世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【中国、ダマテンで狙うは最強役満「金一色」】中国「時間との戦い」:崩壊か、それとも・・・③

2016-12-29 00:02:01 | アジア

前回からの続き)

 中国は自身の金準備について、公表している量(1800トンあまり)よりも多く、本当の量よりは少ない、たとえば「3千トン」程度を所有していると発表すればよい―――前回、そんな個人的な考えを綴ってみました。えらく奇抜な策ですが、これで同国を悩ましている資本流出と通貨下落にある程度、ブレーキがかかるのではないかと・・・

 でも中国は、本心ではこのタイミングでこれはしたくないはずです。というのも、同国はこの瞬間も金準備の増強をしている最中と想像されるからです。で、その目標とする量は「アメリカ越え」すなわちアメリカ8千トン余りを上回るくらいの・・・おそらく1万トンあたりなのではないか・・・。ここでもし1万トンの金を集め終えれば中国は、外貨準備として兆ドル単位もの米国債を持つ必要なんてなくなるうえ、劣化著しい(?)ドル覇権に変わる新しい世界金融秩序の構築をリードすることだってできるわけです・・・

 その意味で、中国がここのところ米国債の保有量を減らしているのは、中国人民銀行(中銀)の資産構成のメインを米国債からゴールド)へ大転換させようという「戦略的な」動きの一環とみることもできそうです。しかも22日、中国の外為当局担当者が、中国の米国債保有減は「戦略的な」削減ではない(not a strategic cut)、なーんて言っているから、天邪鬼のわたしはなおさら「やはりな・・・」と思うわけです。中国にちなんで、このあたりを麻雀の用語で表現すれば、中国は手牌(中銀の資産)を金色に染め上げるべく、苦し紛れを装いながらも実は不要な牌(米国債?)をバンバンと場(市場?)に捨てつつ、ダマテンで最強の役満「金一色」(ジンイーソー?)上がりを狙っている!といった感じでしょうか・・・(麻雀をご存知でない方、すみません・・・)

 ・・・が、ここまでの統計資料等から推察するに、たぶん中国はまだテンパってはいない―――アメリカに迫るほどは金を集め切ってはいないとみられます(自信ないけど?)。なので同国としては、引き続き安価で金を買えるよう、当分の間、金価格には上昇してくれるなよ~と切に願っているはず。そんなときに、じつは〇千トン持っています!と真正な金準備高を口にしてしまったら、その時点で上記の野望達成は断念するしかないでしょう(?)。つまり、「中国は本気で金本位制に移行する気だ!」などとみなされて、世界中の投資家が一斉に金買いに殺到する結果、金価格が跳ね上がるとともに金の現物が市場から消えてしまい、中国は(国内産を除いて)それ以上の金の積み増しができなくなる、ということです。

 ・・・というわけで中国は現在、なかなか微妙な局面にあると思われます。このままでは外貨準備のいっそうの消耗と人民元の信認低下は避けがたい。かといって現時点の手の内すなわち金準備高を正直に申告したら金価格が急騰して「金一色」を上がれなくなる・・・。そこで両者の中間あたりで・・・というのが上記「3千トン」の根拠です。このへんが、人民元の下落に歯止めがかかるとともに金価格の上昇も許容範囲に収まるという、ちょうどバランスがとれるラインなのではないか・・・って、中国の実際の金準備が公表量よりもずっと多いに違いない!なんて個人勝手な憶測的前提に基づいて書いていますが・・・

続く

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【資本流出&通貨暴落を食い止めるには奇手しかない?】中国「時間との戦い」:崩壊か、それとも・・・②

2016-12-27 00:03:26 | アジア

前回からの続き)

 前回、ここのところ中国米国債を含む外貨準備高を顕著に減らしていることについて、当局が大胆にも(?)本当の理由(?)―――資本流出にともなう人民元安圧力に対抗するために中国人民銀行(中銀)が行っている為替介入の元買い原資となるドル資金を捻出するため―――を公表したのは、これによって自分たちが「為替操作国」(自国通貨を意図的に休め誘導してアメリカに輸出攻勢をかける国)ではないということをアメリカ・・・の次期大統領ドナルド・トランプ氏周辺にアピールするため、といった憶測を綴りました。裏を返せば、そんな自国のネガティブ面をさらけ出せることができるだけ、中国(の外貨準備)にはまだゆとりがあるという見方もできそうです(?)。

 とはいっても、そんな余裕がいつまでも続く保証はありません。こちらの記事を含めて何度か書いているように、中国は各種バブルの崩壊とこれにともなう国営企業の巨額債務および金融システム内の膨大な不良債権の処理にチョ~手こずっています(って、欧州や今後の?アメリカも同じだろうけれど)。そのうえこの国、これらにマトモな政策で対処しようにも、国民の反発つまり共産党一党独裁体制の崩壊リスクが怖すぎてできない。で、残るは、巨大な債務&評価損の穴を新規に印刷する紙幣でひたすら埋め続ける手すなわちインフレ策くらいしかありません(?)。これは当然、人民元の暴落をもたらすから、中銀の為替介入がさらに必要になって、その結果、外貨準備はますます減少してしまう・・・

 ・・・みたいな、本当に本当の危機も想定されるわけです、このままでは。でも繰り返しですが中国は常識的な手段―――デフォルト容認とか不良銀行の強制的な破綻整理みたいな通貨価値の維持が可能な策は取り得ない。となるとかの国には・・・もはやこの奇手(?)しかないのではないか―――「準備の上方修正申告」。

 これ、こちらの記事で書いたことですが、具体的には、中国が外貨準備の一部として保有する金準備高を、いまの公表保有高よりも多く、真の量よりも少なめに公表し直すというもの。現時点(10月末)で中国(人民銀)は約1843トンの金を持っていると発表していますが、金の輸入量(今年は9月までの3四半期で905トンを輸入)や国内産出量(同335トンを産出)の推移などから、じつは中国はもっと保有している―――中銀以外の政府機関にひそかに持たせている金が相当量あるのではないかと勘繰っているわけです。

 で、もしいま中国が、たとえば・・・「軍関係組織が保管していた金を人民銀に振り替えた結果、わが国の金準備は3千トンになった」みたいな発表をしたら、対ドルで下がり続けていた人民元は、その価値の裏付けが金によってさらに強化されたとみなされて一転、上昇に向かい、これによって現在の資本流出および人民元の下落が食い止められるかもしれない・・・(?)

続く

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【中国、米国債保有額で首位を日本に譲って2位に】中国「時間との戦い」:崩壊か、それとも・・・①

2016-12-25 00:04:32 | アジア

 はたして中国は間に合うのか、それとも・・・

 15日、米財務省が公表した10月末の国際資本統計によれば、米国債の国別保有額で中国20153月から17か月続けてきた首位の座を日本に譲って2位になったとのことです。同国の米国債保有額は10月末で11157億ドルと5か月連続で減少し、約6年ぶりの水準にまで低下しました。10月までの1年間の減少額は1392億ドルと12か月ベースで過去3番目の大きさを記録したとのことです。中国の外貨準備のほうも同様の傾向にあるようで、11月は3520億ドルと、20146月のピーク時から9420億ドル(約24%)も少なくなっています

 このように中国が最近、米国債を含む外貨準備を大きく減らしている要因について、異例なことに(?)同国の国家外貨管理局が分析結果を発表しています。それによると第一の要因は中国人民銀行(中銀)による為替介入人民銀は「資本流出」にともなう人民元の暴落を食い止める目的でこれを実施中ですが、その際の元買い原資となるドルを捻出するために米国債などの外貨準備を取り崩しているものとみられます。

 第二の要因は米国債価額の下落です。ドナルド・トランプ氏の米大統領選当選後に急速に進んだ米長期金利の上昇つまり米国債の価格急落で、中国が外貨準備として保有する米国債の評価額が目減りしたということです。

 上記二つの要因ですが、いずれもかなり正解に近いと考えています。なので個人的には、中国政府はずいぶん正直な発表をしたものだとの印象を持っています。とりわけ前者は、通貨安に見舞われている国ならばふつうは公にできることではないでしょう。ヘタな伝え方をすれば「中国の資本流出はそれほど深刻なのか・・・」と内外の投資家に認識され、いっそうの人民元売りを招きかねませんからね。

 ・・・と書きましたが、中国のこの素直な(?)説明の裏には次のような思惑もあるものと想像されます。つまり中国は、以前から同国を「為替操作国」(対米輸出に有利なように自国通貨安を政策的に誘導する国)と非難してきたトランプ米次期大統領周辺に対して、人民元安は上記要因のとおり不可抗力的に起こっているわけであって、けっして政策意図的なものではない、ということを理解させようとしているのではないか・・・

 ・・・と考えてみると中国は、苦しいながらも、まだ余裕があるとみることもできそう。なぜなら、上記発表は、資本流出をさらに喚起するリスクよりも、対米外交にプラスとの判断で行われたと解釈できるから(?)。実際、減少傾向とはいえ中国の米国債保有額・外貨準備額はともに依然として兆ドル単位の巨大スケールだし、同国の貿易収支は大幅な黒字傾向を維持しているわけですからね。

続く

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【またも円安インフレ、嬉しいか、辛いか、考えるべき】インフレ政策が日本で不適切な理由④

2016-12-23 00:04:34 | 日本

前回からの続き)

 財政大盤振る舞い政策の実施を公約した米ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利、そして14日のFOMCで米FRB利上げを決定したことを受け、為替市場では円安ドル高が進んでいます。これに加えて少し前、OPECが原油の減産に合意したこともあり、そのドル建て価格も上昇中です。ということで日本ではこの先、エネルギーの輸入円建てコストの急上昇に起因するインフレがまたも起こりそうな気配・・・

 前稿記事に書いたこと、そして上記合意が長続きするか不透明なことなどから、このインフレも安倍政権・黒田日銀が期待する持続的なものになるとは思えませんが、これを機に、わたしたちはあらためてインフレ、とりわけインフレを作為的に起こす政策すなわちアベノミクスが本当にこの国のためになっているのか、あらためて考えるべきかと思います(シツコイくらいに言い続けていますが・・・)。それは、経済成長率貿易・経常収支、国民の金融資産額といった日本のマクロ経済指標を確認するだけで容易に判定できる(?)ことですが、もっと正確に教えてくれるのは日本人としての自身の生活感覚「物価上昇はうれしいことか、つらいことか、どちらか」ですね・・・

 ・・・って、「インフレ?ガソリン代が上がって苦しい?株価が上がればすべてOKじゃん!」なのかもね、「カブノミクス」だけに・・・

(「インフレ政策が日本で不適切な理由」おわり)

天皇陛下、お誕生日おめでとうございます。陛下のますますのご健勝をお祈り申し上げます。

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【インフレターゲット:各国が採用したから日本も始めたけれど・・・】インフレ政策が日本で不適切な理由③

2016-12-21 00:01:33 | 日本

前回からの続き)

 本稿で書いてきたこと、および、以前「なぜアベノミクスのインフレは悪質なのか」と題して綴ったことと合わせ、日本においてはインフレを意図して起こす政策はNGだと考えています。それでもアベノミクスのようにインフレ年率などが政権の達成目標として掲げられてしまうのには、以下のような米英流の経済学の影響があるのではないか、と思っています。

 前述のとおり、世界ワースト&同2位の経常赤字国であるアメリカイギリスは、日本などの経常黒字国とは比較にならないくらい財政赤字の負担軽減へのインセンティブが強く、したがってこれを促すインフレへの期待が大きくなります(?)。しかも両国財政をファイナンスするのは自国民ではなく外国人、とくれば米英両国は、自分たちが大量に振り出した国債(借金証文)の実質価値が減っても、それで一番損をするのは外国人(≒日本人!?)だから・・・と考えて、債権者利益よりも国家債務を軽くするほうを優先し、インフレに頼ろうとするでしょう。そしてそうした考え方が財政に近い(ていうか、御用?)経済学者から提示されがちになる・・・

 こうして登場したのが政策的なインフレに正当性を与える「インフレ・ターゲット」(inflation targeting)。これ、1990年のニュージーランドを皮切りに、アメリカイギリスを含む先進各国で次々に導入されたことで国際的な経済・金融政策のスタンダードになりました。まあ世界中で採用されたからな~といった事情もあり(?)、わが国もアベノミクスでこれを始めてみたわけです(正確には20131月、日銀「中長期的な物価安定の目途」から)。でも、主要諸国中の最終スタートだったことからも推測されるように、そもそも日本ではインフレ目標なんて不要だった、つまりわが国は、国民生活を物価高で犠牲にしてまでインフレで政府債務を軽くしよう!と思い詰めるほどではなかったわけです。その理由は、日本の財政が外国に頼ることなく超低金利で国民からおカネを借りることが継続的にできていたため。

 このあたりは本ブログのあちこちで書いているとおりです。つまり、日本が経常黒字を積み重ね続ける限り、巨額の純資産を保持していられる限り、その通貨「円」ドルやポンドといった対外債務国の通貨に対して「円>ドル等」の関係になるため、国民は超過貯蓄を自ずと預貯金(≒日本国債への投資)すなわち政府へのファイナンスに回す、これによって政府の資金調達コストは低い水準に保たれるために政府部門の赤字が相当規模(って、対GDP比ではギリシャを上回って世界一!?)になっても、その利払いに窮するほどではない、といった具合です(もちろん、歳入の強化歳出の吟味を含めた財政改革にも不断に取り組まなくてはならない)。このユニークな枠組みが維持できるのは世界でも日本くらいでしょう。

 したがって日本は、自身にとって「百害あって一利なし」の(?)インフレ・ターゲットではなく、上記の構図を守り、さらに強固にするような政策目標を掲げるべき。たとえば・・・国富であり政府への融資の元金にもなる経常収支のプラス堅持、などが適当でしょう。これには、経常収支をわざと悪化させるような、国を傾かせるアブナイ政策が出てくることを封じる意図もあります・・・

 ・・・って、それがアベノミクスだったりするわけです。その危険性が端的に現れているのが、円安輸入インフレのせいで経常黒字が激減した2014年を「順調だった」と評価する黒田日銀総裁のお言葉。

続く

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【対外債務まみれの米英にはそれなりに意味があるが】インフレ政策が日本で不適切な理由②

2016-12-19 00:01:39 | 日本

前回からの続き)

 前述のとおり、インフレーション(インフレ)とは債権・債務の実質価値が時間の経過とともに減少していく経済現象、と定義することもできます。で、これを有効に使いたくなるのが、巨額の債務すなわち財政赤字の重みに苦しむ各国政府。インフレがその重圧を実質的に軽減してくれるからです。他方、インフレは債権(国債)の価値も下げてしまうから、その所有者に損害を与えることになってしまう・・・が、その債権者が外国人なら、気兼ねする必要はない・・・

 そんなわけで、慢性的な経常赤字国、つまり常々、外国から借金してきたアメリカイギリスといった国々がインフレ・ターゲット政策を掲げるのは、それなりに理解できるところです。ねらいどおりのインフレが起これば、上記の恩恵を享受できるうえ、自分たちの借金証文である国債(債権)の価額が下がっても、これでダメージを食らうのは多くの場合、外国人ですからね(?)。いうまでもなくその外国人のかなりは「日本人」だったりするわけですが・・・

 ・・・で、その日本。わが国の財政赤字が金額ベースでも、対GDP割合でも、巨大な規模に達しているのはご存知のとおりです。したがって本邦政府(財政金融当局)にもアメリカのようにインフレを望む気分があることはたしかでしょう。しかし、米英両国などと日本には決定的な違いがあります。それは、日本の場合、国家の借金をファイナンスしているのは外国人ではなく自国民だということ。だから、もし政府がインフレ政策を採用し、そのとおりインフレになったら、政府は多少は楽になっても(?)、肝心の日本国民が、物価高に加えて保有債権(預貯金つまり日本国債)価額の実質目減りによって、大きな損害を被ることになってしまう・・・

 ・・・「インフレ目標年率2%達成!」のアベノミクスが、日本で適切な経済政策とはなり得ない理由が、このあたりにもあるように思っています。と書くと、インフレで手持ち債権の価値が減るなら、その減少分を上回るリターンが見込める株に投資しろ!と言われそう。たしかにアベノミクスの目論見にはそれもあって(というか、それがすべて?)、実際に株価は外国人投資家&公的年金基金の投資主導で上昇しました。でも、ファンダメンタルズとか企業業績予想等よりもインフレ期待で株を買うというのは、筋違いというものでしょう? このへんも含めていまの株価は、日本もアメリカも本来の決定要因からかけ離れて、異常な水準に達しているように思えてなりませんが・・・

 とまあ、そんなアベノミクスですが、本稿の文脈でうまくいっていないようすが窺えるのが、こちらの記事に書いた国民の金融資産額。一見、株価上昇で膨らんだようで、世界共通の価値基準ドルで測ったらアベノミクス前よりも大幅に減少・・・。その最大の原因は日本国債のドル建て価値の急落によるもの。この巨額の評価損を、根拠希薄なインフレ期待だけに頼った株価上昇だけで埋められるわけがない・・・

続く

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【財政赤字を抱える政府は必然的にインフレを望む?】インフレ政策が日本で不適切な理由①

2016-12-17 00:01:29 | 日本

 インフレーション(インフレ)―――物価が持続的に上昇する経済現象のことです。普通の生活者で、これを歓迎する人は、当然ながら、そうはいないと思います。では、こちらではどうでしょう?―――債権・債務の実質価値が時間の経過とともに減少していく経済現象。これなら、ありがたいと感じる人が出てくるはず。本稿ではそのあたりについて考えることを綴りたいと思います。

 ここでいう、インフレがありがたい人とは、借金をしている人ということになります。極端な例ですが、1年で物価が倍にもなるハイパーインフレが起これば、インフレ前の債務の価値はインフレ後には1/2になっているから、債務者は実質的な返済負担がずっと減ってラッキー!という具合です。

 もちろんこのインフレのメリット(?)、借金が多ければ多いほど大きくなります。で、現在の社会でいちばん多額の借金を背負っているのは・・・アメリカ、イギリス、日本・・・といった国々の「政府」。ということは、各国政府には元来、債務支払いの負担を軽くしてくれるインフレを待ち望む性質が備わっていることになります。その意味で、いま世界中で流行のリフレーションとかインフレ期待expectation)という言葉は、そんな政府の願望を言い表したものといえそうです。だって、それ以外に「ガソリン代、もっと上がらないかな~♪」なんて期待する人、いないでしょうからね(って、厳密にはいるが・・・後述の株式投資家とか)。

 さて、ここで政府が望むようなインフレが実際に起こったとします。上記のように、程度の差こそあれ、これで財政赤字を抱えた政府は楽になります。そのいっぽう、インフレでダメージを受ける人々が出てきます。まずはインフレとなった国の大多数の国民。これは当たり前、誰にとっても物価上昇はイヤですから。

 そしてもう一人、インフレで傷つくのが、債権者となります。ここでいう債権者とは、具体的には国債の所有者のこと。この国債という名の債権の価額は国の債務の価額に等しいから、上記のとおりインフレでその債務の実質価値が減れば、その裏返しである債権の価値も同じように減少する、というわけ。

 このようにインフレは、借金を抱えた政府に多大な恩恵をもたらす代わりに、その国民と、その政府におカネを貸している人々(国債投資家)に巨大な損害を与えることになります。そういうことでインフレはまさに「諸刃の剣」といった感じですが、第一次大戦後のドイツや最近ではジンバブエなどの例でも分かるように、害悪のほうがはるかに大きいといえます。インフレで救われる政府関係者などより、これに苦しめられる人々のほうが圧倒的に多数派ですからね。

 ・・・それほど危険なインフレですが、にもかかわらずこれを政策的かつ戦略的に何としても引き起こしたくなる政府があったりします。それがアメリカであり、イギリスであり・・・ようするに、債権者が「外国人」となっている国々。

続く

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【米株高も新興国、欧州がコケたら終わり?トランプ相場】リスク資産、絶好のチャンス到来!「売り」の③

2016-12-15 00:02:24 | 世界共通

前回からの続き)

 この1か月間のトランプ相場ですが、そう長続きすることはないでしょう(?)。先述のとおり根拠がないうえ、本当にトランプ政策の財政大盤振る舞いが始まったら、米経済にとって中国以上(?)の脅威である長期金利の上昇が引き起こされるからです。

 その他、アメリカ以外でもこれにネガティブな要因ばかりがめにつきます。たとえば新興国市場。いまアジア・アフリカ・中南米の諸国から巨額のマネーがアメリカに向けて流出しています。これは当然、各通貨の対ドルでの大幅な減価をもたらし、各国が抱えるドル建て債務の返済負担を一段と重いものにさせます。そのため今後、これらの債務履行に対する不安感が市場で高まって新興国債の価格が下げ止まらなくなるかも。これで損害を被るのは、そんな危険なドル債をしこたま抱えたアメリカのヘッジファンドだったりするわけです。

 欧州もヤバそう。本稿の文脈で指摘すべき真の危機は、ポピュリズムの台頭などではなく(?)、先日綴ったイタリアドイツなどの各国で深刻化している銀行の不良債権問題です。この先、これらに関連する金融資産の暴落は避けられそうもなく、米投資家の多くも傷つくでしょう。

 そして上記ケースに共通する巨大リスク要因として浮上してくるのが、デリバティブCDS)。上記再検討のどれかに債務不履行とか選択的デフォルトみたいなことが起こったら、CDSの決済が発生し、その売り手は多額の支払いを求められるわけですが、それらのほとんど(?)は米金融機関のはず。果たして彼らは、(総資産に比して劇薄な?)自己資本に何らのダメージを食らうことなく、これに応じることができるのか?もちろんいっぽうの買い手の多くも米投資家。なので(売り手を救済するために)CDSがちゃんと履行されないことになったら、今度は米国人の買い手のほうが大損してしまう・・・

 ・・・このように考えてみると、米株(とくに金融株)とドルに代表される米金融資産(と、米国人らが円キャリーで爆買い中の?日本株)の急騰が、いかに根拠レスな危うい状況で起こっているのか、ということに気づきます(?)。よって、FXみたいに超短期と割り切って勝負する場合を除き、本邦投資家(および対外投資を検討中の企業家など)ならばこのトランプ相場には深入りしないほうが無難でしょう(?)。間違っても、いまの市場が日米のファンダメンタルズを反映している、なんて勘違いすることのないようにしたいものです。

 ・・・いつものことながら、個人的にはいまのドル高、すなわち「ゴールド)」安(約1,160ドル/トロイオンス)の局面で、金の現物を仕込むのがよろしいのではないかと・・・。中国はそうしていると思うよ、たぶん・・・(?)

(「リスク資産、絶好のチャンス到来!『売り』の」おわり)

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【本邦個人、高値圏で日本株を外国人に売り抜けか】リスク資産、絶好のチャンス到来!「売り」の②

2016-12-13 00:03:56 | 世界共通

前回からの続き)

 前回書いたように、いまこの瞬間の米株高やドル高、さらに日本株式市場の活況ぶりは、米ドナルド・トランプ新政権への根拠なき過剰期待の反映といえます。なので、わたしたち日本人としては、ここはヘタに高値を追っかけたりするのではなく、むしろ逆に千載一遇の(?)逆行「売り」のチャンスととらえるのが正解かと・・・(?)

 そう、いまこそ米株、ドルそして日本株をいったん売ってのキャッシュに替え、次の機会じっと待つのが得策(?)。繰り返しますが、トランプ氏が公約した諸政策は金利上昇という激烈な副作用を米経済にもたらすため、このあたりの影響を見極めない限り上記資産への手出しは危険すぎると考えられるからです。

 ・・・と綴ったものの、これまた心配は無用―――本邦投資家の大半はこの熱狂ぶりに惑わされず、冷静なスタンスを保っているものと推察されます。それを示す一例が最近の日本株の売買状況。東証データによれば、米大統領選挙前の10/2411/4までの東証一部株式の「個人」の売り越し額は1716億円だったものが、同選挙後の11/1411/25には8736億円と大幅に増えました。いっぽうで「海外投資家」は10/2411/4432億円の売り越しが11/1411/25には逆に7876億円もの買い越しに転じました。これらから、わが国の個人投資家(ミセス・ワタナベ)が、トランプ当選で熱狂する米国人らに対して日本株を高値で売り抜け、しっかり利食った様子が窺えるわけです。賢い投資行動だと思います。

 だからといって、この1か月ほどのトランプ相場に関するジャパンマネーの動静に何の懸念もないというわけではありません。ここで、やはり一番心配なのが公的年金基金(GPIF)。本ブログで何度も指摘していることですがGPIFは、201410月の新運用方針の導入後、リスク投資で高値掴みを繰り返し、ここのところ巨額の評価損を計上しまくりです(このままでは運用の拙さとか同方針の妥当性を非難されるからか?[201410月時点ではなく]2001年度の自主運用開始時点と比べるとプラスです!なんて煙幕を張り出した・・・)。したがってGPIFには「このマイナスを何とか挽回しないと・・・」といったアセりの気持ちがチョ~強いはず。そんななかでの目の前のこのマーケットの盛り上がり・・・とくれば、GPIFの鼻息が荒くなるのはもっともですが・・・

 ・・・上述のとおり、いまこそは願ってもいないチャンス。よってGPIFにはぜひミセス・ワタナベにならい、この局面でリスク資産を売って利益確定していただきたい。現在のタイミングであれば、こちらの記事に書いたGPIFの損益分岐ラインを超える価額での資産売却が見込め、上記方針時点と比較してもプラスリターンが期待できそうです(?)。せめて為替差損が減ったであろう外債&外国株(の大部分!)だけでも手仕舞い売りしてほしい・・・と願うばかりです。実際には「くじら」にそんな機敏な動きができないことくらい分かってはいるのだけれど・・・

続く

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【たった1か月で日米株&ドルのこの急騰ぶりは根拠レス】リスク資産、絶好のチャンス到来!「売り」の①

2016-12-11 00:01:08 | 世界共通

  絶好のチャンス到来!といった感じですね、「売り」の・・・

 118日の米大統領選挙で、まさか!のドナルド・トランプ氏当選からわずか1か月。金融マーケットはこの間、異様な熱気に包まれています。

 まずは為替市場。ご存知のとおり急速なドル高が進行中です。ドル円でみると11月初旬に1ドル約103円であったものが現時点(12/9 )では同115円あまりと、かるく10%以上もドル高円安になりました。円ばかりかユーロなどの他通貨に対してもドルは上昇し、トルコなどの新興国の一部は過度の自国通貨下落を食い止めるためにドル売り為替介入を余儀なくされました。

 そして米株式市場ではダウ平均もS&P500も史上最高値付近に達しています。上記選挙前の114日と直近(12/9)の数値でみると前者が17,888.28から19,756.85へ、後者が2085.18から2259.53へ、それぞれ10.4%、9.2%もの急速な上昇率を記録しています。ちなみに日本株も急騰中! 日経平均は16,905.3611/4)から18,996.37(12/9)へ、TOPIXも1,347.04(同)から1,525.36(同)へ、それぞれ12.4%、13.2%も上がっています。このあたり、急激に進んだ円安と後述する売買データなどから、外国人の円キャリートレードによるものと推測されます。つまり彼らが日本株を買ったから円安になった、ということ(円安になったから株が買われた、というわけではない)でしょう。

 いっぽうで大きく下がったのが債券価格。先日こちらの記事で書いたとおりです。直近の米長期金利は2.4%あたりと、たった1か月で0.6%もジャンプアップ! つまりそれだけ米国債価格が急落したことになります。これにつられたかのように日本の長期金利もじりじりと上昇してプラス圏にまで浮上してきました。とはいっても、わずか数bpに過ぎませんが・・・

 このような超短期間での劇的な展開の原因は、先刻ご承知、「トランプ政策への期待」、つまり、選挙期間中からトランプ氏が公約として掲げていた大型減税や巨額の財政出動等が同氏の当選で本当に実行されそうだとの見方が市場に広がったことで、これらの恩恵を受けそうな米企業の株とか、今後の利回り上昇が必至のドルに投資家のマネーが集中した、といった感じでしょう。

 ・・・それにしてもこのマーケットの動きはあまりに急といえます。米トランプ政権の発足どころか、大統領選挙人選挙もこれからで、現時点で同氏が大統領になることすら正式には決まっていないわけですからね・・・。それに肝心の上記政策も実際に行えるのかきわめて不透明。先日の記事で指摘したとおり、これらが米経済・ドル覇権の命取りにつながりかねない長期金利の上昇を招くリスクが大きいためです・・・

 以上をふまえると、いまの米市場の過熱ぶりは、まったく根拠のない楽観に基づくものといえそう。したがって、ここは冷静さが求められるところですよ・・・

続く

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