非国民通信

ノーモア・コイズミ

どうして今年になって問題に?

2006-10-28 21:49:55 | ニュース

「補習出ない」「学校ふざけるな」 履修漏れ、受験生ら

 高校卒業に必要な科目の履修漏れが、何故か最近になって話題になっています。10/28時点で254校に上るとか。なんで今になって急にネタになったんですかね? 何か事情でもあるのでしょうか? 私も高校時代には履修科目のごまかしを少なからず経験しているのですが、今回の件を契機に遡って調査されたらどうしましょう? 卒業に必要な科目を履修していないから、ということで10年以上前の高校卒業資格を剥奪、それに伴って大学入学資格喪失、大学卒業資格すら危ういです。

 私の高校の場合、家庭科は実際に授業を行わず「履修したことにして」済ませていました。現代社会・政経の授業も出席確認は行わず、試験も名前を書くだけだったのでろくに出席しなかったのですが、やはりこれは履修漏れ、高校卒業資格は失効でしょうか。後輩達に迷惑がかかると恐いので高校名は伏せます。

 ただ、あのとき家庭科の授業、現社の授業が実際に行われていたとしても、高校卒業後の自分、今の自分に何ら影響はなかったのは間違いありません。わざわざ時間を割いて教室に座っていたところで覚えるつもりなんてさらさら無いわけで、授業を受けても受けなくても一緒なのです。たとえ日本史を実際には履修せず、履修したことにして済ませたところでほとんどの人にとっては同じこと、受験に関係なけりゃまじめにやるのは好き者だけ、ましてや高校卒業してしまえばみんな忘れてしまうものです。試しにちゃんと日本史を履修して高校を卒業した人を捕まえて試験してご覧なさい、どうせ覚えていないから。日本史を履修した人も、日本史を履修したことにして済ませた人も、卒業した後はみんな一緒なんです。ただ、時間割を組んで教室に座っていた経験があるか無いか、それだけの差であって騒ぐようなものではないのです。

 不思議なのは、今の3年生ばかりが問題にされていて、同様のごまかしで卒業した先輩達には特に言及されていないことです。まさか、今年に入って初めて履修科目のごまかしが全国一斉に行われるようになったと、そういうことにしてしまうつもりなのでしょうか? 同様のごまかしは私が高校生だった10年以上前から行われていたはずです、それを今になって騒ぎ出す、狙い撃ちにされた今年の高校3年生にとっては災難と言うほかありませんね。

 ところが、狙い撃ちされた3年生達曰く「教育委員会とか上の人がもっとしっかりしてくれていれば、こんなことにはならなかったのでは」「学校ふざけるな、と言いたい。指導する立場の先生がこんなことするなんて信じられない

 この辺はソースのない匿名のコメントなので本当に生徒の発言かどうかは不明ですが、注目すべきは生徒達が怒りの矛先を自分たちを狙い撃ちしている層に対してではなく、教育現場に向けていることです。彼らを窮地に追いやっているのは、前々から行われていた行為を今年になって突如として騒ぎ立てたメディアではないでしょうか。教育現場での履修科目のごまかしは以前から普通にあったし、それが深刻な問題になったことはありませんでした。しかるに教育現場は何も変わっていないのですが、その変わらない教育現場を一夜にして不正の場へと塗り替えた勢力がいます。それなのに生徒達はどういう訳か、問題があるとは見なされてこなかった昨年以前のカリキュラムを引き継いでいる教育現場に非難の目を向けています。

 本当に不思議なのは、去年までは問題視されてこなかった履修のごまかしがなぜ今年は問題にされるのか?と言うことです。これは政府が掲げる教育基本法の改正に関係があるのでしょうか。匿名の高校生は「教育委員会とか上の人がもっとしっかりしてくれていれば、こんなことにはならなかった」と、まさに政府が望む答えを導き出しています。国語力、コミュニケーション能力、人間力の高い子供ですね。きっとこの子の家には床の間があるに違いありません。そして現場の教員から権限を取り上げて教育行政による統制を企てる勢力にとって、今回のような教育現場のの不祥事は追い風に違いありません。

 そう、もう一つ不思議なことがあります。それは最近になって急に学校でのいじめ・自殺が取り上げられるようになったことです。この問題も昔からあって、問題の有無は以前から変わらないのですが、これが時期によって急に取り上げられたり黙殺されたり。これも問題視される基準が一貫していません。前々からあったいじめ・自殺の問題が今になって急に取り上げられるようになる、教育現場の問題をさらけ出し、それに介入するにはいい機会なのでしょうか。解決されるべき問題であることには違いありませんが、ただその介入したがっている人たちに問題解決の意思があるのかどうか。

 北朝鮮拉致問題でも明らかなように、安倍首相は非難すべき悪役を用意してはそれに立ち向かう正義の役回りを演じる、そこまでは得意なのですが、実際に問題を解決しようとする様子はさっぱり見えてきません。今回の事件を追い風に政府は、教育現場のごまかしと問題を暴き立て、不正をただす正義の剣を手に現場への積極的な介入を始めることが予想されます。しかし、ただ介入するばかりでその内容はろくでなし、一方的に相手を悪者に仕立て上げては正義感面をするばかり、その正義感面で現場の権限を没収、教育行政を通じた統制を強化するのが狙いで、実際の問題は大義名分としてむしろ保存されてしまいそうです。

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