スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

王位戦&訪問と文通

2020-08-21 19:08:54 | 将棋
 一昨日と昨日,大濠公園能楽堂で指された第61期王位戦七番勝負第四局。
 木村一基王位の先手で相掛かり。後手の藤井聡太棋聖が横歩を取る展開に。今日はこの将棋そのものとは別の話をしようと思います。
                                        
 第1図はこの将棋の封じ手の局面。常識的には☖2六飛ですが,AIが☖8七同飛成を最善手として示していたこと,また,王位戦は1日目の午後6時の時点で手番の棋士が封じることになっていますが,午後6時を過ぎても20分ほど後手が考えた上で封じたことも相俟って,2日目は朝からどちらが封じ手として選ばれているのかということが注目の的に。果たして封じ手☖8七同飛成でした。
 こうした楽しみ方はAIの棋力が相対的には人間の棋力を凌駕したがゆえに生じることとなったものだといえます。しかし一方で,もしAIというものが存在せず,☖8七同飛成という手に気付く人間がごく少数であったとしたら,封じ手が☖8七同飛成であったときに僕たちが受けた衝撃はもっと強烈だったと推定されます。
 ここから分かるように,AIが強くなったことによって,新たに得られることになったものもあれば,失われてしまったものもあるのです。このとき,AIは今後も存在し続けるのですから,失われたものについてそれを嘆くよりは,そのことによって新たに獲得されたものを生かしていくということが,古くからの将棋ファンにも求められているのだと僕は考えます。AIとの共存というのは,棋士にだけ妥当するのではなく,ファンにも問われていることなのではないでしょうか。
 しかしそこには留意するべき点もあります。僕は第四部公理と人間の精神という表題で,『エチカ』の第四部公理は人間の身体にだけ妥当するのではなく人間の精神にも妥当するのだといいました。実はそのとき僕は,AIの棋力が人間の棋力を相対的に上回るということを念頭に置いていたのです。ですがこの公理は,すべての個物に該当するのですから,実は個物であるAIにも該当します。つまりどんなAIにもそれを凌駕する知能があるのです。簡単にいえば,第1図で☖8七同飛成を最善手とするのは,現在のAIの判断なのであって,何年か後のAIは☖2六飛を最善手として認知する可能性があるということは,AIと共存して将棋を楽しんでいく場合にも,忘れてはならないことでしょう。
 実戦は第1図の後,先手に受けの誤りが生じたこともあり,後手の攻めが繋がって勝っています。
 4連勝で藤井棋聖が王位を奪取。通算2期目のタイトルを獲得し,八段に昇段しました。

 ライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizがオランダを訪問した最大の目的は,スピノザとの面会であったと思われます。ライプニッツはそのための準備として,スピノザと面識があった人物を事前に訪ねたとするのが妥当な解釈だと思います。ですからそうした人物に対しては,その後でスピノザと会うということをライプニッツは伝えたとするのが妥当です。それを伝えることによって,ライプニッツはスピノザと面識があった人びとからの協力を得やすくなるからです。もちろんライプニッツは,事後にスピノザとの面会を否定したように,自身がスピノザと会うことについては,この時点でも秘匿しておきたいと思っていた可能性はあります。しかしスピノザと面識のある人物,とくに親しい人物に対しては,それを伝えたとしても,極秘の情報として守られる可能性が高いでしょうから,ライプニッツはスピノザと会うことは,面会の相手に伝えたと僕は推測するのです。したがって,スピノザとライプニッツが面会したという事実を知っていた遺稿集Opera Posthumaの編集者は,シュラーGeorg Hermann Schullerだけでなく,マイエルLodewijk MeyerもイエレスJarig Jellesも同様であったとしておきます。何度もいっていますが,これは僕が作る物語なのであって,歴史的事実がそうであったということを強硬に主張しようというものではありません。
 ただしこのことは,ライプニッツとスピノザとの間で文通があったということが,シュラーやマイエル,イエレスの間で共有されていたということにはならないと僕は考えるのです。いい換えれば,シュラーはスピノザがライプニッツと手紙のやり取りをしていたということは知っていたのですが,マイエルやイエレスはそれを知らなかったのではないかと僕は推測します。スピノザを訪問するということは伝えたとしても,以前に文通をしていたということはライプニッツは秘匿しておいたのではないでしょうか。このことについてはとくに伝えなくても,スピノザに関する情報を提供してもらうということはできたと思われるからです。
 書簡四十五を読む限り,ライプニッツは秘密裏にスピノザと文通をしたいと思っていました。そして書簡四十六から推測されるのは,スピノザはそれに応じたということです。
コメント
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