世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【「円高デフレ」で国民の貯蓄が財政を支える効果も】消費増税:政策を一つだけ変えれば済む話?③

2018-10-29 00:01:12 | 日本

前回からの続き)

 日銀の金融政策を「円高デフレ」策つまり実質ゼロ金利誘導(あるいは緩やかな実質プラス金利を許容する)策に転換すれば、いまの「アベノミクス」(≒日銀による「実質マイナス金利誘導策」)および消費税率8%のもとで税抜き100円の商品Aを購入するのに要するおカネ108円で、たとえ同税率が10%に上がっても、消費者は商品Aのほかに他の商品Bを追加で買うことができる可能性が高まるうえ、財政当局もしっかり消費税収を増やすことができそうだ、というシミュレーションを前回、綴りました。

 ですが・・・輸入原材料価格が円建てで下がったおかげで商品Aの税抜き価格がかりに70円(消費税率10%に上がったときの税込み価格77円)まで安くなったとき、消費者は手元に残ったおカネ31円(=108円-77円)を消費ではなく貯蓄に回すかもしれません。日本国民の多くは堅実だから、目先、必要な商品Aだけを入手すれば満足し、余計な消費(商品Bの購入)を手控えると思われます。その場合、見た目のGDPの個人消費とか消費税収はそれほど伸びず、というか場合によっては減少する可能性すらありそうな・・・

 ・・・って、このあたりはそれほど心配する必要はないと考えています。上記の場合、消費者は商品Aをこうして安く買えたことでアベノミクス時には得られなかった30円ほどの自由に使えるおカネをあらたに手にするわけです。それで商品Bを追加購入してもいいし、旅行やエンタメの費用に充ててもいいし、株投資や、そして・・・貯蓄してもいいわけで、いずれにしても消費者はこの恩恵を享受することになります。

 いっぽうの財政当局は・・・消費税収が思ったほど伸びず、歳入不足を補うために国債を発行せざるを得なくなるかもしれません・・・が、これを過大に問題視することはないでしょう。というのは、上記の新規貯蓄が金融機関を介してこれを買い支えるためです。本ブログのあちこちで書いているように、いまの世界では「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」(の実質利回りがもっとも高い)が成り立つから、おのずと国民のおカネは国債投資(≒貯蓄)に回るので、政府債務は低コスト(低い金利負担)でファイナンスされる、というわけです。「円高デフレ」の下では、上述のように政策総動員など不要だと思いますが、どうしても消費増税がもたらす需要不足に政策的な対処をしようというのなら、こうして国民から借りた資金で何らかの財政出動をすればよい、と考えています。

 この枠組みが維持される限り、わが国の財政や金融システムや通貨の信認が揺らぐことは、けっしてないでしょう。

(続く)

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【「円高デフレ」消費者も財政当局もともにハッピー】消費増税:政策を一つだけ変えれば済む話?②

2018-10-27 00:11:03 | 日本

前回からの続き)

 金融政策を現行の実質マイナス金利誘導から実質ゼロ、ないしは緩やかなプラス金利誘導を図るものに転換することで、輸入原材料の円建て価格の値下がりを促し、これによって消費増税に伴う消費者の負担を軽減することで個人消費の落ち込みと景気へのマイナスの影響を軽減する―――この前述、「円高デフレ」策がもっとも合理的な消費増税時の政策だと考えています。すでにこれ、前回の消費税率引き上げ(201510月:5→8%)に関連して、こちらの記事に書いたことですが、今回も、そしてこれからも、消費増税をする気なら、日銀には上記の金融政策を合わせて実施してほしいと思う次第です(って、もうそろそろ消費税ではなく、他の増税策を真剣に考えるべきだろうが・・・)。

 ところで・・・たしかに円高デフレになれば上記のコストの低減が図られ、消費者や勤労者には前回書いた恩恵がもたらされますが、他方で財政当局にとっては微妙なところがあろうかと思われます。というのは消費税が適用される商品の価格が下がったら、同税率を上げても税金相当分の金額が増えなかったり、場合によっては減ることもあるからです。

 これを税抜き価格100円の商品Aで考えてみましょう。現在、この商品の税込み価格は108円、つまり8円が税金分に該当します。で、これが上記の円高デフレで税抜き80円にまで価格が下がったとします。このとき消費税率が10%に上がっていたとしたら、同相当額は8円と、税率を引き上げたにもかかわらず、その額は8%のときと変わりません。商品A価格がもっと下がって70円になったら同7円と、8%のときよりも10%のときのほうが税収が下がってしまう、といったことに・・・

 ・・・とはならず、10%のときのほうがやはり消費税収は増えるでしょう。たしかに商品Aの価格が70円に下がったら上記のとおり、その消費税分は7円です。でもこのとき消費者の手元には、円高デフレ前の108円-77円=31円のおカネが残ることになります。となると消費者は、消費税率が10%に上がったのに、商品Aに加えて税抜き価格29円の商品Bも一緒に買えることができるようになります(29円×1.131円)。つまり、円高デフレ後の消費者は108円という同じ金額で商品Aと商品Bの二つを買うことができ、それだけ生活の質が上がるうえ、財政当局には税率引き上げ前(8円)より多い約10円(=70円×10%+29×10%)の消費税収が入ることになって、双方ハッピーということになります。

 ・・・「そうだろうか。いまの消費者は上記で浮いた31円を消費しないで貯蓄に回すのではないか。これでは個人消費の額は円高デフレ前・増税前の108円から77円に減ってしまい、消費税収はもちろん、GDPの増加も望めないのでは」―――たしかにそうですね・・・

(続く)

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【その答えは「円高デフレ」誘導!?】消費増税:政策を一つだけ変えれば済む話?①

2018-10-25 00:01:17 | 日本

 政策総動員?そんな大げさにしなくても、政策を一つだけ、変えれば済む話だと思いますけどね・・・

 安倍首相は15日の臨時閣議で、201910月から消費税率を予定どおり現行の8%から10%に引き上げると表明しました。これと合わせ、これまでの税率引き上げ時に毎回見られた駆け込み需要とその後の反動減に対処するために「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と述べました。具体的には、消費者がキャッシュレス決済をした際にポイントを還元するとか、自動車等の購入者の負担を減らすための予算措置を検討するとか、要するにけっこうな額の(?)財政支出をするようです。せっかく増税して財政を改善しようというのに、これでは逆に悪化するリスクも出てきそうな・・・(?)

 何度も指摘しているようにホント、安倍政権・黒田日銀が進める「アベノミクス」は左派すなわち社会主義者の政策だよ・・・と、つい、ため息が出てしまいます。消費増税は当然、GDPの柱・個人消費に冷や水を浴びせるわけですが、これで落ち込む景気を財政つまり公的需要で補おう、というのですからね。きっとアベノミクス各位には日本経済の主役を「民間」から「政府」に替えたいのでしょうね・・・って、そういう国を計画経済の国つまり・・・社会主義国とか共産主義国というのだけれど・・・

 ・・・で、冒頭の話に戻りますが、現状、消費増税の際にもっとも効果があり、かつ上記のような余計な(?)財政出動を最小化できる政策がたった一つだけあるわけです。それこそ「円高デフレ策」つまり現行の日銀の金融政策である「異次元緩和」・・・という名の円安誘導策とは真逆の(?)策です(具体的には現行の実質マイナス金利から同ゼロ金利~緩やかなプラス金利への誘導に変更する、といったあたりだろう)。

 このあたりは本政策を「ポスト・アベノミクス」と題してこちらの記事に詳述しましたが、そこに掲載したイメージを使ってあらためて説明してみましょう。まず、いまより円高ドル安になるとすると、商品Aの税抜き売価は上のイメージのとおり下がります。売価を構成する各項目のうち、原油や石炭等の原材料価格が円換算で安くなるためです。

 すると商品Aを作る人々の賃金給与を引き上げる余地が出てきます。上記の場合では「賃上げ」後も売価はアベノミクス中よりも安いくらいです。

 そして上が消費増税を行う場合のイメージ。このとき、消費税率を引き上げても、商品Aの売価はアベノミクス中と変わらないので、消費者にとっての負担は変わらず、いっぽうで政府は税収を増やすことができる、というわけです。

 このように「円高デフレ」下では、原材料価格を円換算で安く調達できたことで浮いたおカネを消費者、勤労者、そして財政当局(さらに株主)で分かち合うことできるようになります。

(続く)

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【政府・日銀は「市場の声を聞く」前に「国民の声を聞く」べき】「株セールスマン」に占拠された?経済政策⑧

2018-10-23 00:03:36 | 日本

前回からの続き)

 とまあ、長々と綴ってきましたが、本稿で述べたいのは、「株セールスマン」はご自身が所属する証券会社や投資銀行等のプロとして、株のセールスに徹するべきだということ。そして大学の経済系学部の先生方や政府・中銀の政策決定に携わる方々は「株セールスマン」の肩書としての「エコノミスト」ではなく、本来の意味での「エコノミスト≒経済学者」であってほしいということです。

 もちろん株価は経済の重要な要素のひとつであり、これをないがしろにすることはけっしてできません。けれど株価は、あくまでもファンダメンタルズやこれをベースとした企業の業績予想などによって決定されるべきでしょう。だからこそ上記の政策決定者は、第一にマクロ経済指標を意識し、個人消費や設備投資などの動向に気を配り、これらが(過度の政策介入をしなくても)自律的に、かつ適切なペースでプラス軌道を描いていくような政策運営を心掛けるべきだと考えます。これが順調ならば、株価もまた、おのずと強含み、株式市場には自然にマネーが入ってくることでしょう。

 このあたり、いまの「アベノミクス」は順序が逆といえます。要するに「カブノミクス」(取り柄は「株のみ」)なので、各位は「株セールスマン」よろしく、まずは株価・・・を人為的な(市場原理に反する日銀の金融)政策で引き上げ、これで実体経済を活性化させようとしている(?)わけです。しかし、こちらの記事等でも書いたように、いまのアベノミクス日本では「株価↑経済成長率↓」となることなどから、こうしたアプローチがうまくいくことはけっしてないでしょう。

 「市場の声を聞く」(listening to the voice of the market)という言い方がありますが、いまの内外の株式等市場は先述の「麻薬」(≒金融緩和がもたらした超低金利マネー)に完全に依存した、いわば「株セールスマン」が運営する閉鎖的なカジノみたいなもの(って、たしかに株にはバクチに似た面がある)。よって、上記マクロ政策運営者がこれを聞き過ぎるのはいかがなものか、と感じるわけです。それよりもカジノの外の「実体経済の声を聞く」・・・つまり「国民の声を聞く」ことこそが、政府・日銀にはいま、強~く求められていると思うのですが・・・

(「『株セールスマン』に占拠された?経済政策」おわり)

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【カブノミクス「貯蓄から投資へ」、実際には海外の株投資等に貢献?】「株セールスマン」に占拠された?経済政策⑦

2018-10-21 00:01:07 | 日本

前回からの続き)

 カブノミクス」(私的造語:アベノミクスの取り柄は「株のみ」)を推進する政府・日銀の「株セールスマン」各位が日銀「異次元緩和」とかNISA少額投資非課税制度等によって「貯蓄から投資へ」を煽ってみたら、皮肉なことに、何らの投資にも使われない数百兆円!もの巨額の「死に金」が日銀当座預金口座(&今後は国民の「タンス預金」)に積み上がっちゃいましたね・・・と前回綴りました。すると各位からはこんな反論(?)が聞こえてきそうな―――「ちゃんと煽ったとおりになっているだろ、海外で・・・!」

 そう、そのとおりでした。こちらの記事他で何度も書いているように、アベノミクスは実際には日本以上に(?)外国とりわけアメリカ株、債券商品等のリスク投資を実質的に後押ししているといえます。とくに2014年の秋、つまりFRB(連邦準備制度理事会:アメリカの中銀)が量的緩和策(QE)を終えるのと同時に日銀がもう一段踏み込んだ金融緩和(追加緩和)を発動したのが象徴的です。以降はFRBが利上げを進める中、またECB(欧州中央銀行)等のQEが迫力不足(?)な中で、事実上、日銀だけが超低金利マネーの出し手として、日米両国を含む世界のリスク投資を大いに煽り立てているわけです。よって、このあたりの成果に日本の上記、公的「株セールスマン」一同が胸を張る(?)のも、まあ分からなくはありませんが・・

 ですが・・・これまた何度も書いているように、これらはいずれも激しいバブルであり、しかもその原資が借金によるものです。つまり、アメリカの株高も、不動産価格の高騰も、家計の旺盛な消費も、米実体経済の好調さ・・・というよりはむしろ、かの国のファンダメンタルズに照らせば不自然かつ異様に低い金利がもたらしているといえます。となれば企業もヘッジファンドも一般国民も「こんなに金利が低いの?じゃあどんどん借金して株や家や自動車を買おう!」となるのも無理はありません。で、その大元に日銀がいるわけです・・・って、FRBが金融引き締め、すなわち米国民に「これ以上は危険だから、借金に頼った投資や消費は、そろそろ減らしていこうよ」とのメッセージを発しているのに、日銀は逆に「いやいや、もっとローンを組んで投資&消費だ」と言わんばかり・・・

 この手の投資、当然ながら健全とは言い難いでしょう。上の繰り返しになりますが、本来ならばアメリカの金利はこんなに低いはずがなく、したがって米国民の多くは上記のような借金を元手とした投資や消費はできなかったはず。でも、実際にこうして派手にやっているのは、超低金利という「幻覚」のせい。で、この幻覚をもたらしたのはFRBのQEであり、その後を引き受けた日銀ということになるわけです。日銀がいま、アメリカ向け(?)にやっているのは「麻薬」の提供に近い、とこちらの記事等で書いているのは、そういった意味からです。もっとも、前述の日本人のように、これを乱用することなく(?)、合理的な資産運用(≒円預貯金等)とか自身の支払い能力等に合わせた消費等をしていれば、何の問題もないのですが・・・

(続く)

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【カブノミクス「貯蓄から投資へ」、「貯蓄から『死に金』へ」に終わる?】「株セールスマン」に占拠された?経済政策⑥

2018-10-19 00:00:43 | 日本

前回からの続き)

 先述、株セールスマン」化した政府・日銀の「アベノミクス」推進者が(日銀「異次元緩和」を通じた超低金利誘導で)せっかく株投資に有利な金融環境を用意したというのに、国民の多くは預貯金を継続している感じです(家計金融資産総額に占める現金預金の比率は約53%)。これはどうして?・・・って、直近ではこちらの記事等を含めて何度も指摘している通り、結局、わたしたちはの預貯金つまり日本国債への投資が一番安全確実であることを知っているということなのでしょう。

 たしかに株は・・・銘柄によっては大きく値上がりし、多くの利益をもたらしてくれる場合があります。でも当然ながら逆に大損するケースも考えられるわけで、要するにハイリスク・ハイリターンです。その一方、預貯金は、ほんのわずかながらもプラスの利息を100%の預金者にもたらします。そして何度もご紹介円>ドル>ユーロ>新興国通貨」(実質利回りが大きい順)が教えるとおり、円預金は、どの外貨よりも実質の利回りが大きいわけです。おそらく円のキャッシュ(名目金利0%!)でさえ、長い目で見ればドル預金などよりも実質には「高利回り」となるでしょう(ニクソン・ショック前まで1ドル360円→アベノミクス直前は同80円以下!)。ゆえに日本国民が相変わらず円預金を自身の資産の中心に据えているのは至極合理的な判断といえるでしょう。

 当然ながら上記の公的な(?)「株セールスマン」たちにとって、これは面白くないはずです。そこで、もっと国民のマネーを「貯蓄から投資へ」シフトさせないと・・・ということで日銀が金融政策を緩和方向に持っていったら・・・円のキャッシュが株へ向かう・・・のではなく、日銀の当座預金口座に大量流入する事態になってしまいました。これが意味するのは、それまでは国債の「投資」に充てられていた数百兆円もの円貨が、同口座に「ブタ積み」されてしまったということ。日銀はその後、マイナス金利政策まで導入したわけですが、このまま超低金利環境が続けば、金融機関の多くが新規の預金を受け入れなくなって、その結果、行き場を無くしたかなりの円貨が「タンス預金」に入ってしまう可能性があります・・・(?)

 上記の日銀当座預金とタンス預金に入るおカネは、いわば「死に金」。要するに、本来ならば市中金融機関を介して国債や融資等の「投資」(≒経済活動)に回る「生きた」おカネだったものが、何らの経済活動にも使われることのない「死んだ」おカネになってしまうことに。これ、「カブノミクス」(アベノミクスの私的造語:取り柄は「株のみ」)の「株セールスマン」たちが「投資」を煽った結果、というのも、これまた皮肉ですね・・・

(続く)

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【カブノミクス「貯蓄から投資へ」も貯蓄がいまだ過半数…】「株セールスマン」に占拠された?経済政策⑤

2018-10-17 00:04:25 | 日本

前回からの続き)

 本稿では、株セールスマン」が、「エコノミスト」等の肩書で、フランチャイズの金融業界を越えて各方面に活動の場を広げているようすを綴っています。前述のように、いまの経済学界では学者を名乗る方々の多くが株セールスマンですし(?)、政府・日銀の幹部もまた大半が(?)株セールスマンといえるでしょう(?)。なぜなら各位が推進する「アベノミクス」は「株のみ」が取り柄の「カブノミクス(私的造語)だからです・・・

 このあたりを窺わせるところはたくさんありますが、ここでは有名な(?)「貯蓄から投資へ」というスローガンを例に上げておきます。これ、じつは2000年代初めの小泉政権次代に誕生したものだそうで、安倍政権のオリジナルではありませんが、上述したとおり、アベノミクス(≒日銀「異次元緩和」)が始まってから株価が大きく上昇し、その点に限れば結果的には大きなプラスだから、実質的にはアベノミクスの掛け声といってもいいでしょう。つまり・・・国民の皆さん、これまで預貯金に回していたおカネでもっと株を買いなさい、株式市場にマネーが流入するよう、そして株投資のハイリターンが期待できるよう、日銀金融政策によって名目金利を引き下げるから―――というカブノミクスならではのメッセージがこのスローガンには込められているはずです(?)。

 ところで・・・「貯蓄から投資へ」って、厳密には正しい言い方とはいえません。経済学では貯蓄(S)=投資(I)だからです。家計が「貯蓄」にはげもうと、手元のおカネを銀行に預金すると、銀行はそのおカネを、国債とか住宅ローンなど、何らかの利回りが得られる対象に「投資」します。このように、貯蓄されたマネーは金融機関を仲介して投資(≒経済活動)に回るためS=I、つまり貯蓄だって立派な投資であって、お互いに別物ではない、ということは、後述することからも、しっかりと認識しておくべきかと思います。

 で、その投資ですが、上記のとおりアベノミクスでは「株に投資すること」に等しく、先般ご紹介の上のグラフを見ても、この点に絞れば、実際に高いリターンをゲットできたので、これは成功しているといえそうです(円、ドルの双方の評価でもプラスを達成)。いっぽうで、家計金融資産額の全体(薄いグレーの部分)に占める株(濃いピンクの部分)の割合はけっして大きくはないこともはっきりと分かります(円、ドルともに14.9%:20186月時点)。ではグレーは何か、といえば・・・その多くが引き続き「現金預金」すなわち「貯蓄」となっているわけです。その同全体中の割合は円、ドルともに52.5%(同)と、株よりもずっと大きいまま。これ、カブノミクスの株セールスマンたちにとっては、「貯蓄から投資へ」―――マネーを貯蓄から株投資にいっそうシフトさせようという所期の目的が、まだまだ道半ば、といったあたりになるでしょう。

(続く)

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【名門大経済学部の教授も「株セールスマン」化?】「株セールスマン」に占拠された?経済政策④

2018-10-15 00:01:07 | 日本

前回からの続き)

 本稿のテーマである株セールスマン」(≒内外の金融機関等に所属し、投資家相手に株やら外債などのリスク資産を売り込むことを生業とする方々)ですが、アベノミクス以降、本来の金融界ばかりか経済学界、そして日本経済のマクロ政策を展開する政府・日銀にまで活躍(?)のフィールドを拡げているといえます。

 で、その経済学界では、たとえば・・・アベノミクスは理論的には100%正しい―――これは「慶應義塾大学経済学部」教授がアベノミクス当初に語っていることです。そして前「早稲田大学政治経済学部」教授はアベノミクスが日本を救ったとの主張を著書で展開しておられます。で、これらにおいて両者が真っ先に上げるのは、日銀の金融緩和。これが株価の上昇と円安をもたらしたことをアベノミクスの成果として(?)非常に高く評価しているわけです。これ、本稿で述べてきた「株セールスマン」と同じ考え方です。すなわち株↑円↓なのでOKということ。

 シツコク繰り返しますが、アベノミクス開始以降、わが国のGDPは20%以上も失われ、前述のとおり家計金融資産額は10%近くも減少し、勤労者の実質賃金は大きく減って、その逆にガソリン代に代表される原材料価格は円安で上昇し、エンゲル係数は悪化しました。そんななか、アベノミクスはGDPの主役・個人消費を冷やすべく(?)よりによって消費増税を強行。これと輸入インフレとのWパンチを食らえば、わたしたちの日々の生活は・・・っていったあたりが、アベノミクス下のいまのわたしたちが肌身で感じる経済の実態でしょう・・・

 ・・・って、つい書き過ぎました。アベノミクスが実体経済に与えたマイナスのインパクトは、このようにデカいわけですが、上記、有名私立大学の看板学部でもある経済学部の教授(後者は現・日銀審議委員)が、アベノミクスは正しい、などと語れば、世間も、そうなのかな、と思うでしょう。でもその「正しい」とは先述のとおり本来のエコノミストとしてではなく株セールスマンとして「カブノミクス」(アベノミクスの私的造語:取り柄は「株のみ」)は「正しい」といっているに近いはず。それとも各位は本心からアベノミクスのことを、マクロ経済政策として「正しい」とか「これ以外にない」(There is no alternative)と力説しているのでしょうか? もしそうだとしたら、名門大の経済学者なのに基本的な統計を見ていないだけなのかもしれないし・・・上記結果から見れば、皮肉以外の何ものでもないでしょうね・・・(って、「それはアベノミクスが中途半端だからだ!」などと反論されそうですが?)

(続く)

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【「株セールスマン」、今夜もTV経済ニュースに降臨して…】「株セールスマン」に占拠された?経済政策③

2018-10-13 00:03:46 | 日本

前回からの続き)

 前回ご紹介の、アベノミクス前後(201212月末と今年6月末)の家計金融資産額の比較を示す上の2つのグラフ(円額・ドル額)で分かることは、各資産項目のうちで「株式・投資信託等」だけが両方ともに大幅な増加率(円65%、ドル26%)を達成していることでした。本ブログで「アベノミクス」は「カブノミクス」(私的造語:取り柄は「株のみ」)としばしば言っていることがここに表れているわけです。そんなことで、上記グラフでは株のところを目立つ濃いピンクに、いっぽうで本当に大事な金融資産総額部分(世界の目線[ドル]からみれば日本の家計はアベノミクスで10%近くも減らしていることが分かる)は・・・カブノミクス関係者は誰も気づいていない(?)だろうな~という憶測を反映させて、あえて印象の薄いグレーにしてみた、という次第。

 で、先述「株セールスマン」(≒市場関係者:国内外の金融機関等に所属し、レポ-トや講演等を通じて投資家に株をはじめとするリスク資産を売り込むことを本業とする人々)は当然ながらこれを高く評価することになります。そして各位は、今宵もTVのビジネスニュースに降臨し、アベノミクスの株高・・・とこれに必然的に伴う円安(がもたらす輸入インフレ)を、じつにポジティブに(その逆の場合は「円高リスク」などといったワードを使ってネガティブに)語るわけです、〇〇証券の「シニア・エコノミスト」とか、△△投資銀行の「チーフ・アナリスト」みたいな、何ともクールかつ経済専門家チックな(?)肩書で・・・って、その内容は多くの場合、マクロ経済分析などとは程遠く、各位の本性「株セールスマン」としてのセールストークだったりしますが・・・(?)

 で、これらを聞くお茶の間の視聴者の大半は、天邪鬼なわたしと違って素直に、そうか、「エコノミスト」を名乗る方々がこうしてアベノミクスを好意的に捉えているのだから、日本の経済状態はいいんだな、みんなリッチになっているんだな、よってアベノミクスや日銀の政策を支持していいんだな、なんて思うのかもしれません(?)。それと同時に・・・それにしては、自分はちっとも豊かになった実感が持てないな~・・・って、それはそうでしょう、上記ドル換算グラフの薄グレー部分こそがわたしたちの真の資産状況なのだから・・・

 本来、メディアの経済コメンテーター、そして政府や中銀の政策担当者、すなわち上記セールスマンとは違う本当の意味でのエコノミスト等ならば、経済政策の成否はマクロ経済指標で判断するべき。つまりそれはGDPであり、実質賃金であり・・・本稿でいえば株のみならず預貯金等を含めた金融資産の総額がグロス/ネットで増えたのかどうか、といったあたりになるでしょう。けれどアベノミクスはカブノミクスです。したがってファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)なんぞはどうでもよく(?)、上記のように株、そして外貨建て資産等の価格が上がりさえすればOK、たとえそれらが円が安くなったことで価値が増えたように錯覚しているに過ぎない(ドル評価額は変わらない、あるいは下落した)ものであっても・・・となるわけです・・・

(続く)

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【アベノミクス前後で円・ドルの双方で増加したのは「株のみ」】「株セールスマン」に占拠された?経済政策②

2018-10-11 00:00:19 | 日本

前回からの続き)

 アベノミクス」の唯一の取り柄は「株のみ」、だから「カブノミクス―――本ブログで何度もこう書いているところですが、本稿の文脈に沿って、アベノミクスがいかにカブノミクスなのかをあらためて以下、表現してみましょう。

 このグラフは、わたしたち日本人の家計の円建て金融資産額をアベノミクス前後で比較したものです(出典:日銀資金循環統計、以下同じ)。アベノミクス開始直前の201212月末時点の総額は1547兆円だったものが、アベノミクス後の現時点(20186月末)では1848兆円と、この5年半で19%あまり増えたことになります(薄いグレーの部分)。ここで注目するべきは、上記の濃いピンクで表示された「株式・投資信託等」です。これはアベノミクス前167兆円→同後276兆円と、上記の総額をはるかに上回る65%もの増加率を示しました。この間、国民の資産のうちの株の評価額がいかに膨らんだのかが分かるというものです。

 次のグラフは上記をドル換算して表示したものになります。201212月のレートは同月平均レートの1ドル83.65円、20186月のレートは同110.03円で計算しています(アベノミクス前後で約24%、円安ドル高になっている)。ここで、株式・投資信託等の額はアベノミクス前2兆ドル→同後2.51兆ドルと、上記の円額には及ばないものの26%ほども大きく増えました。

 他方、上記の表のとおり、株以外の現預金、保険等のドル換算額は軒並みアベノミクス後で大きく下がっています。その意味するところは・・・これらが上記の円の対ドル下落率を上回るリターンを達成できなかった、ということ。そんなことで金融資産ドル換算総額5年半前より9.2%も減ってしまいました。円建てでは上記のように2割近くも増えたのに、価値の国際基準ドルで測った額はこうして下がった・・・ってことは、こちらの記事等でアベノミクス・・・を実質的に推進する日銀の黒田東彦総裁のお名前にちなんだ黒田魔術、略して「黒魔術」と呼んだ、まさにそのこと―――「得した(円建てでは増えた)ように見えて、本当は損(ドル換算額では減少)をしている」が、よりによって、わたしたちの「虎の子」(家計金融資産)において実現していることになるわけです・・・(もっともこの間、円がドルに対して20%以上も安くなったのに、ドル換算の資産総額の減少率はそれよりは上の9%にとどまっているのだから、わたしたちはアベノミクスの逆風の中でも、その差分だけ資産額の減少を食い留めるべく蓄財に頑張った、ともいえそうだが・・・)

 このようにまとめると、本当のところ日本人はアベノミクスでけっして豊かになってはいない・・・というよりはむしろ逆に、アベノミクスのもとで資産額の実質的な目減りに苦しめられている、ということが分かります。けれどアベノミクスは「カブノミクス」だからこれでOK。なぜなら上記のように「株のみ」は、アベノミクス前後で円建て・ドル建ての双方で高いプラスのパフォーマンスを演じたためです。したがってカブノミクスとしては成功だし、前述の「株セールスマン」たちは、各メディア等を通じて、これを大いに評価することに・・・って、その肩書「エコノミスト」「アナリスト」などとして・・・

(続く)

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