さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

困難な状況下でも、やはり非凡なり 井上尚弥、ベガス初戦でKO勝ち

2020-11-01 14:34:46 | 井上尚弥




ということで生中継を...と言いたいところなれど、今回、オンデマンドでジャーボンテイ・デービスvsレオ・サンタクルスを先に見て、その後追っかけ再生で井上尚弥vsジェイソン・マロニーを見る、という選択をしました。
両方とも結果知らずに見るにはこれしかない、と考えたのですが、結果的には正解でした。
どっちも凄い試合でしたが、取り急ぎ、まずは井上尚弥から。



井上は初回、試合開始前に、すでに両足、太ももを叩いてからゴングを聞く。
マロニーは見て立つ感じで、井上がしっかり構えて圧していく。
構えは強固で、強くて重いジャブをボディに差し込み、上に返す。

初回3分終えた時点で、マロニーの表情に当惑が見える。おそらく、ジャブの威力ひとつとっても、想定を超えていたのでしょう。
王者コーナーでは井上真吾トレーナーが「前で距離作れ」と指示。
バックステップで外していた井上に、突き放して距離を作るように指示することで、マロニーの反転攻勢を抑えさせよう、という意図か。

2回の井上、この指示を受けてジャブで突き放し、撥ね付けるような闘いぶり。
マロニーは押し返したいが出られず。

3回、マロニー果敢にも出て、肩越しにフックを連打。その上で離れて足を使う。
しかし要所で井上が強いボディブロー、右アッパー、右ショートを決める。
4回も同様。しかし、井上のヒットはあるが単発で、マロニーは構えを崩さず応戦。

5回、マロニーが攻勢を取ろうと、果敢に出る。井上ロープに追われ、ジャブの相打ちでヒットを喫する。
しかし井上、一瞬重心を引く動作をフェイントに使い、右肩のスナップで打つ右クロス。
往年のモハメド・アリの如き一発で、マロニーを怯ませる。

6回、マロニーのダブルジャブに井上が小さい左フックのカウンター、マロニーダウン。
気がめげて不思議の無い場面ながら、マロニー立て直しが早い。
しかし井上、ドネアばりの「後出し」左フックで脅かす。

7回、この回はほぼ全部、左ジャブ上下で「作る」3分か、と見えたのだが、最後になって、井上が右ショートのカウンター。
「隠していた」右で見事に倒す。マロニーほどの選手を、しっかり罠に嵌めた。
国技館で勇利がムアンチャイを倒したパンチにも似た、完璧カウンター。マロニーさすがに立てず、KOでした。



無観客ということもあってか、倒した井上にあまり高揚感は見えませんでした。
加えて、コロナ渦での調整、減量は難しかったでしょうし、マロニーの持つ堅実さ、果敢さ、確かさもまた、井上にとり、難儀なものだったのでしょう。
インタビューでは、足に違和感が、というようなコメントもありましたが...。

しかし、上記したように、要所で往年の名ボクサーを想起させるような、凄い技をあれこれと見せて、マロニーのような粘り強い相手を、テンカウントKOで破るんですから、やはり井上尚弥は凄いなあ、と改めて感心させられました。
派手な勝ち方だけではなく、こういう状況にあっても、きっちり勝つ...だけでも大変な仕事なのに、その試合内容はやはり、井上尚弥非凡なり、の一語に尽きます。


今後、他のタイトルホルダーとの対戦が楽しみです。
様々に「状況」も改善の方向に...と信ずれば、ですが、今回、初めてのベガスで、色々と難しい条件を乗り越えて調整し、試合に勝ったのですから、次からは余計な心配も目減りして、さらなる強豪相手に、万全の体勢で挑めることでしょう。

ただ、足の違和感云々はちょっと心配です。当地の気候などの条件もあるのでしょうが、バンタムへの減量がその一因だとしたら、と。
しかし、ウーバーリ戦(またはドネア再戦)、カシメロ戦は見たいですしねえ。
調整次第では何とかなるものなのか、如何ともし難いものなのか...。



ということで、まずは見事なベガス・デビューでした。
次回以降は改めて、観客も徐々に入れて、違うロケーションでの試合を見てみたいものです。
制限付きながら観客が入ったアラモドームは、アンダーからKO続きの上、メインがえらい打ち合いの末、強烈なエンディングだったものですから、世界的な話題性では、今回は井上も一歩譲る形になってしまいそうで...その辺だけが、ちょっと残念ではありました。




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ということで、一曲。
佐野元春 & THE COYOTE BAND “合言葉 - Save It for a Sunny Day” です。








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9 コメント

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Unknown (月庵)
2020-11-01 18:11:10
モロニーも巧かったですけどね。河野の言う通りアルファベット王者には普通になれるレベルで、仮にカシメロが戦っていたらKO以外に勝ち目はないな、回避してミカー選ぶのも無理なしと感じるくらいの実力はありました。井上もやりづらそうにしているのが見て取れましたし、ドネアの評通りジャブはよかったし強い体を活かして井上に迫る場面もあった。

ただその長所のジャブでさえ井上に上回られ、体を活かせる場面は数えるほどしか作れず逆に動かされ、恐らく本人が意図していたであろう出た所へのカウンターパンチを逆に直撃されて終戦。残酷な性能差を感じる戦いでした。ほぼレッスンされた試合と言っていいじゃないでしょうか。順当にいけばこうなるだろう、という予想はしていましたが、アルファベット王者クラスがレッスンされるというのは、本当にPFP上位ランカーとして評価される立ち位置に、この井上尚弥というボクサーが居るのだなと改めて思わされるものがありました。米国の『耳目』は裏の派手な失神KOの方に向くのでしょうが、私は階級違いの試合に乗れないので……話を聞く感じむしろサンタクルスの勇戦の方が目立つ試合だったようですが。

今日の試合見る限り、丁寧にやりさえすればカシメロは問題にならないと思いますが、やるのなら一刻も早くやって欲しいですよね。カシメロそんな信用出来ませんし、足の問題もあるし、何より理不尽に時間を浪費させられているので……。
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Unknown (アラフォーファン)
2020-11-01 18:38:19
いやはや、あっという間のKOでなかった分かえって底高さがあり、そして見事に倒す。西岡さんが言った通り、スパーのパートナーなど難しかったろうに素晴らしい。序盤から多用したボディジャブを結構モロニー嫌がってましたね。あれが結構効果あったような。そして右アッパーも。途中雑に見えたのはあのカウンターの見事さから、わざとやったのかと思ってしまいます。最後のラウンド、右全然出さないし、どうしたんだろう、、、うおお、となりました。何にせよ今日はデービスの鳥肌ものアッパーに、尚弥様の珠玉の右フィニッシュ。大満足です。
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Unknown (海の猫)
2020-11-01 20:01:58
ダウンを奪った2つのカウンターは、どちらも「美しい」と呼べるもので、これだけでも井上が「特別」なボクサーであると思わせられます。
試合全体としても「圧勝」「完勝」と言えるものでしたが、井上自体の出来としては決して良くはなかった?でしょうか。慎重なくらい丁寧にいったかと思うと不用意にもらったり、大きくどうというのではないのですが、僅かにセンサーが狂ってる?という感じで。動き自体は良いのですが、調子の良いときの井上の動きはもっと「確信」があるので。ちょっとニエベス戦を思い出し、やはり落ち着いてるように見えても相当なプレッシャーがあったのでしょうか。とはいえ、PFP上位の能力、スキルは見せられた試合で、この初戦をクリア出来たら、後は上がるだけ、と思います。
あと途中から、右目が潤んでいるように見え、これもちょっと気になりました。動きを見る限り、見え方などは問題なさそうでしたが。

マロニーは1R早々から驚いた顔をしてましたね。読み違えた、というより、それだけ井上が規格外なのでしょうね。
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Unknown (Neo)
2020-11-01 23:10:26
マロニーは離れた場所では、動いて動いてガード上げて左突いて、時折頭込みで踏み込んで来て腹打ったり体入れて押し合ったりと、出来る抵抗は全部してやる!といった風でしたね。タフネスもあり、スタミナもあり、相手からすればこういう相手を崩すのは大変、その中でのKO縛りですから更に大変でしたね。
上記ですから、アッパー、ガード上からの強打、コンビ、腹等で崩して散らして、カウンターで効かせて仕留める以外無かったでしょうね。それをきっちり遂行したのは流石も流石、素晴らしいという言葉しかないですが、今後上の階級でこういう選手と出会ったら、というのは一つ課題かな、とは思いましたですね。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2020-11-02 16:17:01
>月庵さん

そうか、カシメロとマロニーの話もあったんでしたっけ。マロニーは、頭の位置を変えて動くし、打って離れて、ガード堅く、体勢やフォームが乱れない。しっかり作られた、レベルの高い「佳作」でしたね。
カウンターパンチの場面だけ切り取れば、先に打とうとして先に打たれている。井上からすれば完璧なカウンターですね。あれを狙って打てるというのは、序盤なら実力差、となりますが、そこまでの過程を見れば、そういう状況にマロニーを追い込み、そういう場面を作った井上恐るべし、というしかないでしょうね。
カシメロと対戦するとなると、トップランクが日本でやらせてはくれないでしょうから、当然ベガスなりロスなり、というところでしょうが、どういうロケーションになるかですね。減量、足の調子など含めて、気になるところがありますね。
カシメロは「波乱」を起こせれば目は無いこともないでしょうが...という感じでしょうか。リゴンドーが好調で、なおかつ彼自身の「方針」がぶれていなければ、一番難儀かもしれないなあ、と思いますが、今のところ彼の名前が積極的に語られることはないですね。
アラモドームの試合は、メキシカンの声援と盛り上がりがそこそこあったように見えました。サンタクルスは強いのとやらせれば、勝ち負けは知らず盛り上がるだろう、光るだろう、と思っていましたが、まさにそういう試合でしたね。


>アラフォーファンさん

調整は様々に制約もあったでしょうし、それでもランカーの中で最上位クラスのグレードを持つ相手を、判定ではなく倒して勝つんですから凄いものです。ジャブは上下とも、マロニーにとって驚異だったんじゃないでしょうか。右アッパーは本当にミスしてたというより、見せてた感じもしましたね。7回は、終盤に倒すための布石として、イチから組み立て直し始めたのかな、と思ったところにあの右でした。えらいものやなあ、と驚き、感心するばかりでしたね。
アラモドームは盛り上がってましたね。タイトルふたつの件でややこしい話でしたが、基本、130ポンド最強を決める闘い、ということで良かったのかもしれません。あ、ベルチェルトがおるか...。


>海の猫さん

試合直後の表情を見ても、何もかも思うままにいったという試合では無かったでしょうね。しかし相手のレベル、自身の状況を鑑みれば、考え得る中で上出来の部類だっただろう、とも思います。その辺、変な完璧主義に陥らず、柔軟に収められる心のありようもまた、必要なことでしょう。往年の辰吉丈一郎など、その陥穽がモロにありましたが...。
ジャブの応酬で相打ち、まともなのがいくつかありましたね。足で外しきれないところは、試合後に痙攣があった、或いは起こりかけていたせいなのでしょうか。ニエベス戦を想起したというのは、私も同じでした。マロニーを「強いニエベス」だなあ、と思ったり。
マロニーの井上に対するあらゆる「想定」は相当高いものだったはずですが、それでも初回早々、惑いが見えましたね。あの時点で、やっぱり井上は凄いなあ、と...。


>Neoさん

早々に彼我の差を実感したとは思いますが、闘いのさなか、もうそういうこっちゃない、とにかくやれることは全部やる、という風でしたね。マロニーの「モラル」の高さが終始見えた試合でした。彼は本物の戦士だと思います。敬意を表したいですね。一部に「倒されないための抵抗」と見た向きがあるようですが、私は同意出来ません。彼はどの時点からでも、今から勝つために、成すべき事を成す、という心構えを崩していなかった、と見ます。
こういうモラルを持つ選手で、なおかつ何か図抜けた武器を持つ相手が、上の階級で、と想定すれば、確かに険しい闘いが待っているでしょうね。とはいえ、誰よりも井上自身がそういう選手であり、それは相手にとっても脅威なのでしょうが。


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Unknown (NB)
2020-11-03 21:29:43
とりあえず、10回見てみました(笑)いやいや凄すぎて…間違いなく難しい状況だったはずなのに…あれだけの期待とコロナとで。

それにしても純正バンタム選手と20分戦えたらいろんなもん見れますね。
今まで、スーパーフライからちょこちょこと見れたものと、出す時間も相手が引き出せなかったもんがまとめてフンダンに出された試合で楽しかったです。

エキサイトマッチと同時期に生まれた世代の日本人ボクサーが、エキサイトマッチに登場したスーパースターの動きが備わったボクシングで魅了させてもらいました(笑)。

マクドネル戦でしたか、自分で『ゴロフキンパンチ!』と称してましたが、研究し練習して良い部分を取り入れて自分の才能と混合させてるんですね。
昔、野村克也監督が言われてましたが、子供の頃からスター選手のモノマネをするのは良い事って言ってました。イメージする事で感覚を掴む事が大切と。井上がモノマネやってたかは知りませんが…。

今回の6Rの『後出し左フック』、浅くはありましたがタイミングは全盛ドネアのタイミングだったと感じ鳥肌立ちましたよ。多分現在の本家では見られないと思いますけど(笑)

実際倒した左フックは井上流の見えないコンパクト左フック、これをこの舞台で日本同様に決めるのですから…、海外の方々へのインパクトは最高級でしょうね、気持ち良いものです。

アラムお爺さんは…反省して下さい(笑)、もうちょっと早く獲得してくれたら良かったのに、村田と同時期くらいに…。
スーパーフライも無双出来たかも、と考えたら悔しいです。
今のエストラーダ見てたら…タイミングですが。
井上のあのボワイヨ戦後のインタビュー…、もっともっと暴れて頂きたい(笑)。

ま、今回私事ですが豪州コンプレックス解消させてもらい(笑)、更に井上の成長をハッキリ見せて貰えて感謝です。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2020-11-06 09:04:42
>NBさん

言われて見れば、純正バンタム、普通の上位と長いラウンドは初めてだったと言えるかもですね。
エキサイトマッチが30年を超えて、その波及効果の一つ、とも言える井上、という観点からいくと、さらに次代の選手にも期待したいところです。個人的にはウェルター級の井上尚弥が見たいですが(笑)。
井上のボクシングには、模倣するにも適切な選択が見えますね。ゴロフキン、ドネアなどは世代的に「直撃」だったのでしょうか。ハメドの時代じゃなくて良かった、と思ったりもしますが(笑)。
過去の「逃した的」は、やっぱりローマン・ゴンサレスが一番大きいですかね。フライ級飛ばしの話として、レベコとまとまらなかったから、みたいなことを大橋会長が言い、それを無批判に記事にしてるところがありますが、そんなものを狙ってどうするんや、という話ですね、今となっては。
豪州に勝利、という観点からすると完璧でしたかね。マロニーは尊敬すべき敵だった、という、気持ちの良い余韻も得られましたね。


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Unknown (もみあげ魔神)
2020-11-08 02:27:10
他記事へのコメントと連投になり、失礼します。
足が攣った(しかも前戦でも)という情報は気になりましたが、内容的に非常に濃いものを見せてもらったモロニー(マロニー?)戦でした。
「ボクシングは単なる殴り合いではないことを、多くの人に知ってもらい」という井上尚弥自身の言葉を体現したような試合だとも思いました。

一方で、デービス戦のフィニッシュの衝撃や、WOWOW中継での、パウンドフォーパウンドについての村田諒太の「ヘビー級が一番強いに決まってますよ」というコメント(自分は、ポジティブな意味で「村田の言う通りだな(^^)」と捉えました)などで、パウンドフォーパウンド、そして階級の意味についても、少し考えた今回でもありました。

今後の対戦相手は、色々な状況が組み合わさるなかで決まっていくのでしょうが、来年28歳という年齢を考えても、でき得る限り井上のモチベーションが高まる試合を組んでいってほしいと思います。周辺階級を含めた現在の状況を見ると、相手のネームバリューだけで海外での知名度を高めるのは難しいかもしれないですが、ビッグマッチの前座という形も含め、より、その輝きを見せられる舞台に上がってほしいですね。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2020-11-09 10:01:20
>もみあげ魔神さん

試合の度に、単に強いだけじゃなく、ボクシングのイメージを向上させてくれている感がありますね。強いだけでなく「エエ人」が看板になってくれて、ホンマに良かったと思います。
村田諒太の発言は、まあ肩の力を抜いたイメージのもので、そういうのがあっても良いと思います。あまり四角四面で、堅苦しいばかりでは、と。欧米のボクシング実況みたいに、笑い声が頻繁に、というのは正直好きじゃ無いですが、ほどほどに、という。
今後はトップランクが、従来の放送以上に力を入れていくという、ESPN+の配信で、継続的にメインイベンターのひとりとして活躍していくのでしょうね。従って、その「番組」に相応しい相手、というところで、対立王者などが「挑戦者」としてピックアップされていくのでしょう。当面は相手について心配はいらないでしょうね。何かが「挟まる」としたら指名試合ですが、その辺はまた、今後色々と出てくることでしょう。



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