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スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

書簡三&解決策

2020-01-23 19:15:56 | 哲学
 日付が明記されていない書簡二が書かれた時期を想定するのに役立つ書簡三は,1661年9月27日付でオルデンブルクHeinrich Ordenburgからスピノザに出されました。遺稿集Opera Posthumaに掲載されたものです。
                                        
 この書簡ではオルデンブルクは3つの質問をスピノザにしています。最初の質問は,神Deusの定義Definitioから神の存在existentiaが証明できるのはなぜかというものです。ただこのときオルデンブルクは,一般的にあるものに定義が与えられると,その定義によってそのものの存在が導出されるということと,神の定義から神の存在が導出できるということを明らかに混同しているといえます。
 ふたつめの質問は,物体corpusが思惟Cogitatioによって限定されることはなく,また思惟が物体によって限定されることもないということがいえるのはなぜかというものです。
 最後の質問は,『エチカ』の冒頭部分と明らかに関係性を有しています。この質問は,第一部定理一,第一部定理二,第一部定理三について,その正当性を問うているといえるからです。
 オルデンブルクが『エチカ』の草稿を読んでいたということは考えられません。ただスピノザは,『エチカ』に記述したことについて,そのいくつかはオルデンブルクに明かしていたということが,このオルデンブルクの質問によって明白になります。最初の質問も第一部定義六と明らかに関係しているといえますし,ふたつめの質問も第一部定義二の内容をオルデンブルクが知っていなければ出てこないと思われるからです。ですから少なくともこの時点でのスピノザは,オルデンブルクにはこれくらいのことは伝えても問題ないであろうと考えていたことになるでしょう。

 第一部定理二二では,直接無限様態のことが,様態的変状modificatioに様態化した限りでの属性attributumというように表現されています。同じようないい方は第一部定理二三ではもっと明瞭にされています。よって,ある属性の直接無限様態とは,その直接無限様態という様態的変状に様態化した限りでのある属性と解することができます。ですから,思惟の属性Cogitationis attributumの直接無限様態である無限知性intellectus infinitusあるいは神Deusの無限な観念ideaとは,直接無限様態という様態的変状に様態化した限りでの思惟の属性と解することができます。あるいはある属性の個物res singularisの形相的本性essentia formalisがその属性の中に含まれているということを,実際にはその属性の直接無限様態という様態的変状に様態化したその属性の中に,その属性の個物の形相的本性が含まれていると解することもできることになります。そのように考えれば,第二部定理八でいわれていることが,第二部定理七からの帰結,すなわち観念と観念対象ideatumは秩序と連結Ordo, et connexioが同一であるということ,いい換えれば観念と観念対象は同一個体であるということからの帰結であるとしても,それほど不自然ではないということになるでしょう。
 実際には,属性と直接無限様態は,同じように無限でありまた同じように永遠aeterunusであるとしても,その意味合いには大きな相違があります。すなわち属性はその本性によって無限かつ永遠であるのに対し,直接無限様態は属性の絶対的本性から発生するがゆえに無限かつ永遠である,いい換えるならその原因causaによって無限かつ永遠であるからです。この相違は無視することができない相違です。なぜなら属性は自己原因causa suiである,つまりほかのものがなくてもあることも考えるconcipereこともできるものであるのに対し,直接無限様態は自己原因ではなく外部に原因を有する結果effectusとして生起するもので,よってほかのもののうちにありほかのものによって考えられるものであるからです。この相違が無視できないということは,第一部公理一から明らかです。
 さらにいうと,自然Naturaを分類化して概念するとき,属性は能産的自然Natura Naturansに該当するのに対し,直接無限様態は所産的自然Natura Naturataに該当します。これも第一部定理二九備考から,無視するわけにいかない重要な相違です。
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