(前回からの続き)
国債の他国保有率が高い諸外国と違って同保有率が10%程度と低い(自国民保有率が9割程度と高い)日本は、いくら当該政府債務の実質価値を軽くするメリット(?)があるとはいってもインフレ政策は、自国民の大切な資産となっている国債の価値をも下げてしまうので適切なものとはいえない―――このように書いてきました。
とはいえ―――日本国債の外国人保有率が低いとはいえ―――外国人投資家はグロスでは日本国債を大量に保有しているといえます。今年度第1四半期の日銀資金循環統計によれば、今年3月末時点の国債等の総額1097兆円のうち「海外」勢の保有金額はじつに120兆円(全体の10.9%)!これ、わが国の年間予算規模(一般会計:今年度は約98兆円)を軽~く上回るほどの巨大なスケールです。したがって上記のようなインセンティブも多少はあるように感じられそうですが・・・
このあたりは、政府のみならず金融機関や企業(非金融)等を総合した日本国全体の海外に対する貸し借りの状況をふまえて考えるべきでしょう。たしかに120兆円とは・・・「こんなに外国からおカネを借りていて大丈夫か?」と不安に感じさせるほどのスゴ~イ額に思えます。ですが・・・これらを含めたわが国の純資産額(=対外債権-対外債務)は311兆円(上記統計)と世界一の潤沢さ。したがって日本は、外国人のキャピタルフライト(国債等の売り浴びせ等)に対する耐性が最強ということになります。
それでも、海外勢が一斉に国債売りを仕掛けてきたら?・・・って、心配は無用です(?)。かりに、彼ら彼女らが売り浴びせても、そのときは「待ってました!」とばかりに本邦金融機関が、日銀当座預金口座にブタ積みしてある4百兆円近く!ものキャッシュ等で国債等を買い支える(金利が上がり過ぎることはない)ので、この手の金融通貨危機に直面することはまずないはず。そもそも対外純債務国から順番に、そんな破局に陥るわけだから、わが国がそうなるのは必然的に(?)最後になります。よって、わたしたちは日本のこと(円や国債)よりも、むしろ自分たちがメッチャ高値掴み(?)してしまった、これらインフレに頼るしかない(?)諸外国の資産(通貨、国債、株、不動産等)価額の暴落のほうをよほど警戒するべきでしょう・・・って、これこそマジ不可避の差し迫った危機(?)だから、こちらの記事等を含めてあれこれ書いている次第ですが・・・
このように、対外債務対策の観点からも、わが国はその実質削減を企図したインフレ策を取る必要がない、ということになろうかと考えています。