昨日は高山勝成、小西伶弥戦中止という残念な報がありましたが、もうひとつの目玉カード、石田匠vs石井渡士也戦は、なかなか見どころの多い試合となりました。
WBA挑戦、IBF挑戦者決定戦出場、日本王座五度防衛。
戸部洋平、江藤大喜、木村隼人、船井龍一らを破り、キャリア30戦、痩身のジャバー、石田。
対するは、日本ユース獲得試合の石川春樹戦での鮮烈なKO勝ちにより、僅か3戦のキャリアでありながら、ファンの注目を集める、好戦的なボクサーファイターの石井。
何もかも対象的な両者は、そのイメージをそのまま、リングの上で描いたように思います。
初回から石井が積極的だが、石田のジャブが正確に見える。石田か。
2回は左右アッパーなどを連打に織り込んだ、石井の攻めがまさる。石井。
3回、攻めてくる石井に、石田のジャブ、右ストレートがクリーンヒット。ワンツーをまともに食った石井、少し手が止まる。左瞼から出血。クリアに石田の回。
4回、石井手数は出ているが、出血の影響か、空振りが増える。石田は右浅くヒット、ジャブで追撃。石田。
5回、石田のジャブでまた出血が見える石井だが、中盤、アッパーを織り込んだ上下連打で攻める。
石田は圧されながらも右クロス、ボディ、最後にワンツーで巻き返す。微妙な回。やや石田?
6回、石井がジャブ、フックの左でリードし、右フック、アッパーに繋げ、石田を抑え込む。クリアに石井の回。
7回、石井攻勢、石田の右浅く、ジャブも少ない。ヒット数は、といえば石田か、しかし押されていて、印象は悪い。迷う回。
8回、石井の攻勢は続く。石田ジャブ、右クロス。ワンツーも出るが、石井の連打が印象的。やや石井か。
判定は3-0で石田。大差の採点は置くとして、その他の数字以上に、競った内容の試合だったと見えました。
少なくとも、石田にとり、キャリアの違いをクリーンヒットの大差で見せつけた、というような試合ではなかったと思います。
きついようですが、地元の試合で、ジャブをしっかり見てもらえたから勝てた試合だ、というか...もしこの内容を後楽園ホールでやっていたら、負けを告げられていた可能性もあったことでしょう。
東西お互いに、その辺は容赦ないな、と改めて思わされました。今回とて、79という採点があるのですから...。
私は7回を迷ってイーブンにし、他は無理矢理振り分けて、4対3で石田ですが、採点どう以前に、バンタム級に上げてもなお、せっかく素晴らしいジャブを持っているのに「突き放し」が物足りず、もうひとつパンチにパワーが乗らないし、好打の後の追撃も甘い、という印象は変わらず、今後「上」を目指す、という話になると、やはり不安が残りました。
仮にバンタムで国内上位と闘うとして、井上拓真や栗原慶介と、となったとき、好カードだ、楽しみだ、と思う人はいても、石田有利と予想する人は、ほとんどいないことでしょう。
もっとも、試合の数なら自分の十分の一なのに、そういう段階の選手としては驚異的に力があり、厚みのある攻めを繰り返してきた石井渡士也との対戦は、石田にとって心身共に、難しいものだったと思います。
そして、その難しさ以上の苦闘を石田に強いた石井については、大健闘、お見事でした、と拍手するしかありません。
今回、石井のキャリアが少ないことから、8回戦になったのでしょうが、これだけ「やれる」なら、あと2ラウンズあっても良かったな、と思うくらいです。
今後がますます楽しみです。石田と比べれば小柄に見えましたが、若いこともあり、本当の勝負はもう一階級くらい上げてから、なのかもしれませんが。
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ということで、一曲。
THE YELLOW MONKEY「砂の塔」。