非国民通信

ノーモア・コイズミ

民主党 前門の前原、後門の共産党?

2006-10-29 20:29:28 | 非国民通信社社説

神奈川16区 投票率 47・16%

  1  亀井善太郎   自由民主党      109,464 当選
  2  後藤祐一     民主党          80,450
  3  笠木隆      日本共産党       9,862

大阪9区 投票率 52・15%

  1  原田憲治     自由民主党      111,226 当選
  2  大谷信盛     民主党          92,424
  3  藤木邦顕     日本共産党      17,774


 もう1週間ばかり経過してしまいましたが、神奈川と大阪の衆院補欠選挙、どちらも自民党の勝利という結果に終わったわけです。自民党議員の中にはこれで国民の支持が証明されたと勢いづいて、悪法を押し通す絶好の機会と息巻いている人もいます。なんとか政府与党の暴走を止める手立てはないものでしょうか。

 一応、自民党の対抗馬は民主党ということになっています。民主党候補が自民党候補を抑えて当選していれば、政府与党にもう少し睨みをきかせられていたのではないか、しかし民主党は自民党に後れを取ってしまいました。どうして?

 民主党の敗因を探る上で、共産党、前原前代表が犯人候補として挙げられがちです。

「自公に対抗するには、勝ち目のない共産党が候補者を立てないことです。エゴイズムで立てるから、反自民票が分散され、結果的に自公候補を助けている。自公からすれば、共産党は敵どころか、ありがたい味方です。安倍政権は『共産党サマサマ』と言ってますよ。大阪9区の補選は、共産党が〝共闘〟したら逆転もあった。共産党は、戦争政権である安倍を助けてどうするんだ、考え直せと言いたいですよ」
森田実の言わねばならぬ[448]

 こんな主張に同調するブログもあります。要するに、共産党が独自候補を立てたために反自民の票が割れた、民主党に投票されるべき票が共産党に食われ、結果として民主党の敗北を招いた、と。まあこの主張には怪しいところもあります。もし仮に、共産党が候補を立てず、今回の選挙で共産党に投じられた票数が全て民主党に投じられた場合を考えてみましょう。

神奈川16区

  1  亀井善太郎    自由民主党      109,464 当選
  2  後藤祐一      民主党         90,312

大阪9区

  1  原田憲治     自由民主党      111,226 当選
  2  大谷信盛     民主党          110,198

 大阪はいい勝負ですが、それでも自民+公明>民主+共産の図式は変わりませんね。

 もちろん、反自民勢力の結集はいい考えです。なんとしても政府自民党の暴走を止めなければならない時期に来ていますからね。自民+公明>民主+共産というはっきりとした数値が出ているとしても、それでもなんとかして「自民+公明」を上回る勢力を作り上げなければなりません。そういった点では共産党支持層の取り込みは必要なことにも思われますが・・・

 第五は、民主党は共産党批判を強めるべきである。自公対民主の対決において、共産党は、結果的にではあるが、自公連立勢力に味方している。共産党は、自民も民主も同じだといって民主党を攻撃しているが、結果的には自公連立勢力の勝利を助けている。共産党が自公連立政権を支えているのだ。民主党は共産党への批判を強めるべきである。
森田実の言わねばならぬ[443]

 「民主党は共産党への批判を強めるべきである」とは、逆行しているようにしか思われないのですが、いかがでしょうか。この主張と同様に共産党および共産党支持層への批判を強めているブログもありますが、これでは民主党と共産党との対立を煽るばかり、共闘への道は遠ざかるばかりです。内ゲバ志向の人をなんとかしないと、強固な馴れ合い体質を誇る右派には勝てません。

 私は赤というより黒なので共産党支持ですらありませんが、それでもどれか一つを選んで投票しなければならないというのであれば、かろうじて許容範囲ということで共産党に一票。民主党はちょっと躊躇しますね。私とはあまりに政策が違いすぎる、そりゃ自民党に比べればずっとマシには違いありませんが、他よりマシだからという消極的な理由で支持できるものかどうか、支持に値する政党がないのであれば、積極的に棄権するのも政治参加の一つのやり方ではないでしょうか。仮に野党が候補を一本化、共産党が撤退して民主党だけが立候補した場合、共産党は候補なし、残った二つの選択肢から選ぶのであれば、よりマシな民主党候補に投票、そんな消極的な選択のためにわざわざ投票所まで足を運んだりは、私だったらしませんね。共産党が候補を立てなければ共産票が全て民主党に流れ込む、これはあまりにも都合のいい仮定です。

 もし仮に、共産党支持層に民主党へ投票してもらいたいのであれば、それは民主党が政策面で共産党側に歩み寄ることが必要です。もし民主党が共産党の選挙協力を欲するのであれば、共産党支持層が民主党に投票する積極的な理由を与えてやらねばなりません。共産党が候補を立てなければ、自民党はさすがにダメだから残った民主党に入れる、そんな消去法で投票する人ばかりではないのです。共産党支持層の票を獲得するには、民主党に投票して民主党を勝たせてやれば共産党の政策が一部であっても実行に移される、そういう保証がなければ積極的な選挙協力はあり得ません。

 そこで仮に民主党が共産党の政策を取り入れて共産党の選挙協力を取り付けたとしましょう。その場合に予想されるのは何でしょうか? 従来の民主党支持層の一部、反共主義者が民主党への支持を止め、消去法で考えればより自分に近い政策の政党へ、共産党および共産党提携勢力に対抗する政党へと鞍替えする可能性があります。考えてみれば私の担任教師は高校までずっと熱心な反共主義者ばかりでした。よく日教組は左寄りなんて神話が語られますが、私は高校までずっと、共産主義とは恐ろしいもの、とにかく悪いもの、絶対に排除せねばならないものと教えられて育ちました。日本共産党ですら共産主義を放棄するご時世ではありますが、共産主義は衰退しても反共主義は健在です。上の方で引用した森田実氏も同様、自民批判、民主党支持者の中にもガチガチの反共主義者は少なくないと推測されます。だからもし、民主党が歩み寄れば共産党の選挙協力は得られるかも知れませんが、その歩み寄りによって反共主義者を敵に回す、結果として民主党への票数を減らしてしまう可能性すらあるわけです。

 ところで、両選挙区の投票傾向を百分率で見てみましょう。

神奈川16区

自由民主党      25.8%
民主党         19.0%
日本共産党       2.3%
投票せず       52.9%

大阪9区

自由民主党      26.2%
民主党         21.8%
日本共産党       4.2%
投票せず       47.8%

 両選挙区とも、共産党へ投票した人の割合は高くありません。この数少ない共産党支持層が票田として魅力的かどうかは大いに疑わしいですね。むしろ52%、47%の投票しなかった人たちの方が遙かに豊かな鉱脈です。神奈川なら52%のうちから7%、大阪なら47%のうちから5%、新たに票を掘り起こせば民主党が自民+公明票を上回ることができます。票の掘り起こしを狙うなら豊かな鉱脈を選んだ方が効率的、まあこれは当たり前のことのはずですが。

 そもそも、共産党への票を民主党に振り分けたって勝てませんし、共産党へ流れた票が民主党から奪った票だというのもほとんど言いがかりに近い、被害妄想だと言わざるを得ません。共産党が持ってきた票はおやそ50%を占める投票しない人々の層から長年かけて掘り起こしたものが大半、たかだか20%しかない民主党の痩せた票田から奪ってきたわけではありません。反自民が攻撃すべきはあくまで自民党であって共産党ではありませんし、自民を票数で上回るべく開拓しなければならない鉱脈は共産支持層ではなく無党派層なのです。


 共産党の他にもう一つ、民主党の敗因と考えられているのが前原前代表です。この人、自民党執行部のような政策を掲げ、民主党の政策に反する主張を繰り返しては内部対立を招いているわけで、民主党のイメージ悪化の一因であることは間違いありません。この人がなぜ自民党ではなく民主党に在籍しているのかを疑問視する向きもありますが、たぶん答えは簡単、前原氏は世襲議員ではないからでしょう。自民党内部でいくら従順な犬として頑張ったところで自民党は世襲議員達の貴族社会、やんごとなき麻生閣下あたりに「前原のような卑しい庶民の子を大臣にはできないわなあ」と一蹴されるのがオチです。前原氏のような平民の子が権力を手にするには、自民党ではダメなのでしょう。

 おそらく前原氏はイギリス労働党のトニー・ブレアのような存在なのでしょう。元来は左派(左派、右派という言葉の指す対象が混濁している昨今ですが、便宜上、右と左で切り分けて話します)からの支持を受ける立場だった労働党党首でありながら、左派を切り捨てて右派へと大きく歩み寄り、従来は右派の支持を受ける立場だった保守党から支持者を奪うことに成功、保守党に成り代わって権力の座を獲得しましたのがブレア労働党党首です。保守的な右派政権から保守的な右派政権へと、中身は変わりませんが、保守党政権から労働党政権への政権交代には成功したわけです。イギリス国民にとっては不幸な結果ですがね。

 そして前原氏の方向性もこの辺りではないのかな、と。ブレア氏の場合、左派に訴えたところで勝てない、それなら左派を切り捨てて保守党の地盤である右派の票を奪いに行くという戦略が見事に成功したわけです。そして民主党・前原氏の場合です、例えば2004年の参院選、民主党の大勝として報道された選挙でしたが、それでも民主党の議席数は自民党を上回ることができませんでした。あの選挙では共産党や旧社会党が大幅に議席を減らし、民主党は大幅増、しかし自民+公明は横這いでした。民主党の勝利とは左派、中道勢力内部での主導権争いの勝利に過ぎず、左派中道勢力の支持を最大限に集めた結果である2004年の選挙結果をもってしても、結局は自民党を上回ることができなかったのです。

 そこで登場してきたのが前原氏、ブレア氏よろしくきっぱりと左派に背を向け、急速に右派への歩み寄りを見せ始めました。結局、くだらない問題を騒ぎ立てられて党首の座から引かざるを得なくなったわけですが、この前原氏の方向性、民主党を自民党と並ぶ右派政党にする方向性は、これがもし続いていたら面白いことになったかもしれません。もしかしたらイギリス労働党のように新しい右派政党として自民党に取って代わる、そんな可能性もあったのではないでしょうか。

 もし民主党が前原氏を中心とした右傾化路線を続けていたら、票を奪い合う間柄はその他の左派・中道勢力ではなく、右派勢力、自民党とのものであったでしょう。2004年の選挙結果が示すように左派勢力を結集するだけでは自民党には勝てません。ならば自民党の支持基盤である右派から票を奪わなければいかない――前原氏の政治姿勢であればそれが結果的にであったとしても、自民党を支持してきた右派の間で票の奪い合いが始まったのではないか、そう思われるのです。

 もし前原氏を党首に民主党が右傾化を続けていれば、右派の票が自民党と民主党との間で割れる、結果的に自民が得票数を減らす、前原民主党を見限った左派が共産党、旧社会党などの左派政党に戻る、自民党が議席を減らし、左派政党が復権することで自民+公明党の過半数を崩すことができたかも知れません。合計すれば過半数になる前原民主党と左派政党が連立を組んで、内閣が成立したら後は前原氏を追い出せばシナリオとしては理想的ですね。みんな純潔キャンディの食べ過ぎなのか、日本は浮気や不倫などのセックススキャンダルは絶対に許さない国柄、ちょっと魅力的な女性とカメラマンを差し向けてやれば追放できるんじゃないでしょうかね。

 まあ、前原氏は既に党代表の座を退いた身、いまさら妄想を練り上げたところで仕方ありません。ただ、前原民主党以外にももう一つ、自民党を支える右派の票を割る方法があります。それは「石原新党」。石原珍太郎のような差別主義者が政党を結成して全国区に躍り出た場合、従来の自民党支持層の中でも最も頑迷な排外主義者、極右層が石原珍党支持にまわるかもしれません。もし政局の左端で民主党と共産党が票を食い合っている、つぶし合っていると信じるのであれば、逆に政局の右端で自民党と石原珍党が票を食い合い、つぶし合うことに期待が持てるかも知れません。ま、仮にそうなって民主党が選挙に勝ったとしても、石原珍党が民主党の補完勢力だ、石原珍党サマサマ、なんて考えるつもりはありませんが。


 なにはともあれ、政府自民党の暴走を止めなければならない、そういう時期に差し掛かっています。なんとかして自民党を政権の座から引きずり落とさなければなりません。ただそのために、民主党支持層が共産党支持層を非難したところで自民党支持層の票は減りません。前原氏は自民党を支える右派票を争う上では武器になりますが、たぶん中道派、左派の支持は失うでしょう。

 公明党を抱き込む、という手は使えないのでしょうか。自民+公明の連立政権で公明党は寄生先の政党に忠実な政党であることを示しました。公明党の寄生先が自民ではなく民主党であれば、民主党の政策に唯々諾々と従うのではないでしょうか。投票率の高い創価学会員も、池田大作先生のご指示とあらば、どこの政党にだって投票してくれそうです。反創価学会の人々からの支持は失いそうですが、それでも自勢力に取り込むことができれば強力な武器になりそうです。

 もう一つは、自民党を凌ぐ最大勢力である無党派層の掘り起こしです。今回の参院補選でも自民党支持は全体の25%程度ですが、投票しなかった人はその倍の50%、ここから票を持ってこなければいけません。そのためにはどうでしょうか、徹底したタレント路線も致し方ないかも知れませんね。とくに元日本ハムの新庄選手、これは絶対に自民に渡してはいけませんよ。

 タレント議員なんてふざけてる、馬鹿にするな、そんな見方もあるでしょう。でも、大半の国民は政治なんて興味がないのです。法人税がどれだけ引き下げられたか、累進課税がどれだけ緩和されたか、それを知らずに消費税増税はやむなしと政府を支持する。外国人によるテロが、一度たりとも日本で行われたことがあるか、それを知らずに政府の治安対策を支持する。政府の大本営発表と翼賛メディアの伝えるままに、民主党はダメな政党と信じて消去法で自民党を選ぶ。駅では毎朝、野党議員が自らの政策を伝える演説を行っているが誰も足を止めず、ビラを受け取る人もいない。彼らの政策、主張には耳を傾けず、何も知らないのに、知ったつもりになっては野党にダメ出し。政府与党は選挙の勝利を追い風に教育基本法改竄や共謀罪の成立を目指すのでしょうが、自民党に投票した人々の大半は問題の法案の中身なんてろくに知らないし、知るつもりもない。そんな人が大半で、そういう人たちが選挙の行く末を決めるのです。

 タレント議員ばかりで候補者を固めれば、今まで民主党が獲得していた20%の支持を失うかも知れません。でも今まで選挙に行かなかった人々50%を獲得できればおつりが来ます。自民党にも勝てます。タレントに政治がわかるのか、そう思う人もいるかも知れませんが、では今、政府を動かしている人間はどうでしょうか? 今、自民党に残っている人間だって政治力はタレント並かそれ以下、気にくわない相手にキレてみる、イキがってみるだけの中2病の患者レベル、誰がやったってこれ以上は悪くなりません。

 新庄は札幌ドームに観客を呼び寄せ、野球の魅力を北海道のファンに伝えてきました。本人はきっぱりと拒否の姿勢を示していますが、どうやら自民党から打診はあった模様。できれば自民党は避けて欲しいものですが、是非政界入りして欲しい逸材です。野球選手としてそうしてきたように注目を集め、光を当てて欲しい、これからは政治家として、政治に注目を集め、政治の現場で何が起こっているのか、それを知らしめる力が彼にはあるのではないか。今の政府がどんな悪政を敷いているのか、多くの人がそれを知らないまま、景気は上向き、外交問題は相手が悪い奴だから、そんな大本営発表を盲信して政府を支持している人が多すぎます。はたして小泉・安倍政権が支持を得るに値することをやってきたのか? これを国民は知る必要があるのに、多くの人が知ろうとしない。野党はそれを伝えようとしているのに、誰も彼らの主張に耳を傾けない。しかし新庄のような特別なタレントは何かを変えてくれるかも知れません。新庄に引き寄せられたファンが野球の魅力を知ったように、タレント候補に引き寄せられたファンが政治の実態に目を向けるかも知れない。もし国民が政治の実態に目を向けるように、政府が何をやっているかを知ろうとするように、そうファンを引きつけてくれるのであればタレント議員は馬鹿にできません。ま、そこまでカリスマ性のあるタレントとなると新庄以外にはなかなか思いつかないし、そう滅多にいそうにもないのですが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする