世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【英銀本拠地移転が示唆する問題点】米欧中の銀行救済に巻き込まれぬために①

2015-04-29 00:02:18 | 世界共通

 ブルームバーグ等の報道によれば現在、英銀最大手のHSBCホールディングスが本拠地を現在のロンドンから英国外へ移すことを検討しているそうです。同行は利益の多くをアジア関連の業務から得ていることなどから、1993年まで拠点としていた香港を含むアジアのどこかに戻ることを考えているらしいのですが・・・

 で、このHSBCの動きは英国政府の課税強化を嫌気した株主の提案を受けてのもの。同国当局は今年、銀行税の通算8度目の税率引き上げを実施しています。この税金は銀行のバランスシートに課税するものなので、資産規模が大きなHSBCにとってはそれだけ支払額が増えることになります。そこで、英国よりも納税負担の少ない場所に移転して株主利益を守ることにしよう、ということになったとのこと。

 英国の銀行が本拠を他国へ移す―――それだけでは大したニュースに聞こえないかもしれませんが、個人的にはこれは現在の世界金融システムにおける深刻な問題の表れのひとつだと思っています。それはこれらの銀行、つまりグローバルに業務展開する大銀行(≒「大きすぎてつぶせない(Too Big To Fail:TBTF)銀行」)―――の監督とかサポートを誰がするのかがますます不明確になっている、ということ。この点のあいまいさは今後、危険な状況を引き起こす可能性があると心配しているわけです。

 本ブログであれこれ綴っているように、日米欧中の主要中銀の緩和的な金融政策によって、いま世界各地で巨大な資産バブルが発生しています。歴史を振り返れば分かるとおり、いずれこのバブルは崩壊し、激しい資産デフレが市場を襲うでしょう。そして同時に起こるのが金融システムの機能不全です。多くの銀行が不良債権を抱えて過小資本状態、ひどい場合は債務超過に陥って破綻に瀕します。このとき何もしなければ経済恐慌は不可避に・・・。

 で、本来ならばここで政府が登場し、議会や納税者の了承を得て大量の財政資金を銀行に注入します。一方で救い難い銀行の倒産は容認して株主責任を取らせ、ペイオフを実施して預金者保護を行います。これらの施策を通じて金融システムの信用維持とリセッションの深刻化防止を図ります。このあたりは不動産バブル清算の最終局面で日本が実施してきたことで、当たり前ですがその救済等の対象になったのは邦銀だったわけです・・・

 では、同じ事態が外国のTBTFに降りかかった場合、どうなるか? もちろんロンドンに本店のある英銀のどこかが経営危機に直面したときは英当局やイングランド銀行(中銀)等が自然と上記の対処をするでしょう(うまくいくかどうかは別問題!)。でも・・・顧客の多くが英国人なのに本店を英国外に置く銀行が破綻しそうになったら、いったいどこが必要かつ責任のあるアクションを起こすのでしょうか・・・?

(続く)

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【米中そして欧州の3者共倒れで浮上する「円」】中国は世界金融の覇者にはなれない⑨

2015-04-27 00:02:32 | アジア

(前回からの続き)

 さて日本は・・・繰り返しになりますが、ここはアメリカに同調してもよろしいかと考えています。つまりわが国は、アメリカとともに中国に対して人民元取引の自由化を進めるよう要求するべきだ、ということ。そして同時に、欧州やイギリスとも連帯して、自由化されないのであれば人民元のSDR構成通貨入りは認められないと主張するべきでしょう。「外面」は良さげに見えて「内面」は???みたいな怪しい「張子の虎」のままでは人民元はハードカレンシーとしての要件を満たすとはいえないからです。

 まあこの先、中国とアメリカの金融覇権を巡る駆け引きは激しさを増していきそうですが、わが国はけっこう余裕ですね。本来なら・・・中国に対してはアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加をにおわせつつ、人民元取引の自由化ではアメリカの肩を持ちながら、米中の争いを文字通り「(円)高みの見物」することができるのですが・・・(どちらが勝ってもコケても、「円>ドル>人民元」か「円>人民元>ドル」で、どのみち円の優位は揺るがない[米中と違って通貨危機は起きない]、という意味)。でも円高ドル安(人民元安)になってエネルギーコストが下がって企業も家計もホッとできるのに安倍政権・日銀周辺は「リスクだリスクだたいへんだ!」なんて大騒ぎするんだろうな・・・

 と書きながら気づいたのですが、「円」以外の現在のSDR構成3通貨―――ドルユーロ英ポンドってどれも人民元と同様の「インフレ通貨」。しかも、それぞれの事情で今後も(爆発的に?)増刷されそうな気配に満ち満ちています。ということは上記を口実に人民元を国際通貨の仲間に入れないという理屈は成り立たないのかもしれない、と思いつつ、いかにいまの世界の通貨体制が危機(資産デフレ絶対阻止→ひたすら金融緩和→激しいインフレ発生リスク)に瀕しているか、ということを実感します。その根本原因は通貨の不換性、つまりいまのおカネが(ゴールド)などの実物資産に裏付けさせていない紙切れだということ。だからいくらでも借金できて、その穴埋めのために乱発されて、あげくのはてに信認を失っていくわけで・・・。人民元どころか、ドルもユーロも英ポンドも・・・。

 そのなかで、相対的な規律と信認を保った国際通貨は、世界一の純債権国・日本の「」くらいなのではないでしょうか(あとはスイスフランくらいか)。したがって、新しい世界の金融秩序をリードすることができる国は、アメリカでもましてや中国でもなく、わが日本国だと半分本気で思っています。もちろんアベノミクスはこれに逆行する政策、というよりはパクス・アメリカーナ(ドル覇権)を延命させるための政策といえそうですが、はたしてどこまで保つのか・・・。かといって中国の天下は来そうにないし、欧州はたそがれる一方・・・。

 で結局、米欧中3者は「共倒れ」となり、世界のマネーは金(ゴールド)へ、そして「円>ドル>ユーロ>人民元???」の序列にしたがって日本をめざす・・・というのが年初、こちらに書いたわたしの近未来予想なのですが・・・

(「中国は世界金融の覇者にはなれない」おわり)

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【米には諸刃の剣?の人民元自由化要求】中国は世界金融の覇者にはなれない⑧

2015-04-25 00:03:35 | アジア

(前回からの続き)

 ということでこの先、中国が世界金融分野で目立った振る舞いをすればするほど、アメリカの中国に対する「金融開国」要求、ようするに人民元取引の自由化要求はいっそう強まっていくでしょう。それには先述のとおり、中国のこれ以上の台頭を抑制するねらいのほか、中国内に留め置かれているチャイナマネーを取り込んでドル・米国債投資に誘導しようという、世界一の借金国アメリカにとって最重要の国家戦略的意味合いがあると考えているからです。

 一方、中国にとって拙速な上記自由化は急激な資本流出を招くおそれが高く、「シャドーバンキング」関連の事業体の多くを資金調達難とか金利負担増に直面させ、デフォルト寸前に追い込みかねません。しかし上述のように、これが引き起こす混乱、さらには共産党支配体制の動揺を恐れる中央政府はデフォルトを放置できないでしょう。結局その都度、債務返済用のおカネを地方等に融通するために市中では過剰流動性=ハイパーインフレが発生して中国経済も一党独裁システムも崩壊し、特権階級は海外へ逃亡(?)・・・となりかねないので、中国はアメリカの上記開国要求にすんなり応じるわけにはいかないはず。

 このアメリカと中国の人民元自由化を巡る駆け引きはますます激しさを増していきそうです。先日は中国が、自ら主導するアジアインフラ投資銀行AIIB)の融資と決済に利用できる通貨として人民元を加えるよう参加各国に働きかける、なんてニュースが流れました。実現するかどうかは別にしても、これが人民元の「外面」を良く見せるとともに、アジアにおけるドル(そして米と並んでAIIB不参加の日本の!)の存在感を薄める取り組みになるのは間違いありません。アメリカは心中穏やかではないでしょう。

 そこで同国としては中国に対して自由化要求をさらに強めたいはずです。AIIBの融資通貨に認められるなど人民元の「外面」が良くなることは逆にいえば「内面」の悪さとの違いが拡がることでもあり、それだけ自由化がもたらす内外差の調整にともなうリスクは大きくなりますから、アメリカとしては突き入る隙がありそうです。

 で、その攻め方ですが・・・米銀の中国内店舗網のいっそうの展開推進と業務範囲の拡大を中国に認めさせる、といった「アリの一穴」のような小さなアプローチを積み重ね、最終的に「ダムの決壊」(大規模な資本流出)を促して中国を仕留める(?)、みたいな・・・。このへん、日本市場では敗れたシティグル―プあたりが中国戦線では先兵としてドル預金集めに活躍してくれるかも(!?) まあアメリカにとってはいまがチャンスでしょう。なにせ相手はシャドーバンキング問題で揺れているし、中国人投資家も人民元建て資産に疑念を抱いているから・・・。

 他方でアメリカも策に溺れぬよう十分に気を付けないといけません。万一、上記の資本流出が起こったら、中国当局は人民元を買い支えようと巨額のドル準備を売却するかもしれず、そうなればアメリカ様もただでは済まない―――それどころか、返り討ちで(?)大やけど(長期金利急騰!)しちゃいますからね・・・。

(続く)

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【自由化でチャイナマネーはドルを買い支える】中国は世界金融の覇者にはなれない⑦

2015-04-23 00:04:14 | アジア

(前回からの続き)

 先述のように「外」と「内」の評価がまったく異なる中国の通貨・人民元は、ドルや円などの他国の通貨に対する正確な市場価値が分からないうえ、国内デフォルトへの大甘な対応など、当局の通貨管理が恣意的で不透明なことなどから、とても国際通貨としての資質や信頼性を備えているとは思えません肝心の通貨がコレでは・・・中国が世界金融の覇権を握るのは難しそう。それどころか人民元には国際通貨基金の特別引き出し権(Special Drawing Right:SDR)の構成通貨になる資格すらないといえるでしょう。やはりアメリカが主張するように、中国は第一に、早急に人民元をドル等と同じく誰もが自由に売買できる通貨にするべきだと・・・。

 ところで、アメリカが中国に対して執拗に人民元取引の自由化を求めるねらいは大きく分けて2つあると考えています。1つ目は、それによって人民元のマネー力をそぎ、引き続きドルの基軸通貨体制の安泰を図ろうというもの。おそらくアメリカも人民元がドル以上にインフレ通貨であることを見抜いており、自由化されれば「内」の悪い要素が「外」の良さを消すかたちで人民元は弱くなる―――そのマーケット価格と信認はドルに対して下がるから、中国の金融面での台頭を抑え込むことができると読んでいるのでしょう。

 そして2つ目は、自由化を通じ、中国内の人々にドル買いを促して自国をファイナンスさせようということです。上記のとおり、中国人民はこれまでの「金融鎖国」のもと、資産運用面では事実上、人民元建てのものしか選択できませんでした。自由化が今後進めば、それらよりも安全(?)で実質の利回りが良いドル資産がチョイスできるようになり、多くの人々は喜んで元を捨て、ドルのもとへ走るでしょう。これはアメリカにとってはチャイナマネー取り込みによるドル・米国債の買い支えを意味するわけで・・・。

 世界最大、そして万年(!?)経常赤字国のアメリカは外国のおカネを常時、大量に借りないと国が保てません。したがってこれらをいかに好条件(借入時は相手国通貨安・ドル高、返済時は同通貨高・ドル安)で確保するかが最優先の国家戦略になっているはず・・・。

 で、これまでそのターゲットになってきたのは、いうまでもなく日本・・・の、たとえば郵便貯金。かつてアメリカは日本に郵政民営化をさせることで、日本国債に張り付いていた郵貯マネーをドル投資に誘導しようとしました。しかし経常黒字国・日本「円」とアメリカ「ドル」の実質利回り差「円>ドル」の壁は分厚く、円→ドルへのマネーシフトは起こらず、アメリカの目論見どおりにはなっていない感じです。

 昨年こちらの記事に書いた米銀シティグループも同じこと。彼らも「円>ドル」のハードルを越えられず、ドル預金等のノルマ獲得に苦戦し、あせったあげく不適切行為を連発して当局と顧客の信頼を失い、すごすごとわが国(個人向け業務)から去っていきました・・・。

 といったように、ここまでのところジャパンマネーのドル誘導には手こずったアメリカですが、相手が中国ならば勝算は十分でしょう。なぜなら、かの国の通貨・人民元とドルの間には「ドル>人民元」の関係が成り立つ、つまり上記のように、壁さえ崩せば―――国内外の取引を自由化しさえすれば―――チャイナマネーは自然とドルに流入すると予想されるからです(ちなみに・・・アベノミクス≒円安誘導がもっと進めば、今後はひょっとして円→ドルが起こってしまうかも・・・[あ、悪夢!?])

(続く)

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【外見と内面が全く違う人民元の異様】中国は世界金融の覇者にはなれない⑥

2015-04-21 00:01:18 | アジア

(前回からの続き)

 それにしても人民元は異様な通貨だと思います。「外」からみると・・・貿易黒字額(2013年:約3600億ドル)、外貨準備高(同:約3.85兆ドル)のいずれも世界一の中国の通貨だから当然、強含みな印象を受けます。当局の介入等により現在こそ実質的なドルペッグになっていますが、これがなければドルや円などの外貨に対してかなりの程度、切り上がっていくように思えます。

 その一方「内」からみると・・・人民元は爆発的に(?)増刷され、外貨に対して大きく切り下がりそうな気配を感じます。今後、地方政府等が借金返済に行き詰まった場合、そのデフォルトが引き起こす混乱や体制動揺を恐れる中央政府が地方に代わって債務保証をするようなケースが頻発するとみているからです。で、その際の資金は、ドル債を売却するなどして市中から調達されたものではなく、中国人民銀行(中央銀行)がコッソリ刷った(?)資産の裏付けのないおカネになるような気が・・・。そんなことが繰り返されていくうちに中国内ではインフレがひどくなり、通貨の価値が低下していくことに・・・。

 中国の会計検査院の検査によると、2013年6月時点の全政府債務30兆元あまりのうち、地方政府分は約18兆元(1ドル6元として約3兆ドル・・・)となっています。さすがにこのすべての弁済を中央政府がする羽目に陥ることはないでしょうが、中国各地に点在する「鬼城」(ゴーストタウン:地方政府等が多額資金を投入して開発したものの失敗に終わったプロジェクトの廃墟)の惨状を眺めていると、この先、これらのかなりの部分を「匿名筋」という名の当局由来のマネーが肩代わりするのだろうな~と予感せざるを得ません。

 19日には中国人民銀行が預金準備率を1%引き下げました。ということは・・・その1%分に相当するマネーが、より利回りの大きな地方政府の債券等に流れることを中央当局は期待しているのでしょう。まあ地方は資金調達が楽になりそうですが、一方でこれは怪しいプロジェクト乱立など、地方等のバブル膨張リスクとそのデフォルトリスクをますます高めることにつながるわけで・・・。その分、国内には人民元紙幣が溢れ返って・・・

 外面(そとづら)と内面(うちづら)がまったく違う―――まるでどこかの〇〇みたいな(?)人民元のこうした異常性を象徴するのはやはり中国における「ゴールド)」人気でしょう。香港政府統計局のデータによれば、2013年の中国の金の輸入量(香港経由)は1158トンと前年比で2倍以上に増加したそうです。香港経由1年分だけで日本の金準備(約765トン)を軽く上回る量だから、他ルート輸入分とか自国産出分を合算した中国全体の金の増分はいったいどれくらいなのか(中国は金輸入の公式データを明らかにしていない)・・・? とにかく、この瞬間も中国内で金塊が着々と積み上がっているのは間違いのないところ・・・。

 で、もし通貨が信頼性を保っているのなら、その発行国の国民は何も資産を金で持たなくてもいいはず。その通貨建ての預貯金をしておけば実質金利(=名目金利―インフレ率)はプラスとなり、利息を生まない金よりも資産形成上、有利だからです。このあたりはサブプライム・ローン・バブル崩壊~アベノミクス開始直前期の日本がその典型例です(この間、世界の趨勢に反して日本人の多くは金を売ってキャッシュ[円]に換えた)。さらにいえば、上記のように人民元は世界一の貿易黒字国&外貨準備国の通貨ですから、放っておいても(キャッシュでも)その実質価値の増え方の速さは世界一かもしれない・・・。

 それでも人々は人民元を金に交換しようと今日も金の購入窓口に並んでいるわけです。つまりそういうこと―――外見の良さとは裏腹に、人民元がボロい通貨=(超?)インフレ通貨だということを皆、よく知っているということなのでしょう。人民元は当てにできない、だから彼ら彼女らはインフレに強い資産No.1の金を選好する―――これこそ人民元に一番近いところにいる中国人の正直な「人民元」観の反映だと思っています。

(続く)

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【デフォルト非容認→ハイパーインフレへ!?】中国は世界金融の覇者にはなれない⑤

2015-04-19 00:04:02 | アジア

(前回からの続き)

 経済成長ペースが緩み、不動産市況が不透明ななか、中国では今後、「理財商品」がらみの債券の払い戻しに窮した地方政府傘下の「融資平台」や事業会社の多くがデフォルトに追い込まれるかもしれません。それでも本来なら―――通貨管理をマジメにする気なら―――当局はこれらのデフォルトを放任するべきでしょう。それにともなう痛みを市場全体で受け入れることと引き換えに中国は通貨の信認を保つことができるからです。

 しかし・・・どうやらそうはならない感じです。先日のトムソン・ロイターの報道によると中国は今月はじめ、全国社会保障基金(NSSF:中国最大の年金基金)の投資対象に地方政府債を加える方針を示したとのこと。で、これが意味するところは、中国当局は地方政府債のデフォルトを容認しない―――もしデフォルトしたらNSSFが預かっている勤労者の年金原資が吹き飛ぶからだ、というのです。

 こうした見方からか、金融市場では中国ソブリン債と地方政府債の利回り差―――中央と地方の両者の支払い能力の評価差がほとんどなくなっているそうです(5年物ソブリン債[年利3.5%]との差はわずか10bpとのこと)。つまりそれは・・・表向き「地方政府債の償還責任は地方が負うべし!」なんて中央政府は突き放したような言い方をしているけれど、実際は地方がデフォルトしそうになったら、それにともなう混乱発生→共産党体制動揺に耐えられるわけがないので(?)、中央は代わりにその借金返済に応じるのだろう、と投資家が楽観(?)しているということ・・・。

 といったわけで、中国でシャドーバンキング問題がますます深刻化してデフォルトの嵐が起こる、なんて心配は無用なのかもしれません。なぜなら、たとえどこかの融資平台がおカネの返済ができなくなっても「匿名筋」(なにそれ?)という名の当局の助け舟が毎度毎度登場し、起債者と投資家の双方を救ってくれるわけだから。これなら誰も経営責任を問われないし、投資された資金が雲散霧消することもないので、みんなハッピー・・・

 ・・・なはずはなく、このやり方こそ麻薬投与、つまりその瞬間は気持ちいいけれど、結局は国家そして通貨を破綻に追い込む自殺行為にほかなりません。どういうことかといえば・・・起債によって調達された1億元のデフォルトが起こった場合、市中にあるマネーの総額は同じ1億元ですが、ここで1億元の匿名の寄付(おそらくは中国人民銀行[中央銀行]が秘密裏に刷ったおカネ!?)によってデフォルトが回避され、投資家に同額が支払われると、市中のマネー総額は2億元に膨らむ、といったようなこと。要するにマネーの流通のし過ぎ状態、すなわち激しいインフレが起こってしまうということです。

 ここまで書いてきたような「影の銀行」の持続不能な借金とか中央政府の甘い対応ぶりから判断して、近い将来、中国内ではこの(ハイパー)インフレが高い確率で起こりそうな気がします。もちろんインフレとは通貨価値の毀損イコール人民元の信認失墜。ということで金融鎖国」下の中国内では人民元札が溢れ返り、激しい物価高と実質マイナス金利のもと、人々は自国通貨建て資産に愛想をつかし、ドルや円を手にするべく、わずかに開いた穴(≒香港など、人民元と外貨を交換できる市場)からマネーを外に逃がそうと殺到するでしょう。その有様は・・・アリの一穴からダムが崩壊するのと同じですね・・・。

(続く)

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【自由化で地方政府のデフォルトは必至?】中国は世界金融の覇者にはなれない④

2015-04-17 00:01:37 | アジア

(前回からの続き)

 数々の規制により国外への流出がブロックされ、中国内に押し留められた巨額マネーは、少しでも高いリターンを求めて国内のハイリスク金融商品に流れ込んだ・・・。その代表例がシャドーバンキング(影の銀行)」が販売した商品、つまり「融資平台」なる地方政府の傘下の投資会社が発行した各種債券を組み合わせた年利10~20%超もの高利回りな「理財商品というわけです。

 ご存知のように現在、こうして集められた資金が投入された地方政府主導のプロジェクトの多くが行き詰まり、関連債権は不良化し、その償還が危ぶまれています。これまでのところ実際に債務不履行になったものは少ないものの、この先も債権元本や利息が投資家にちゃんと支払われるのか、何とも不透明・・・。

 で、そんな状態のときに人民元取引が全面的に「自由化」されたらどうなるでしょう。正確な予想は難しいですが、先述のように個人的には、中国の人々は(特権階級層がすでにやっているように)自分のマネーを国外に逃がそうと雪崩を打って外貨建て資産投資に殺到するだろうとみています。なぜなら上記のとおり、自国内の投資対象―――(実質マイナス金利の)預貯金、理財商品、株式など―――はもはや信用できないものばかりだから。それに当局がいつ個人財産の理不尽な差し押さえ等をするか分からないし・・・。

 一方、自由化前は楽勝で資金調達ができていた地方政府(融資平台)は一転、厳しい調達難に直面するでしょう。これまで理財商品に群がっていた国内投資家が一斉にそっぽを向き、ドル債や日本のREIT(?)などを買うようになってしまうから。こうして数多くの地方政府や事業会社は資金繰りや高い利払いに窮し、最後はデフォルト・破綻に追い込まれるでしょう。これらが金融システム不全とリセッション、さらには社会不安や政権不信を招き、最終的には共産党体制の崩壊へ・・・!?

 ・・・となりかねないので、やはり中国は人民元の自由化には踏み出さない―――当面は貿易決済通貨としての人民元の利便性拡大を図りつつ、資本取引にはこれまでどおりの規制を設け、「金融鎖国」=マネーの国内留め置き状態を維持しようという腹積もりでしょう。これなら地方政府等は引き続きファイナンスされるから、とりあえず国家を揺るがす金融巨大リスクは発生しない・・・

 ・・・とはいかず、やはり遅かれ早かれ中国は危機的状況に陥るような気がしてなりません。いくら規制をかけたところで、チャイナマネーの「内」を嫌い「外」に向かおうとするエネルギーは抑え難いように思えるからです。

 このあたりで最近注目しているのは、(北京市などの)中国の地方政府が傘下の事業体を通じて本土以外で起債し、資金調達をするケースが増えていること。これは・・・(地方債務急増に危機感を募らせた中央が同資金調達を厳しく監視するようになったという事情があるにせよ)それだけ地方政府が国内からおカネを集めることが難しくなっていることの表れともいえるのではないか・・・?

(続く)

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【人民元「自由化」で暴落か!?】中国は世界金融の覇者にはなれない③

2015-04-15 00:03:33 | アジア

(前回からの続き) 

 先述のとおり中国は、貿易決済通貨としての利用拡大などを通じて人民元の国際化をかなりの程度、進めてきているといえます。しかし資本取引面の自由化はまだまだ不十分。オフショア人民元市場の整備とか各国との通貨スワップ協定推進などに取り組んではいるものの、中国当局は人民元の取引に依然として多くの制限等を設けています。ドルや円などと違い、いまだに人民元はハードカレンシーとしての条件を満たしていない―――誰でも自由に売買できる通貨になっていない、ということです。

 ではどうして中国は人民元の「自由化」に踏み切らないのか? よく言われるところは、もし自由化されたら・・・発展を続ける中国の通貨に世界中から投資が殺到して為替レートが人民元高/ドル安になる → そうなると「安さ」だけが取り柄(?)の中国製品のドル建て価格が上昇して競争力が落ち、貿易黒字額が減って輸出主導の成長モデルが危機にさらされる → したがってそんなリスクをもたらす人民元高を招きかねない資本移動の本格的な自由化は行わない、といったあたりかと思います。まあたしかに、プラザ合意後の急激なドル切り下げ(円高ドル安)で当時の日本の輸出産業が窮地に追い込まれるさまを詳細に研究したといわれる中国ですから、このように考えるのも無理からぬところと思います。

 ですが・・・個人的にはこれは微妙かなと感じます。それは・・・かりに人民元の売買が完全に自由化されても、その為替レートがもう一段の元高(ドル安・円安)になるのではなく、むしろ逆の元安(ドル高・円高)に振れる可能性のほうが高いのではないか、ということ。なぜなら、自由化以前は規制によって中国内の元建て資産しか買えなかった中国人の多くが、自由化を機に一斉に国外のドル・ユーロ・円建て資産の購入・投資に乗り出すと予想されるから。この中国人民の元売りの勢いは海外投資家の元買いを大きく上回る―――中国人によって大量の元が売られ、ドル等の外貨が買われるため、為替レートは元安外貨高、ひょっとしたら元は暴落する(!?)―――そんな気がするわけです。

 繰り返しますが現状、人民元にかかる取引には数々の規制がかけられています。その中でこのあたりに関連するのは、人民元の持ち出し・持ち込み金額の制限とか国内における外貨との交換制限など(個人の外貨売買額は原則年間5万ドルが上限、など)。要するに中国は実質的な「金融鎖国」状態にあるわけです。となると(特権階級を除く?)中国内に住む一般人の投資対象は多くの場合、同国内の人民元建ての株式や債券にならざるを得ません。で、(最近こそやや落ち着いているようですが、)高いインフレ率で銀行預金は実質マイナス金利、公的な年金や保険の制度も無きに等しい、などとなれば、人々は老後に備えて自力更生―――なけなしの自己資金を国内のハイリスク・ハイリターン資産に投入する―――しかない・・・。

 これがいま話題沸騰(?)の中国「シャドーバンキング(影の銀行)問題」のベースにあるマネーフローだと考えています。

(続く)

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【人民元が避けて通れない「自由化」】中国は世界金融の覇者にはなれない②

2015-04-13 00:03:12 | アジア

(前回からの続き)

 世界各国、とりわけ欧米諸国を自国製品「漬け」にすることに成功したいま、中国はそれらの交換券としての人民元の国際化≒ハードカレンシー化を推進しつつ、さらには人民元の将来の基軸通貨化すら見据えている・・・。

 といったような、中国指導者の野心(?)を前回、憶測で書いてみました。まあこの後段(人民元の基軸通貨化)はさすがにハードルが高いでしょうが、メイド・イン・チャイナに対するニーズの高さを勘案すれば、前段(人民元のハードカレンシー化)は十分に手が届く目標といえるでしょう。実際に人民元が貿易決済通貨としてさらに使われるようになれば、国際金融界における中国のステータスはますます高まり、日本(円)を凌駕するのはもちろん、アメリカ(つまり基軸通貨ドル)の地位を脅かす存在になるのかも・・・

 それでも―――これだけ中国製品が地上にあふれ、人民元の利用価値が高まっても、中国が世界の金融覇権を握ることはできないでしょう。

 ということで、ここから先はそんな中国の野望を阻むネガティブ面について思い浮かぶところを記してみたいと思います。

 で、その最大のボトルネックとして指摘できるのは、通貨「人民元」・・・の使い勝手の悪さ、つまり人民元がいまだに世界の為替市場で自由に売買できる通貨になっていないことだと考えています。だから自由化」―――これこそ人民元がドル、ユーロ、円などとならぶハードカレンシーと位置づけられるために突破しなければならない最大の関門一方で現状の管理通貨―――金融当局による恣意的な為替・金利操作、持ち出し・持ち込み額の上限、中国内における外貨との交換制限などなど・・・の各種規制で管理された通貨―――にとどまる限り、人民元は国際通貨としての利便性も信認も具備することはないので、金融マーケットにおける中国の存在感がこれ以上に高まることはないでしょう。

 このあたりに関連して現在、人民元を国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(Special Drawing Rights:SDR)の構成通貨(現時点ではドル、ユーロ、円、英ポンドの4通貨)として採用すべきかどうか、という議論があります。現に中国当局は関係各所にこれを積極的に働きかけており、イギリスやドイツ等の欧州諸国は採用に前向きの意向を表明しているもよう・・・。

 これに対してネガティブな反応を示しているのがアメリカです。報道によれば、同国のルー財務長官はこのほど、人民元がSDR構成通貨の基準を満たすには一段の自由化等が必要で、アメリカはそのためのプロセスを完了させるよう中国に促している、といった趣旨の発言をしたとのこと。ということで、先日のアジアインフラ投資銀行への参加の是非に続き、中国の動向に関してまたも欧州とアメリカ(ついでに日本)との間で対応の違いが表面化したわけですが・・・。

 わたしは今度はアメリカの意見に賛成です。つまり、中国は人民元をSDR通貨にしようなどとする前に、アメリカ、欧州、日本がしてきたように、まずはその自由化を進めよ、という立場。なぜなら、それによってはじめて人民元の本当の実力―――ドルや円などに対する相対的な市場価値が確認できるから。逆にいまのように過度な規制や管理で「お化粧」(?)されたままでは素顔が分からず、人民元はどうにも怪しくて使えないしホールドする気になれない―――そう考える投資家も少なくないのではないでしょうか・・・。

(続く)

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【人民元は国際通貨としての資格あり!?】中国は世界金融の覇者にはなれない①

2015-04-11 00:03:45 | アジア

 前回書いたアジアインフラ投資銀行AIIB)に象徴されるように、ここのところ、大きな経済力をつけた中国の国際金融分野への進出が目につきます。そんなことから、中国はさらに金融力をつけ、いずれは世界のマネー覇権をアメリカから奪い取る気だ、みたいな見方も一部にあるようですが・・・。

 わたしはそんなことにはけっしてならない―――たとえAIIBが順調にスタートし、中国の通貨・人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(Spec1al Drawing Rights:SDR)の構成通貨になっても、中国が金融の世界覇権を握ることはないと予想しています。本稿ではそのあたりについて考えることを綴ってみたいと思います。

 ・・・とはいっても、直近では中国に関連してAIIBとかSDRといったワードが飛び交っているので、まずは同国の覇権実現に向けてポジティブに感じられる面から。そもそも、なぜ現在の世界経済において中国のプレゼンスがこれほど高まったのか、といえば、中国が「世界の工場」となったから。つまり、小平時代あたりから進められた改革開放政策」等の結果、中国がモノ作りとモノ輸出の世界大国になったことが大きいわけです。

 で、いまや多くの国々、とりわけアメリカと欧州は、実体経済も市民生活も中国製品にすっかり依存するようになってしまいました。中国からすればメイド・イン・チャイナで世界各国を手なずけることに成功した、といったところでしょう(ただ1か国を除いて・・・それは、わが日本国)。

 で、そうなると中国はこう考えるはず―――「つぎは通貨だ」つまり、世界進出の第一段階として中国は自国製品を世界に行き渡らせることができたので、第二段階としてそれらと不可分の通貨も自国のもの―――人民元に替えていこう、というわけ。

 ところで通貨とは・・・個人的には、その通貨発行国が生み出す価値との交換手段だと思っています。この定義だけに基づけば、上述のような現状から、人民元にはドル、ユーロ、円とならぶ国際的な通貨(ハードカレンシー)になる資格が十分にあるといえるでしょう。別な言い方をすると中国は、将来の人民元のハードカレンシー化を見据え、輸出振興を通じて自国製の日用品を世界にあふれさせることで、各国に対してこれらを買うための通貨=人民元を準備通貨として持っておこう!という気にさせる戦略を展開してきた、といった感じです。したがって、いまでこそ輸出売り上げの対価として外貨、要はドルを受け取っている中国が、近々、満を持して(?)その決済通貨をドルから人民元に変更する可能性があるかもしれない・・・。

 こうなれば、それは基軸通貨ドルに対する挑戦であり、中国の金融覇権達成に向けた力強いアクションになりそうですが・・・

(続く)

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