浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

サピエンス全史

2017-03-30 23:20:11 | 
あのね、とっても面白かったです。ずいぶん売れている本なようで色んな書店で平積みされている。


サピエンス全史(上) 文明の構造と人類の幸福

僕自身は世界史とか地理とかそんなに知識が無い。北京原人とクロマニヨン人がどう違ってて、それらがどう今の人類につながってるのか、というのも実はあまり良くわかっていない。(つくづく、ちゃんと勉強しとくべきだったよな)

特に、この本の最初のほうが興味深かったです。

この本によると、ホモ・サピエンス(つまり我々)の歴史には大きく3つの革命があったと。それは「認知革命」「農業革命」「産業革命」の3つ。農業革命と産業革命はなんとなく分かるけど、認知革命ってなんだよ、って話になるよね。その部分がたいそう面白かった。

言葉、あるいは言葉的なコミュニケーションを出来る動物は結構いる。(本当は「口頭言語」と書いてあるけどまぁ分かりやすく、「言葉」で) 例えばある種の猿は「気をつけろ、ワシだ!」という意味の鳴き声を出すことが出来るらしい。そして「気をつけろ、ライオンだ!」という鳴き声も出すことが出来る。「ワシだ!」「ライオンだ!」という鳴き声を録音しておいて、その猿の群れに聞かせると「ワシだ!」と言われた時は上を見上げ、「ライオンだ!」と言われたときには周囲を見回すらしい。

つまり「言葉自体」はホモ・サピエンスの専売特許ではない。では、ホモ・サピエンスしか出来ないことは何か。それはつまり「虚構」を組み立てられるということ、もっと簡単に言うと「嘘をつける」ということ。

つまり「気をつけろ!ライオンだ!(ライオンが実際にいる)」ということは猿でも言える。だけど「ライオンは我が部族の守り神だ」はホモ・サピエンスしか言えない。後者はある意味、「嘘」だから。で、更に言うとこの「虚構」のポイントは、「言ってる本人もそれを信じている」というところにある。

例えば先程のある種の猿は「気をつけろ!ライオンだ!」と嘘をつくことも出来る。その嘘をついて他の猿が逃げ出した後にそこにあったバナナを独り占めするために。この場合、嘘をついた猿は自分で「嘘だ」と分かっている。だけどホモ・サピエンス独特の「虚構」のポイントは「言っている本人もその嘘を信じている」という点。この本の中では「想像上の現実」と言っている。

空想上の現実とは、例えば、「天国と地獄」とか「神は実在する」とか。もっと言ってしまうと「お金」や「会社」というものだってある意味「想像上の現実」のひとつ。「小さな紙一枚に1万円の価値がある」というのは現実には嘘(実際の紙1枚の価値は印刷代含めても何十円程度)、「会社という組織」だって目に見える形では存在しない、目に見える例えば「社員」や「オフィス」自体は「会社」ではない。

ホモ・サピエンスが発明した大きなものの一つに「貨幣」があるのでそれを例に取るけど、「1万円札が実際には数十円程度の価値しか無い」というのは誰でも分かっている。だけど「これには1万円の価値がある」という虚構、つまりある意味「嘘」を全ての人が信じている。だって町で1万円払って相手が「ちょっとまってよ、これ数十円の価値しか無いでしょ。もっとちゃんと価値あるもん(なんだろ、リンゴとか貝殻とか?)ちょうだいよ」とか言い出したらもうなんか無茶苦茶になっちゃう。

こういう「想像上の現実」を作り、信じ、広げる力がホモ・サピエンスの特徴、、という話。

なるほどねぇ。


あと、この本の良いところをもう一つ、特筆しておきたいのだけど、翻訳が素晴らしいと思います。原文はもちろん読んでないから分からないのだけど、こういう系の本ってなんか難しかったり読みづらかったりするじゃん。だけどこの本はすごく読みやすい日本語でサクサク読み進められた。その点でもオススメです。
コメント
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