もう7年前の真夏、府立体育館の二階席は
それこそ辰吉の試合のそれを上回るほどの
異様な熱気に包まれていました。
アリーナの後方に陣取った私は、場内に響き渡る太鼓の轟音と
囂々たる歓声に呆然となりつつ、二階席を何度も見上げたものです。
リングの上には、朝鮮半島がルーツのボクサーがふたり。
しかし、場内に飛び交うハングル語の大半は、青コーナーのボクサーにのみ向けられていて、
赤コーナーのボクサーは、相手にのみハングルでの声援が集中するという、
普段あり得ないその状況に、とまどいを隠せずにいました。
徳山昌守は、まさに牙を剥くような勢いで仁柱に攻めかかり、
鋭いワンツーで圧倒しました。見事な勝利でした。
場内の歓喜の中で、徳山昌守の笑顔が弾けていました。
しかし今にして思えば、彼が一番幸福だったのは、この日だったのでしょう。
その後、どれだけ勝とうとも、ボクサーとして、チャンピオンとして、
彼の誇りが完全に満たされることは、とうとうなかったような気がします。
長谷川穂積との対戦希望も、結局かなうことはありませんでした。
ボクシング界の「支配体制」に属さない徳山の希望は、
結局かなうことなく終わる運命にあったのでしょう。
その圧倒的な技量にもかかわらず、徳山昌守は、
本当に報われることなくリングを去ります。
昨日発表された3大世界戦、どれも面白そうな試合ばかりで、
リングの上だけを見ていれば、もちろん充分に楽しめますし、
私も、多くのファンの方々と同じく、そうするでしょう。
ただ、心の片隅にひとつの思いがあるのも事実です。
長谷川穂積、名城信男、アレクサンドル・ムニョス、
これらのチャンピオンたちとて、今、徳山がほぼベストの状態であれば、
誰一人、徳山には勝てないんじゃないか、と。
そして、そういう想像が現実かどうかを、実際に証明する機会を
我々ファンの前に提供できないボクシング界に、
私は、けっこう本気で失望しています。
それこそ辰吉の試合のそれを上回るほどの
異様な熱気に包まれていました。
アリーナの後方に陣取った私は、場内に響き渡る太鼓の轟音と
囂々たる歓声に呆然となりつつ、二階席を何度も見上げたものです。
リングの上には、朝鮮半島がルーツのボクサーがふたり。
しかし、場内に飛び交うハングル語の大半は、青コーナーのボクサーにのみ向けられていて、
赤コーナーのボクサーは、相手にのみハングルでの声援が集中するという、
普段あり得ないその状況に、とまどいを隠せずにいました。
徳山昌守は、まさに牙を剥くような勢いで仁柱に攻めかかり、
鋭いワンツーで圧倒しました。見事な勝利でした。
場内の歓喜の中で、徳山昌守の笑顔が弾けていました。
しかし今にして思えば、彼が一番幸福だったのは、この日だったのでしょう。
その後、どれだけ勝とうとも、ボクサーとして、チャンピオンとして、
彼の誇りが完全に満たされることは、とうとうなかったような気がします。
長谷川穂積との対戦希望も、結局かなうことはありませんでした。
ボクシング界の「支配体制」に属さない徳山の希望は、
結局かなうことなく終わる運命にあったのでしょう。
その圧倒的な技量にもかかわらず、徳山昌守は、
本当に報われることなくリングを去ります。
昨日発表された3大世界戦、どれも面白そうな試合ばかりで、
リングの上だけを見ていれば、もちろん充分に楽しめますし、
私も、多くのファンの方々と同じく、そうするでしょう。
ただ、心の片隅にひとつの思いがあるのも事実です。
長谷川穂積、名城信男、アレクサンドル・ムニョス、
これらのチャンピオンたちとて、今、徳山がほぼベストの状態であれば、
誰一人、徳山には勝てないんじゃないか、と。
そして、そういう想像が現実かどうかを、実際に証明する機会を
我々ファンの前に提供できないボクシング界に、
私は、けっこう本気で失望しています。