策はひとつしかないはずですが、どのみち、もはや手遅れかと・・・
債務上限問題で揺れるアメリカですが、ご存じのとおり、ジョー・バイデン大統領らと米議会下院の多数派である共和党との間で米連邦政府の債務上限(現在約31.4兆ドル!)の引き上げについて合意に達したもようです。当該内容を織り込んだ法案が31日に採決される見込みとのことですが、これに不満を持つ議員も少なくないようで、上記がすんなり決定されるかどうか要注目、といったあたりが現時点(日本時間29日)の状況でしょうか・・・
・・・とはいえ、同じことを延々と繰り返してきたアメリカに、今回に限って引き上げをしない、つまり債務不履行(デフォルト)する・・・という選択肢はあり得ません。それによって生じることにアメリカ自身が耐えられっこないためです。なので、上記法案が否決されるのではないかなんて心配は一切無用です(?)。それよりも、かの国が「いま」という局面で債務上限を引き上げる(以外にない)ことの意味を考えることのほうが大切でしょう・・・
で、ここで大前提とするべきは、アメリカという国が世界最大かつ永遠の(といっても過言ではないほどの)経常赤字国だということ。つまり・・・かの国はモノやサービスの購入の際に外国に支払ったおカネ(ドル)を外国からつねに借り戻さなくてはならない、ということになります。となれば債務上限の引き上げ決定とは・・・外国からもっと借金をすることに決めた―――外国に米国債(米連邦政府債務)をもっと買ってもらうことにした―――というのと同義です。ではアメリカは具体的に、どの国からおカネをさらに借りようというのでしょうか。結論からいってしまえば、(これまでもそうだったが)とりわけ「いま」は日本からしか考えられない、となります。その理由を以下、わが国以外の国々が「いま」という局面で頼りにならないことを手短に記すことで示してみましょう。
さて、上記からすれば、アメリカをファイナンスできそうな国は・・・サウジアラビアに代表される産油国、そして中国になります。当然ですが左記諸国はしこたまドルを持っているわけですから。しかし実際は・・・これらからのさらなる借り入れはアメリカにとって難しいはず・・・
そのあたり前者は、「いま」の原油価格水準(1バレル70ドル台前半程度)が低すぎて輸出売上がそれほど増えないため、米国債の購買力が高まりません。そして後者の中国ですが・・・たしかに直近の対米貿易黒字額(昨年)は史上最高額(約3830億ドル)を記録するほどにドルを稼いではいるものの、かの国のここ数年の米国債保有トレンド(微減傾向)等から推測できるように、「いま」から先はあまり当てにできないでしょう。中国にはアメリカ・ドル・米国債への過度の依存を回避したいという思いがあるでしょうし、アメリカにおいても、これ以上、中国にモノもマネーも頼るのはアブないと考える向きも少なくないでしょうからね(っても、アメリカに「脱中国」は絶対に不可能でしょうが)・・・
このように、外国からもっと借金することをアメリカは「いま」決めるにもかかわらず、肝心の?産油国&中国が「いま」以降はおカネを期待するほど貸し増してくれそうにありません。かといってこれら以外の欧州その他の諸国の対米ファイナンス力は・・・「いま」から増加する米債務を埋め合わせるには、あまりに小さすぎる、というものです・・・