(前回からの続き)
このほど、欧州の対米報復関税にともなうコスト増を回避するため、米国内から欧州に生産拠点を移すことを発表したオートバイメーカーのハーレー・ダビッドソンに対する米ドナルド・トランプ大統領のツィート攻撃が続いています・・・
27日、同氏は「ハーレーは100%アメリカ国内にとどまるべきだ」と訴えました。前述のとおり、同社がこのままのやり方―――米工場で生産した製品を欧州へ輸出するやり方―――だと年間で最悪1億ドルのコスト増になると嘆いているにもかかわらず、です。そもそもハーレーがここまで追い詰められたのは、ご自身が打ち出した一方的な鉄鋼・アルミ製品関税措置がきっかけと考えられるのですが・・・
トランプ大統領はさらに「わたしはあなた方のために非常に多くのことをしてきた。なににこれかよ(and then this)。他の企業は属しているところに戻ってきているぞ」と綴っています。こういうところをみると、同氏はハーレーのビジネスとか置かれた状況に対するご認識がずれているように思えてなりません。同社は大多数のバイクを米国内で製造してはいるものの、他方でブラジルやインドなど、海外にも生産拠点を構えているとのこと。これ、最適なリソース配分を追求した合理的な経営判断の結果であるわけだから、もし同社にアメリカに留まらせたいのなら、そうさせたくなるような「合理的な」手を打たないと・・・
いっぽうでトランプ政権は、せっかくのアメリカへの投資活動に水を差しかねない政策をスタートさせそうです(?)。これは、米企業や知的財産の買収につながる外国企業等の対米投資を安全保障等の観点から審査しようというもの。実施機関である対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化して、外資による重要技術およびインフラの取得となる株取得などを調査対象に加えるほか、外国政府の持ち分が25%以上の企業が米企業の株式を25%以上取得するときはCFIUSの審査を義務付ける、といったもののようです。
名指しこそ避けてはいるものの、上記が中国(政府)を意識した策であるのは間違いないところでしょう。まあチャイナマネーを脅威視する気持ちは分からなくもありませんが、他方でこれ、外国企業の対米投資意欲を減退させる方向にも作用するおそれがあるのではないか。以前から書いているように、アメリカは海外マネーを受け入れていかないと国が保てません。逆にいえば、外資とかその商品に対してオーブンな市場環境こそがアメリカの良いところであり、それが同国を発展させ、かつ同国の雇用を創出してきた面があるはずで・・・
そんな自身の長所を消しかねない危険性が、この投資への政治介入(?)にはあるような気がしますが・・・