ということで昨夜はdTVにて、ペテ・アポリナルvs武居由樹戦を楽しく見ておりました。
簡単に感想を。
初回、実況解説が言っていたとおり、長くフェザー級でも闘っていたというアポリナルの上体は結構大きく、厚みを感じる。
武居はかなり警戒して、遠い間合いでの立ち上がり。「キックの間合い」とさえ見える。
武居が上体をねじるような、妙なバランスでワンツーを打つが、アポリナル外す。
目の良さと、上体の動きが繋がった防御動作。
外せる選手だとは、動画で見て分かっていましたが、思った以上に防御の質が高い。
初回3分見終えて、これ、5戦目で当てる選手じゃなかったのかも、と思ったほど。
アポリナルはあまり手を出さなかったが、しっかり武居を見ていただろうし、2回以降、どういう形で出てくるだろうか、と心配な気持ちになっていました。
しかし2回、武居が左を上下に散らすなど、攻撃の数が見えてくる。
右フック飛び込み、ロープ際に逃れたアポリナルに、スタンスを踏み換え、左を伸ばして右。
綺麗に、わかりやすく顔面やアゴに入った、というパンチでは無かったが、アポリナルがダウン。
立ったが追撃されて二度目のダウン。簡単に倒れたように見える。踏ん張りが効かない模様。
スローで見ると、最初のダウンを奪った右は、アポリナルの左耳に、まともに入っていました。
確かに当たれば効くところ、なのでしょう。当て際が強い打ち方でもあるのでしょう。
それはわかるとしても、あの感じのヒットでそんなに効かせられるのか、と驚きもしました。
日本のボクサーも最近は、海外というか世界基準に沿った選手が増えて来て、型どおりに綺麗に打っていればいい、という感じではなくなっていますが、それにしてもこの打ち方で、この効かせ方は、ちょっと普通じゃ無いなあ、と。
傍目にはそういう印象でしたが、武居本人は手応えありと見えて、3回以降、立ち上がりとは間合い、立ち位置が全然違う。
明らかに近い位置に立って、そこから打っていく。「ボクシングの間合い」としても、ちょっと近め。
ボディにワンツー打ってガードされるが、そこから飛び退くのでなく、さらに前に出て追撃。
飛び込みの右フックも狙う。左ストレートは下に上にと打ち分ける。
アポリナル、あからさまに弱味は見せていないが、右フック引っかかって膝をつく。スリップだが、やはり足にダメージがある。
4回、武居の右フックでアポリナルがダウン。武居攻めるがアポリナルが打ち合いで右を一発ヒット。
武居、少しムキになって、危ないタイミングと角度のまま打ち合う。すぐに思い直して離れたが、ちょっとだけ不安も見えた。
途中採点、当然ながら武居大差のリード。40対33で三者揃う。
全ラウンドを武居が抑え、2回が10-7、4回も10-8だから、アポリナルは4ラウンズで7失点ということに。
それでもアポリナル、モラルの高さを見せ、右を振るって闘志を見せていたが、5回、打ち合いで武居の右フックが決まる。
その後左フックか、アポリナルが後退したところで、レフェリーが早めのストップ。
印象としては「ダウンの回数、点差という理屈は揃ったから」止めた、というものに見えましたが、さりとて続けていても、アポリナルには見た目以上にダメージがあった、レフェリーが間近でそれを見て止めたのだ、と言われれば、反論不能ではあります。
ペテ・アポリナルは、一定水準以上の実力を持つ、武居のキャリアでは最強の相手だったと思います。
しかし、フェザーでもやっていた選手の耐久力を、ものともしない武居の強打、普通じゃ無い「効かせ方」が出来るパンチを先に打たれ、それ以降はいかに「決壊」せずに踏ん張るか、という方向でしか、その闘志を表現出来ませんでした。
これまでの相手よりもレベルの高い、練れたボクシングが出来る選手相手に、先手を取られて長いラウンドを闘うことになったら...というのが、キャリアの浅い強打者への、いかにもありがちが危惧ですが、武居由樹は2回にはもう、その悪い想定を、自らの強打で破壊してしまいました。
それ故に、これまで試されていなかった部分を試される、という試合展開だったか、という見方をすれば、答えは半々かな、というところです。
ちょっとズルい言い方ですが。
長丁場での対応はストップしたから仕方ない。ただ、4回に3度目のダウンを奪ったあとの打ち合いで、少し判断ミスというか、無理をしたところは、相手がさらに上の相手だったら、致命傷になっていたかもしれません。
しかし、序盤の遠い遠い間合いの取り方は、良い意味での警戒心の強さを感じました。
また、ダウンを奪ったあとの攻め口は概ね無理が無く、左ストレートを上下に散らし、ボディをしっかり攻めているあたりも、総じて冷静ではありました。
4回、ワンツーに目を引いておいて、飛び込みの右フックで倒すあたりも、理屈の見える攻めでした。
キャリア5戦でタイトル挑戦の強打者、というと、この辺、もっと無理や雑さ、それこそ驕りが出たとて、何の不思議も無いところです。
やはりキックの世界でのキャリアがあるだけに、そういうレベルとは違う、という理解で良いんでしょうね。
今後に関しては、世界どうこうとはまだ遠くても、国内の122ポンド級上位陣との対戦は、あれこれ見てみたいものです。
というか、こぞって対戦希望が殺到するくらいじゃないと嘘だろう、とも思います。
今回の勝利で、ボクシング界においても本物のホープと目されるでしょうし、キックの実績も相まって、普通のレベルとは違う知名度があるわけですから。
確かにパンチがあって怖い選手ではありましょうが、そんなこと言ってる場合じゃない。「ええ的や」くらいに思ってほしい、ですね。
また、そうやって挑みかかってくる相手との、やって実になるカードを、ひとつでも多く闘ってほしいです。
その先に、上だの世界だのが見えてくる、その過程をまずは見せてもらいたい。そう思います。
強打のみならず、色々独特な魅力を持つ、楽しみなタイトルホルダーが誕生しました。今後も色々楽しみですね。
ということで、せっかくのライブ配信だったのですが、全試合張り付いて見る、というわけにはいきませんでした。
dTVの配信、PCと大きなモニタで見て、画質は充分だったのですが、配信中の巻き戻しなどには対応していませんでしたので。
しかし、他の試合も見どころ多いカードばかりでした。
「心配な天才肌」富岡浩介の試合が未見です。またアーカイブで見るとしますが。
セミの高畑里望、岡田誠一戦は壮絶でした。先にダウンを奪った高畑の長い距離を、岡田が果敢に攻略し、最終回に逆転のKO。
43歳対40歳の、ボクサー人生の総決算となる一戦、見応え充分でした。
両者に拍手したいと思います。
こういう試合、以前なら放送局によっては、ライブで、またフルラウンドを見ることはかなわない場合の方が多かったでしょうが、それを今はライブで、フルでしっかりと見られるんですから、これだけでもネット配信の価値あり、というものですね。