スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦&ステノの奇蹟

2015-10-17 19:52:10 | 将棋
 一昨日,昨日と宇奈月温泉で指された第28期竜王戦七番勝負第一局。対戦成績は糸谷哲郎竜王が2勝,渡辺明棋王が4勝。
 振駒で渡辺棋王の先手。糸谷竜王の横歩取りは意外な戦型でした。早い段階での戦いとはならず,後手が玉を美濃囲いにしたので,途中からは後手の角交換振飛車みたいな将棋に。
                         
 ここで後手が△3五歩と打ち,一直線の戦いに。▲3三歩成△3六歩▲3二と△3七歩成▲5八銀△3八と▲同角△4八金▲5六角△同飛▲同歩△5八金と後手の銀得の分かれに。この手順は後手の方が避けられなかったようです。
                         
 駒損とはいえと金があって手番なので,先手も十分に戦える筈の局面。▲2一飛と打ち,△3二銀▲1一飛成と駒を取り返す順を選択。後手が△8三歩と受けたところで▲3一龍の銀取り。この銀は受けにくく,先手はこれに期待して第2図ですぐに飛車を打ったものと思われます。ただ実戦はこの銀をなかなか取れない進展になったので,第2図ではと金を生かす▲4二との方がよかったかもしれません。
 受けられなければ攻めるほかなく△7九銀。▲7九金△4七角▲3九飛△3八歩▲2九飛△8五桂と進展。そこで▲6七金と投入して受けたのはあまりよい手でなく,▲6八銀と逃げるのが最善だったようです。確かに△7七桂成▲同桂に△3五角と自陣の角を使えて,後手の攻めが切れてしまうような心配がなくなったので,そこでは先手が容易に勝てる局面ではなくなっているように思えます。
 先手は銀は取らずに▲8六桂。△4六角▲5七香△4八銀と進みました。
                         
 確実ではあるもののおそろしく鈍重な攻めなのでまだ先手が何とかできそうにも思えます。▲8五桂がよかったようですが,▲7四桂打と直接的に攻めに出ました。その局面ではきわどいながら後手の勝ちとなっているようです。
 糸谷竜王が先勝。第二局は29日と30日です。

 ステノが意図していたか分かりませんが,僕が読解する限りでは書簡六十七の二には,ステノが改宗した動機の告白が含まれています。
 かつてスピノザとステノの間で哲学的対話が交わされたとき,スピノザは真理性が観念の内的特徴に依存することを話したと思われます。ステノもスピノザがそう考えていることは理解できましたが,ステノ自身は,内的特徴だけで真理性を確信できませんでした。とりわけ神のように,容易には表象することができない観念対象ideatumの場合に,顕著に感じられたことではなかったかと僕は推測します。このためにステノは,こうした対象に関しては,真理を外的特徴から判断したいと思っていた,より正確にいえば,真理性を確信できるような事柄を探求したいと思い,それを結果的に外的特徴に求めることになったと思われます。
 ステノは奇蹟を超自然的現象と把握していましたが,実際に書簡で示しているのはそういう類の現象ではありません。長いこと放蕩に耽っていた人間が,カトリックの教義によって一夜にして徳のある人間へと変貌することを,この上ない奇蹟であると考えていると述べているからです。でもステノにとっては奇蹟でしたから,それがカトリックは真の宗教であるということの,外的特徴になり得たのです。
 こうしたことが実際に生じたということは,否定することができないと僕は考えます。僕がこれを超自然現象とみなさないのは,ステノがいうような意味での人間の精神の状態の変化とするなら,第二部定理九によって論理的に説明可能な事柄,いい換えれば神の本性の必然性に則した事象であると考えるからです。ですがこの定理を具体的に現実的に存在するある人間に正しく適用することは人間の知性には困難です。ですからこの変化がステノには超自然的現象,すなわち奇蹟のようにみえたのです。
 つまり,スピノザと関係を有していた時代から,ステノには真理を確証できるような外的特徴を知りたいという欲望があったのだと僕は思うのです。そしてことによるとこの欲望は,スピノザと哲学的会話を交わしたからこそ,ステノに芽生えたものだったかもしれません。
コメント
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