マネーを外国から借り入れています。米国民にすればこれらはよその国からの借金だから、トランプ氏などが上手く交渉をしてその返済額が減ることは大歓迎でしょう。

 いっぽう、当然これはアメリカにおカネを貸した側にとっては一大事。それがリターンを生まないばかりか投資元金のカットを強要されてしまいそうだからです。となれば米国外の債権者は、トランプ氏が次期大統領に本当になりそうになったら、我先に虎の子のマネーを回収しようと、所有する米国債を一斉に売り払おうとするに違いありません。その結果マーケットで何が起こるのかといえば、当たり前ですが(外貨、とりわけそしてに対する)ドル、および米国債の暴落、そして・・・長期金利の急上昇です。これらこそ、世界一の借金大国アメリカが中国の軍事力なんぞよりもずーっと恐怖する真の国家的リスクです・・・

 上述のトランプ発言のすぐあと、トランプ陣営の財務担当者が「米連邦政府は債務を支払わなければならない」と述べてこの過激な考えの打ち消そうとしたのは、このように見て来れば必然のリアクションでしょう。こんなことをトランプ氏に言わせたりやらせたりしたら、アメリカ・・・そしてその覇権を支えるドルの信認はたちまち崩壊してしまいますからね。というかそれ以前に、トランプ氏は大統領の座に就くことはないでしょう。なぜなら、おそらくその支持率が高まる過程でじりじりと米長期金利が上がり出し、アメリカ人の多くは同氏を大統領にしたらマズい!ということに気づくでしょうから・・・?

 ということで、次期大統領に誰がなろうが、アメリカによる債権者(おそらくアメリカ以外の投資家)に対する借金棒引きが実行される可能性は現時点では小さい(?)とは予想されます。ただし、トランプ氏にこんな非常識な考えを語らせるほどに米連邦債務が持続不可能であるという冷厳な現実はどうにも変えられません・・・

続く

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