減る賃金、増す残業 労働経済白書「成果配分見直しを」(朝日新聞)
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戦後最長におよぶ景気回復とは裏腹に、実質賃金は減り、労働時間も延びるなど労働環境が改善されていない実態が、厚生労働省が3日発表した07年版「労働経済の分析」(労働経済白書)でわかった。白書は非正規雇用や成果主義、裁量労働制などの拡大を原因として指摘。業績回復の果実が労働者にも行き渡るよう、新たな成果配分の仕組みが必要だと訴えている。
今回の景気回復では、景気の谷だった02年第1四半期に比べ、06年第4四半期の賃金は従業員500人以上の大企業でも0.3%増でほぼ横ばい。100~499人の中堅企業では1.2%減、5~29人の小規模企業は5.3%減と、むしろ悪化した。物価上昇率を反映した06年平均の実質賃金は、前年に比べ0.1%減った。
一方、06年の労働時間は残業が5年連続で増え、総労働時間は前年比0.5%増の年間1811時間だった。若年層を中心に労働時間が短いパートが増えたものの、働き盛りの30代や40代の正社員に仕事が集中。週60時間以上働く人の割合を96年と比べると、35~39歳が19.6%から21.6%に、40~44歳が16.3%から21.2%に、45~49歳が14.9%から18.3%に上昇した。
このブログでも何度となく繰り返していることではありますが、景気は回復しているのに働く人々の暮らしは一向に改善される様子がありません。図表にもあるように、かつては景気が回復すればそれに応じて労働者の賃金も上昇していました。経済界と労働者の懐は運命を共にするところがあったようですが、さて昨今は? 昨今は、過去において当てはまっていた関係が、すなわち企業の景気が回復すればそれに応じて労働者の賃金も上がるという関係が成り立たなくなっています。
過去において可能であったことが、どうして今になって不可能になってしまったのでしょうか? なぜ昔は出来たことが今は出来ないのか、それが問われねばならないでしょう。一面的な方向でのみ進められた規制緩和によって労使の力関係が極度にアンバランスなものに変えられたことも理由の一つです。かつては経営者と労働者は共に利益を稼ぎ出すビジネスパートナーだったかもしれませんが、今や経営者と労働者は単なる主従関係、力関係は一方通行です。
相も変わらず経団連の主張するところでは―――そして同時に政府与党の頷くところでは―――引き続き経済界の活性化を促す方向で進めていく、さらなる企業優遇、さらなる企業向けの大減税、これによって企業の景気回復を下支えする、それが日本経済全体を活性化し、国民の生活にも好影響をもたらすそうです。企業の景気が良くなれば労働者及び国民の暮らし向きも良くなる、そんな説明を戦後最長の景気回復と同じだけの長い期間、繰り返し聞かされてきました。
言うまでもなく今も尚、働く人々の暮らしは好転していません。それでもまだ、企業の景気回復に期待しようというのでしょうか? 今までは企業の景気回復に国民の暮らしが取り残されてきましたが、これから先は違うとでも言うのでしょうか? 今のままでは、いくら景気が回復しても私達がその恩恵に預かれる日は訪れないでしょう。問題は景気ではなく、分配です。私達の暮らしが貧しいとしたら、それは日本に富がないからではなく、富が偏っているからに過ぎません。
トヨタ自動車が3日発表した07年4-6月期連結決算(米国会計基準)の売上高は、前年同期比15・7%増の6兆5226億円で、米ゼネラル・モーターズ(GM)を4-6月期で初めて上回った。
三菱電機が9月中間期営業益を上方修正、円安寄与で過去最高に(ロイター)
三菱電機<6503.T>は30日、2007年9月中間期の連結業績(米国会計基準)予想を上方修正し、営業利益を前年同期比28.2%増の1200億円(従来予想は850億円)に引き上げると発表した。過去最高を更新する。
東芝の4―6月期業績は過去最高、9月中間期予想を上方修正(ロイター)
東芝<6502.T>が27日発表した2007年4―6月期の連結営業利益(米国会計基準)は、前年同期比1.6%増の211億円だった。当初は減益を計画していたものの、半導体とパソコン事業が予想以上に好調に推移し、4―6月期としては過去最高。売上高、税引き前利益、純利益とも過去最高となり、9月中間期の業績見通しを上方修正した。
民間でも労働組合が正当な賃上げ要求を出しても、ついていく組合員が減ってます。
一般国民同士で、足の引っ張り合いをしてるようなものです。
公務員準拠の待遇をしている組織も多いですし、地方企業で、公務員の俸給表を参考にしてるところもありますし、直接的な影響を受ける人達もいる訳で。
そうでなくても、公務員の給料が減らされれば、その分需要も減りますから、小売業は影響を受けますし、当然メーカーも減収になる訳です。
確かにいざなぎ景気越えといわれながら実感が湧かないですよね。でも、ひとつ思うことがあります。それは日本では米国ほどは景気変動に合わせて弾力的に賃金が変化するわけではないですよね。つまり労働者が不況に対するリスクをあまり背負っていないと言えるのではないでしょうか。そうだとしたらその分のリスクを資本家が負っているのですから労働者にまで好況の恩恵が届くには時間がかかるのはむしろ当然のようにも思われます。少し度を越えているのかもしれませんが・…
かつての「終身雇用と毎年のベアは当り前」の時代ならそうだったかもしれません。
しかし、所謂失われた10年で企業は大規模なリストラや給与カット、合理化と称した業務量の増大、実力主義と称した給与の上げ渋り等を行い、不況リスクをむしろ労働者へ積極的に負担させています。
今になって人材の年代に極端な偏りが出るなど企業側にもしわよせが来ていますが。
むしろ不況リスクは労働者、好況の果実は企業側という配分が定着しているのでは。
企業側の思惑もさることながら、労働者側の間でも待遇切り下げへの圧力が働いているのでしょうか。自分の給料を下げろと言う人はさすがにいませんが、他人の給料を下げろと主張する人が多いわけですよね。そういう声に応えた結果が今に繋がっている側面もあるのかもしれません。
>ボクスケさん
ただ、ボクスケさんの説明だと、日本の過去と現在の違いを説明できません。なぜ昔は可能だったことが今は不可能とされているのか、その問いには答えていないのではないでしょうか。好況の恩恵が届くには時間がかかるとも言いますが、戦後最長に渡る超長期間の景気回復でも「まだ」だというのであれば、それも過去の事例と矛盾しています。ついでに言えば、おそらくボクスケさんの想定からは非正規雇用の存在が漏れているのではないでしょうか? 業績悪化に対するリスクを負わされているのは、実は資本家ではなく、こうした非正規雇用就業者でもあります。
>Gl17さん
フォローありがとうございます。
こと正社員に限れば、業績の悪化で即座に給与が下がったりすることはないわけですが、非正規雇用の場合であれば簡単に切り捨てられるわけですし、その切り捨てられた非正規雇用就業者の仕事が正規就業者にのしかかってくるわけで、リスクを負わされていないとはとても言えません。なおかつ、そのリスクに対する保険である社会保障が次々と骨抜きにされ、浮いたお金が企業への減税に使われているわけですから。やはり現在の分配の仕組み、利益の分配、リスクの分配に問題があると思いますね。
例によって「産経」が、以下の記事を掲載している。
http://www.sankei.co.jp/seiji/seisaku/070803/ssk070803001.htm
「総務省は3日、105ある独立行政法人の平成18年度の給与水準を公表した。事務・技術系職員の平均年収は732万6000円(平均年齢43.4歳)で、前年度より3万7000円減ったが、国家公務員の給与を100とした場合のラスパイレス指数は107.4で、前年度比0.1ポイントの低下にとどまった」とトンチンカンなことを言っているのが興味深い。産経は、民間のことは言っていないが、独立行政法人の賃金を下げてどうしようといっているのか、全く無責任なメディアである。
「朝日」も
http://www.asahi.com/life/update/0803/TKY200708030106.html
「戦後最長におよぶ景気回復とは裏腹に、実質賃金は減り、労働時間も延びるなど労働環境が改善されていない実態が、厚生労働省が3日発表した07年版「労働経済の分析」(労働経済白書)でわかった。白書は非正規雇用や成果主義、裁量労働制などの拡大を原因として指摘。業績回復の果実が労働者にも行き渡るよう、新たな成果配分の仕組みが必要だと訴えている」と政府の代弁者として口移し的報道をしているにすぎない。その点では産経と同じ立場と言える。ふざけるな!と言いたい。
結局のところ、現実的な政策よりもイデオロギーを振りかざす方向性は変わっていないのでしょうか、実利よりも感情が優先、民間の賃金を上げることよりも、民間の不満をぶつける生け贄を用意することが政府とメディアの方向性になっていますね・・・
>京成パンダさん
あるいは、選挙で左派政党に投票するだけでもいいのですが、なかなかどうして若い世代は投票すらしなかったり。不満を持っている割には何一つ反対の姿勢を示さない人が現状を支えている面もあるでしょうか。
これは、賢明な選択だと思います。労働運動は、組織員の利益よりも、階級全体に目配せしてこそ、労働運動と言えるのではないかな、と。
非正規雇用が増えたなら、その増えた層を味方に付けねばなりませんし。ただこれが労働組合側からの動きだけに止まるのではなく、非正規雇用の側が積極的に労組と連帯して利益を主張する、双方向性を持った形にしていくことが今後の課題になるのではないかと思います。