ということで神戸の方ですが、山中竜也が再起二戦目で、元WBC1位にして「避けられる側」のOPBF王者としても知られたジョナサン・タコニングと対戦。
8回フルマークの採点が出ましたが、その数字ほどタコニングが悪かったわけではなく、山中の方が、再起二戦目としては上々の出来だった、という試合でした。
今から思えばミニマムのときは、相当減量もきつかったのだろうなあ、と思うほど、ライトフライでも良い体格で、なおかつ攻防ともに無理なく身体が動いている。
序盤からジャブ、ワンツー、足で捌く。
2回、タコニングが早々の巻き返しを意図して出るが、山中左ボディ決めて止める。
続いてワンツー。タコニングの右に左被せて左回り。
3回、タコニングの左ボディストレートに右ストレート返す。山中好調、ワンツー、ツーの右をボディへ。
4回、タコニング、右フックの入りを山中、飛び退いて外していたが、時にダックして外すように。
一度ボディ打たれるが、ワンツーボディへ返す。ジャブで突き放し、展開が安定してくる。
5回、山中外しておいて右ボディ。出鼻に小さい右カウンター。左ボディなど追撃、その後は足と上体の動きで外す。
6回もジャブ、右カウンターが冴える。
7回は少しタコニングが出るが、外されて打たれ、スリップ。タコニング左ショート、際どいがクリーンヒットはせず。
タコニングの右フックと、山中の右ストレート交錯。その後、山中ジャブでフォロー。抜かりなく抑える。
8回、タコニングの左ボディに右合わせるパターン、また決まる。
山中、出てくるタコニングをジャブで止めて、測って、右ストレート。タコニングぐらつく。山中追撃。
その後も速いショートのワンツーなど、再三ヒットを重ね、クリアに取る。
あと二回あったらストップもありそうな感じまで持っていきました。
ラウンド前に、10回戦だったはずが、コミッションから8回戦として認可していると通告があって、急遽ラストラウンドになった回でしたが、動じることなく駄目押ししての勝利でした。
かつては日本の上位陣が「世界戦で闘うならともかく、OPBF戦で挑むにはリスクが高い」として、誰も挑みに行かない、招聘もしない、という「避けられる」OPBF王者だったタコニング、35歳という年齢にしては、力が落ちていたとも見えませんでしたが、山中の安定感のある、攻防とも無理の無い技巧的なボクシングが、完全にポイントを支配していきました。
山中の引退から再起への過程は、ABEMA制作のYouTube動画が上げられていて、多くがそれを見た上でこの試合を見たのだとしたら、山中がこの試合に向けて築き上げたボクシング、それを支える心技体の内実が、しっかり伝わったことでしょう。
一見すれば地味な試合、ロケーションも含めてそうだったかもしれませんが、大いに見どころアリな8ラウンズだったと思います。
山中、今後はさらに大きな試合があるかもしれません。
国内に世界のタイトルホルダーが複数いることもそうですし、その次の位置にも、元世界王者や、かなり強いレベルの日本王者がいます。
今回の試合で、いきなり次、そういう相手とやれるものか、その是非はというとまだ少し、という気もしますが、再起二戦でこういう話が視野に入るだけの内容と結果を残した山中は、考え得る中で最高レベルの再起路線を進んでいる、と言えそうです。
で、ラウンド数変更の件ですが、見えないところでいろいろあったんだろうなあ、と。
前日までJBCの試合予定表が虫食いだらけで、一体これはどうなっとるのや、と思いましたが、昨今あれこれ噂になっているコミッションと業界の対立...齟齬、という言い方にひとまずしておきますが、その反映を見せられたのか、と嫌な想像までしてしまいます。
まあそれはさておいて、公式試合の規定ラウンド数が試合途中で変えられた、この表面的事実だけで充分、大問題です。
勝ち負けに影響するところ大ですし、タイトルマッチや大試合ではなかったから何となくうやむや、で済ましていい問題ではありません。
コミッション、業界共に勝手を言っておしまいなのかもしれませんが、第三者の立場で、双方から事情聴取して、何が原因でこんな馬鹿なことが起こったのかを調査する機関が必要だ、と思います。
コミッションを調査する機関、というのは、もはやブラックジョークの域ですが、現状、本当にそういうものが必要ではないか、と思うことが多々ありますんで...。
真面目な話、所詮は業界のご都合に追従する組織でしかない、成り立ちからしてそうで、昨日今日の話ではない。
新任の事務局長などが批判の対象になっていますが、ある意味仕方ないのではないか、と傍目には見えます。
それはいわば、JBCが宿命的にそういう組織でしかない以上、急に放り込まれた?人間に出来ることなど無い、というだけの話ではないか、とさえ。
とはいえ、元々そんな風に思ってきましたが、昨今のあれこれはもう、そんな切り捨てのさらに上(下か)を行く酷さであるのも確かです。困ったものです。
試合内容は良いものだったのに、そしてせっかくライブ配信があったのに、多くに見られる機会に、とんだミソをつけてくれたものです。
とりあえず業界側、コミッションの側、双方に対して然るべき原因究明調査、その内容の公表と、然るべき処分がなされるべき、ですね。