スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

カーンの雑感⑦&区別と存在

2021-04-27 19:05:05 | NOAH
 カーンの雑感⑥で詳しく示したように,吉村道明の引退の時期や,日本プロレスの崩壊の時期が,カーンのプロレス人生に大きな影響を与えました。ただカーンは,もしもこの当時の自分に度胸があって,ひとりで馬場のところへ行っていれば,また違った人生になっただろうとも語っていて,そのことはカーンにとって仕方がないことであったということよりは,後悔するような出来事であったようです。
 吉村道明を慕っていたジョー・樋口は,日本プロレスを退社して全日本プロレスに入団しました。そしてカーン自身も全日本プロレスにいきたいという気持ちを吉村に打ち明けていて,吉村もそれにとくに反対はしていなかったようです。ですから仮にカーンが吉村が引退する前に全日本プロレスへ移籍することを決断したとしても,それは必ずしも吉村を裏切ったということにはならなかったでしょうし,吉村もその決断を強く慰留するようなこともしなかったろうと思います。一方,日本プロレスが崩壊したときにはカーンは坂口征二の付き人だったわけですが,馬場と坂口の関係というのは良好だったわけですから,そのときにカーンが坂口に対しても吉村にしたのと同じように自身の本心を打ち明けていたなら,坂口もカーンが全日本プロレスにいくことを許したのではないかと思われますし,馬場もきっと快く受け入れることができたのではないかと推測されます。ですからカーン自身がいうように,もしカーンがもっと強いアクションを起こしていれば,新日本プロレスにはいかずに全日本プロレスで仕事をしたという可能性が高かったでしょう。そして実際にそういう機会が少なくとも2度はあったということになります。
 カーンが実際に全日本プロレスで仕事をするようになったのは1985年です。これはジャパンプロレスの所属選手という形でした。カーンはその初日に,馬場の控室まで出向いて挨拶をしたそうです。そのときの馬場がニコーっと笑った表情を,カーンはよく覚えていると語っています。その笑顔を見て,全日本プロレスに来ることができてよかったと思ったそうです。

 とくに無限知性intellectus infinitusによってそれが区別できないのではなく,どのような知性によっても区別することができないということは,実際には柏葉も認めています。そしてこの点では僕も柏葉に同意します。ただ柏葉は,この区別distinguereの不可能性を,存在論的問題と関連付けています。僕はこちらの点には同意しません。具体的にいうと,柏葉は区別が不可能であるものは端的に存在しないと主張します。存在しないものを区別することは,どのような知性にとっても不可能だといわなければならないでしょう。いい換えるなら,それが非存在であるということが,区別の不可能性の根拠として呈示されているのです。僕が同意できないのはこの部分です。
                                        
 第二部定理八は,存在しない個物rerum singulariumや様態modorumの形相的本性essentiae formalesが,神の属性Dei attributisの中に含まれているといっています。また,第一部定理八備考二では,存在していない様態的変状modificatioの真の観念idea veraを僕たちは有することができるといわれています。これらのこと,といっても論文の中で指摘されているのは前者だけで後者については柏葉は何もいっていないのですが,こうしたことから,スピノザの哲学における存在existentiaというのは,現実的存在のことだけを意味すると柏葉は主張します。他面からいえば,存在しないものの形相的本性は神の属性の中に含まれていますし,それと同じように存在しないものの観念は神の無限な観念の中に包容されているのですが,それは含まれているとか包容されているということだけを意味しているのであって,存在しているという意味ではないというのが柏葉の主張の中心になります。これは厳密にいうとやや乱暴な要約になるのかもしれませんが,少なくとも僕のように,柏葉とは異なった見解opinioを有する立場からすれば,柏葉はそのように主張していると解さざるを得ないのです。
 第一部定理八備考二の方は,存在しないというのが現実的に存在しないという意味であり,それ以外の仕方では存在するということが明確にいわれているわけではありません。ですがそれがほかのものによって概念するconcipereことができるようになっているといわれていて,このことは,そのものが何らかの仕方で存在しているのと同じと僕は解します。
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