……こんな書き込みが少しだけ注目を浴びていたりしたのですが、いかがなものでしょう。これを書いたのは都民ファーストの会に所属する現役の都議会議員とのことで、上記のような認識は社会に一定の影響を及ぼしていると思われます。取り敢えず低所得でかつ女性が多い仕事としては介護や保育などが挙げられますけれど、こうした人々にリスキリングや仕事斡旋などを通じて転職を促せば、もう少し給与水準の高い業種に移ること自体は可能なのかも知れません。
先般は埼玉県八潮市で大規模な陥没事故がありましたが巻き込まれた運転手は救出できず、復旧には急いでも3年かかかるとの見解すらあります。他県でも類似した陥没事故は相次いでいるところですけれど、そもそも復旧に必要な土木工事の人員が足りないのだとか。そして建設業の中でも土木従事者の給与水準は目立って低いようです。土木作業員にリスキリングや仕事斡旋などを通じて転職を促せば、取り敢えず低所得者支援にはなると言えますが、その結果はどうなるのでしょうね。参考、建設業の平均年収は567万!年齢別・業種別・地域別など詳細データも紹介(建設魂)
なお家計の消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」は上昇傾向が続き単月では30%を上回るなど、過去40数年来の高水準にあるそうです。賃金水準の長期低迷や税金と保険料の上昇に加えて、食品価格の大幅なインフレが原因として挙げられますが、それでもなお生産者側が儲かる状態にはないのだとも言われています。確かに第一次産業の平均所得は二次産業、三次産業に比べて顕著に低いわけです。ならば農業や畜産業の従事者にリスキリングや仕事斡旋などを通じて転職を促せば、低所得者支援としては有効──なのかも知れません。
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出産には特別のスキルや資格を求められたりはしませんが、少子化は加速する一方です。献血は健康な人間であれば誰でも出来ますが、血液は慢性的に不足しているわけです。誰でも出来ることは、誰かがやってくれることではありません。誰でも出来るはずなのに、誰もやってくれない、そんな未来は十分にあり得ます。世の中が必要としていることは、必ずしも人々が率先してやりたがることではありません。だからそこには何らかの正の動機付けが必要になってくると言えますが、政財界の理解はどれほどのものでしょうか。
維新村こと大阪ではバス運転手の給与水準が異常に高いと憤慨する政治家が支持を集め、その給与水準を大きく引き下げた結果、今では路線バスの維持が困難になり開幕の迫る万博の送迎バス運行にも暗雲が立ちこめています。では解決策は何か──これは至って単純なことで、今の惨状を招いた方法と真逆のことをやれば良いとしか言えません。世の中のために必要な仕事には政府や自治体が金を出す、ただそれだけのことで自体は改善に向かうことが見込まれます。
社会にとって必要な職種ほど賃金が低く抑え込まれる傾向は他国でも見られるところですが、そうした市場原理のゆがみを是正する役割を政治が自覚しているかどうかで、社会の持続可能性は変わります。社会に必要だけれど低賃金の仕事に就いている人々が、リスキリングや就職支援を通じて社会には必要ないが高給の仕事(例えばコンサルタントなど)に移動すれば、我々の世の中がどうなるかは容易に想像できることでしょう。
総じて給与水準は「社会に必要とされているかどうか」とは無関係で、「就業難易度」に左右されるところが大きいです。社会に必要でなくとも就くのが難しい仕事は給料も高い、そして給料が高いから就きたがる人が増えて競争率は高まり、さも権威ある仕事のように錯覚されてしまう、反対に社会に欠かせなくとも就くのが簡単な仕事は給料が低い、給料が低いから就きたがる人が増えず人手不足となり、ますます採用のハードルが低くなることで価値のない仕事であるかのように誤解される、それが市場原理のもたらす負の循環です。これを是正するのもまた政治の役割ですが、為政者達の認識はどれほどのものやら。