さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

若く大きく強い巧者、初戴冠 松本圭佑、元王者佐川に判定勝ち

2023-04-19 05:39:45 | 関東ボクシング





昨日の注目カード、佐川遼vs松本圭佑の感想です。


立ち上がり、松本圭佑の体格の良さが際立つ。デビューの頃から、将来はライト級くらいがベスト、という声もあったくらいで、それがフェザー級で良いコンディションで来たら、佐川遼にとっては手強い。
その大きい松本の方が、余裕を持った足捌き。佐川が出て、松本が下がるが、圧されているわけではない。
むしろ下がりながら打つ松本の右クロスが、佐川を脅かす。

佐川は身体を巧く逃がして、読みを外すリズムで左を打ち、決め手の右ストレートに繋げたい。
しかし2回、松本は左ジャブを好打。左フック、アッパーを織り込んだコンビを軽く当てて優勢。
時折、強く打つのは締め括りの右ストレートやクロスのみ。さらに来る佐川にワンツー、右カウンターで脅かす。

3回はワンツー、そして逆ワンツーをヒット。4回、松本速いワンツー×2の攻撃も。
しかしこの回後半から、佐川のボディ攻撃が決まり始める。
5回、佐川のボディ攻撃に、松本は左リターンするが、佐川が攻める頻度が高まる。松本、受け身になる時間が増え、カウンターは単発に終わる。
この回、初めて佐川のポイント。途中採点は4対1で松本、三者揃う。


6回、松本が再びワンツー、スリーパンチ決める。右カウンター相打ちの場面あり。
タイミングはほぼ同時だが、松本がゆっくり下がる。この回終盤、松本が右カウンターを取るが、佐川がボディ込みの連打で攻めきる。やや佐川?
7回、松本の左フック、アッパーを織り込んだ軽めのコンビが良い。両者カウンター取り合い、佐川の右が一瞬速いが、松本怯まず右打ち返す。
両者疲れ、少しスピードが落ちる。松本のコンビ、佐川も右、ボディと攻め合う。これも若干迷う。松本?

8回、ポイントでは劣勢の佐川、挽回図ってボディから攻める。松本の頭が当たるが、佐川構わず前に。
松本徐々に失速。足が止まり加減。後退の足捌きに余裕が無い。
前に出るしかない佐川を、前後に揺さぶって引き込み、カウンターを狙っているとしたら怖いが、そういうことではなさそう。この回佐川。


9回、松本の失速は明らかで、ラスト二つどう乗り切るか?と思って見ていると、松本が奮起。ワンツーに力を入れ直し、ヒットを取る。
その上で、フットワーク使ってアウトボクシングにシフト。バックステップして振りの小さい右カウンターも見せる。
右ダイレクト、ワンツーと距離に余裕を作って、当てては距離を取る。佐川攻めて、右の応酬、ボディも打ちたいが外される。


キャリアの中で、5回までしか闘っていない若い方のボクサーが、悪い流れを断ち切るために、9回に来てフットワークを使い出し、破綻無くアウトボクシングを遂行するというのは、普通ではない。
この辺、松本が単に打つ、避ける巧さだけでなく、試合運びも巧く、それを実現する体力を身に付けてもいる証。大したものだとしか言い様がない。


10回、距離を変えて闘いながら、打つパンチの選択に間違いが無い松本、佐川の右やボディ攻撃に、カウンターやスリーパンチのリターンで対抗。
佐川果敢に攻め続けるが及ばず、終了。

さうぽん採点は7対3。公式は8対2が一者、9対1が二者。3-0で松本が新チャンピオンとなりました。




全般的に、若くて大柄な松本の方が、キャリアでまさる佐川の力を巧みに封じつつ闘っていた、そういう試合だったと思います。

体格とリーチを担保に、遠目から当て、ジャブと足を多く使い、コンビネーションは軽め。
強振するのは、攻撃を締め括る右ストレート、クロスにほぼ限定。リズムを切らず、体力の無駄遣いを避けつつ、ポイントを抑えていく。

当然、佐川がそのまま大人しく引き下がるわけもない。そして松本は、それも承知の上だったのか、果敢に攻めてくる佐川を、力で抑えにかかるのでなく、終盤になって、はっきりと足を使ってコントロールしにかかり、それを概ね、成功させました。
この辺はセコンドの父、松本好二らしい安全策?でもあるか、と感じましたが、その辺は不明です。あくまで、現役時代の姿から勝手に想像しただけです(笑)。


デビューから7戦全勝全KOとはいえ、現役のランカーに勝った星がないのに、もうタイトルマッチか、と心配もありましたが、この勝ち方を見ると、良いパンチ決めて派手に倒すよりも、ある意味凄い勝ち方を見たのかもしれません。
序盤の展開からして、KO決着を期待もしましたが、そうならなかったことへの失望は、ほとんど心中にありませんでした。
それは試合が判定になっても、見ていて間延びしない試合を作った、佐川遼の力ゆえ、でもあるのでしょうが。



新旧対決は、クリアな勝敗で決着した、と思います。
若き王者、松本圭佑はその来歴から、エリート視されることもありましょうし、ひ弱なイメージもなくはなかったですが、初のタイトルマッチで、国内有数の実力者たる佐川遼相手に、逞しくも巧みな闘いぶりを見せました。
G+で見たU-15大会での姿に驚愕した(位置取りや長短の切り替えがえらく巧いなあ、と)のは、もう8年か9年前くらいでしたか。
今の姿を見ると、体格面では想像以上に出来上がっています。そして若さに似ず、練れたボクシングをしているように思いますが、それはあの時に見た良さが、消えずに生きているから、と言えそうです。


初の判定勝利となりましたが、勝手を言えば、プロ転向以来見せてきた爆発力にも期待したいところです。
しかし何しろランカーとの対戦なしで、いきなり佐川遼とタイトルマッチだったのですから、傍目以上にきつく、苦しい部分もあったのでしょうね。
その辺は今後の楽しみとして、残しておくべきなのでしょう。
スケールの大きな逸材、松本圭佑の戴冠、まずは見事なものでした。良い試合を見ました。




コメント (2)
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