(前回からの続き)
日銀の金融政策を「円高デフレ」策つまり実質ゼロ金利誘導(あるいは緩やかな実質プラス金利を許容する)策に転換すれば、いまの「アベノミクス」(≒日銀による「実質マイナス金利誘導策」)および消費税率8%のもとで税抜き100円の商品Aを購入するのに要するおカネ108円で、たとえ同税率が10%に上がっても、消費者は商品Aのほかに他の商品Bを追加で買うことができる可能性が高まるうえ、財政当局もしっかり消費税収を増やすことができそうだ、というシミュレーションを前回、綴りました。
ですが・・・輸入原材料価格が円建てで下がったおかげで商品Aの税抜き価格がかりに70円(消費税率10%に上がったときの税込み価格77円)まで安くなったとき、消費者は手元に残ったおカネ31円(=108円-77円)を消費ではなく貯蓄に回すかもしれません。日本国民の多くは堅実だから、目先、必要な商品Aだけを入手すれば満足し、余計な消費(商品Bの購入)を手控えると思われます。その場合、見た目のGDPの個人消費とか消費税収はそれほど伸びず、というか場合によっては減少する可能性すらありそうな・・・
・・・って、このあたりはそれほど心配する必要はないと考えています。上記の場合、消費者は商品Aをこうして安く買えたことでアベノミクス時には得られなかった30円ほどの自由に使えるおカネをあらたに手にするわけです。それで商品Bを追加購入してもいいし、旅行やエンタメの費用に充ててもいいし、株投資や、そして・・・貯蓄してもいいわけで、いずれにしても消費者はこの恩恵を享受することになります。
いっぽうの財政当局は・・・消費税収が思ったほど伸びず、歳入不足を補うために国債を発行せざるを得なくなるかもしれません・・・が、これを過大に問題視することはないでしょう。というのは、上記の新規貯蓄が金融機関を介してこれを買い支えるためです。本ブログのあちこちで書いているように、いまの世界では「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」(円の実質利回りがもっとも高い)が成り立つから、おのずと国民のおカネは国債投資(≒貯蓄)に回るので、政府債務は低コスト(低い金利負担)でファイナンスされる、というわけです。「円高デフレ」の下では、上述のように政策総動員など不要だと思いますが、どうしても消費増税がもたらす需要不足に政策的な対処をしようというのなら、こうして国民から借りた資金で何らかの財政出動をすればよい、と考えています。
この枠組みが維持される限り、わが国の財政や金融システムや通貨の信認が揺らぐことは、けっしてないでしょう。