世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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「リーダー不在」でも「一隅を照らす」精神で輝く日本

2012-04-29 00:00:02 | 日本

 混迷を深めるこの時代、困難を打開する強いリーダーが必要だ、というような意見をあちらこちらで見かけます。

 欧米人の学者や評論家に「日本にはリーダーがいない」と嘆かれたりすることもよくあります。頻繁に交代する首相や、不祥事やトラブルなどでオロオロする企業経営者を例に挙げながら、言葉の裏にわが国のことを揶揄する意識が感じられたりします。

 では、そんな「リーダー不在」の国が、どうして戦後直後の焼け野原から奇跡的な復興をとげ、世界一の純債権国となり、あらゆる産業や文化をリードし続けているのでしょう。

 その最大の原動力となったのが、「プロジェクトX」でいくつも紹介されたような、高い理想を掲げ、私利私欲に走ることなく、さまざまな困難を乗り越えて偉大な業績を残してきた多くの名も無き人々の存在でしょう。

 最澄法師が開いた天台宗の教えに「一隅を照らす」というものがあります。「社会のどこにあっても、自分が置かれたそれぞれの持ち場で全力を尽くす。そうした仕事ぶりを通じて社会に貢献するような生き方をしよう」といったような意味です。

 わが国にはこの「一隅を照らす」の精神がいまも脈々と息づいていると感じます。

 アップル社の共同創始者S・ジョブズ氏のような超カリスマリーダーはいないかもしれないけれど、そんな必要がないくらい、ごく普通の人々が自分の領分でその人なりの能力やリーダーシップを精一杯発揮し、それらが結集して大きなエネルギーとなり、この国を豊かに発展させてきたと思っています。

 人間には誰にも欠点や短所があります。間違いを犯さない人間もいません。そんな人間が特別な存在に祭り上げられている社会や組織は、下手をすると独裁に陥る危険をはらんでいます。

 その点、わが国は幸いなことに(?)「リーダー不在」。民主党の野田佳彦氏が首相になったとき、海外メディアが「Noda? Who?(ノダって誰よ?)」と報じたように、(失礼な言い方でたいへん恐縮ですが、)各界のトップは印象も薄いし何となく頼りなげ(!?)。

 でもそれでいいと思っています。突出したリーダーがいないからこそ、多くの国民がこれからも一隅を照らし続けるでしょうから・・・。

 この5月、東京スカイツリーが開業します。このスカイツリーも、わが国にあまた存在する「一隅を照らす」精神の輝く結晶のひとつです。

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高校生の意識調査結果:海外留学は魅力的?②

2012-04-27 00:01:01 | 日本

(前回からの続き)

 これまで自然科学分野でノーベル賞を受賞した多くの日本人の研究者は欧米諸国などの海外で受賞につながる研究成果を上げてきました。彼らが現役の研究者として活躍した時代、欧米諸国と比べるとわが国の研究環境はまだまだ劣っており、より進んだレベルで研究に打ち込みたいという彼らの思いに対応できていなかったのでしょう。

 しかし最近は日本の大学、企業などの研究施設も充実し、必ずしも欧米等でなければ先進的な研究や実験ができないということはなくなりつつあります

 それどころか、たとえば京都大学のiPS細胞研究所や東北大学の金属材料研究所などは大学の研究機関としてそれぞれの分野で世界最先端の研究所ですし、官庁や民間企業の研究機関・研究所のレベル・施設環境も多くが世界レベルになっています。2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一博士の受賞実績はおもに勤務先の島津製作所の研究施設で成し遂げられました。

 私の知り合いで大手企業の研究所に勤めている方も、「海外の大学や研究機関への留学は考えないの?」と人から問われたとき、「その必要は感じていない。いまの環境で十分な研究ができるから」と答えています。

 先端技術の研究・開発と、それらをベースとしたモノ作りこそ、わが国の生きる道のひとつ。上記のように、それらを志す人々のための教育・研究環境がわが国で着実に整備されてきていることはたいへん喜ばしいことだと思います。産官学の連携に基づき、今後もわが国の自然科学研究環境や技術開発環境がますます充実していくことを期待したいですね。

 要は、どの国の高校生も、(そして何かを学ぼうと希望している人はすべて)自分にとって最もふさわしい環境で自分の学びたいことを学びたいと思っていて、それが国内にあればそこで学べばよいし、国内になくて海外にあるのなら留学すればよい、ということでしょう。

 マスコミが言う「内向き」とか「消極的」といった評価とは違ったところで、海外留学を希望しない日本の高校生の多くは、このような合理的で賢明な判断に基づいてわが国の教育環境のほうを選択しているのかもしれません。

(「高校生の意識調査結果:海外留学は魅力的?」おわり)

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高校生の意識調査結果:海外留学は魅力的?①

2012-04-25 00:00:26 | 日本

 先日、(財)日本青少年研究所などが実施した高校生の意識調査結果で、将来も含めて海外留学したいと考えているわが国の高校生は46.1%で、日米中韓で最も低かったことが分かりました。また「留学したい」理由として「留学先の国の進んだ知識を獲得したい」と答えた割合は日本は28%にとどまり、50~60%に達したアメリカや中国と差が開いたとのことです。

 そして「よりよい教育環境を求めたい」と答えたのは17%で、中国77%、韓国39%、アメリカ36%よりも際立って低く、日本の高校生が留学にメリットをあまり感じていない現状も浮かんでいます。

 さらに、留学先で何を勉強したいか、についても、日本の高校生の50%以上が「語学」をあげているのに対して、米中韓は「語学」は30%未満で、かわりに「芸術系」「工学・理学系」の人気が高いことも分かりました。

 この結果をどうみるか。「日本の高校生は内向き」「チャレンジ精神がない?」といった表現ぶりを見る限り、日本のマスコミ各社はこの結果をネガティブにみているようです。そのため、米中韓、とくに発展著しい(?)中国や韓国の高校生と比べて日本の高校生は消極的で心配、とか、近い将来、これらの国々に人材レベルでも追い越される、などの不安を感じる人も少なくないかもしれません。

 しかし、逆のとらえ方をすれば、わが国の高校生の多くが自分の勉強したいことや獲得したい知識が海外の留学先ではなく自分の国のほうにあると認識している様子も窺えます。

 個人的にはとくに工学・理学分野で留学のメリットが少ないと感じている(つまり国内教育のほうにメリットを感じている)高校生の割合が高いという結果に注目しています。彼ら(彼女ら)が留学ではなくわが国の大学や研究機関を選ぶということは、それだけ日本の研究環境が充実していることを示していると推察されるからです。

(続く)

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「世界長者番付」であまり目立たない日本の幸せ③

2012-04-23 00:00:44 | 日本

(前回からの続き)

 前回、以下の2つの社会を比較し、わが国の社会は「仮想社会B」に近いと書きました。

・仮想社会A:1世帯だけ1兆円もの資産を持ち、残りの99,999世帯は資産ゼロ円のような社会(超絶格差社会)
・仮想社会B:資産1千万円の世帯が10万世帯ある社会(格差ゼロ社会)
(トータルの資産額はどちらも10万世帯合計で1兆円になります)

 よく、日本経済の輸出依存度は高い、といわれることがありますが、実は意外なことに(?)わが国のGDPに占める輸出依存度は15~17%程度で先進国ではアメリカなどに次いで低いほう。わが国は、輸出に過度に依存しなくてもやっていけるくらいの、一定レベルの所得・資産を持った分厚い市民層に支えられた豊かな内需を有していることをこの数字は示していると思います。もっともいまは需要不足でデフレ気味。震災復興など需要を創出する政策等が必要と考えていますが・・・。

 これに対し、中国のGDPに占める輸出依存度は約30%です。あれほどの人口を抱えているのにこれだけ輸出に依存した経済ということは、逆に言えば内需がまだまだ弱い、つまりほとんどの市民の購買力が低いレベルに留まっているということなのでしょう。先日、中国の上位1%層の資産独占ぶりを示しましたが、中国社会は「平等」の理念からはほど遠い、一握りの特権階級や資本家が圧倒的な資産を独り占めするような、まさに「仮想社会A」にかなり近い社会となってしまったようです。

 こうしたたとえで見たように、格差との関係で捉えると、世界長者番付に多数の人々がランクインするような国々の社会は、もしかしたら富裕層以外の一般市民にとっては望ましい社会ではないかもしれません。

 その一方、図抜けた金持ちはそれほど多くはないけれど、まあまあ豊かな世帯が多数を占めるわが国のような社会のほうが、最大多数の最大幸福により近い、ありがたい社会なのかもしれないな、と感じています。

(「「世界長者番付」であまり目立たない日本の幸せ」おわり)

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「世界長者番付」であまり目立たない日本の幸せ②

2012-04-21 00:00:09 | 日本

(前回からの続き)

 このわが国の格差の少なさは、豊かな内需を生み出す経済と良好な社会資本の形成にもつながっていると思います。このあたりについて、次のような2つの社会を想定して検証してみます。

・仮想社会A:1世帯だけ1兆円もの資産を持ち、残りの99,999世帯は資産ゼロ円のような社会(超絶格差社会)
・仮想社会B:資産1千万円の世帯が10万世帯ある社会(格差ゼロ社会)
(トータルの資産額はどちらも10万世帯合計で1兆円になります)

 「仮想社会A」では、世界長者番付にランクインする資産家1人(とその家族だけ)がゴージャスな住居や家具類、何台もの高級車や高価な電化製品、金銀財宝類などに囲まれて豊かな生活を謳歌します。一方で99,999世帯の人々の生活は貧困のどん底。この社会では経済活動をするのはたった一世帯だけだから、売れる車や電化製品などの量はせいぜい数十台程度とたいへん少ないものとなります。残りの世帯は衣食住の最低限の必要を満たすのも難しいくらいで、車なんて高嶺の花。結局、モノの需要が少ないから外国からの輸入品で賄うので地場の産業も育ちません。また一軒の資産家のまわりだけ電気・水道・道路などのインフラを作ればあとはどうでもいい、ということになって、社会資本の整備も行われないでしょう。

 これに対して「仮想社会B」では、世界長者番付にランクインするような極端な金持ちはいないけれど、個々の世帯はそこそこの小金持ち。彼らは贅沢過ぎない範囲内で生活に必要な住宅や車などの耐久消費財等を買い揃えていきます。結局、社会全体では10万台の車や電化製品等が売れることになります。たくさん需要があるからこれらを作って売る企業も育ちます。さらに一定の合意の下で10万世帯のニーズを満たすライフラインが整備されるでしょう。すべての人々の生活に多少のゆとりがあることから芸術や音楽などの文化活動もさかんとなるでしょう。こうして広くさまざまな経済活動が展開され、社会資本の建設も進んで、全体として豊かな社会が形成されます。

 「仮想社会A」に該当するのは、経済規模の割にビリオネアが多い国々や地域でしょう。こうしたところでは、一部のセレブたちのド派手な生活のかげで、大多数の市民が最低限必要なモノすら揃えられず(あるいは価格が安いだけの粗悪品で我慢するしかなく)、不十分な社会資本や社会保障制度のもとでレベルの低い生活を送っています。彼らの生きる社会は産業の厚みもないから雇用機会が乏しく、失業率や犯罪発生率も高く、デモや暴動が頻発する、安全安心からはほど遠い不安定なものとなっています。

 一方、わが国は「仮想社会B」に近いと思います。先に書いたように、日本の資産分布は上位層から階層にいたるまでの格差が比較的緩やかです。電気・ガス・上下水道などのインフラも当たり前のように整えられ、適切に維持管理されています。社会保障制度などのセイフティーネットもおおむね整備されています。さらに、テレビや冷蔵庫(世帯普及率ほぼ100%)、エアコン(同約90%)、ケータイ(同約96%)、PC(同約86%)などの普及率の高さなどから、日本の大多数の世帯はこうしたモノを揃えるだけの購買力と消費力を持っていることが窺えます。

(続く)

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「世界長者番付」であまり目立たない日本の幸せ①

2012-04-19 00:00:40 | 日本

 先月、ビジネス誌フォーブズが2012年の世界長者番付「The World’s Billionaires」を発表しました。それによると、全世界で該当者は1,226人、全員の資産を合計すると4.6兆ドル、国別では、アメリカ425人、ロシア96人、中国95人、ドイツ55人、イギリス37人などとなっています。ちなみにわが国は台湾と同じく24人。番付第1位はメキシコの企業家、第2位はマイクロソフト創設者のビル・ゲイツ氏、第3位は著名な投資家のウォーレン・バッフェト氏などとなっていて、日本人トップはユニクロの柳井社長で全体の88位とのことでした。

 これを見る限り、名目GDP世界第3位(ついこのあいだまでは第2位)の経済大国である割に、わが国の地位には地味(?)な印象があります。わが国には長者番付にランクインする人が少ないし、1人で一国の国家予算並みの資産を持つような飛びぬけた資産家もいないという結果になっています。これをどう見るか。アメリカほどとは言わないけれど、GDPが同等の中国と同数くらいのスーパーリッチがいてもいいかな、とか、長者ランキングのベスト10に1~2人くらいは入ってこないと、といった感想もあるかもしれません。

 個人的には、わが国はこれでいい、と思っています。世界長者番付に登場する人数も、上位にランクされる人数も多い方ではないのにGDP世界第3位ということは、アメリカや中国などと比較すると、わが国は国民の資産配分がより広く緩やかになっているということだと思われるからです。

 アメリカでは上位1%の富裕層がアメリカ全体の約42%もの金融資産を持っているそうです(2007年時点)。また中国も上位1%の家庭が中国全体の41%あまりの資産を保有しているそうです(2010年時点)。資本主義の総本山アメリカと共産党一党独裁が続く中国の上位1%富裕層による資産占有率がたいへん近くて非常に興味深いところです(さらにいうと、中国の資産家の半数は将来はアメリカに移住したいと希望しているそうです。中国の「愛国教育」はうまくいっていないみたいですね)。

 これらに対して、わが国の資産分布(2008年)は最上位8%が25%の資産を、中位44%が52%の資産を、中下位48%が22%の資産をそれぞれ保有するかたちとなっており、アメリカ・中国の両国と比べると資産格差が穏やかになっていることが分かります。ウォール街占拠運動のようなデモ活動や暴動等がアメリカやイギリス、中国などで多発する中で、わが国ではこうした動きが少ないのは、社会不安を招くほどの大きな資産・所得の格差がそれほどみられないためということもできるかもしれません。

(続く)

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マネーの「バラマキ」のし過ぎが招く「悪いインフレ」②

2012-04-17 00:02:45 | 世界共通

(前回からの続き)

 それでは「良いインフレ」、つまり収入増をともなう物価上昇はどうしたら起きるのか。これはやはり景気が本来の回復のサイクルに入った結果として生じる現象でしょう。つまり、景気が徐々に回復→企業の設備投資が増加→企業収益が増加→企業従業員の収入が増加→消費が増加→モノやサービスに対する需要が増加→物価が上昇、ということです。

 こうしたプロセスでは、物価が上昇しても、市民の所得も増えるので、生活レベルが落ちたりすることにはなりません。その一方で、「悪いインフレ」と比べると、この「良いインフレ」の発生には時間がかかりそうです。つまり、「悪いインフレ」は中央銀行が金融緩和を宣言すればすぐにでも発生するのに、「良いインフレ」はこの景気拡大の循環が始まってからかなり経たないと起きてこないと予想されるということです。

 ではこの循環を起こすための起爆剤は何か。さらなる金融緩和では難しいでしょう。前にも書いたように、市場が「流動性のワナ」と呼ばれる状態にあるからです。日米欧経済ともにすでに十分な低金利状態にあるなかで、新規の低利マネーを市場に供給しても景気刺激効果はほとんど無いと考えられます。

 ということは、やはり需要喚起でしょう。つまり、新たな需要を起こして景気を活性化し、市民の収入を増やしながら物価の緩やかな上昇を図るのです。もっとも現在、世界経済に不透明感が漂っていることなどから、民間側にはなかなか需要がありません。したがってここは政府の出番、つまり政府が公共事業等を行って需要を創出する財政政策が有効になってくると思います。

 このあたりは先日の書き込み「2012年度予想「外貨動揺・円独歩高」でどうする日本」で書いたので詳細は省きますが、欧米諸国と違って、外国の資金に頼ったり金利上昇を招くことなく資金調達が可能なわが国は、現在、この財政政策を効果的に実施できる立場にあります。このアドバンテージを積極的に活用して景気を本格的に回復させ、国民所得の向上を図る、というのが政府に求められる政策の方向性と考えています。

 現在は、そしてこれからは、ますます金融政策の効果が薄れ、逆にそのデメリット「悪いインフレ」がどんどん表面化してくるものと予想しています。そのネガティブな影響を最小限に止め、かつ震災復興などを着実に進めながら景気回復を進めるためには、タブー(財政出動など)を恐れない大胆な発想に立った政策の立案・実行が必要となるでしょう。

 それほど、やがてやってくる海外発の「世界恐慌」のインパクトは強烈なはずです。

(「マネーの「バラマキ」のし過ぎが招く「悪いインフレ」」おわり)

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マネーの「バラマキ」のし過ぎが招く「悪いインフレ」①

2012-04-15 00:00:50 | 世界共通

 よく言われることですが、インフレには「良いインフレ」「悪いインフレ」があると思います。個人的には、この両者の違いは「収入の増加がともなうか否か」という点にあると考えています。良いインフレのときは物価上昇と同じくらい、あるいはそれを上回る賃金や給料の伸びがあり、一方で悪いインフレのときは賃金や給料が増えないのに、あるいは減ってきているのに物価だけが上がっていく、ということです(だから単純に「日本はデフレだからインフレを起こすべきだ」という議論は、この良し悪しの区分がしっかりされていないので注意すべき、と思います)。

 いま、世界中でこの「悪いインフレ」が急速に広がりつつあるように感じられます。その原因は何といっても「金融緩和」でしょう。金融不安に対処するため、欧米諸国の中央銀行によって大量に増刷されたマネーが資源・商品市場に流れ込み、石油や小麦などの原材料・食糧価格を高騰させています。

 さらにこの2月、わが国では、この欧米諸国の金融緩和に追随(?)し、日銀金融緩和の強化を発表しました。それ以降急速に進んだ円安・ドル高が、高止まりしている資源の円建て価格をさらに押し上げたため、製造・運輸などのコストがいっそう増大し、日本企業の収益構造を圧迫しています。

 実際、3月の日銀短観は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業で2期連続でマイナス4と、当初の大方の市場予想を下回りました。欧州不安の落ち着き、円高修正、復興需要などのプラス材料があるなかでマイナスとなった最大の原因は、この資源価格の急上昇が引き起こしたコスト増です。

 このように、金融緩和によるマネーの「バラマキ」は、あっという間に資源等のインフレを引き起こし、景気にコスト増というマイナスの影響を与えます。一方で金融緩和には企業収益や従業員の給料を短期間で増額させる効果が乏しいため、足元の情勢としては、物価だけが上がって収入は増えない、という、上記の「悪いインフレ」がもたらされてしまいます。

 ここで「日銀短観結果が良くなかったからもっと景気へのテコ入れをしよう」とばかりにいっそうの金融緩和をしてしまうと、おそらく円安・ドル高がさらに進んでガソリンなどの円建て価格がさらに上昇し、この「悪いインフレ」がますます激化するおそれがあります(他方、輸出企業の株価の上昇は期待できそうですが・・・)。

 したがって、さらなる金融緩和には十分に慎重であるべきでしょう。

(続く)

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善戦する国産みかん「身土不二」

2012-04-13 00:02:58 | 日本

 冬から早春にかけての代表的な果物は「みかん」ですが、春本番を迎え、スーパーの果物コーナーに多く見られた国産のみかんは徐々に姿を消しています。代わって外国産のオレンジやグレープフルーツが並ぶようになりました。

 これら外国産のオレンジ類は、国産の果物の端境期に店頭に並ぶことが多いようです。価格も国産のみかんと比べると少し安いし、色つやもよく、一見、とてもおいしそうに見えます。

 ところが意外(?)なことに、これらのオレンジ類はいつも山盛り状態。となりに置いてある国産のイチゴなどと比べても、どうもそれほど売れ行きはよくない様子です。閉店間際のスーパーでは、他の果物がほとんど売り切れている中で、売れ残っているオレンジ色のコーナーがやけに目立っている印象です。

 おそらくその原因は「防かび剤使用(このオレンジにはかび防止剤○○が使用されています)」の立て札でしょう。これが消費者の警戒心を喚起し、外国産のオレンジ類を敬遠させているものと思われます。

 わが国の消費者は(おそらく世界一)「安全安心」にこだわります。安くても「食の安全」が保障されない商品はなかなか選ばれません。だから多少値段が高い場合でも安全な国産のみかん類が選ばれるのでしょう。もっとも、みかん類に限れば価格差はそれほど感じませんが。

 1991年のオレンジ類輸入自由化の開始以来、みかん栽培農家の皆さんのご苦労にはたいへんなものがあったと思います。為替の円高もあってオレンジ類の輸入が急増し、みかん栽培は危機に陥りましたが、各産地では生産調整、品質の向上、価格が高い種への切り替え等で対応されてきたそうです。

 また多くの品種が開発され、市場に投入されてきました。温州みかんや甘夏といった以前からの品種に加え、最近ではデコポン(上の写真)、はるみ、清見オレンジなどが店先に並び、多彩な味のバリエーションがわたしたち消費者を楽しませてくれます。近年では輸出拡大も試みられており、安全で味の良い日本のみかん類としてシンガポールや台湾などで人気を集めているそうです。
 
 こうしてみると、とても厳しい状況のなかで、わが国のみかん栽培はたいへん健闘していることが分かります。価格面ばかりでなく、安全面や品質面の要求が高いわが国の消費者ニーズにも上手に対応していると思います。

 今後、TPP加入などを通じて農産物のさらなる輸入自由化が進められる可能性がありますが、上記のみかんをめぐる状況をみても、生産者や農業関連産業等の創意工夫や消費者の賢明な判断があれば、わが国の農業はこれからも付加価値の高い産業であり続けると信じています。個人的にも、安全でおいしいわが国の農産物を優先して選んでいきたいと思っています。

 「身土不二」という考え方があります。もともとは仏典の言葉ですが、明治以降はおもに有機農業の分野で「地元の食品が体によい」という意味で使われているそうです(最近では「地産地消」と同義で使われることも多いそうです)。またスピリチュアルな世界にも、自分の住む土地で採れた農産物は自分の身体と波動が合うので心身の健康によい、という解釈があるようです。

 この「身土不二」に共感する多くの消費者に国産の農作物が選択されることで、わが国の農業がますます発展し、わが国の「食の安全」が維持・強化されることを期待したいですね。

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「執行猶予2年」税率引き上げの時期が重要な消費税増税

2012-04-11 00:02:08 | 日本

 3月30日、消費税増税関連法案が閣議決定されました。

 それによれば、現行5%の消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げることになっています。一方、経済状況の激変に柔軟に対応するため、引き上げ前に経済成長率や物価動向などの経済指標を総合的に判断したうえで、増税を停止できる条項(附則第18条)も盛り込まれています

 消費税増税については賛成・反対それぞれの立場で議論百出ですが、私は個人的に、この消費税率アップのタイミングが決定的に重要と考えています。

 というのも、これまでもここに書いてきたように、近いうちに、わが国(そして世界)はまさにその「経済状況の激変」に直面する可能性が高いとみているからです。つまり、ドルやユーロなどのマネー過剰散布がもたらす激しいインフレ、欧米諸国(および新興国)の金融不安や世界的なリセッション、それらを受けた一段の外貨安/円高といった事態に、近々、わが国は最優先の対処を余儀なくされるだろうから、消費税増税の開始時期には十分な配慮が必要だ、ということです。

 このような情勢下では、世界経済が「恐慌」に近い状態に陥るとともに円高が進むと想定されるため、わが国経済としては外需に期待をよせることが難しくなります。かわって大きな頼りとなるのが、震災復興需要を含む内需でしょう。

 ところが、こうしたタイミングで消費税率が上がる(あるいは、上がっていた)となると、内需の根幹を占める「消費」に冷や水を浴びせてしまいます。結局、外需に加えて内需も落ち込んでしまい、諸外国と同様、わが国も厳しい景気後退に見舞われることになるでしょう。こうじた状況は何としても避けなければなりません

 ところで、この法案によれば、税率の引き上げは2014年4月です。消費者の立場で前向きに見ればあと2年も先です(個人的には3年、つまりFRBのゼロ金利政策が継続される予定の2014年終盤くらいまで税率を現行の5%に据え置いてほしいと思っていますが・・・)。この2年のうちに(早ければ今年2012年のうちに)、かなり高い確率で上記のような世界的リセッション(ほとんど世界恐慌!?)という「激変」が起こるでしょう。そうなれば、幸か不幸か、消費税アップの時期が先送りされることになるかもしれません。

 しかし、わが国は、このような激変に対応するため、消費税率引き上げを停止して消費減退を防ぐとともに、公共事業の積み増しなどの内需振興策を積極的に実行すれば、深刻なリセッション入りは避けることができると予想しています。

 そして消費税増税はそうした政策等で景気が持ち直してからでよいだろうと考えています。まずは「激変」への適切な対処が第一で消費税増税はその後、ということです。

 ある意味で、この消費税率引き上げの「執行猶予2年」はたいへん微妙です。この2~3年間は、リセッションに苦しむ世界経済が、わが国の内需に数少ない希望を見出す期間になりそうな予感がしています。

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