さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

後退局面、そこに罠あり 藤田炎村、劣勢から右フック一撃

2023-04-30 00:04:12 | 関東ボクシング




ということで水曜日の感想文、三試合目。
日本スーパーライト級、これも空位の決定戦。
全体的にはまだ未完と見えるが、その劇的な試合ぶりで目を引く藤田炎村と、果敢なファイトが売りのアオキ・クリスチャーノの好カード。


初回はアオキがトリッキーに動き、藤田はじりじり出る。想像通りの「絵」。
藤田の右が肩越しにかすめるが、徐々にアオキが左で測定して、右ダイレクトのヒット。出鼻を巧く叩く。

2回もアオキの巧いヒットが目に付く。右ヒットは互いにあるが、後続のボディ攻撃など、アオキの方が攻防に幅がある。
藤田は右クロスの強打を狙いすぎている感。
アオキは打ち合った後の離れ際に右ロングフック決め、続いて対角線のコンビ。さらに細かい連打で、藤田を後退させる。良い流れ。


藤田、普通に言って劣勢。一般的に、強打のファイターというものは、下がる展開では強さが出ない選手が多い。
ところがこの選手、ここに罠があります。


ラスト10秒の拍子木が聞こえたあと、アオキは見て終えれば良かったがさらに攻め、右から左フック返す。
しかし藤田、オーソドックスからサウスポーにスイッチしたスタンスで待っていた。
右足をアオキの左足の外側に置く、パワーをかけて打てる位置から、右フック一発。
まともに入ってアオキ、ダウン。腰から真下に崩れる。ダメージ甚大。
立ったもののふらつきを抑えられず、レフェリーがカウントアウトしました。タイムは3分8秒。



アオキは打ち合いの攻防のあと、すぐに追撃の手を出してヒットを取り、巧みに連打を散らして、ファイターの藤田を受け身に回らせる、理想的な展開を作っていました。
好スタート、ではあったのですが、しかし藤田は、過去の試合でもダウンしたり、劣勢だったりする場面において、両足が揃った位置から、或いはサウスポーにスタンスを変えて、そこから右フック一発、形勢逆転、ということをやってきた選手です。言えば「得意」なのでしょう。

アオキ、好調に攻めているが、この相手に深追いは禁物で、慎重に行くべき...と思っていた矢先のKOシーンでした。
試合運びは果敢な中にも巧さが見えて、良いスタートだったのですが、藤田の強打、そして勝負強さに屈した、という試合でした。



対する藤田炎村、いつも通り、闘う心の構え、その気迫は、変わらず表情や佇まいからはっきり見えました。
強打で相手を脅かし、クリーンヒットは取れていなくとも、威圧感はかなりのものがあるのでしょう。
それがあるからこそ、受け身になったと見えても、強打を決める「余地」がある。そういうものだと思います。
単に自分の都合の良いことだけを考えて狙っても、あんなパンチ、そうそう決められるものではないはずです。

もちろん打たせず打つだけで勝てれば良いのでしょうが、タイトルマッチのレベルで、相手も実力者のアオキとなれば、簡単には行かない。
それは短い試合の中で見られた事実だと思います。
しかし、悪いスタートと見えても、一撃でひっくり返せる強打を持つ。滅多に見られない劇的なKOで勝つ。
単に「評」の言葉では語りきれない魅力が、このファイターには確かにあります。



上位陣にも好選手が揃い、平岡アンディや永田大士なと、並立するタイトルホルダーも強敵ですが、勝ち負け以前に誰と組んでも、誰と向かい合って立っても「絵」になる、新チャンピオンが誕生しました。
控えめに言っても、FODやLemino配信興行のメインイベンターとして充分なタレント、だと思います。今後の活躍に期待です。
まだ早いかもしれませんが、いずれ、井上浩樹戦など、あるんでしょうかね。「品評」をすれば井上かと思いはしますが...。




コメント
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