さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

もどかしくも懐かしい 長谷川穂積、調整試合でKO勝ち

2013-04-27 15:56:33 | 長谷川穂積

一応、というのもなんですが、昨夜は神戸にて観戦してまいりました。

長谷川穂積の調整試合、相手のタイ5位が「ウィラポン」という名の選手でしたが、
当然ながらあのお方とは似ても似つかぬ選手でした。

とはいえ、リーチと懐の深さがあり、長い右ストレートが少しだけ長谷川を困らせました。
この右を、アゴを上げたまま打つので、長谷川のリターンが結果的に届かない、という
笑うに笑えない場面が何度かあり、なんだろなこれ、という感じでした。

長谷川は立ち上がり、右リードで探って左を狙う、普通のサウスポーの攻めをしました。
しかしこの人、若い頃からそうですが、右リード出して左を打つと、どうもバランスが悪いんですね。
ダイレクトで左打つ方が当たり、そこからリズムが出て、歯車が噛み合ってきて、
相手の反撃に色んな「合わせ」の技を出し、相手を崩していく、というのが、良いときの勝ちパターンです。

しかし今回、相手との技量の差は歴然なれど、普通のボクシングをするときの悪さが矯正されていないのか、
または単に立ち上がり硬かった、というだけなのか。ちょっと足が動かず、ミスが多く、ヒットも許す、
いまひとつな立ち上がりではありました。

3回、長い右と揉み合いに命を賭ける「ウィラポン」をしっかり突き放す、とまではいきませんでしたが、
打ち合いの中、得意の左ダブル上下が出て(これもまあ、特殊っちゃ特殊なコンビですが)、
その後、相手を振りほどくさなかに左フックがヒット。ぐらついたところを追撃し二度ダウン、
さらに少し攻めたところでレフェリーストップ。力量差そのままの結果でした。


長谷川がこの手の「調整試合」を闘うのって、本当に久しぶりのような気がします。
ゴンサレス戦後三試合め、本当に「お殿様の試し斬り」じゃないですが、
鮮やかな勝ち方、倒し方、KOがあって当たり前、という感じの相手は、今回が初だろうと。

「まあ、簡単には当たらんに決まってるけど、このパンチが決まれば、世界王者も倒れるやろう」と
いうような、まあその場限りの満足にせよ、そういう鮮やかなノックアウトだったか、というと
昨夜の試合はちょっと物足りない部分がありました。
あの程度の相手に、ちょっとどたばたしとったかな、という印象です。
試合後のコメントも、そういう不満が本人の口から漏れていました。

確かに、格下相手に自分の一番良い攻め口が何なのか、それをあまり示せなかったことは、
見ていて不安に感じた部分ではあります。
右ジャブからの攻めで、しっかり相手を止められず、距離の長さに戸惑ったとはいえ、
けっこう良いパンチを食らってもいました。昔はオーソドックスの右をほぼ食わず、すいすい外すか、
出所を先に左で叩いていた印象が強いのですが、この辺がどうも得心がいかないというか。

この辺、もっとこまめに動いて、結局は無理に右からじゃなく、左から攻めていく形が一番良いのかな、と
思ったりはしました。フェリペ・フェリックス戦の序盤で見せた、フランク・ライルズの
指導の好影響とおぼしき、ガードを上げて右から攻め、バランスを重視したスタイルは、
おそらく現状(の体調、方針、指導体制)においては、求めてはいけないのではないか、とも見えました。

しかし、そういう不安を解消するがために、こういう格下相手の試合を組むことは、
昨夜の試合がある意味「不発」だったとしてもなお、意義があると思います。
相手どうあれ、鮮やかに勝つ感触を掴むための試合は、選手の状況次第では必要なものだと、
改めて思っていたりもします。あと二試合ほど、世界までにこういう試合をする必要が
今の長谷川穂積にはあるのではないかな、とも。

もっとも、次こそ世界戦、という話は、こと長谷川陣営にとっては確定事項のようですね。
長谷川のいう「練習段階での好感触」が、次の試合における好結果に繋がれば幸いですが...。



しかし、改めてですが、長谷川穂積が、タイのランカークラスと試合をするというのは、
本当に久しぶりでしたね。新人王戦で二度敗退した後に、この手の相手との試合を
観戦した頃を懐かしく思い出したりなんかしました。ガムウォンパン、ポーンチャイ、とか...。
あの頃はまだ身体も細くて、頼りなかったけど、一瞬の左の速さは今以上に感じたような...
まあ、多分「見とるこっちの目玉の勝手」ってなところでしょうが。

あと、熟山竜一に勝って、ジェス・マーカに挑む間に挟んだタイ人との試合。
まあ倒すやろ、と思ってたら、見事に判定で、内容もいまいちで、
大丈夫かねこの子は、と心配になった思い出もありますね。
あの頃から「強い相手には強いけど、弱い相手だとどうも冴えんね」というところはありました。

昨夜の試合も、そういう感じですかね。
倒せるようになったのは、当然、あらゆる面において強くなったから、ということなのでしょうが。


何も緊張して見るような試合でもなく、のんびり見てきた試合でしたが、
長谷川穂積が闘ってきた長きに渡る年月に、けっこうしみじみ思いを馳せる観戦でした。
やはり彼の今後がどうあれ、彼は私にとって、改めて大きな存在なのだなぁと思った次第でありました。



コメント (2)
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