スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋王戦&思惟の様態の訳語

2016-03-06 20:26:22 | 将棋
 新潟で指された第41期棋王戦五番勝負第三局。
 佐藤天彦八段の先手で渡辺明棋王ごきげん中飛車。①-Aから4筋で銀が向かい合っての相穴熊になりました。
                                    
 もう戦いが始まった後で,ここは手段が多そうな分だけ先手の方がいいのではないかと思えます。
 すぐに銀は取らず▲6五歩と突きました。後手は△3六歩しかないところ。先手はここで▲5三歩成と銀を取って△同角に▲5四銀成。後手の△5二歩には僕は驚きました。ただ▲4五桂と跳ねているのは継続手とも思えるので,先手としては予想通りの進行だったかもしれません。
 △同歩に▲6四歩と取り込んだとき△同飛と取ってしまったのも僕には驚き。先手は▲5三成銀と角の方を取りましたが,飛車を取るよりはよかったように思えます。
 △同歩のときに▲5五角と出て△6三歩▲6四角△同歩の飛車角交換の順に進めたことの是非は僕には分かりません。ただこう進めたのなら▲3一飛と打ち込むのは当然に思えます。
 △3七歩成のとき▲2一飛成と桂馬を取ったのは失敗だったかもしれません。これで飛車の丸得なのですが△8三銀打と固められ,すぐに攻め続けられないので▲2九飛と逃げることになりました。
                                    
 第2図は大きな駒損でも,手番を握った後手が攻めながらそれを徐々に解消できる局面になっているようです。手数は長くなりましたが,第2図で後手がよくなっているのではないかと僕は思いました。
 渡辺棋王が勝って2勝1敗。第四局は21日です。

 共通概念はnotiones communesの訳語でした。この点も現在の考察と関連するかもしれません。
 岩波文庫版の『エチカ』で概念と訳されているラテン語にはconceptusとnotioのふたつがあります。このうちconceptusの方は第二部定義三説明で,知覚perceptioの対義語として,精神の能動によって生じる思惟の様態とされています。『エチカ』の全体で必ずしもこのことが遵守されているとはいえませんが,概念と知覚を分節するためという規定だけは与えられていることになります。
 したがって,conceptusとnotioの間にどういう相違があるのかということに関しては,さほど神経質になる必要はありません。とりわけ現在の考察ではそういえます。notioといわれている場合には一般的な思惟の様態全般を意味するのに対して,conceptusというのはそのうち精神の能動によって生じる思惟の様態であるというように理解しておいて構わないからです。
 ですが,一般的な思惟の様態のすべてが概念notioといわれているわけではありません。第二部公理三の意味から分かるように,思惟の様態の第一のものは観念ideaといわれ,観念もまた一般的な思惟の様態であると解さなければならないからです。なので一般的な思惟の様態を意味する語句として,notioとideaとの間にどんな相違があるのかということは考えておく必要があります。
 これを考える必要があるというのは,そもそも岩波文庫版における畠中の訳語の選択からして明らかなのです。なぜなら畠中はconceptusとnotioには同じように概念という訳語を与えました。これは訳されるに相応しい日本語の語彙の数の関係もあるでしょうが,conceptusとnotioの相違はそうも問題にしなくてよいと畠中が解していたと考えられるからです。しかしideaにはそれと同じ訳を与えるのは適切ではないという判断があったために,それは観念と訳されたのです。もし問題が生じるなら,conceptusとnotioにも何らかの違った訳を与えた筈だといえるでしょう。
コメント
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