(前回からの続き)
南米の産油国ベネズエラの政府が今般、自国の原油埋蔵量に裏付けて発行する仮想通貨「ペトロ」(Petro)は、それが同国産石油の交換通貨になり得るという点で、米ドルに取って代わる可能性を持っている―――これは非常に興味深いことと考えています。
本ブログでは以前からドルのことを「石油交換券」(石油引換券)と呼んできました。世間一般ではドルは「基軸通貨」と表現されることが多いですが、これだと何とも抽象的なので、このように表現することで、ドルの本質をもっと分かりやすく伝えようとするものです。そう、ドルとはアメリカの通貨・・・である以上に石油交換券というべきおカネです。
現代社会に欠くべからざる物資の筆頭は何か、といえば・・・やはり「石油」でしょう。これはいまの北朝鮮を見れば明らかです。厳しい経済制裁下にある同国がかろうじて(?)生き永らえていられるのは、中国から重油すなわち石油をわずかながらも供給してもらっている(?)からにほかなりません。もしこの油脈が完全に断たれたら、おそらく同国の命脈も・・・となるわけです。それほど石油は大事だということです。
その石油を買うことができる唯一の通貨が「ドル」です(でした?)。たとえば、サウジアラビアが日本に石油を売る際の決済に使われる通貨は、当事国通貨(円 or レアル)ではなく、第三国アメリカの通貨であるドル。まあ最近はユーロなどのドル以外の通貨が石油代金として受け入れられるケースも多くなりましたが、それでもドルが石油交換券の最高位を保っていることには変わりがありません。
ドルがここに至った経緯等は省略しますが、これが最重要物資である石油にリンクしていることがその価値になっているといっていいでしょう。コレがあれば石油が手に入るし、石油交換券だから他国産の食料品や医薬品などとも交換してもらえる―――といったようなわけでドルは、一国の通貨という枠を超え、産油国、非産油国の違いによらずに各国が進んで持とうと思いたくなる通貨、つまり基軸通貨・準備通貨になりました。
上記ペトロ・・・のような、産油国が自国の原油に紐づけた通貨は、ドルのこうした特権的な地位を脅かすインパクトがあると思います。ドルがその発行国アメリカではない(サウジのような)「よその国」の石油の交換券であるのに対して、ペトロ等はその発行国産の石油にちゃんと裏付けられます。したがって、「よその国」すなわち産油国サイドが(ドル受け入れに替えて)自分自身で石油交換券を発行し始めたら、ドルの価値が低下するのは明らかです。なぜならそうなってしまったらドルはもはや、本質的には石油交換券とはいえなくなってしまうためです。世界屈指の産油国であっても基本的にアメリカは、いくら目の前にドルを積まれても石油を外国に売りませんし、サウジやベネズエラみたいに大量に輸出できるほどのゆとりはないでしょうからね・・・