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気軽に我流でワインを楽しんでみようかと。

第60回 正倉院展

2008-10-30 15:23:26 | Museum
2008.10.29.
 チャールズ皇太子の来奈良を歓迎しての旗振りに参加。笑
その後お目当ての「第60回 正倉院展」に。
 いつもより人が少ない・・・ 2時頃の入館とは言え、これはひどいなー。やっぱり不況の影響は刻々と深刻化しているように思える。


第60回 正倉院展

会 期:平成20年10月25日(土)~11月10日(月)全17日、会期中無休

会 場:奈良国立博物館 東新館・西新館

開館時間:午前9時~午後6時  入館は閉館30分前まで
      *金曜日、土曜日、日曜日、祝日は午後7時まで


 正倉院展は戦後間もない昭和21年(1946)に始まり、途中東京で開催された3回を除くと、奈良国立博物館での開催は今年で60回を迎えます。その間に出陳された宝物の数はのべ4,000件に及び、700万人を超える方が観覧に訪れました。
 今年は北倉8件、中倉33件、南倉25件、聖語蔵(しょうごぞう)3件の69件の宝物が出陳され、うち19件が初出陳です。展示の構成は、光明皇后によって大仏に献納された聖武天皇遺愛の宝物に始まり、佩飾品(はいしょくひん)など、皇族・貴族たちの献納品、天蓋(てんがい)など仏具、飲食器、文書、経典となっています。
 聖武天皇遺愛の宝物は、正倉院香木の双璧の一方とされる全浅香(ぜんせんこう)、全面に精緻な文様を彫刻した刻彫尺八(こくちょうのしゃくはち)、鏡背を螺鈿による花文様で埋め尽くした平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)などが出陳されます。皇族・貴族たちの献納品と考えられる宝物には、ササン朝ペルシアからもたらされた白瑠璃碗(はくるりのわん)のほか、木画細工が見事な紫檀木画双六局(したんもくがのすごろくきょく)、鏡背に山水や人物などを鋳だした山水人物鳥獣背円鏡(さんすいじんぶつちょうじゅうはいのえんきょう)などがあります。さらに、献納品を収めた箱にも蘇芳地金銀絵箱(すおうじきんぎんえのはこ)のように美しい工芸品を見ることができます。
 
 中倉68 白瑠璃碗

 南倉182 方形天蓋    
 
 献納品のうち、佩飾品とは腰飾りのことで、刺繍やガラス玉の美しい紫皮裁文珠玉飾刺繍羅帯残欠(むらさきがわ祭文しゅぎょくかざりししゅうらのおびざんけつ)のほか、犀角魚形(さいかくのうおがた)や水精玉(すいしょうのたま)などの装身具が出陳され生ます。仏具は天蓋の関連品がまとまって出陳され、あわせて金銅鎮鐸(こんどうのちんたく)や珍しい金属製の幡(はた)である金銅幡(こんどうのばん)などが出陳されます。このほか、思わず笑みを誘われる椰子実(やしのみ)、虹龍(こうりゅう)と称される貂(てん)のミイラなどなど異色の宝物が出陳されます。
 正倉院展を通して奈良朝の人々の文化や暮らしを身近に感じ、また当時の社会に対して理解を深めていただければ幸いです。
  中倉172 紫檀木画双六局

 中倉95 紫皮裁文珠玉飾刺繍羅帯残欠

 北倉42 平螺鈿背八角鏡

 中倉152 蘇芳地金銀絵箱

 中倉97 犀角魚形



「正倉院」について
http://osaka.yomiuri.co.jp/shosoin/st-intro.htmより

起源
 756年、聖武天皇崩御の四十九日忌に光明皇后が聖武天皇ゆかりの品々を東大寺大仏に献納したことが正倉院宝物の起源。

建物構造
 東大寺の正倉院はかっては十数棟あった倉庫群だが、現在は1棟。総ヒノキ、寄棟造りで、奈良の歴史的建造物が世界遺産として登録されたとき、この正倉院も登録された。南北33メートル、奥行き9・4メートル、高さ14メートル、床下2・7メートル。3倉に分かれ、北倉と南倉は三角形の校木(あぜき)を組んだ校倉(あぜくら)造り。中倉だけは厚板を組んだ板倉造り。

北倉は聖武天皇、光明皇后の遺愛の品を中心にした宮廷生活品が納められており、最も由緒ある品々があったといえる。最初に光明皇后が大仏に献納した品々などを記した「国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)」など5通の献物帳もここに納められていた。

 現在は鉄筋コンクリート造りの西宝庫、東宝庫に分納されて保存されている。


3倉に分かれている正倉

保存
 1250年もの間、宝物が守り継がれてきた一番の要因は宝物の管理が天皇の命によって封を施す勅封(ちょくふう)の形式で行われてきたことだ。とくに北倉は当初から勅封とされ、中倉も平安期から同じく勅封となり、南倉は長く東大寺の管理とされてきたが、明治8年に、宝庫の管理が政府に移され、すべてが勅封となった。現在も西宝庫内の各入り口に勅封が施されている。

 毎年秋に定例の宝物調査・点検が行われており、その際も「開封の儀」がとり行われる。

 正倉院の宝物は「校倉造に組まれたヒノキの校木が外気の温度、湿度の違いで膨らんだり縮んだりして屋内の温湿度を一定に保ってきた」。この説は江戸時代の学者・藤貞幹(とうていかん)から始まったものだが、現在では科学的調査で、校倉造りでも他の木造建物でもその温湿度差に大差がないことが判明、正倉院宝庫は“呼吸する”という説は否定されている。そして、宝物を守ってきたのは湿度差が小さくなる唐櫃(からびつ)に納めてあったからだと考えられている。

宝物の特色
<1>由緒正しい品々で構成
 「国家珍宝帳」などの献物帳には奉献の趣旨をはじめ、宝物の名称・個数・形状・材質などから装飾の特徴、さらには伝来の由来まで詳細に記されている。

<2>宝物が多種多様なこと
 袈裟・献物箱・銀壺・幡など仏具法具、厨子・椅子・屏風・毛氈・鏡などの家具調度、大刀・鉾・弓・馬鞍など武器武具、筆・尺・硯・紙など文房具、箜篌(くご)・琵琶・琴・笙(しょう)など楽器、棊局・双六など遊具--と多岐にわたる。また材質も象牙・犀角・鹿角・鯨骨・貝殻・タイマイなど動物質のものから紫檀・黒檀・沈香など外来の植物質からさらに鉱物質のものとして、金・銀・銅・鉄・錫・ラピスラズリ(青金石)・大理石などがある。

<3>優れた製作技法を伝える
 金工・木工・竹工・漆工・陶器・ガラス・染織、さらに彫刻・絵画・木画・撥鏤(ばちる)など様々。撥鏤など後世ほとんどその技法が絶えたものがあるが、一方で蒔絵(まきえ)の源流ともいえる末金鏤(まつきんる)など注目される技法も。

<4>宝物がもつ国際性
 鏡や銀壺のほかガラス器も舶来の品。とくに薬物・香木類はほとんどが海外から輸入したもの。また、宝物の製作地は源流をたどると、中国はもちろん、ペルシア、インドに及ぶ。材質をみても、ラピスラズリはアフガニスタン産、象牙や犀角も日本国内には産出しないものばかりだ。

〔参考文献一覧〕
長澤和俊 「正倉院の至宝-宝物殿に眠る歴史の謎」(青春出版社)
米田雄介「すぐわかる正倉院の美術」(東京美術)
米田雄介「正倉院と日本文化」(吉川弘文館)
米田雄介「正倉院宝物の歴史と保存」(吉川弘文館)
守屋弘斎・久我高照他「東大寺と正倉院」(雄山閣出版)
正倉院事務所編「正倉院宝物-増補改訂 北倉」
関根真隆「正倉院への道-天平美術への招待」(吉川弘文館)
橋本義彦「正倉院の歴史」(吉川弘文館)
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