浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

粋な枕

2008-03-11 23:55:47 | 
昔、浅草のいきつけのすし屋のカウンターで昼過ぎに飲んだくれてたら、着物のおじいさんががらりと入ってきた。

おじいさん、と言っても背筋はピシッとしていて、仕立ての良さそうな着物を着て、マフラー、高そうな帽子、使い込まれたステッキ、という出で立ち。

帽子を軽く取って板前さんに目で挨拶をし、帽子とマフラーを店員さんに預けカウンターの一番奥に座った。

お茶を持ってきた店員さんに静かな声で注文をし(僕からは少し離れていたので声は聞こえなかった)その後、一言も喋らずお茶を飲んでいた。

しばらくするとお寿司が運ばれ、おじいさんはもぐもぐとそれを食べ、来たときと同じように会計をし、板前さんに挨拶をし、去っていた。

それを見ていた僕は「うーん、江戸っ子らしい粋なおじいさんだな」と思っていたんだけど板前さんが「あの方、ご存知ですか?」と僕に聞いてきた。

知らないです、と答えると「落語家の○○師匠です」とのこと。

どうやらその寿司屋の常連のようで高座の前には頻繁に来ているらしい。


僕自身は田舎者なので何と言うか江戸っ子と言うか粋な人には素直にあこがれてしまう。粋な江戸っ子と言えば落語家ですね。

一番好きな落語家は古今亭志ん朝。いいよね~、まさに江戸っ子という感じで。

ということで前回に引き続き今回のランチタイム本(一人でランチ取るために本屋で仕入れる本)は古き良き日本、という感じ。

古今亭 志ん朝
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どうやらこのシリーズ5、6冊出ているみたいなんだけどまずは1冊目、テーマは「男と女」。崇徳院や明烏なんかが入ってていいです。

落語で僕がすきなのは、枕(最初)の部分で川柳とか言うじゃないですか。これが妙に粋で好き。

こんな感じ。

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(病気にも色っぽいのとそうでないのがある、と言った後で)なんと言っても色っぽい病は「恋煩い」ですな。「夏風邪と 答えて後は 涙かな」ってなことを申しまして…
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花魁には「この人」と決めた客がいるもんですな。俗に言う「まぶ」ってェヤツです。「星の数ほど 男はおれど 月と思うは主ひとり」なんてェことを申しまして…
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いちいちこういうのかっこいいな。そもそも落語家なんていう商売は何を生み出すわけでもなくて必要ない仕事と言えば必要ない。だからこそかっこいいんだろうな。